21 / 101
第2章 魔術書争奪編
第21話 祭の開幕
しおりを挟む
「それではこれよりエデンバラ王国、第53回目の祭を開催いたします」
エデンバラ王国の内務大臣のその挨拶の後、ドラが打ち鳴らされる。
会場には国王を筆頭に三公。そして王侯貴族たち。
そして前に招待されていると言っていたように、大賢者ベイリーの姿もあった。
他にも祭への参加貴族など、そうそうたる面々が集結していた。
「陛下より、祭の内容の発表がございます。それでは陛下、お願いいたします。」
「ふむ……、では今回の祭の内容を発表する。今回の祭はグラン・グリモワール大奥義書の取得とその封印の解除だ」
国王のその発表を聞くとよほど驚いたのか、ベイリーと三公の一人のオスカーは席から思わず、といった感じで立ち上がった。
「なんじゃ? なにかあるのか?」
「いえ……」
国王の問いかけに二人は特に答えず着席する。
彼らはそのグラン・グリモワール大奥義書、とかいう書物について何か知っているのだろうか。
「……まあよい。このグラン・グリモワール大奥義書。伝説の冥魔法について書かれていると言い伝えられている。そして魔神が封印されているとも。この魔術書は神聖教徒都市の神聖博物館の地下に特別所蔵されている」
冥魔法は闇魔法の上位魔法と言われている伝説の魔法だ。
恐ろしく強力、という事ぐらいしか後世には伝わっていない。
それに魔神とは。ほんとにSSランクの依頼と変わらないな。
「グラン・グリモワール大奥義書の取得は当然、神聖教徒協会の許可なんか取ってないよな」
「ええ、そうね。過去の祭でもこんな無茶ぶりばかりで……最近ではレッドドラゴンの爪の入手。ダークエルフの至宝聖水の入手。地獄の大穴の探索などよ。ここ数十年は確か、祭の成功者はいなかったはず」
これに参加者同士の争いも加わる。
まさに聞いていた通りの命がけの競争だ。
「期限は本日を含めて、3日以内とする。移動には王国のワイバーンを貸与する」
期限を聞き、会場がざわつく。
「ワイバーンを使えれば神聖博物館まで半日あればいけるでしょうけど……。時間との戦いになりそうね」
魔術書は力押しで奪い取るのか。
それとも交渉して取得するのか。
力押しで奪い取る場合は、お尋ね者になってしまう可能性がある。
交渉して取得できるようなものなのか、現状では分からない。
そもそも神聖博物館で当該の魔術書が、どのような扱いになっているのかも不明だ。
その辺りを調査しながらの対応。
それに封印解除の問題もある。
クリスティンが言った通り、時間との戦いになりそうだ。
「わしからは以上じゃ。10年ぶりの祭。存分に楽しみ、そして各々、その力を示すがよい」
そういうと国王は会場から退出した。
「では、この後は私が引き継ごう」
大きい体に大きい顔。そして大きな声。
眼力が強く、自信に満ちた顔をしている。
年は40代くらいだろうか。
三公の席に座っている一人の男がそう言って引き継いだ。
「彼が三公筆頭のシルヴァーノ = サンジェルマンよ。三公の中でも最も古い歴史を持つ貴族でかつ、一番力も強い貴族になるわ」
シルヴァーノは周りを見渡しながら話しを続ける。
「それでは祭の出席者について、それぞれ代表に自己紹介をしてもらおう。まずは……クレメント、お前からいけ」
「は!」
クレメントと呼ばれた、これまた体格のいい男が立ち上がった。
貴族らしい正装をしている。
「始めまして、私、クレメント = オラフと申します。サーベント地方で公爵をしております。この度はよろしくお願いいたします」
クレメントはそう言って深々と頭を下げた。
これから命がけの争いが始まるというのに、その態度にはいささか拍子抜けさせられる。
その挨拶は、周りを煙に巻くためにそうしているというよりは、クレメント本人の真面目で少しずれた性格が現れたのかなとも思う。
「彼はシルヴァーノの子飼いよ」
なるほど、三公筆頭のシルヴァーノの子飼いはクレメントね。
「次にラーナ」
「はい」
一人の女性、おそらく俺と、そう年は変わらないのではないかという、10代と思わしき女性が立ち上がった。
魔女のような帽子に真っ黒な服。
帽子を深く被って、下を向きながら話す為、表情が少し確認しずらい。
「えっと、私はラーナといいます。錬金と調合が得意で、えっと、えっと、錬金研究が好きです」
シャイなのだろう。
終始下を向いて恥ずかしそうにラーナは話していた。
彼女もなんか少しずれてる気がする。
それに錬金と調合が好き、って戦闘向きじゃないよな。
傍らにこれまた全身黒のローブで、顔部分まで大半覆ってる奴がいるけど、あいつが戦闘担当なのだろうか。
「彼女は三公カトリーナ = エリザベートの子飼いね。カトリーナは現三公では唯一の女性当主。彼女の家も100年の歴史がある名家なんだけど、ラーナは貴族でもないし。正直なんで彼女がカトリーナの子飼いとして選ばれて、今回送り込まれたのか分からないわ」
カトリーナ = エリザベートは真黒のドレスを纏い、三公の席に優雅に鎮座している。
30代は過ぎているだろうが、まだ十分に美しく、その胸元があいたドレス姿は妖艶な魅力を醸し出していた。
それにこれは俺の直感だけど、彼女は頭が切れそうだ。
彼女の眼差しとただずまいで、俺はそう思った。
「次にブルーノ = コーマック」
「はい」
一見してそうと分かる豪奢な魔術師のローブと杖を携えた男。
こいつの事は知っている。
クリスティンの仇敵の三公の子飼いだ。
「ブルーノと申します。王国の宮廷筆頭魔術師をしております。また貴族としても子爵を承っております。以後お見知りおきを」
宮廷筆頭魔術師か。
確かにその内に秘めた魔力は相当な物がありそうだ。
「彼はもう言うまでもないわね。私の仇敵、オスカーの子飼いよ。確か貧民街出身で若い時にオスカーに見出されて、宮廷筆頭魔術師にまで上り詰めたわ。そして平民から貴族にも。ただすべて正攻法ではないはず。そしてオスカーの汚れ仕事も随分と彼はこなしているはずよ」
なるほど。才覚を持った手段を選ばぬ野心家。
といった所だろうか。なかなか手強そうな相手だ。
「次にクリスティン = マクルーハン」
「はい」
「クリスティンと申します。カラカス地方で公爵をしております。今回の祭はこちらの専属冒険者のランスを中心に挑みます。よろしくお願いいたします」
思いがけずに紹介された俺もペコリと挨拶をする。
「次にシュラウド」
「はい」
ふてぶてしい顔をした男が返事をして立ち上がる。
粗野なその感じと、そして腰にかけた剣と軽装な鎧。
おそらく冒険者だろう。
「えー、シュラウドです。冒険者やってます。よろしく」
シュラウドはそれだけ話すと席を座った。
よほど腕が立つのか。
よくその感じで王侯貴族の推薦をもらえたなあと思う。
「次にミネルバ」
「はい」
女性で腰に鞭をつけている。鞭使いだろうか。
上半身は腹部部分が丸見えの軽装。
紫色をした髪を後ろにまとめ、スリットの開いた、スカートを履いている。
傍らにはゴリラのような男が一人。
上半身が異様に発達しており、手も長い。
女性のあの鞭で調教されてたりして。
「ミネルバです。サーカスの団長をしております。この度は祭という光栄な場に参加でき、光栄です。よろしくお願いします」
まさかのサーカスの団長だった。
という事はあの鞭でほんとに調教しているのか。
最も祭に参加するぐらいなんだから戦闘スキルも高いのだろうな。
「以上、6組の参加者が今回の祭の参加者となる。参加者のみんなは何か質問はあるか?」
「魔術書の封印の解除方法は何か判明していますか?」
ミネルバが問いかける。
「判明していない。なので封印の解除方法を探すのもの含めてだな」
「了解しました」
「一つ質問ですが、参加者のクリスティンでしたっけ。子供が主体となるって言っていましたが、今回のような重要な任務、大丈夫ですかね?」
質問主はシュラウドだ。
くそう。たぶんクリスティンが若いのと、俺が少年というのとでなめてるな。
「同感です。ただ彼はかわいい顔をしているので、私は調教してあげてたいですけどね」
会場からドッと笑いが起きる。
今度はミネルバだった。
シュラウドにミネルバだな。
覚えてろよお前ら。
「今回の参加者は各王侯貴族と三公が推薦したという事を忘れるな」
三公筆頭のシルヴァーノのその言葉で会場はシーンとなった。
「質問は他には?…………もういいか? 特になければ打ち切るが…………、よし! それでは、諸君、精一杯奮闘し、祭の勝者、大公を目指したまえ!」
シルヴァーノのその言葉で祭の開会式はお開きとなる。
参加者、見学者たちはそれぞれ会場を後にしていく。
念の為、祭の参加者グループをまとめておくと。
俺達を含めて6組。
クレメント = オラフ
サーベント地方で公爵
三公筆頭のシルヴァーノ = サンジェルマンの子飼い
ラーナ
錬金と調合が得意な10代と思しき女性
三公カトリーナ = エリザベートの子飼い
ブルーノ = コーマック
宮廷筆頭魔術師で子爵
三公オスカー = ヴィルヘルムの子飼い
シュラウド
冒険者
王侯貴族の推薦
ミネルバ
サーカス団長
王侯貴族の推薦
そして最後に俺たちだ。
それぞれは代表だけの紹介だったので、それぞれに仲間がまだいるだろう。
「よう、ランス」
俺はその声の方を振り向くとそこには見知った老人。
ベイリーが立っていた。
「やあ、ベイリー。ほんとに特別顧問なんだな」
「じゃあなんじゃと思っておったんじゃ。全く……それにしてもグラン・グリモワール大奥義書とはな」
「なんか驚いてたけど、知ってるのか?」
「まあ、そりゃあ伝説の魔術書じゃからな。知っている人間は多くはないがの。まさか神聖教徒協会が所蔵しているとはな」
「なんだそのクソジジイと知り合いか、お前ら」
宮廷筆頭魔術師のブルーノが突然、横槍を入れてきた。
「クソジジイとはご挨拶じゃな。宮廷魔術師の特別顧問としてお前も鍛えてやってたじゃろう」
「うるせぇ! そんなのは過去の事だ! ふん、じじいも含めてお前らにはまた後で引導を渡してやるよ」
そう言うとブルーノはその場から去っていった。
「ベイリー、あんた、宮廷魔術師の特別顧問もしてたのか?」
「うん? まあ、昔ちょっとな……」
底が見えないじいさんだ。
ブルーノとは過去、何かあったのだろう。
「まあ、頑張れ。封印の解除以外はお前なら問題なかろう」
「封印の解除について、なにか知ってるのか?」
ベイリーは俺のその問いには答えずに、片手を上げて挨拶をして、その場から去っていった。
「じゃあ私たちも行きましょう」
クリスティンのその言葉で俺たちも神聖教徒都市への移動の準備に向かうこととなった。
エデンバラ王国の内務大臣のその挨拶の後、ドラが打ち鳴らされる。
会場には国王を筆頭に三公。そして王侯貴族たち。
そして前に招待されていると言っていたように、大賢者ベイリーの姿もあった。
他にも祭への参加貴族など、そうそうたる面々が集結していた。
「陛下より、祭の内容の発表がございます。それでは陛下、お願いいたします。」
「ふむ……、では今回の祭の内容を発表する。今回の祭はグラン・グリモワール大奥義書の取得とその封印の解除だ」
国王のその発表を聞くとよほど驚いたのか、ベイリーと三公の一人のオスカーは席から思わず、といった感じで立ち上がった。
「なんじゃ? なにかあるのか?」
「いえ……」
国王の問いかけに二人は特に答えず着席する。
彼らはそのグラン・グリモワール大奥義書、とかいう書物について何か知っているのだろうか。
「……まあよい。このグラン・グリモワール大奥義書。伝説の冥魔法について書かれていると言い伝えられている。そして魔神が封印されているとも。この魔術書は神聖教徒都市の神聖博物館の地下に特別所蔵されている」
冥魔法は闇魔法の上位魔法と言われている伝説の魔法だ。
恐ろしく強力、という事ぐらいしか後世には伝わっていない。
それに魔神とは。ほんとにSSランクの依頼と変わらないな。
「グラン・グリモワール大奥義書の取得は当然、神聖教徒協会の許可なんか取ってないよな」
「ええ、そうね。過去の祭でもこんな無茶ぶりばかりで……最近ではレッドドラゴンの爪の入手。ダークエルフの至宝聖水の入手。地獄の大穴の探索などよ。ここ数十年は確か、祭の成功者はいなかったはず」
これに参加者同士の争いも加わる。
まさに聞いていた通りの命がけの競争だ。
「期限は本日を含めて、3日以内とする。移動には王国のワイバーンを貸与する」
期限を聞き、会場がざわつく。
「ワイバーンを使えれば神聖博物館まで半日あればいけるでしょうけど……。時間との戦いになりそうね」
魔術書は力押しで奪い取るのか。
それとも交渉して取得するのか。
力押しで奪い取る場合は、お尋ね者になってしまう可能性がある。
交渉して取得できるようなものなのか、現状では分からない。
そもそも神聖博物館で当該の魔術書が、どのような扱いになっているのかも不明だ。
その辺りを調査しながらの対応。
それに封印解除の問題もある。
クリスティンが言った通り、時間との戦いになりそうだ。
「わしからは以上じゃ。10年ぶりの祭。存分に楽しみ、そして各々、その力を示すがよい」
そういうと国王は会場から退出した。
「では、この後は私が引き継ごう」
大きい体に大きい顔。そして大きな声。
眼力が強く、自信に満ちた顔をしている。
年は40代くらいだろうか。
三公の席に座っている一人の男がそう言って引き継いだ。
「彼が三公筆頭のシルヴァーノ = サンジェルマンよ。三公の中でも最も古い歴史を持つ貴族でかつ、一番力も強い貴族になるわ」
シルヴァーノは周りを見渡しながら話しを続ける。
「それでは祭の出席者について、それぞれ代表に自己紹介をしてもらおう。まずは……クレメント、お前からいけ」
「は!」
クレメントと呼ばれた、これまた体格のいい男が立ち上がった。
貴族らしい正装をしている。
「始めまして、私、クレメント = オラフと申します。サーベント地方で公爵をしております。この度はよろしくお願いいたします」
クレメントはそう言って深々と頭を下げた。
これから命がけの争いが始まるというのに、その態度にはいささか拍子抜けさせられる。
その挨拶は、周りを煙に巻くためにそうしているというよりは、クレメント本人の真面目で少しずれた性格が現れたのかなとも思う。
「彼はシルヴァーノの子飼いよ」
なるほど、三公筆頭のシルヴァーノの子飼いはクレメントね。
「次にラーナ」
「はい」
一人の女性、おそらく俺と、そう年は変わらないのではないかという、10代と思わしき女性が立ち上がった。
魔女のような帽子に真っ黒な服。
帽子を深く被って、下を向きながら話す為、表情が少し確認しずらい。
「えっと、私はラーナといいます。錬金と調合が得意で、えっと、えっと、錬金研究が好きです」
シャイなのだろう。
終始下を向いて恥ずかしそうにラーナは話していた。
彼女もなんか少しずれてる気がする。
それに錬金と調合が好き、って戦闘向きじゃないよな。
傍らにこれまた全身黒のローブで、顔部分まで大半覆ってる奴がいるけど、あいつが戦闘担当なのだろうか。
「彼女は三公カトリーナ = エリザベートの子飼いね。カトリーナは現三公では唯一の女性当主。彼女の家も100年の歴史がある名家なんだけど、ラーナは貴族でもないし。正直なんで彼女がカトリーナの子飼いとして選ばれて、今回送り込まれたのか分からないわ」
カトリーナ = エリザベートは真黒のドレスを纏い、三公の席に優雅に鎮座している。
30代は過ぎているだろうが、まだ十分に美しく、その胸元があいたドレス姿は妖艶な魅力を醸し出していた。
それにこれは俺の直感だけど、彼女は頭が切れそうだ。
彼女の眼差しとただずまいで、俺はそう思った。
「次にブルーノ = コーマック」
「はい」
一見してそうと分かる豪奢な魔術師のローブと杖を携えた男。
こいつの事は知っている。
クリスティンの仇敵の三公の子飼いだ。
「ブルーノと申します。王国の宮廷筆頭魔術師をしております。また貴族としても子爵を承っております。以後お見知りおきを」
宮廷筆頭魔術師か。
確かにその内に秘めた魔力は相当な物がありそうだ。
「彼はもう言うまでもないわね。私の仇敵、オスカーの子飼いよ。確か貧民街出身で若い時にオスカーに見出されて、宮廷筆頭魔術師にまで上り詰めたわ。そして平民から貴族にも。ただすべて正攻法ではないはず。そしてオスカーの汚れ仕事も随分と彼はこなしているはずよ」
なるほど。才覚を持った手段を選ばぬ野心家。
といった所だろうか。なかなか手強そうな相手だ。
「次にクリスティン = マクルーハン」
「はい」
「クリスティンと申します。カラカス地方で公爵をしております。今回の祭はこちらの専属冒険者のランスを中心に挑みます。よろしくお願いいたします」
思いがけずに紹介された俺もペコリと挨拶をする。
「次にシュラウド」
「はい」
ふてぶてしい顔をした男が返事をして立ち上がる。
粗野なその感じと、そして腰にかけた剣と軽装な鎧。
おそらく冒険者だろう。
「えー、シュラウドです。冒険者やってます。よろしく」
シュラウドはそれだけ話すと席を座った。
よほど腕が立つのか。
よくその感じで王侯貴族の推薦をもらえたなあと思う。
「次にミネルバ」
「はい」
女性で腰に鞭をつけている。鞭使いだろうか。
上半身は腹部部分が丸見えの軽装。
紫色をした髪を後ろにまとめ、スリットの開いた、スカートを履いている。
傍らにはゴリラのような男が一人。
上半身が異様に発達しており、手も長い。
女性のあの鞭で調教されてたりして。
「ミネルバです。サーカスの団長をしております。この度は祭という光栄な場に参加でき、光栄です。よろしくお願いします」
まさかのサーカスの団長だった。
という事はあの鞭でほんとに調教しているのか。
最も祭に参加するぐらいなんだから戦闘スキルも高いのだろうな。
「以上、6組の参加者が今回の祭の参加者となる。参加者のみんなは何か質問はあるか?」
「魔術書の封印の解除方法は何か判明していますか?」
ミネルバが問いかける。
「判明していない。なので封印の解除方法を探すのもの含めてだな」
「了解しました」
「一つ質問ですが、参加者のクリスティンでしたっけ。子供が主体となるって言っていましたが、今回のような重要な任務、大丈夫ですかね?」
質問主はシュラウドだ。
くそう。たぶんクリスティンが若いのと、俺が少年というのとでなめてるな。
「同感です。ただ彼はかわいい顔をしているので、私は調教してあげてたいですけどね」
会場からドッと笑いが起きる。
今度はミネルバだった。
シュラウドにミネルバだな。
覚えてろよお前ら。
「今回の参加者は各王侯貴族と三公が推薦したという事を忘れるな」
三公筆頭のシルヴァーノのその言葉で会場はシーンとなった。
「質問は他には?…………もういいか? 特になければ打ち切るが…………、よし! それでは、諸君、精一杯奮闘し、祭の勝者、大公を目指したまえ!」
シルヴァーノのその言葉で祭の開会式はお開きとなる。
参加者、見学者たちはそれぞれ会場を後にしていく。
念の為、祭の参加者グループをまとめておくと。
俺達を含めて6組。
クレメント = オラフ
サーベント地方で公爵
三公筆頭のシルヴァーノ = サンジェルマンの子飼い
ラーナ
錬金と調合が得意な10代と思しき女性
三公カトリーナ = エリザベートの子飼い
ブルーノ = コーマック
宮廷筆頭魔術師で子爵
三公オスカー = ヴィルヘルムの子飼い
シュラウド
冒険者
王侯貴族の推薦
ミネルバ
サーカス団長
王侯貴族の推薦
そして最後に俺たちだ。
それぞれは代表だけの紹介だったので、それぞれに仲間がまだいるだろう。
「よう、ランス」
俺はその声の方を振り向くとそこには見知った老人。
ベイリーが立っていた。
「やあ、ベイリー。ほんとに特別顧問なんだな」
「じゃあなんじゃと思っておったんじゃ。全く……それにしてもグラン・グリモワール大奥義書とはな」
「なんか驚いてたけど、知ってるのか?」
「まあ、そりゃあ伝説の魔術書じゃからな。知っている人間は多くはないがの。まさか神聖教徒協会が所蔵しているとはな」
「なんだそのクソジジイと知り合いか、お前ら」
宮廷筆頭魔術師のブルーノが突然、横槍を入れてきた。
「クソジジイとはご挨拶じゃな。宮廷魔術師の特別顧問としてお前も鍛えてやってたじゃろう」
「うるせぇ! そんなのは過去の事だ! ふん、じじいも含めてお前らにはまた後で引導を渡してやるよ」
そう言うとブルーノはその場から去っていった。
「ベイリー、あんた、宮廷魔術師の特別顧問もしてたのか?」
「うん? まあ、昔ちょっとな……」
底が見えないじいさんだ。
ブルーノとは過去、何かあったのだろう。
「まあ、頑張れ。封印の解除以外はお前なら問題なかろう」
「封印の解除について、なにか知ってるのか?」
ベイリーは俺のその問いには答えずに、片手を上げて挨拶をして、その場から去っていった。
「じゃあ私たちも行きましょう」
クリスティンのその言葉で俺たちも神聖教徒都市への移動の準備に向かうこととなった。
10
お気に入りに追加
1,510
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい
斑目 ごたく
ファンタジー
「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。
さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。
失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。
彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。
そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。
彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。
そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。
やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。
これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。
火・木・土曜日20:10、定期更新中。
この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
勇者パーティー追放された解呪師、お迎えの死神少女とうっかりキスして最強の力に覚醒!? この力で10年前、僕のすべてを奪った犯人へ復讐します。
カズマ・ユキヒロ
ファンタジー
解呪師マモル・フジタニは追放された。
伝説の武器の封印を解いたあとで、勇者パーティーに裏切られて。
深い傷と毒で、死を待つばかりとなったマモル。
しかし。
お迎えにきた死神少女との『うっかりキス』が、マモルを変えた。
伝説の武器の封印を解いたとき、体内に取り込んでいた『いにしえの勇者パーティー』の力。
その無敵の力が異種族異性とのキスで覚醒、最強となったのだ。
一方で。
愚かな勇者たちは、魔王に呪いを受けてしまう。
死へのタイムリミットまでは、あと72時間。
マモル追放をなげいても、もう遅かった。
マモルは、手にした最強の『力』を使い。
人助けや、死神助けをしながら。
10年前、己のすべてを奪った犯人への復讐を目指す。
これは、過去の復讐に燃える男が。
死神少女とともに、失ったはずの幼なじみや妹を取り戻しながら。
結果的に世界を救ってしまう、そんな物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」
「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」
「ま、まってくださ……!」
「誰が待つかよバーーーーーカ!」
「そっちは危な……っあ」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる