おじいさんとおじいちゃん

Green hand

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和菓子屋さんへ/おじいちゃんのこと/里見さんと寄子さん

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『和菓子屋さんへ』

今日は、和菓子屋さんの店内見学をさせてもらいに、里見さんはチワワのチヨと外出です。
あの雨の日から数日後、おじいさんから連絡をもらい、和菓子屋さんの店内に飾れるような物を作ってもらえないかと依頼があり、里見さんは迷わず引き受けました。
作品を作る前に、店主の要望やイメージ、今の店内の雰囲気を見ておきたくて、里見さんはお店に見学許可をいただいたのです。

「スゥー・・・ハァー・・・。」

里見さんは、とても緊張しています。少しでも緊張を和らげたくて、チヨちゃんに道中付き添ってもらっています。
里見さんの足取りとは反対に、チヨちゃんの足取りは軽快で、とても楽しそうです。小さな足を素早く動かして、歩いているというより、小さく跳ねて前進しているように見えます。
里見さんは、チヨちゃんの何の不安も恐れもない元気な歩調に、いつも励まされています。そして、細やかに聞こえる息づかいと、時々こちらを振り返るときの笑顔が、

「ハッハッハッ・・・」

「・・・ふふっ。」

たまらなく好きなのです。

川沿いの道を自宅から30分程歩いて、大通りへ出て橋を渡ると、数日前におじいさんとおじいちゃんが雨宿りした、バザールという小さな商店街があります。大通りを挟んで、二手にあり、現在営業している店舗は、パン屋さん、和菓子屋さん、カラオケスナック。そして、道路を挟んだ向こう側に、マッサージ店の計4軒です。
橋を渡って、バザール手前の信号で大通りを横断すると、歩道の脇に下り階段があり、そこを下ると手前にパン屋さんがあり、その左隣りに和菓子屋さんがあります。造りとしては、かなり珍しい造りで、里見さんは昔からこのバザールに興味を持っていました
里見さんは、和菓子屋さんの前の歩道に着くと、数秒深呼吸します。チヨちゃんは、いつもの習慣と理解しているのか、里見さんの横で小さく地団駄踏みながら、歩き出すのを待っています。

「フゥー・・・行こうか。」

里見さんが歩き出したので、待ってましたとばかりにチヨちゃんも小さな足を動かして歩き出しました。
階段を下りて、数メートル歩いたら、チヨちゃんはベンチの足にリードを繋がれました。あれ?っと言いたげに、チヨちゃんは里見さんを見上げます。

「ちょっとここで待っててね。」

「クー・・・」

納得がいかなそうに、チヨちゃんは小さく鳴きます。

「終わったら、公園行こうね。」

「・・・・・・」

チヨちゃんはお座りして、大人しく待つ態勢に入りました。
里見さんは緊張で固まった顔で笑顔を作り、チヨちゃんの頭を撫でると、和菓子屋さんへ入っていきました。

「こんにちは。」

「はい、いらっしゃいませ。」

「あの・・お店の見学のお約束をさせていただきました・・・」

「あ、里見さんね?お待ちしておりました。」

「こ、今回はご依頼ありがとうございます!」

「いーえ。さと子さんご夫婦のお知り合いなのねぇ?」

「あ、はい!仲良くさせていただいております。」

「旦那さんに見せてもらった、紫陽花のブローチに一目惚れしちゃって、それでうちにもあんな素敵なものが飾れたら、私達の気分もお客様にも喜んでもらえるんじゃないかしらって思って、あなたにお願いしてもらったんですよ。」

「お話は伺っております。作品を褒めていただいてとても嬉しいです。では、お花をテーマにしたガラス細工で、今の季節に合ったお花を、天井や壁に吊してみたり、ショーケースに置ける小さな物を・・・わぁっ!」

「え?どうかなさった?」

「あ、いえ・・・すいません。ショーケースの中のお菓子がとても可愛かったもので・・・。」

「あら、ありがとうございます。今の若い職人さんに褒められるなんて、今まで変わらずやってきた甲斐があったわ~。」

「しょ、職人なんてとんでもないです!まだ見習いみたいな者ですから。」

「本当?でもあのブローチ、とても素敵よ?あなたのファンになっちゃいそう。」

「や、やだそんな・・・大したものじゃないですから・・・。あ、あのそれで・・・今お菓子を見て思いついたんですけれど・・・。」

「ええ、なんでしょう?」


30分後、里見さんはチヨちゃんのもとへ戻ってきました。後ろには女将さんがお見送りに出てきています。

「あら、あなたもワンちゃん飼ってるの?」

「はい。チヨと言います。」

「キャン!」

「あらぁ~チヨちゃん小っちゃいのねぇ。」

「では、サンプルを作ってまたお伺いさせていただきます。」

「はい、よろしくお願いします。楽しみに待ってます。」

「ご期待に添えるよう頑張ります。それでは、失礼します。」

2人は互いに深々とおじぎして、里見さんはチヨちゃんと一緒に歩き出しました。行きと違って元気な足取りでした。その後ろ姿を、何だか微笑ましいものを眺めるような表情で、女将さんはしばらく見送っていました。

「良かったぁ~。チィちゃんのおかげだよ。」

「ハッハッハッ・・・」

「女将さんもいい人だったよ。褒めまくられて恥ずかしくなったけど。」

「ハッハッハッ・・・」

「おじいさんって、いい人だね。」



それからしばらく経った、お盆終盤のことでした。
今日は里見さん1人で和菓子屋さんへ訪れ、用を済ませて帰るところでした。

「あ、あの!」

里見さんは、橋を渡る途中で突然後ろから声をかけられました。
振り返ると、スーツ姿の同じ年頃の男性と目が合いました。

「え・・あ、私・・ですか?」

「はい!突然すいません。」

腰の低い男性でした。しかし、里見さんは無意識に体が固まり、手が震えています。相手は自分より背の高い男性。道でも尋ねたいのだろうと思うが、どうしても不安が過ります。

「あの~・・・」

「・・・は、はい。」

声が掠れて出ません。自分の怯える声を耳にして、余計に不安が押し寄せます。

「よく、この辺りで見かけますけれど、地元の方ですか?」

「う・・な、何故・・・ですか?」

「あ、すいません。個人情報ですもんね。実は俺、地元なんです。」

「そ、そう・・ですか。」

「最近実家へ戻ってきて、今仕事で・・・」

里見さんは、胸が苦しくなる前触れを感じて、胸元に手をあてました。

「・・ご、ごめんなさ・・・」

「え・・・?」

その時でした。2人が立つすぐ横に、車が停まりました。そして、助手席の窓が開きます。

「あれ~?里見さんじゃん?」

「あ・・え?えっと、寄子さん?」

「偶然~!」

笑顔でそう言って、寄子さんは車を降りて里見さんとスーツ姿の男性の間に立ちます。
まず、里見さんと向かい合い肩に手を乗せて、

「平気?」

と声をかけました。その言葉に含まれた意味を寄子さんの表情から察して、里見さんは首を横に振りました。

「OK。せっかく会ったからお家まで送るよ~。」

寄子さんは、里見さんの肩を軽く叩いて、助手席の扉を開きます。

「す・・すいません。」

里見さんは、素直に席へ着こうとすると、

「え・・・まだ話が・・・っ。」

「あ?」

次に寄子さんは、スーツ姿の男性と向き合います。里見さんに対してと打って変わり、眉間に皺を寄せて、男性を睨みつけます。
その表情に、男性は怯みました。

「代わりに聞いてやんよと言いたいところだけど、急ぐんでこれにて・・・」

「は?でも・・・」

「でもじゃねぇよ。嫌がってんの分かんねぇのかおい?まずテメーの話より、相手の空気が読めるようになってから会話しな。」

そう言い捨てて、男性に口を挟む隙を与えず、寄子さんは助手席の扉を閉めて、素早く運転席へ乗り込みます。
そして、あっという間に走り去りました。
男性は取り残されて、キョトンとしています。走り去る前に、助手席の里見さんに目をやると、苦しそうに顔を歪めて胸に手をあてていたのを思い出し、男性は後悔しました。





『おじいちゃんのこと』

「スゥ・・・ハァ・・・」

「・・・・・・・。」

「ふぅ・・・。ぁ・・・あの・・・。」

「いいよ喋んないで。分かってるから。」

寄子さんは、里見さんが落ち着くまで話しかけませんでした。かといって、自分と長くいても落ち着かないだろうと思い、里見さんと親しい人がいる場所へ車を走らせました。

「勝手に喋るけど、聞き流していいからね。」

「・・・・・・?」

「昨日実家に電話して、たまたま聞いたムクの話なんだけどさ、ムクってね、ペットショップで売れ残ってた子なんだって。1歳になりかけていたから、周りの子たちより体が大きくて、その上子犬の頃からぼんやりした性格で、客が来ても無反応だから、なかなか貰い手がつかない状態だったらしいよ。うちの親父も心配になって、仕事帰りにしょっ中様子を見に行ってたんだ。」

「・・・・・・・・」

里見さんは、黙って聞き入っていました。

「ペットショップの店員に顔を覚えられるくらい通って、ムクのことしか見ないもんだから、店員さんからも毎度毎度勧められたんだ。でも、親父もお母さんも動物飼った経験がないし、定年間際の高齢者だから、最後まで面倒を見てやれる自信が無いって、ずっと断ってたんだ。この子には、特に犬のことをよく知っていて、よく可愛がってくれる家族が必要だってさ。」

「・・・・・・・」



その時のお話です。
ペットショップの店員さんは、笑顔を絶やさず、密かに両手をぎゅっと握りしめていました。
おじいさんは、自分に全く興味が無い態度をとるおじいちゃんを、ただただ優しい眼差しで見ていました。

「あの・・・、これは私個人の意見ですが、殆ど毎日通われて、この子だけを見ているお客様こそ、その家族に該当すると思います。飼ったことがなくて何も分からないのに、いつもこの子だけを見にいらっしゃって、大人しくてイマイチ反応が薄いこの子の将来を案じていらっしゃる。ご高齢の方にお勧めするのは、とても無責任に聞こえるかと存じますが、私はあなたがこの子の家族になって下さったら、この子はきっと幸せになると確信しております。」

「いや、しかし・・・」

店員の強い推しに、おじいさんは困惑気味です。それを知っていながら、店員は話を続けます。

「何故かと言いますと・・・、ここ数日、反応が薄いこの子が、お客様が帰られる時だけ、お客様の後ろ姿をジッと見つめているんです。その目がとても・・たまらなく可愛いんです。」

「はぁ・・・。」

戸惑いながら、おじいさんはガラス越しのおじいちゃんを見つめます。店員さんは笑顔で接客していましたが、その目はとても真剣でした。本音を話してくれているのを知り、余計におじいさんは悩み込みました。

「少し・・・難しいと思いますが、うちの婆さんと話し合ってみましょう。」

おじいさんは、半分飼う覚悟を決め、半分店員さんの推しから避難するためにそう口にしました。
すると、店員さんの目が少し柔和になり、おじいさんにお辞儀をしました。しかし、顔を上げた時にはとても神妙な顔をしていました。そして、おじいさんにこう告げました。

「なるべく、お早めに答えをいただけると有り難いです。お客様に申し上げる事ではないのですが、この子にはあまり時間がありません。」

「・・・・・・・?」

おじいさんには、よく理解できませんでした。

「あの・・・時間が無いとは?」

「私からは、これ以上の事はお答えできかねます。ですが、なるべくお早めによろしくお願いします。」

そう言って、店員さんは深々とお辞儀をしました。
おじいさんは考え込みながら、お店の出入り口へ向かっている時、店員さんが話してくれた事を思い出して振り返りました。
すると、おじいちゃんがお座りして、本当に自分を見ていたので、店員さんの言うとおり、とても可愛く思えました。

店を出てから、おじいさんはすぐにお母さんに話したくて、帰り道を歩きながら携帯で事情を話しました。

「まぁ、あなたが犬に興味をもつなんて。」

電話口のお婆さんは、楽しそうに聞いていました。

「しかし、あれは一体どういう意味だったのかねぇ?」

「なんですか?」

「いやね、婆さんと相談してみると言ったら、店員の女性が、[早めに答えをいただけると有り難いです。この子にはあまり時間がありません]と言っていたんだが・・・・」

「・・・そうですか。」

お婆さんの声が、一気に沈みました。おじいさんはそれに気づいて、お婆さんに問いかけます。

「・・どうした?」

「それは・・・、あの子には時間がないっていうのは、その子はもうすぐ保健所へ送られるって事ですよ。」

「・・・・・・・。」

おじいさんはそれを聞いて、その場に立ち尽くしました。体から、血の気が引いていくのを感じると、先ほど目にした自分を見つめるおじいちゃんの姿が思い浮かんで、周囲の事など気にせず、その場で泣いてしまいました。
そしておじいさんは、

「婆さん・・・あの子を連れて帰ってもいいか?」

と涙声で聞きました。お婆さんは、

「ええ、もちろん。」

と、少し目を潤ませながら答えました。
おじいさんは涙を拭って、来た道を急いで引き返していきました。



「それでペットショップへ戻って、その日の内にムクを家に迎え入れたんだってさ。」

「・・ムクちゃんに・・・そんな事が・・・・。」

「うん。さ、着いたよ~。」

そう言って、寄子さんは車を停めたのは、おじいさんの家でした。

「え・・・?」

「こんな話聞いちゃったらさ、ムクに会いたくなるっしょ?」

「・・・・はい!」

里見さんは、寄子さんに連れられて庭へ回り、縁側で昼寝しているムクの姿を目にすると、思わず抱きしめました。

(・・・・・・・)

いつも通りムクの反応は薄く、尻尾を静かに振るだけです。
代わりに、ちょうど台所から居間へ来たおじいさんが、

「おわぁっ!?な、ど、ど・・・?」

良い反応を見せてくれました。

「あ、ごめんなさい!驚かせるつもりは・・・」

「アタシはあったけどね~。」

寄子さんはイタズラ小僧のようにニヤニヤ笑っています。おじいさんは胸を押さえながら、

「この・・いい年して子供じみた事を。」

「心霊番組見るわりには、思っきしビビってたね。あっはっは!」

「え?おじいさん、ホラー番組見るんですか?すごーい!私苦手なんです。」

「いや・・あの・・・もう懲りました。それより・・・」

そう言って、おじいさんは苦笑いして誤魔化そうとしました。すると、すかさず寄子さんが間に入って、

「実はね、この前・・・。」

里見さんに例のいきさつをバラそうとすると、おじいさんは咳払いして止めました。

「それより、何故2人揃ってうちへ?」

「ん、ああ里見さんが道端でナンパされててさ、困ってたからビシッとアタシがお送りしたってわけ。モテる女はツラいねぇ~。」

「え?ナンパだったんですか?あれ。」

「ん?そう見えたけど、違うの?」

「実は・・私もよく分からないまま発作を起こしたので・・・。」

「おや、大丈夫でしたか?」

「あ、はい。寄子さんのおかげで、気がついたら治まっていました。」

「何か話した方が気が紛れると思ってさ、道中この前父ちゃんから聞いたムクの話を勝手に語らせてもらったよ。」

「話すのはいいが、調子の悪い人に聞かせる話じゃないだろ。」

「いえ、ムクちゃんは私の恩人でもありますから、ムクちゃんの事を知れて良かったです。」

(・・・・・・・)

そう言って、里見さんは愛おしそうにおじいちゃんを撫で続けます。
おじいさんはその光景を、穏やかな笑顔で見つめます。

「そうですか。それならいいんですが。今1番暑い時分です。せっかくですからどうぞ休んでいって下さい。寄子はどうする?」

「じゃあお言葉に甘えて。」

それを聞いて、おじいさんは再び台所へ向かいました。寄子さんも、靴を脱いで縁側から中へ入って、台所へ向かいました。
縁側には、いつも通りぼんやりしたおじいちゃんと、里見さんが座っています。

「・・・そっか。」

(・・・・・・・)

「おじいさんがムクちゃんを選んだんじゃなくて、ムクちゃんがおじいさんを選んで、このおうちへ来たんだね。」

(・・・・・・・)

「今、ムクちゃんは幸せですか?」

(・・・・・・・)

「・・・・聞くだけ野暮よね。」

おじいちゃんは大あくびをして、昼寝の続きを始めました。




『里見さんと寄子さん』

「へぇ~!アクセサリー作る職人さんなの!?」

「いえいえ!職人なんて大それたものではないんです。引きこもり中に、趣味で始めてみたら、結構楽しくて。」

「これが、里見さんの作品だ。」

そう言って、おじいさんはちゃぶ台にお婆さんお気に入りの紫陽花のブローチを置きました。

「ぅぅうっわ・・・っ!コレもう店に売ってるヤツじゃん!いや店よりイカしてる!」

寄子さんは、目を見開いて驚いています。

「そ、そんな褒めすぎです・・・。」

「いやいや、これを仕事にしてるんですから、もう立派な職人ですよ。」

「でも、本当にまだまだ未熟です。」

「和菓子屋さんの女将さんも、とても褒めておられましたよ。作品の良さは勿論のこと、あなたの人柄にも惹かれてファンになったそうです。」

「え?和菓子屋って、バザールの?あそこのおばさんにはよく叱られたよアタシ。褒めることあるんだね。」

「それは、お前が子供の頃連れて行く度にショーケースを上ろうとするからだろ。」

「ふふふっ。お転婆だったんですね、寄子さん。」

「いやいや、そこに山があれば登るでしょ?それと同じだよ。」

「あのうちのご家族は、2人とも息子さんですから、きっと里見さんのことを娘のように見ていて、羨ましく思っているのかもしれないですね。」

「そうなんですか。」

「ふぅーん・・・それにしてもすごいねぇ。ガラス細工だけなの?」

「あ、いえ。その時思いついた物で作るので、ガラスだったり、金属や和紙や木材を使用することもあります。」

「じゃあ例えば、犬の首輪に付けるアクセサリーとかは?」

「・・・・・・・・!!」

「胴輪つけて、首にネックレスみたいなチェーン付けてる子とかたまに見かけるし、ガラスは割れるから危ないけど、金属ならオシャレ好き飼い主がペットとペアのアクセサリーとか欲しがるかもよ?」

「・・・・・・・・!!」

「あとそうだ、迷子札とか?ケータイのストラップくらいのサイズであれば、結構欲しがる人が・・・・」

「おいおい、そう先走るんじゃない。里見さんには里見さんのペースがあるんだ。」

「あ、ごめんごめん。このブローチ見てたら何となく閃いただけよ?別に作ってほしいって催促じゃあ・・・」

「す・・すす凄いです寄子さんっ!ナイスアイデアです!!」

「あ、え?そう?」

「た、例えば!どんなモチーフがいいでしょうか?ワンちゃんとネコちゃんだと、やっぱり同じデザインじゃアレですよね?」

「どうかな?飼い主さんの好みだから、境界線はないと思うけど。定番は、犬は骨つき肉で、猫は魚だよね。」

「なるほど。確かにそうですね。」

「花柄にすれば、どっちにも使えるし、あとオス・メス色分けする人もいれば、関係なくその子に合う色や飼い主の好みで選ぶってパターンもあるんじゃない?」

「はい、確かに!」

「外国ほどじゃないけど、日本もペット大国だからね。良い材料使わなくても、里見さんのセンスでカバー出来そうだし、誰にでも手が出せるお手頃な値段で売ったら、結構需要あるかもよ?」

「需要・・・そうですね。そういうのもやっぱり考えないといけませんよね。」

「そりゃあそうだよ~。コレで飯食ってく覚悟したんなら、それも考えなきゃ。お客さんに喜んでもらえる物を作るのが第1だけどさ。あ・・何か農家にも通ずるものがあるな。」

「そうだ・・・。野菜の形したアクセサリーとかいいかも。」

「お、良いね!うちが卸してる直売所で販売するなら話通すよ。あと、田畑にいる生き物とか・・・ちょっとマイナー過ぎるか?」

「何がいるんですか?」

「カエルとか、アオサギとか、害虫駆除の為に、カモを田んぼに放してる所もあるよ。」

「へぇ~知りませんでした!カエルや鳥のグッズは最近流行っていますし、良いかもしれないですね!」

「でも人気を勝ち取るなら、今の流行りより斜め上を目指すべきじゃん?流行り物は、他の職人や業者が手ぇ出してるから、既に種類豊富だよ。」

「そうか、それもそうですね。うーん・・・何がありますかねぇ・・・」

「イモリとかヤモリ?ヘビもイカしてるよ。」

「あーっ!ロックな路線も良いかもです!寄子さん凄いです!アイデア満載ですね!」

「ええー?まぁね。図工は苦手だけど、想像力は昔っから豊かなんだ。ロック系にするなら、ヘビやワニが首に巻きついてるような、犬猫の首輪なんか良くない?」

「おおぉ~っ!カッコイイです~!」

「例えば名前は、[イカした爬虫類ネックレス]」

「作ってないのに商品名も決まりましたね!メモしとかなくちゃ!」

「・・・・・・・。」

(・・・・・・・・)

「これが俗にいう、ガールズトークというやつかね・・・。」

(・・・・・・・・)

おじいさんとおじいちゃんは、女性2人の大盛り上がりに圧倒されて、全く会話についていけませんでした。

「アタシの時代はね、ヘビやトカゲのタトゥーを、ほっぺたや腕に入れてる奴もいたよ。アタシは龍や虎のシールにしといたけど。」

「え!?見てみたいです!」

「あるよ写真。見る?」

「はい!」

「寄子、それはやめときなさい。」

里見さんと寄子さんは、友達になりました。

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