かわいそうの向こう側

かわいそうの向こう側～繁殖犬～

『かわいそうの向こう側～繁殖犬～』

ぼく　ここにいるよ

せまくて　つめたいところ

いつも　ここにいるよ

おみずをのんで　ごはんをたべるよ

おしっこも　ウンチもここでするよ

いつも　ここでねむるよ

ここからでられるのは　あかちゃんをつくるときだけ

またすぐに　ここへもどされるよ

ずっと　こうしてすごしてきたよ

ずっと　ここにいるよ

なんだか　からだがぶるぶるするよ

あしに　ちからがはいらないよ

もう　立てなくなったよ

のどがかわいてるのに　おみずがないよ

おなかがすいてるのに　ごはんがないよ

ずっと　ずっと　

なにもくれないよ

ぼくのなかまも　げんきがないよ

これから　どうなるの

ぼくたち　どうなるの

ぼく　ここにいるよ

ぼくたち　ここにいるよ

もう　うごけないよ

ここから　でられないよ

めが　よくみえないよ

いきが　くるしいよ

ぼくは　ぼくたちは　

かわいそうだ

でも　ほんとうは

かわいそうの　むこうがわにいるんだよ

ぼくは　ここにいるよ

ぼくたちは　ここにいるよ





あれ　

こえが　きこえるよ

だんだん　ちかづいてくるよ

あれ

しらないひとが　ぼくをみているよ

しらないひとが　ぼくたちをみているよ

ドアを　あけてるよ

なんだろう　こわいよ

「あ～よかったぁ、いきてる～。だいじょうぶだよ～。」

「よく、がんばったね。いいこだね。」

どうしたの　ないてるの

やさしいこえ　

ぼく　はじめてきいたよ

あったかいて

ぼく　はじめてなでてもらったよ

なんだ　そうか

ぼくを　ぼくたちを

かわいそうの　むこうがわにいる

ぼくを　ぼくたちを

かわいそうの　むこうがわまできて

ぼくを　ぼくたちを

たすけてくれるんだ




ぼく　ここにいるよ

ひろくて　あったかいところ

みんなで　おみずをのんで

みんなで　ごはんをたべるよ

ぼくは　もう立てないけど

まいにち　

だっこして　おそとへだしてくれるよ

ぼくはここで　まってるよ

ぼくを　かぞくにしてくれるひと