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第21話 お泊り
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「この度はお嬢様がお世話になりまして、誠にありがとうございました。私、ライトハート家のメイド長をしております、ノラと申します」
そう言うと小柄な老婆は深々と頭を下げる。
「いえいえ、こちらこそお世話になっています」
俺は慌てて頭を下げる。
帝都についたはいいが、泊まる所をこれから探すとフェリシアに伝えた所、部屋が空いてるからと言われ、ノコノコと付いてきたはいいが、想像の10倍立派な邸宅で若干引いている所だ。
貴族だとは聞いていたけど、ここまでなのかよ。
「お嬢様のお付きになって早十数年。あんなに小さかったお嬢様が、このように未来の旦那様を連れて来る日が来るとは感無量でございます!」
「誰が未来の旦那さまよ! ユウは泊まる所がないっていうから連れてきただけよ、婆や」
「それでは一体いつになったら結婚相手を連れてくるのですか?」
「そ、そんなの分からないわよ……」
「ユウ様。こう見えてお嬢様、中々良い体をしております」
「エロ親父みたいな言い方でユウを誘惑するの止めて!」
「それにまだ男を知らない――」
「わーわー! は、早くユウに部屋を案内しないさいよ! ユウは今日、うちに泊まりに来たの!」
「なるほど、お泊りに。それではご案内が必要でございますね」
ノラは邸宅に向き合う。
「あちらに見えるのがユウ様のお部屋になります。日当たりが良好で日常に必要な一通りは取り揃えております。何か必要なものがございましたら、何なりとご申しつけくださいませ」
「あ、ありがとうございます。でも、本当にお構いなく。最悪雨風さえ凌げれば自分は大丈夫なので」
「それなら馬小屋にでも、となりますがそういう訳にはいきません。ライトハート家に滞在のお客様には最高のもてなしをさせていただくのが、我々使用人一同の務めでございます」
そう言うとノラはまた深々とお辞儀する。
ふざけてはいるようだけど、やっぱり貴族に仕えるメイドさんだ。
ちゃんとメイドとしてしっかりしてるんだなと感心する。
「婆や、今日の夕食は何?」
「メインは子羊の香草包み焼きになります」
「私、あれ大好き! ユウの分もあるでしょ?」
「もちろんでございます。ではご案内の続きをさせていただきますね」
ノラは再度邸宅に向き合う。
「お嬢様のお部屋は2階の東の端になります。ユウ様の客室とは少し距離はありますが、忍び足で向かえばよろしいかと。お嬢様は大体夜の10時頃にはベットに入りますので、夜這いにくるならそれくらいがおすすめです」
「なんの案内してんのよ! ちょっと冗談だからね、ほんとに来たりしたら怒るからね!」
冗談に決まっているのに、フェリシアは顔を真っ赤にして牽制する。
こういう反応が面白いからノラもフェリシアのことをからかっているのだろう。
「嫌よ嫌よも好きのうちってやつでございます」
「押すな押すなってやつと一緒ですかね?」
「よく分かっていらっしゃる!」
「「いえーい」」
俺とノラが二人で両手をあわせて、キャッキャとやっていると――
「ちょっと、ユウ。ほんとに来たら……殺すからね?」
「ゔっ……」
俺は奈落のダンジョンでも感じたことのないような殺気を感じる。
「それではお食事の準備ができております。邸宅内にどうぞ」
ノラに促された俺はフェリシアと共に邸宅内へと向かう。
「ほんとに分かってるの?」
「分かってるよ、冗談だって」
「それなら……いいけど」
その間はなんだと思いながら、玄関を跨ごうとしたその時――
俺は後方から強い殺気を感じて振り返る。
しかし、殺気を感じた方向には誰もおらず、側にはノラがいて、微笑みながら佇んでいるだけだった。
「何か?」
ノラが俺に問いかける。
「いえ……」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
「じゃあ、早く食事にいきましょ!」
気のせいじゃないと思うんだけどなあ。
俺は何か嫌な予感を感じながらも、フェリシアにつれられて食事へと向かった。
そう言うと小柄な老婆は深々と頭を下げる。
「いえいえ、こちらこそお世話になっています」
俺は慌てて頭を下げる。
帝都についたはいいが、泊まる所をこれから探すとフェリシアに伝えた所、部屋が空いてるからと言われ、ノコノコと付いてきたはいいが、想像の10倍立派な邸宅で若干引いている所だ。
貴族だとは聞いていたけど、ここまでなのかよ。
「お嬢様のお付きになって早十数年。あんなに小さかったお嬢様が、このように未来の旦那様を連れて来る日が来るとは感無量でございます!」
「誰が未来の旦那さまよ! ユウは泊まる所がないっていうから連れてきただけよ、婆や」
「それでは一体いつになったら結婚相手を連れてくるのですか?」
「そ、そんなの分からないわよ……」
「ユウ様。こう見えてお嬢様、中々良い体をしております」
「エロ親父みたいな言い方でユウを誘惑するの止めて!」
「それにまだ男を知らない――」
「わーわー! は、早くユウに部屋を案内しないさいよ! ユウは今日、うちに泊まりに来たの!」
「なるほど、お泊りに。それではご案内が必要でございますね」
ノラは邸宅に向き合う。
「あちらに見えるのがユウ様のお部屋になります。日当たりが良好で日常に必要な一通りは取り揃えております。何か必要なものがございましたら、何なりとご申しつけくださいませ」
「あ、ありがとうございます。でも、本当にお構いなく。最悪雨風さえ凌げれば自分は大丈夫なので」
「それなら馬小屋にでも、となりますがそういう訳にはいきません。ライトハート家に滞在のお客様には最高のもてなしをさせていただくのが、我々使用人一同の務めでございます」
そう言うとノラはまた深々とお辞儀する。
ふざけてはいるようだけど、やっぱり貴族に仕えるメイドさんだ。
ちゃんとメイドとしてしっかりしてるんだなと感心する。
「婆や、今日の夕食は何?」
「メインは子羊の香草包み焼きになります」
「私、あれ大好き! ユウの分もあるでしょ?」
「もちろんでございます。ではご案内の続きをさせていただきますね」
ノラは再度邸宅に向き合う。
「お嬢様のお部屋は2階の東の端になります。ユウ様の客室とは少し距離はありますが、忍び足で向かえばよろしいかと。お嬢様は大体夜の10時頃にはベットに入りますので、夜這いにくるならそれくらいがおすすめです」
「なんの案内してんのよ! ちょっと冗談だからね、ほんとに来たりしたら怒るからね!」
冗談に決まっているのに、フェリシアは顔を真っ赤にして牽制する。
こういう反応が面白いからノラもフェリシアのことをからかっているのだろう。
「嫌よ嫌よも好きのうちってやつでございます」
「押すな押すなってやつと一緒ですかね?」
「よく分かっていらっしゃる!」
「「いえーい」」
俺とノラが二人で両手をあわせて、キャッキャとやっていると――
「ちょっと、ユウ。ほんとに来たら……殺すからね?」
「ゔっ……」
俺は奈落のダンジョンでも感じたことのないような殺気を感じる。
「それではお食事の準備ができております。邸宅内にどうぞ」
ノラに促された俺はフェリシアと共に邸宅内へと向かう。
「ほんとに分かってるの?」
「分かってるよ、冗談だって」
「それなら……いいけど」
その間はなんだと思いながら、玄関を跨ごうとしたその時――
俺は後方から強い殺気を感じて振り返る。
しかし、殺気を感じた方向には誰もおらず、側にはノラがいて、微笑みながら佇んでいるだけだった。
「何か?」
ノラが俺に問いかける。
「いえ……」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
「じゃあ、早く食事にいきましょ!」
気のせいじゃないと思うんだけどなあ。
俺は何か嫌な予感を感じながらも、フェリシアにつれられて食事へと向かった。
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