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第2章 大聖女は愛憎をまだ知らない
第9話 メイドは主を売り込みつづける
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「……ドキドキ……?」
レレさんの言葉を復唱すると、さらに顔を突き出してきた。
「そうです、胸がときめきましたか?!」
「まあ……うん、ドキドキはしてるかな」
宰相の計画性の高さが怖くて。
悩みながら答えると、レレさんは満面の笑みを浮かべた。
「よかったですぅ、ご主人さまの愛が届いてるみたいですね!」
「これ、愛、なの……?」
食事の用意とか、すみかの設備の準備とか、基本的な生活の話だし。
愛する人に対するってより、狩ってきたペットをちゃんと世話できてるかみたいな話じゃない?
「愛なのです! ご飯も寝るところもぜんーぶ用意して、大聖女さまを守ろうとしているのです! これが愛じゃなくて、なんなのですか!」
「う、うーん」
「魔物のきょーいのせいで、おうちがなくなった人とか、ごはんにもこまっている人もいるなかで、ご主人さまはそれを用意できるだけのかいしょーがあるんですよ」
人間一人を秘密裏に誘拐できるやつとか、魔物よりも怖いよ。
そう思うけれど、レレさんの熱意に負けて、口を挟めない。
「有力物件です! 大聖女さまは、ぜったいご主人さまとお付き合いするべきなのですぅ!」
小柄な身体を精一杯大きく広げて、熱弁を振るう。
「もうーーーー、こーーーーんなに大聖女のことを愛しているのです!」
頬をピンク色に染めて、拳をぎゅうと握って興奮しきっているみたいだ。
「ご主人さまと大聖女さまはお付き合いするべきなんです! レレが一生お世話します……!」
そういってレレさんは話を締めくくる。出会ってから、ずっとセオドアの愛を語ってくるんだよね。
聞き続けたプレゼンが区切りを迎えたので、私も慣れた合いの手を入れる。
「でも、これ監禁なんだよね。私、同意してないもん。どこからどうみても犯罪なんだよね」
「そ、それはそうなんですけどぉ、」
「それにレレさんも言ってたけど、魔王のせいで苦しんでる人がいるのに、私だけこんなところでのんびりしてられないよ」
私の使命は魔王討伐だ。魔王さえいなくなれば、魔物達は弱体化する。だから早急に、魔王を倒さないといけない。
本当なら、ベッドに座り込んでセオドアのことを考えている暇なんてないのだ。
「だって、私は大聖女ルチアだから。人々を救わないといけないの。困ってる人を助けたいの」
何度諭されても、私が言うことはこれしかない。
一週間の停滞が、何人の死者を生んだか。私には想像もできない。彼らの死は、大聖女である私の責任だから。
「私はこれを愛だと思えないし、お願いレレさん、ここから出して」
いつも通りお願いすれば、彼女はたじろいだ。
美味しい食事、安全な寝床、魔物と戦うことも神の声を聞くこともない生活。
たかだか一週間しか経っていないのに、ここにいると大聖女として不安になる。
こんな生活を続けていたら、私はなまってしまう。
魔王と戦えなくなってしまったら、と思うと居ても立ってもいられないんだ。
「レレさんのことは好きだけど、いつまでもここにはいられない。世界を救うのが私の役割なの」
セオドアが愛とのたまいながら、否定してきたとしても、それが大聖女だ。
「だから、セオドアを呼んで、」
あいつに代わるようにお願いしたとき、レレさんの瞳には涙が溢れていた。
「でも、だって、……ここを出て行ったら、大聖女さま、死んじゃうじゃないですか……」
レレさんの言葉を復唱すると、さらに顔を突き出してきた。
「そうです、胸がときめきましたか?!」
「まあ……うん、ドキドキはしてるかな」
宰相の計画性の高さが怖くて。
悩みながら答えると、レレさんは満面の笑みを浮かべた。
「よかったですぅ、ご主人さまの愛が届いてるみたいですね!」
「これ、愛、なの……?」
食事の用意とか、すみかの設備の準備とか、基本的な生活の話だし。
愛する人に対するってより、狩ってきたペットをちゃんと世話できてるかみたいな話じゃない?
「愛なのです! ご飯も寝るところもぜんーぶ用意して、大聖女さまを守ろうとしているのです! これが愛じゃなくて、なんなのですか!」
「う、うーん」
「魔物のきょーいのせいで、おうちがなくなった人とか、ごはんにもこまっている人もいるなかで、ご主人さまはそれを用意できるだけのかいしょーがあるんですよ」
人間一人を秘密裏に誘拐できるやつとか、魔物よりも怖いよ。
そう思うけれど、レレさんの熱意に負けて、口を挟めない。
「有力物件です! 大聖女さまは、ぜったいご主人さまとお付き合いするべきなのですぅ!」
小柄な身体を精一杯大きく広げて、熱弁を振るう。
「もうーーーー、こーーーーんなに大聖女のことを愛しているのです!」
頬をピンク色に染めて、拳をぎゅうと握って興奮しきっているみたいだ。
「ご主人さまと大聖女さまはお付き合いするべきなんです! レレが一生お世話します……!」
そういってレレさんは話を締めくくる。出会ってから、ずっとセオドアの愛を語ってくるんだよね。
聞き続けたプレゼンが区切りを迎えたので、私も慣れた合いの手を入れる。
「でも、これ監禁なんだよね。私、同意してないもん。どこからどうみても犯罪なんだよね」
「そ、それはそうなんですけどぉ、」
「それにレレさんも言ってたけど、魔王のせいで苦しんでる人がいるのに、私だけこんなところでのんびりしてられないよ」
私の使命は魔王討伐だ。魔王さえいなくなれば、魔物達は弱体化する。だから早急に、魔王を倒さないといけない。
本当なら、ベッドに座り込んでセオドアのことを考えている暇なんてないのだ。
「だって、私は大聖女ルチアだから。人々を救わないといけないの。困ってる人を助けたいの」
何度諭されても、私が言うことはこれしかない。
一週間の停滞が、何人の死者を生んだか。私には想像もできない。彼らの死は、大聖女である私の責任だから。
「私はこれを愛だと思えないし、お願いレレさん、ここから出して」
いつも通りお願いすれば、彼女はたじろいだ。
美味しい食事、安全な寝床、魔物と戦うことも神の声を聞くこともない生活。
たかだか一週間しか経っていないのに、ここにいると大聖女として不安になる。
こんな生活を続けていたら、私はなまってしまう。
魔王と戦えなくなってしまったら、と思うと居ても立ってもいられないんだ。
「レレさんのことは好きだけど、いつまでもここにはいられない。世界を救うのが私の役割なの」
セオドアが愛とのたまいながら、否定してきたとしても、それが大聖女だ。
「だから、セオドアを呼んで、」
あいつに代わるようにお願いしたとき、レレさんの瞳には涙が溢れていた。
「でも、だって、……ここを出て行ったら、大聖女さま、死んじゃうじゃないですか……」
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