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第50話 王国滅亡

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「じゃあ、エスペリア王への手出しをお前は黙って見てるんだな」
「ええ! 私はあなたについていくわ!!」
「じゃあ……」
「ひぃ」

 俺は王に向き直ると王は、その表情を恐怖に染めた。

重力破壊グラビティ・クラッシュ!』

 突如、王を中心とした空間が歪み始め、体が重力に引き寄せられるように床に押し付けられていく。
 最初は弱い重力を徐々に強めていく。

「ゔゔゔゔ…………やめ…………やめてくれぇええええええ!!!」

 王は立っていられなくなる。
 号泣しながら懇願する。

「罪なき人々の苦痛を少しでもその身に感じて死んでいけ」

 更に重力を強める。
 すると王の体を構成する骨が次々と折れ始める。

「うぎゃああああああああああ!!!! た、助けてぇえええええええ!!!!」

 更に強める。

「………………」 

 最後は肉塊も残らず、王がいた場所に血溜まりが残された。

「や、やったわ、ユウ! これでエスペリア王国は私たちのものよ! 後は邪魔な帝国からの刺客を始末して……」
「いや、お前なんかの提案に乗るわけないだろ。お前もこのまま死んでももらうよ」
「嘘、騙したの私を!」

 いや、どういう思考回路だったらそんなことになるんだと思う。

「…………ふふふ」 

 セリーナはうつむきながら笑う。

「何がおかしい?」
「私はあなたには勝てないわ。だけどあなたに負けることもない」
「…………どういうことだ?」

 気が付くといつの間にかセリーナを覆うようにバリアが形成されていた。

時空壁タイムスペース・ウォールよ。一切の物理攻撃、魔法攻撃を無効化する時空によって構成された壁によって私は守られている。これで、なん人たりとも指一本であっても私に触れることはできないわ。残念だったわね! 奈落からここまで私に復讐しに頑張った来たのにねぇ!!」

 セリーナは勝ち誇ったように笑う。

「一つ聞きたいんだが……」
「何?」

 俺は前から疑問に思っていたことをセリーナにぶつける。

「異世界召喚は2回目なんだよな。前に召喚した人たちはどうなったんだ?」
「ふふふふふ……」

 セリーナは堪えられないといった感じで笑う。

「全員奈落のダンジョンに突き落としたわ。下賤な異世界人なんて、用がなくなったら始末するに決まってるじゃない。戦いが終わったら貴族に取り立ててやるなんて嘘をよく信じられるものよね」
 「そうか……」

 俺はセリーナに向かって、右手を掲げる。

「往生際悪く、魔法で攻撃するの? ほら、やってごらんなさいよ」

 セリーナは笑いながら煽る。

『無』

 俺はセリーナの右足に向かって念じる。

「…………どうしたの、魔法発動しないの? って、え!?」

 セリーナは無くした右足に気づいて倒れる。

「痛っ! …………いやぁあああああああ!! なんで私の右足がないのよぉおおおお!!!」
「俺の無能のスキルだけどな……」
「血が血が止まらない…………いや、いや、助けて…………」

 パニックになっているセリーナを無視して続ける。

「無の能力。すべてを無に化す、スキルだったんだよ」
「………………」

 セリーナは化け物を見るような、恐怖の視線を俺に向ける。

「じゃあ、私の時空壁タイムスペース・ウォールは…………」
「俺の無能の前では無力みたいだな」
「嘘、嘘よ…………そんなの嘘よぉおおおお!!!!」

『無』

 今度はセリーナの右腕を無に化す。

「ああああああ、私の右腕がぁあああああ!!! お願い、お願い、助けてぇ!! なんでもするから! どんなことでも言うことを聞くからぁ!!」

 セリーナは泣きわめく。

「いいのか? 俺は下賤な異世界人なんだけど」
「…………あなたは特別よ」
「そんなこと言って用済みになったら殺すんだろ?」
「…………い、いや…………お願い……」

 俺は奈落へと追放された日のことを思い出す。
 
『無』

 今度はセリーナすべてを無に化した。
 しばらくの間、主を失った玉座の間に静寂が流れた。
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