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序章

第20話 借金返済の強制執行!!

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「ああ、そういえばいたんですね、丁度いい」

「何が丁度いいじゃ! 貴様シーザーを倒したからといって調子にのるなよ? ここはわしの領地。即ちわしが法である。シーザー並びに領兵たちの一切の罪はわしが認めん!」

 領兵たちの表情に余裕が戻る。

「レオン……」

 その声の方向を振り向くとそこには、その瞳に怒りの炎を灯したライラとニーナの姿があった。

「世界一の商会をつくる。これは私の夢っすけど、それは諦めてお尋ねものになってもいいっすよ。こんなクソ野郎を野放しにしてはおけねーっす!」

「私もライラに賛成です。サラちゃんたちをあんな…………このまま泣き寝入りなんて絶対に許すことはできません!」

 ライラとニーナは強い決意を感じさせられる眼差しを俺に向ける。

「わ、わしを傷つけてみろ! 貴族に手を出したりしたら、お前らはダガール王国のお尋ねものになって一生日陰ものになるぞ!」

「…………フレドリック伯爵、あなた今、お金の工面に困っているらしいですね。アクセレイ公爵に金貨100枚を借りているとか。今回の凶行もその金貨100枚を工面するためでしょう?」

 これはライラに事前に調査してもらって入手していた情報であった。

「な、なんでそれを? そうだがお前には関係ないことだろう!」

 ライラとニーナからも俺に疑問の目が向けられる。

「後、私が貸した金貨50枚。貸付日から5ヶ月程度経過していますので、利息も含めて貸付額は金貨200枚をこえています。耳揃えて返してもらえますか? 今すぐに」

「は……は、はははははっ! 何をいうかと思えば平民ごときがわしに貸した金を返せなど、返すわけがないだろうがぁ!」

 仮に借りた金を返さなくても貸主が平民だと貴族相手には泣き寝入りするしかない。の話だが。

「私には経験値貸与という自身の経験値を貸し出すことができるスキルがありまして、その付属スキルに強制執行というスキルがあります。この強制執行というスキル。貸した経験値を返さなければ強制的に返済させることができるというスキルでして、」

「ええーい、うるさいうるさい! わしは平民と違って暇ではないんじゃ。もう帰るぞ! お前らの処分は追って沙汰を伝える!」

 そういうとフレドリックはレオンたちを無視して馬車の方へと歩みを始める。

「この強制執行というスキルの強制返済ができる対象は実は経験値だけではないのです」

「…………なんだと?」

 フレドリックはその歩みを止めて恐る恐るという感じでレオンを振り返る。

「私が貸与したすべてに対して強制執行は可能です。これでフレドリック伯爵の現在のご状況、理解頂けましたか?」

「………………」

 フレドリックはその目を見開きプルプルと震える。

「ま、待ってくれ返済は。今この状態で金貨200枚もの借金を追えば、わしは終わってしまう!」

「借りたものを返す。これは人としての道理でしょう? それに待ってくれ、ですか。まだご自身の立場を理解していないように思えるのですが」

 フレドリックに現金化できる資産がほとんどないこともライラの調査で判明していた。住んでいる豪華な邸宅も実は借り物だ。

「ま、待ってください。お願いします、レインさん。今、借金を負うとわしは……」

「アクセレイ公爵への借金の期日は3日後でしたっけ? 返せないとどうなるのでしょうか?」

 フレドリックはその顔を更に青くする。フレドリックは土下座の姿勢でレインにすがるように、

「お、お願いします。この通りです。レオンさん、いや、レオン様! 借金を待って頂けたらなんでもします! お願いします。お願いします。お願いします」

 フレドリックは何もいっていないのにレオンの靴を舐め始めた。

「レロレロレロ……レオン様、お願いします……レロレロレロ……レオン様……レロレロレロレロ」

 フレドリックはその目は充血させて薄っすら涙を浮かべながら必死にレオンの靴を舐め続ける。

「その願いは…………」

 フレドリックはレオンを注視し、ゴクリと唾を飲む音、

「聞き入れられませんね。それでは……」

 レオンはその手をフレドリックにかざす。

「いぃやだぁああああああーーーーーーちぃきしょうううううううーーーーーーッ!!!!!」

 夜空にフレドリックの絶叫が響き渡る中、

 強制執行フォースエグゼ!! 

 フレドリックから実態を持たない金色に輝く何かが俺に注ぎ込まれる。しばらくするとその輝きは消え去り、月明かりのみの暗がりに戻る。

 俺は自身のステータスを確認する。うん、所持金が金貨200枚程増加している。一方、フレドリックのステータスを確認すると彼の所持金は金貨マイナス155枚となっている。

「あ、あぁああああああああっ! こんなぁ、こんなぁああああああ!!」

 フレドリックの悲痛な叫び声が夜空に飲み込まれていく。
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