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誕生日プレゼントが、あたしは欲しい!

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 あたし田中智たなかともは怒っています。
 なぜなら、あたしの彼氏であるはずのリョウが冷たいからです。

 今日はあたしの誕生日。そのことはリョウも知っている。
 明日が誕生日と宣言したのに、リョウは先輩からされた相談の話(彼女とのいちゃつき、羨ましい!!)をした後、あたしを置いて先に帰りやがった。

 先輩のバカヤロー、何が女に贈るのは指輪がいいか、ネックレスがいいか、ブレスレットがいいか。個人の好みだ! そんなの知らないよ。あたしはブレスレットがいいけど……。

 昨日のこと+その話題の先輩に買出しを頼まれたことがイライラの原因。
 先輩に怒ってるわけじゃない。あの先輩はそういう人だ。買出しだって、マネージャーの仕事だもん。

 私が怒ってるのは、いつもは手伝ってくれるリョウが「一人で行ってくれば」なんて言って、部室から追い出したことだ。
 荷物を持ってたあたしは急いで机に放り投げて、買出しに走った。

『リョウのバカ~~~』
 大声で言ったけどもやもやしたまま。
 



 しばらくして買出しがやっと終わった。
『あ~あ、疲れた』
「すまない、急ぎだったもので」

『いえ、大丈夫です。マネの仕事してきます』
 先輩に心配かけちゃった。早く仕事しよう。ゆっくり歩いていく。

 あたしの視界に、機嫌が少し良くなったように見えるリョウと、リョウを肩肘でつつく同級生が部室から出てきた。
「うまくやれよ、リョウ」
「……うるさい」
 何の話だろうか? まあいいか


 夕日が差してきて部活が終わった。片付けも終わったから帰れる。

『今日もがんばったよ、ホメて! 労って!』
「一人で何言ってんの」
『リョウ、なんで?!』
「帰る」

 そう言われたので、リュックとスクバの並んだ机に近づく。スクバを取った。
『待って』
 あたしを短く制すと、リョウが荷物を奪う。
 両手があいて動きやすくなったけど、許さないぞ!

「……」
『……』
 いつもどうりの無言の空間。嫌いじゃないけど、好きでもない。
 家から学校までは近いから、すぐに終わっちゃうのに。

『ねえ、リョウ。あたし今日誕生日なんだよ』
「……知ってる」
『彼女の誕生日くらい祝ってくれたっていいのに』
「智、最近ずうずうしい」
『リョウのバカ』

 やっぱり、あたしは怒ってる。リョウなんて置いてこう。
「……待ってよ、智」

 前に歩きだしてたあたしの腕を掴んで、引き寄せる。
 そして、顔を近づけてキスをした。
 え、え、キス、キス、キスっ。
 リップ音のリピートが止まらない。

「褒めてほしかったんだろ」
 いつもどうりの顔してるかもしれないけど、見えない。
「もう家だよね。俺帰るから」

『ちょと、待ってよ』
「幸せになりたいなら、ポケット見ることだね」
 最後に不思議な言葉を残し、すごい速さで走るリョウ。

『・・・へんなの』
 リョウが持ってきてくれたスクバは家の塀に置いてあった。
 おい、手渡してください。



『ただいま』
 階段を上りながら、今日一日を振り返る。誕生日プレゼント、欲しかったな……。

 部屋に入って、ベットで寝転びたいのを抑え、制服を着替える。
 そういえば、幸せになりたいならって……。

『幸せってあるのかな』
 制服のポケットを漁る。漁る。
 右手に何かが。

 『メモ……?」
 開いてみると、中には一単語。スクールバックと書いてあった。
 その字には見覚えがあった。

『リョウ、どういうこと』
 とりあえず、スクバを持ってきた。
 中を開けると……。


 あたし田谷智は喜んでいます。
 なぜなら中にプレゼントが入っていたからです。

 急いで銀色のリボンをはずす。シンプルなのは、リョウらしいな。
 中に入っていたのは、ブレスレットだ。
『だから、……聞いてきたんだ』
 
 普段、あたしを頼らないリョウなのに、だから相談してきたんだ。
『ありがとう』

 袋の中を覗くとまだ入っていて、ひっくり返した。
 コトンとカードが落ちた。なんて書いてある?

 拾ってみるとそこには、
 「Happy birthday!
  I am thank you.
  Stay with me forever.」
 こんな風に書いてあった。

『英語苦手なの知ってるくせに』
 口元に笑みがあふれて、とまらない。

 まあ、これは明日リョウに教えてもらおう。
 このブレスレットをつけたあたしが!           
                                  
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