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〈8/20〉

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〈8/20〉

この日が来るまで、上司Tと会う日が無かったし、半日過ぎても向こうから説明も何もなかった。会話するのも嫌で仕方がなかったが、生活もかかっているので、昼休憩時に私から上司Tへ直接シフトを減らした理由を聞いた。
前もって理由も告げずに黙って減らすのは非常識な行為だし、正式にこれからずっと出勤日数を減らして雇用するのなら、雇用契約書の変更手続きだって必要となる。会社に伝えて契約書を作成し、私に署名を求める事も上司だからと黙ってふんぞり返ってないで、それなりの手順を踏まなくてはならない。それが筋ってものだ。
そんな根回しを一切せず、ただシフト表に休日を示す[/]を、PCで簡単にいつもより多く打ち込む作業しかしてない事に、私は納得がいってなかった。
皆も勤務日数を減らされていて、有休で帳尻合わせをしていたり、してなかったり、有休がまだ発生してない人の勤務日数を1日減らしていたり。私に限っては、勤務日数12+有休2。先月までは、勤務日数15~17だった。
一体どういうつもりで減らしたのか。ミスが多いから?
それを持ち出すならお互い様だ。
嫌いだから日数を減らして充分な収入を与えず、生活出来なくなるまで+嫌がらせで追い込んで辞めさせようとしている?
嫌いなのもお互い様だ。どんな理由を並べ立ててくるか知らないが、上司Tの本音は100パーこれだ。この手口は見たことがあった。

何を言われるか分からないし、何かあった際、自分の身を守るために録音機能付きの携帯を持って、私は上司Tがいる事務所へ訪れた。

会話の詳細は省いて、私の訴えと上司Tの答えをまとめると、
◦私は週4勤務の契約なので、最低でも16日必要。
→聞いてない
◦契約書はそうなっている。
→無言
◦出勤日数を減らした理由。
→こちらの要求に応えてないから
◦こちらの要求とは。
→清掃してない
→調理に関しても、魚が固いなど色々ある

とのこと。
ほとんど事前の指示も日常会話も交わしてこない人が、いつ何の要求をしたんだ?
しかも要求に関する第一声が[清掃してない]ときた。上司Tがいる前で清掃を始めると、いつも離れた場所へ移動して背を向け、お茶飲んで突っ立っていた。精神的負担をかなり感じるようになってからは、イチャモンをつけられたくないので上司2人がいない早朝に行っていた。
なので当然反論はしたが、清掃してる・してないの子供じみた言い合いの繰り返しになってしまっただけだ。それ以前に、食品庫の清掃を放棄して、ゴミだらけ虫の死骸だらけにしていた人に、[こちらの要求]事項としてあげられたくない。よく言えたもんだ。
次に、調理に関してだ。確かに以前から精神的に辛くて調理業務に集中出来ず、[煮魚が固い]・[味が濃い]の指摘はあった。
塩分制限の患者に[面倒だから]と毎晩汁物付けたり、味の濃い汁物付けたり、味のしないかけダレ作ったり、肉・魚が固くならないのを気にし過ぎて中に火が通って無かったり、上司Tだって同レベルの失敗を散々してきた。

店長ってだけで、こうも扱いが違うのか。
ただの店長じゃない。機嫌の良し悪しで、部下に挨拶しない、物に当たる、嫌いな相手には嫌がらせ、真顔で嘘をつく、上司Hが部下にけしかけた言い合いや部下間のトラブルが生じてもほったらかしで嵐が過ぎ去るのを待つ。
目に見えた店長の仕事といえば、棚卸しとシフト作成、時々面接官。
上司H同様、困ってる部下を放置して、失敗すれば追い込みをかけたり喜んで言いふらすしかない。

全く進展のない会話を繰り返していたが、上司Sに報告するだけの言葉は聞き出せたので、[上司Sに伝える]と一応伝え、私から切りあげて戻ろうとすると、[上司Sに言っても変わらない][あなたの上司は俺ですよ]と言ってきた。
上司らしい態度いつとった?と思いながら、[それは分かってます]と答えたが、なにが気に障ったのか[分かってますかそれ?][なんですかそれ?]とデカい声を発して怒りを表してきた。分かってますと言ったの聞いてたか?理解に苦しむ。
その後、何故か上司Hまで参加して、2対1となった。狭い事務所で互いの距離が1メートル以内での2対1。もちろん私が1の方。その場に立った者にしか分からないと思うが、言い表しようがないストレス空間に立たされた。

そんな中、上司Hから
◦こちらの要求に対して、じゃあ辞めるしかないと言って最善を尽くそうという気持ちが感じない。
(辞めるしかないとケツ捲るまで追い込みかけてんのは誰かしら?)
◦会社なので雇い側のニーズが達成できなければ(出勤日数を戻すのは)難しい。
(だったらシフト表出す前にシフト削減の説明、契約書の変更手続きをすればいい。)
◦店長にものを頼むのはおかしい。店長が頼むべきで、部下が頼むのはおかしい。
(店長からシフトに関して頼まれたら出勤してましたけど?それに部下が店長へ相談した時点でそう言えば済む話。頼みを受け入れておいて、後で言ってないと突っぱねた上司Tの方がおかしいのでは?)
◦体調が悪いなら治るまで休んでいいと言ってたし、時間調整しようかと上司Tが提案していた。
(慢性的な腰痛や首痛は一生付き合っていくもので、治らないのを分かっているのかいないのか、配慮に見せかけたズルい言葉。要は出来ないなら辞めろってこと。てゆーか何ヶ月前の話してるんだ?)
→生活があるからそれは無理と私は答えた。
◦生活になるかならないかは、会社はどうでもいい。
(それはあなた方2人の気持ちでしょ。あなた方2人以外からそんな冷たい言葉聞いたことありませんよ。前店長・管理栄養士からも。)
→だからもう辞めるしかない。生活出来なくなるからと答えた。

結果、上司2人は[(私)に改善する気が無い]とみなした。
その後も、[上司Sに連絡することは、私(上司H)が社長に連絡するくらいおかしな事で、何バカなこと言ってんの?って怒られます。]とか、[正直上司Sは何もしてくれない。][辞めるしかないと言われても困る。結局辞めるのか辞めないのかハッキリしないから。](←話の流れでお前が圧かけて言わせてんだろ。自ら進んで辞めますなんて1度も言ったことないぞ。)とまだまだ上司Hは言いたい事言っていたが、私は[取り敢えず、上司Sは電話に出て話は聞いてくれますから、今日報告して、明日決めます]と答えて、何とか話は終了。
多大なストレスから解放されて、厨房に戻ると大先輩の同僚の姿がありホッとした。少し目が潤んでしまった。
泣きそうだったので、[もしかしたら辞めるかも]とだけ伝えて、携帯電話をしまいに更衣室へ向かった。

1年以上彼らと働いてきて、上司2人が親身になって相談にのってくれた、話を聞いてくれたというエピソードを誰からも聞いたことが無い。
今回の件だけでなく、直属の上司である2人が部下とのコミュニケーションを怠り、部下が何言っても否定ばかりで聞く耳をもたないせいで、こういうトラブルを自ら引き起こしてきた。
そして上司2人へのクレームが、上司Sの耳に直接届く。
2人は、直属の上司を差しおいて上司Sに連絡するのを、[おかしい][面白くない]と思っているようだが、自身が数々のきっかけを作っていることに、いつか気づく時がくるのだろうか。
少しキツい言い方をすると、大事な相談ができるほど、2人とも人として信用されてはいない。だから部下達は上司Sに連絡し、相談・対処してもらうしかなくなるのだ。

それと、上司2人が求めてきた改善に関しては、ミスへの指摘・高圧的な態度など見たくないので、いつもミスを起こさないよう意識しながら業務をしてきた。むしろそれしか頭に無い状態が、職場でも自宅でもずっと続いていた。
動機は不純かもしれないが、ミスを起こさないよう意識=改善の意識有りではないのだろうか?
そして、何度も部下を追い込み、何人も部下を辞めさせてきた上司2人は、いったい誰の要求に応えてそんな真似してきたのだろうか?
私と同レベルの失敗を重ね、その上部下に平気で嘘をついたり嫌がらせしたり、自身を改善する気が無い上司Tには、何故皆や私のシフトを削減した分、多く出勤する資格があるのだろうか?

手段としては、上司Sに相談せず、黙って出勤日数を減らされた時点で、理由を聞いてスッパリ退職して転職か、労働基準局へ訴えるのも有りではあった。
しかし、上司Sは私の面接官で、店長だった人た。[何かあったら言って下さい]と言ってくれたし、今まで上司2人の事で辛くなる度、上司Sに相談してきたので、今回は話さないのもどうかと思い、上司Tと話す前に事前に相談した。すると、[直接上司Hに聞いてみて、それから連絡下さい。]と言われたので、その日の内に連絡して、シフト削減の理由をそのまま報告した。上司Sに伝えたところで、何も変わらないと口を揃えて言っていたことも。

退職に関しては、上司Sに報告して明日決めると上司2人に伝えたが、もうこの件で直接話すのは辛いので、上司Sから直接上司Tへ連絡してくれる事になった。
これが正解なのかどうか分からないが、シフトの件は上司Sが対処することとなり、私の退職は取り敢えず無しとなった。

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