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第2章 大聖女は愛憎をまだ知らない
第11話 メイドは秘密を話しすぎる
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「はい???」
セオドアの愛を思い知れ??
レレさんの会話が急カーブにさしかかって、私の脳内は事故った。乗っていた馬車が谷底に落ちた気分だ。
「そうなのでっ、すぅ!! いっぱい、あいされてくだしゃい、ルチアさまぁ!!」
「は、はあ、セオドアの愛を……?」
泣きじゃくるレレさんに気のない返事をする。
「監禁はだめなことですけど、だって、放っておいたら、ルチアさまが死のうとするのが悪いんですッ」
「死のうとするわけじゃないよ。結果的に神の元に昇るだけ。全然違うよ」
「レレには学がないので、違いが分かりません!!」
二つ結びの髪をぷるぷる振って、ヘッドレストのフリルが揺れた。
泣きながら怒る姿も可愛くて、頭をつい撫でる。微笑みが浮かんだ。
そしたら、なぜかレレさんの丸い瞳から、じわっと大粒の涙が滲んでいった。
「その、その笑顔、なんです……ご主人さまが嫌いなお顔は、…………なんで嫌いなのかも、ようやくわかりました」
「ルチアさまは、ルチアさまは、ぜんぜん女の子してないんです、女の子なのに、神さまやってるんです……だから、レレはかなしい……」
「悲しい……? 女の子……? とにかく、レレさん悲しまないで。私は自分の役割に満足してるから」
レレさんが私を見あげる。ぱちんと視線があった。さっきまでの元気さが打って変わって、私をぎゅっと抱きしめる。
「……やっぱり、…………やっぱり……ルチアさまには、ご主人さまが必要なのですね……」
ぽつりと、確信したみたいに口を開いた。
「ご主人さまの愛があれば、ルチアさまも女の子になれるはずなんです」
「いや、だってあいつ、そもそも会いにも来ないじゃん」
「それは、ルチアさまのことでじょーおー陛下とお話してるからです!」
いきなり出てきた単語に、私の頭の中から女の子のくだりが吹っ飛んだ。
「何この監禁、国家規模の話だったの??」
「はっ! 今のは聞かなかったことにしてください……! ご主人さまは、女王さまに許してもらおうって、ずっと寝ないで頑張ってるんです!!」
寝ないで……? 徹夜とか効率悪いって、何度もバカにしてきたのはあの宰相なのに??
小さな身体全体で縋り付くように、彼女の両腕が私を包み込む。
「レレと一緒で、寝られないんです。ご主人さまも悲しいんです、怖いんです……!」
「こわい、ってあのセオドアが……、」
ここで聞く話はいつだって信じられない。
レレさんを宥めるのも忘れた私が、何とか言葉を続けようとしたときだった。
「話しすぎですよ、レレ」
彼女のぬくもりさえ凍りつかせるように、セオドアは私を遮ったのだ。
セオドアの愛を思い知れ??
レレさんの会話が急カーブにさしかかって、私の脳内は事故った。乗っていた馬車が谷底に落ちた気分だ。
「そうなのでっ、すぅ!! いっぱい、あいされてくだしゃい、ルチアさまぁ!!」
「は、はあ、セオドアの愛を……?」
泣きじゃくるレレさんに気のない返事をする。
「監禁はだめなことですけど、だって、放っておいたら、ルチアさまが死のうとするのが悪いんですッ」
「死のうとするわけじゃないよ。結果的に神の元に昇るだけ。全然違うよ」
「レレには学がないので、違いが分かりません!!」
二つ結びの髪をぷるぷる振って、ヘッドレストのフリルが揺れた。
泣きながら怒る姿も可愛くて、頭をつい撫でる。微笑みが浮かんだ。
そしたら、なぜかレレさんの丸い瞳から、じわっと大粒の涙が滲んでいった。
「その、その笑顔、なんです……ご主人さまが嫌いなお顔は、…………なんで嫌いなのかも、ようやくわかりました」
「ルチアさまは、ルチアさまは、ぜんぜん女の子してないんです、女の子なのに、神さまやってるんです……だから、レレはかなしい……」
「悲しい……? 女の子……? とにかく、レレさん悲しまないで。私は自分の役割に満足してるから」
レレさんが私を見あげる。ぱちんと視線があった。さっきまでの元気さが打って変わって、私をぎゅっと抱きしめる。
「……やっぱり、…………やっぱり……ルチアさまには、ご主人さまが必要なのですね……」
ぽつりと、確信したみたいに口を開いた。
「ご主人さまの愛があれば、ルチアさまも女の子になれるはずなんです」
「いや、だってあいつ、そもそも会いにも来ないじゃん」
「それは、ルチアさまのことでじょーおー陛下とお話してるからです!」
いきなり出てきた単語に、私の頭の中から女の子のくだりが吹っ飛んだ。
「何この監禁、国家規模の話だったの??」
「はっ! 今のは聞かなかったことにしてください……! ご主人さまは、女王さまに許してもらおうって、ずっと寝ないで頑張ってるんです!!」
寝ないで……? 徹夜とか効率悪いって、何度もバカにしてきたのはあの宰相なのに??
小さな身体全体で縋り付くように、彼女の両腕が私を包み込む。
「レレと一緒で、寝られないんです。ご主人さまも悲しいんです、怖いんです……!」
「こわい、ってあのセオドアが……、」
ここで聞く話はいつだって信じられない。
レレさんを宥めるのも忘れた私が、何とか言葉を続けようとしたときだった。
「話しすぎですよ、レレ」
彼女のぬくもりさえ凍りつかせるように、セオドアは私を遮ったのだ。
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