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続《6/12》
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昼休憩時、それは突然のことだった。
大ベテランの同僚が、あの自己満足で作成されたマニュアルについて、上司Hに話を始めた。
始める前に少し補足させてもらう。
患者によって、飲み込みが悪かったり、必要な栄養を補給するために、普通の食事以外に、ゼリー状の栄養食やお茶を提供することがある。
その栄養食を決められた大きさにカットし盛り付け、お茶を作成するのは、通常調理補助の仕事で、朝・昼分は早1勤務の調理補助が行い、何故か夕は仕込み~夕食調理までを行う遅番勤務の調理担当か、仕込み~調理・盛り付け・配膳・洗浄・最後の清掃まで行う中2勤務の調理担当が作成していた。夕は夕で、調理補助である遅2勤務の人がいるにも関わらず。
大ベテランの同僚の話というのは、
◎朝・昼は調理補助(1人)が行っているのに、夕の調理補助には何故作成させないのか?
◎日によって、夕には調理補助が2人いることもあり、1人の作業量が減るわけだから、作成可能なはず。
◎夕の調理補助は優遇されていて、とても不公平。
だから、夕も調理補助が行うようにするべきという訴えだった。
私は早番専門で、遅番以降の仕事はよく知らないので黙って聞いていたが、マニュアルを見ると、同僚の訴えは事実だったので、確かに不公平を感じた。
すると上司Hは、
◎夕の調理補助は、勤務時間が短い中作業しているから忙しい。
(忙しいのは、夕の調理補助だけだってのかい?)
◎本当はもっと作業時間をギリギリまで遅く設定したいけれど、考慮して今の時間で設定している。
(いやまず時間設定と考慮する前に、厨房業務やってみよ。ギリギリ推しでいって、新人の教育やトラブルに対処するのは誰よ?)
◎厨房のことは私は関係ない
(あーあ、投げちゃった。あーあ。)
などと言い出し、同僚の訴えに答えたのは最初だけで、徐々に手が震える程感情的になって、例の如くまた話が逸れていった。
1つ正しておきたいのは、[夕の調理補助は勤務時間が短い中作業しているから忙しい]という点。
調理補助の勤務時間を参考に計算してみたが、朝出勤して朝食配膳までが約2時間、昼は洗浄作業を終えてから昼食配膳までが約2時間半、夕は出勤して夕食配膳までが約2時間15分。決して朝・昼の作業時間より短いワケではないし、出勤から配膳・下膳・洗浄までの作業量は、朝・昼と全く変わらない。
なので、夕の調理補助の勤務時間そのものは4時間と短いが、栄養食・お茶ゼリーの作成をさせない理由にはならない。
ただ夕は最後なので、床・排水溝清掃があるため、朝・昼より作業が1点多い。しかし2人で行うものだし、狭い厨房なので、そこまで時間がかかるものではないと思われる。
同僚の訴えに答えてはいたようだが、なかなか説得力に欠ける理由だった。
上司Hは数字が好きで、計算が得意だ。自分でマニュアルを作っておいて、作業時間も量もほぼ変わらないことに気づかなかったのだろうか。もしくは、口の上手い夕の調理補助の人に、うまく丸め込まれた可能性もある。口で負けたことはないのでは?
とにかく、この正しい訴えに対抗する理由は浮かばず、上司Hは話を逸らし、しまいにゃ[厨房のことは私は関係ない]と言い放った。
その言葉を聞いて、大ベテランの同僚は、
「じゃあ入ってこないで。」
と返した。会心の一撃だった。
上司Hもさすがに驚いたのか、一瞬言葉に詰まった後、顔を歪めて、
「・・・入ってこないで?」
と聞き返した。同僚はうんと頷いて、始終冷静に対応していた。
それからずっと上司Hは手を震わせて、感情的に全く関係ないことを言いたい放題言っていた。
この日もまた、同僚の意見を受け入れず、上司Hが一方的に喋り倒して終わった。
同僚はその時、初めて上司Hの滅茶苦茶な言動と感情的な姿を見て、その日から上司Hと真面目に話すのを諦めた。
この一件があるまで、もしかしたら会話相手が私だから噛み合わないのかもしれないと思っていた。
しかし、結局は正論だろうと何を述べようと、相手が誰であろうと、自分が決めたことに対する否定・反抗・ワガママといった歪んだ解釈をしているのか、上司Hは全く受け入れなかった。そして、すぐに取り乱して話が逸れていくため、全く話にならなかった。
上司Tに意見した時は、[いやぁ~それはダメでしょう。]と、ダメな理由も述べずに否定的リアクションが返ってきた。時々珍しく[あーそれいいですね。]と、その場だけ話を合わせる事があっても、実際どんなに良い意見でも取り入れることはなかった。
2人とも、部下の意見を受け入れる受け皿が無いに等しく、そもそも受ける機能自体備わっておらず、自分の脳内でひらめいたアイデア・判断しか肯定しないので、当然考えは自己都合的でコロコロ上下左右に転げ回るため、部下からの支持率は0。
もう辞任してくださ~い!いや、成仏してくださ~い!
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