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第四話 震える手
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エレベーターを降りると、そこには老若男女問わずさまざまな人がいた。
何人くらいだ?
15人・・・いや、もっとか?
唖然と立ち尽くしていると、一人の男が駆け寄ってきて肩に手を置いた。
「おい、大丈夫か?まぁ混乱するのも無理もない。自分の部屋にいたと思ったらこんなところにつれてこられたんだから」
「ああ、はい・・・。じゃあ他の皆さんも?」
「うん、そうみたいだね。君が来るまでに色々話しを聞いてみたが、起きて部屋から出ようとしたら部屋の外は真っ暗な闇に包まれていたらしい」
混乱している俺に丁寧に説明してくれる親切な男性だ。
自分より一回りくらい上かな?30代後半位の落ち着いた雰囲気の人だ。
「自分も、起きたらそんな感じで・・・・気が付いたらこんなところに通じていて」
「やっぱりそうか・・・。みんな同じようだな」
二人で話していると部屋の隅っこで胡坐をかいているおっさんが叫んできた。
「おーい!いいかげんここからだせや!テレビかなんかの企画なんだろ!?そろそろ説明してくれねーと訴えるぞ」
無精ひげを生やした腕っぷしには自信があるぞ、と言いたたげなおじさんだ。
グレーのスウェットに白いよれよれのTシャツで、憤っている様子だ。
「まぁまぁ、落ち着きましょうよ。さっきからそうやって訴えていますが、スタッフらしい人は出てこないじゃないですか」
「ああん?じゃどうすりゃいーんだよ!変な映像見せられて、知らない場所に放置されてよ」
「そうですね・・・。まずはみなさん。ちょうど椅子とテーブルがあるみたいなので、一度座って話し合ってみましょうよ」
この人は優秀な社会人なのだと一発で理解できるような落ち着いた姿勢に、初対面の人にもしっかり話しかけられる社交性。
出来る大人だと思った。
その男の一言で、部屋に散らばっていた人たちがそれぞれ好きなように席についていった。
お互い初対面で、みな無言のまま席に着く。
「けっ」
他のみんなが従ったのが気に食わなかったのか、胡坐をかいていた男性も立ち上がりテーブルへと向かった。
「さあ、君も適当に座ってくれ」
「は、はあ・・・」
俺も流れに乗って開いている席に座った。
ちょうどテーブルが5つあって、テーブル一つにつき4脚の椅子が置かれていた。
全員が椅子に座ったくらいに、さきほどの出来る男が立ち上がった。
「みなさん、一体何がおこっているのか。正直、全くわからない状況です。お互いに覚えていることや気づいたことを話し合って、状況を整理したいと思うのですがどうでしょうか?」
気まずいのか、誰も何も言わなかった。講演会などで『最後に質問ある人?』って言われてシーンとなる、あんな状況だ。
まぁ、そうなるよな。みんな初対面なんだし。そう思っていたら、俺の隣の女性が挙手をした。
少し目が鋭くて、きつそうな性格の人だ。
「はーい、ちょっといいです?」
「はい?どうぞどうぞ!」
「さっきも一人増えましたよね?まだまだ人が集まってくるかもだから、もう少し待機でも良いんじゃないですか?何度も同じ説明するのとか手間だと思うんです」
「おお、なるほど良い意見だね。確かにまだ集まるかもだね。でも、その人たちにスムーズに説明するためにも、話し合いを進めていてもかまわないんじゃないかな?」
「うーん、まぁそうかもですけどー。何人集まるかもわからないのにねぇ」
隣の女性が口を尖らせながら発言していると、今度は俺の目の前で座っている高校生くらいの男の子が急に口を開いた。
「あの、たぶん大丈夫ですよ」
「ん?何が大丈夫なのよ」
「ここに置いてある椅子の数と、今いる人の数。丁度一緒でしょ?」
みんなが辺りを見渡す。確かに余っている椅子はなく。ちょうど20人いる。
「あら、確かにそうだわ。賢いねきみ」
「いや、たぶん。あのおじさんも解ってたから、話し合いを始めようって言ったんじゃないの?さっきから部屋をうろうろ散策してたし」
「はは、君もよく見てるね。若いのに大したもんだ。だけど一つ訂正させてもらうと、僕はおじさんじゃない。青山って呼んでくれ」
「あ・・・ごめんなさい、青山さん。自分は灰谷っていいます。灰谷将(はいたにしょう)です」
「灰谷君ね。じゃあ、みなさんこんな感じでとりあえず自己紹介から始めましょうか」
二人が名乗ったことから、急遽自己紹介から始まった。
端から順番に名前と年齢、職業など多く語る人もいれば、名前しか言わない人もいた。
そろそろ俺の番だ。こういうのはいつやっても緊張するよな・・・。
「じゃあ次の人は・・・お、一番最後に入ってきた君か」
「はい・・・。えー澄田透(すみだとおる)っていいます。よろしく」
特に他の情報は言わずに座ってしまった。まぁ色々話す必要ないだろ。
俺のテーブルの人たちの自己紹介が終わり、とりあえず全員が言い終わった直後、ある男が低く暗い声で声を出した。
「おい、いいかげん悠長なことはやめろよ」
全員がその男に目を向けた。男は黒いパーカーを着ていてフードを深く被っている。
「ん?君は確か・・・・黒瀬創(くろせそう)さんだね。どうしたんだい?」
青山さんが黒瀬に問いかけた瞬間、黒瀬はあるものをテーブルの上においた。
「お前らも持ってるんだろ・・・・・拳銃を」
ゴトっとゴツイ音を立ててそれは姿を現した。
その場の空気が一気に固まるのを感じた。
「さあ、始めようぜ。殺し合いを」
俺は震えた手で、チャック付きのポケットの中身を握りしめた。
何人くらいだ?
15人・・・いや、もっとか?
唖然と立ち尽くしていると、一人の男が駆け寄ってきて肩に手を置いた。
「おい、大丈夫か?まぁ混乱するのも無理もない。自分の部屋にいたと思ったらこんなところにつれてこられたんだから」
「ああ、はい・・・。じゃあ他の皆さんも?」
「うん、そうみたいだね。君が来るまでに色々話しを聞いてみたが、起きて部屋から出ようとしたら部屋の外は真っ暗な闇に包まれていたらしい」
混乱している俺に丁寧に説明してくれる親切な男性だ。
自分より一回りくらい上かな?30代後半位の落ち着いた雰囲気の人だ。
「自分も、起きたらそんな感じで・・・・気が付いたらこんなところに通じていて」
「やっぱりそうか・・・。みんな同じようだな」
二人で話していると部屋の隅っこで胡坐をかいているおっさんが叫んできた。
「おーい!いいかげんここからだせや!テレビかなんかの企画なんだろ!?そろそろ説明してくれねーと訴えるぞ」
無精ひげを生やした腕っぷしには自信があるぞ、と言いたたげなおじさんだ。
グレーのスウェットに白いよれよれのTシャツで、憤っている様子だ。
「まぁまぁ、落ち着きましょうよ。さっきからそうやって訴えていますが、スタッフらしい人は出てこないじゃないですか」
「ああん?じゃどうすりゃいーんだよ!変な映像見せられて、知らない場所に放置されてよ」
「そうですね・・・。まずはみなさん。ちょうど椅子とテーブルがあるみたいなので、一度座って話し合ってみましょうよ」
この人は優秀な社会人なのだと一発で理解できるような落ち着いた姿勢に、初対面の人にもしっかり話しかけられる社交性。
出来る大人だと思った。
その男の一言で、部屋に散らばっていた人たちがそれぞれ好きなように席についていった。
お互い初対面で、みな無言のまま席に着く。
「けっ」
他のみんなが従ったのが気に食わなかったのか、胡坐をかいていた男性も立ち上がりテーブルへと向かった。
「さあ、君も適当に座ってくれ」
「は、はあ・・・」
俺も流れに乗って開いている席に座った。
ちょうどテーブルが5つあって、テーブル一つにつき4脚の椅子が置かれていた。
全員が椅子に座ったくらいに、さきほどの出来る男が立ち上がった。
「みなさん、一体何がおこっているのか。正直、全くわからない状況です。お互いに覚えていることや気づいたことを話し合って、状況を整理したいと思うのですがどうでしょうか?」
気まずいのか、誰も何も言わなかった。講演会などで『最後に質問ある人?』って言われてシーンとなる、あんな状況だ。
まぁ、そうなるよな。みんな初対面なんだし。そう思っていたら、俺の隣の女性が挙手をした。
少し目が鋭くて、きつそうな性格の人だ。
「はーい、ちょっといいです?」
「はい?どうぞどうぞ!」
「さっきも一人増えましたよね?まだまだ人が集まってくるかもだから、もう少し待機でも良いんじゃないですか?何度も同じ説明するのとか手間だと思うんです」
「おお、なるほど良い意見だね。確かにまだ集まるかもだね。でも、その人たちにスムーズに説明するためにも、話し合いを進めていてもかまわないんじゃないかな?」
「うーん、まぁそうかもですけどー。何人集まるかもわからないのにねぇ」
隣の女性が口を尖らせながら発言していると、今度は俺の目の前で座っている高校生くらいの男の子が急に口を開いた。
「あの、たぶん大丈夫ですよ」
「ん?何が大丈夫なのよ」
「ここに置いてある椅子の数と、今いる人の数。丁度一緒でしょ?」
みんなが辺りを見渡す。確かに余っている椅子はなく。ちょうど20人いる。
「あら、確かにそうだわ。賢いねきみ」
「いや、たぶん。あのおじさんも解ってたから、話し合いを始めようって言ったんじゃないの?さっきから部屋をうろうろ散策してたし」
「はは、君もよく見てるね。若いのに大したもんだ。だけど一つ訂正させてもらうと、僕はおじさんじゃない。青山って呼んでくれ」
「あ・・・ごめんなさい、青山さん。自分は灰谷っていいます。灰谷将(はいたにしょう)です」
「灰谷君ね。じゃあ、みなさんこんな感じでとりあえず自己紹介から始めましょうか」
二人が名乗ったことから、急遽自己紹介から始まった。
端から順番に名前と年齢、職業など多く語る人もいれば、名前しか言わない人もいた。
そろそろ俺の番だ。こういうのはいつやっても緊張するよな・・・。
「じゃあ次の人は・・・お、一番最後に入ってきた君か」
「はい・・・。えー澄田透(すみだとおる)っていいます。よろしく」
特に他の情報は言わずに座ってしまった。まぁ色々話す必要ないだろ。
俺のテーブルの人たちの自己紹介が終わり、とりあえず全員が言い終わった直後、ある男が低く暗い声で声を出した。
「おい、いいかげん悠長なことはやめろよ」
全員がその男に目を向けた。男は黒いパーカーを着ていてフードを深く被っている。
「ん?君は確か・・・・黒瀬創(くろせそう)さんだね。どうしたんだい?」
青山さんが黒瀬に問いかけた瞬間、黒瀬はあるものをテーブルの上においた。
「お前らも持ってるんだろ・・・・・拳銃を」
ゴトっとゴツイ音を立ててそれは姿を現した。
その場の空気が一気に固まるのを感じた。
「さあ、始めようぜ。殺し合いを」
俺は震えた手で、チャック付きのポケットの中身を握りしめた。
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