両親が勇者と魔王だなんて知らない〜平民だからと理不尽に追放されましたが当然ざまぁします〜

コレゼン

文字の大きさ
上 下
38 / 101
第3章 暗黒世界編

第38話 適正検査

しおりを挟む
「よーし、よしよし」

 巨大なトカゲのような二足歩行の生き物。
 乾燥地帯や暑さに強く、馬よりも走行スピードが早い。
 ただ寒さに弱いため、冬に一定気温以上寒くなる地域では用いられない乗り物。
 スピンドールと呼ばれるその生き物に俺と、ミミ、ソーニャはそれぞれ乗り込んでいる。

 俺たちはラグーン大陸最初の港町ミズラに昨晩一泊して今出発しようとしている。

 ミミは乗ったことがあるようだが、俺とソーニャは初めての乗り物。
 鞍と鐙が手綱がある。操縦法は馬と同じらしい。
 表皮は今は冷たいくらいだが、変温動物のはずなので砂漠などにいけば温かくなるのだろう。

「よし、じゃあ出発しよう! まずは砂漠の最初のオアシスの町、ウェールズまで!」

 俺がそういうとそれぞれ荷物を積んだスピンドールは一斉に走り出す。
 スピンドールのその足腰はまるでバネのように、軽快に地面を蹴り出してそのスピードを上げていく。

 風を切って進んでいくそのスピードが気持ちよく楽しい。
 今はまだ緑豊かな風景だが山脈を超えると一変、砂漠地帯となるらしかった。
 早朝に出発して到着は夕方前を予定してる。
 長丁場になるので途中でいくつか休憩を挟むつもりだ。



 -- ミミ視点 --

 遂にラグーン大陸までたどり着いてしまった。
 故郷のエルフの里まではまだ遠いが、このまま順調にいけばたどり着くだろう。

 スピンドールに乗りながら、今朝見た悪夢について思い出す。
 そんな悪夢を見たのは家出した実家に近づいているからであろうか。
 その悪夢の元になった過去のトラウマについてミミは思い出す。


「それではミカエルさんの適正については…………おめでとうございます! 召喚師になります!」

 適性検査の会場。
 おおーーーっと歓声が上がる。
 1年に一度開かれる検査で里の広場で大々的に開催されている。
 ミミも適正検査を受けるために両親と妹のララと共に訪れていた。
 次々と適正検査者の賢者によって適正が検査されて発表されている。

「おい、あれ、王女さまの……」
「ミミ様とララ様……」
「お二人はどんな……」

 私とララを認めた民衆たちによって囁き声で噂話がされる。
 王族である自分とララの適性検査に対する民衆の注目度は高かった。

 父と母、二人とも魔術師としての適正を持っていた。
 更に一族の種族はハイエルフ。早く魔術師として認められて夢だった魔法を習いたい。

「次は王女ミミ様」

 呼ばれて壇上に上がる。
 高鳴る鼓動と期待。
 適正を判定する賢者がミミに手をがざして鑑定を行う。

「王女ミミ様の適正は…………」

 静まり返る会場。
 両親たちの期待の目。
 緊張に息を飲む。

「…………か……か、格闘士です」

 どよめく会場。
 私はその言葉に思わず自分の耳を疑った。
 格闘士? ハイエルフの両親の娘の自分が?

「格闘士って何かの間違いじゃ……?」

 母も動揺を隠せずに尋ねる。

「……間違いございません。ミミ様の適正は格闘士、魔法に対する適正はございません」

 頭を抱える両親。
 ざわつく民衆たち。
 私の頭は真っ白になった。
 だって、自分はハイエルフで……両親は魔法に適正があって……当然、自分も魔法が使えて……なのに……なのに……。

「えー、続きまして王女ララ様の鑑定に移らせて頂きます」

 咳払いを一つして賢者は次の適正検査を促す。

 壇上を下を向いて降りる。
 現実が受け止められない。
 途中ララは不安げな表情をして私とすれ違うが、私はそれに反応する余裕もなかった。
 両親の元へたどり着くが、二人とも下を向いて暗い表情をしており、私にかける言葉が見つからないようだった。

「王女ララ様の適正は…………なんと! 大賢者です! ララ様は激レア適正の大賢者です!」

 会場は大きな歓声に包まれる。

「すごい! 大賢者だって!」
「流石は王族!」
「やっぱりハイエルフの種族はすごいわね」

 あちこちからララに対する賞賛の声が上がる。
 両親の顔を見ると、先程の自分の結果の時とは打って変わって、満面の笑みで戻ってきたララを迎え入れている。
 喜び合い抱き合う両親とララ。

 その光景を少し離れた所から眺める自分。
 両親と妹が喜び合う様を直視できずに下を向く。
 暗い感情が胸から沸き起こってきた。

「…………なんで……私だけ……」

 私は会場の誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。


 その日の晩、寝床について寝ようとした時の事。
 両親が珍しく喧嘩して怒鳴り合う声が聞こえる。

「もうミミには無理よ! 魔法がつかえないものがエルフの里の女王なんて……」
「そんな事言っても今更だ、ミミにはお前が将来女王になるって伝えていたんだぞ!」

 どうやら自分の事について両親が喧嘩している。
 私が女王になれない? どういう事だろう。

「あなたにも分かっているでしょ。魔法適正がないものがエルフの女王となれない理由を。これからはララに英才教育を施すわ」
「…………くそ! 今までやって来た事が全部、無駄じゃないか!」
「しょうがないでしょ。ミミに魔法適正がないなんて誰にも予想できないじゃない」

 女王になるのは一つの夢だった。
 王族の長女に生まれ、エルフの里の慣習に従って自分が将来女王になる。
 憧れの女王のお母さん。
 それがこんな想像だにしない理由でダメになるなんて……。

 それに私だって好きで魔法適正がない訳じゃない。
 まさかの青天の霹靂だったのだ。

[今までやって来た事が全部、無駄じゃないか]

 お父さんが言ったその言葉がショックで脳裏に焼き付いて離れない。
 そんな事を言われても私は知らない。
 両親だけは味方でいてくれると思っていたのに……。

「なんで……私だけ……こんな目に……」

 濡らした枕の上でそう小さな声で呟く。


 こうしてその適正検査の日はミミにとって人生最悪の日となったのだった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

「専門職に劣るからいらない」とパーティから追放された万能勇者、教育係として新人と組んだらヤベェ奴らだった。俺を追放した連中は自滅してるもよう

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「近接は戦士に劣って、魔法は魔法使いに劣って、回復は回復術師に劣る勇者とか、居ても邪魔なだけだ」  パーティを組んでBランク冒険者になったアンリ。  彼は世界でも稀有なる才能である、全てのスキルを使う事が出来るユニークスキル「オールラウンダー」の持ち主である。  彼は「オールラウンダー」を持つ者だけがなれる、全てのスキルに適性を持つ「勇者」職についていた。  あらゆるスキルを使いこなしていた彼だが、専門職に劣っているという理由でパーティを追放されてしまう。  元パーティメンバーから装備を奪われ、「アイツはパーティの金を盗んだ」と悪評を流された事により、誰も彼を受け入れてくれなかった。  孤児であるアンリは帰る場所などなく、途方にくれているとギルド職員から新人の教官になる提案をされる。 「誰も組んでくれないなら、新人を育て上げてパーティを組んだ方が良いかもな」  アンリには夢があった。かつて災害で家族を失い、自らも死ぬ寸前の所を助けてくれた冒険者に礼を言うという夢。  しかし助けてくれた冒険者が居る場所は、Sランク冒険者しか踏み入ることが許されない危険な土地。夢を叶えるためにはSランクになる必要があった。  誰もパーティを組んでくれないのなら、多少遠回りになるが、育て上げた新人とパーティを組みSランクを目指そう。  そう思い提案を受け、新人とパーティを組み心機一転を図るアンリ。だが彼の元に来た新人は。  モンスターに追いかけ回されて泣き出すタンク。  拳に攻撃魔法を乗せて戦う殴りマジシャン。  ケガに対して、気合いで治せと無茶振りをする体育会系ヒーラー。  どいつもこいつも一癖も二癖もある問題児に頭を抱えるアンリだが、彼は持ち前の万能っぷりで次々と問題を解決し、仲間たちとSランクを目指してランクを上げていった。  彼が新人教育に頭を抱える一方で、彼を追放したパーティは段々とパーティ崩壊の道を辿ることになる。彼らは気付いていなかった、アンリが近接、遠距離、補助、“それ以外”の全てを1人でこなしてくれていた事に。 ※ 人間、エルフ、獣人等の複数ヒロインのハーレム物です。 ※ 小説家になろうさんでも投稿しております。面白いと感じたらそちらもブクマや評価をしていただけると励みになります。 ※ イラストはどろねみ先生に描いて頂きました。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく
ファンタジー
 「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。  さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。  失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。  彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。  そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。  彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。  そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。    やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。  これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。  火・木・土曜日20:10、定期更新中。  この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

勇者パーティー追放された解呪師、お迎えの死神少女とうっかりキスして最強の力に覚醒!? この力で10年前、僕のすべてを奪った犯人へ復讐します。

カズマ・ユキヒロ
ファンタジー
解呪師マモル・フジタニは追放された。 伝説の武器の封印を解いたあとで、勇者パーティーに裏切られて。 深い傷と毒で、死を待つばかりとなったマモル。 しかし。 お迎えにきた死神少女との『うっかりキス』が、マモルを変えた。 伝説の武器の封印を解いたとき、体内に取り込んでいた『いにしえの勇者パーティー』の力。 その無敵の力が異種族異性とのキスで覚醒、最強となったのだ。 一方で。 愚かな勇者たちは、魔王に呪いを受けてしまう。 死へのタイムリミットまでは、あと72時間。 マモル追放をなげいても、もう遅かった。 マモルは、手にした最強の『力』を使い。 人助けや、死神助けをしながら。 10年前、己のすべてを奪った犯人への復讐を目指す。 これは、過去の復讐に燃える男が。 死神少女とともに、失ったはずの幼なじみや妹を取り戻しながら。 結果的に世界を救ってしまう、そんな物語。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

処理中です...