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序章

第19話 マジックアロー

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「これで俺が嘘をいっていないことが分かったか? あ、ちなみに今のは50%の力だ」

 ギリっとシーザーは歯ぎしりをし、先ほどの余裕の表情から一転してその表情を険しくさせる。

「おい、あれを持ってこい!」
 
 なんだあれって?

 シーザーは配下の人間がもってきた長い剣を受け取る。長尺で人の身長くらいありそうな程の長剣だ。

「おれに奥の手をつかわせるとはな」

 シーザーは長剣を抜き去る。その剣身は赤黒でまるで血の色のような不気味さがあった。その剣自体がオーラを発しているかのようで明らかに叙事詩エピック級以上はありそうな雰囲気をかもしだしている。
 
「どうだ、美しいだろう、この血の色のような剣身を見てみろ」

 シーザーはまるでその剣自体に魅入られているような怪しげな視線をその長剣におくる。

「名はダインスレイフという。血を求めると言われており、血を吸うことによって血の色に少しずつ近づいていっているともいわれている魔剣だ。しかも伝説レジェンダリー級のな!」

 ピクリと俺は反応する。伝説レジェンダリー級だと? この前の拳闘士の男といい、そんなホイホイ出現するようなレア度の武器ではないぞ? それこそ国辺りで数個単位のレア度のはずだ。

「おい、お前らわかってると思うが巻き添えをくらいたくなかったら下がってろよ」

 シーザーは配下たちにそう指示を出した後におもむろに長剣を上段に構える。ん? まだ俺との間合いは随分とあるがそんな長剣を構えて素早く移動できるの…………

 俺がそう思っていた、その刹那――

 シーザーが振り下ろした剣から凄まじい斬撃波が生じる。斬撃波はその進行方向の地面やらなにやらをえぐりとりながら俺に迫りくる。俺は咄嗟に横っ飛びに避ける。斬撃波はその軌跡を地面へと残していった。

 今のは咄嗟によけれはしたが……。

「単撃なら回避できる。それなら連撃ではどうだ? 飛び道具を持っているのはお前だけの特権じゃあねえんだよ!」

 シーザーが振るうダインスレイフによって様々な角度から迫りくる連撃。俺はそれを避けるが、一部の剣撃はまるで意思を持ったかのように俺に角度を変えて向かってくる。

「ぐっ!」

 俺は傷を負ってしまう。
 
「「レイン!」」

 心配したニーナとライラが声を上げる。

「ひゃあーーーはっはっはっ! どうだぁ、ダインスレイフの誘導剣撃の威力はぁ!! 誘導剣撃こそがこの武器を最強足らしめている理由だぁ!!」

 俺は弓と矢を背中にかけて戻す。

「なんだ諦めたのかあ? 命乞いをしたいのなら俺の足を舐めろ! 俺を喜ばせるように全力で媚を売れ! そうすれば考えてやらんでもないぞ?」

「勘違いするな、そっちが奥の手というなら俺も奥の手を出してやる」

「何ぃ!? 負け惜しみを…………なら死ねぇ!!」

 その時――――俺の右手と左手が光り輝き、右手に弓が左手には弓矢が発現される。

 シーザーはまたダインスレイフによって連撃を繰り出す――――がそのダインスレイフから繰り出された斬撃波が爆発音と眩い閃光とともに次々と消え去ってゆく。

「はあはあ…………一つも届いていないだと?」

「これが弓師がレベル80以上で発現するスキル、マジックアローだ」

「ぐぬぬぬぬぅ」

 シーザーは苦々しげに表情を歪まされる。

「少女たちに謝罪を行い、今までお前たちが奴隷化してきたものたちにも償いをしろ! 心を入れ替えてこれから一生かけてその罪を償うというのであれば考えてやる。だが、そうじゃなければ…………お前のようなクズは今ここで殺す!」

「うるせぇえええええええッ!! 俺を殺すだあッ! やれるもんならやってみやがれ、クソ野郎があッ!! 次が正真正銘最後の奥の手だ。さあ、魔剣ダインスレイフよ、俺の血を吸え!」

 ダインスレイフの剣の柄の部分から突然、シーザーの手を貫いて針が突き出る。そしてその針はシーザーの血を吸い取っているようであった。魔剣ダインスレイフの禍々しさが増す。禍々しい漆黒のオーラをシーザーが纏う。

「ニーナ! ライラ! ハントと少女たちを連れて少しこの場から離れてくれ!!」

 その言葉の後、俺は浮遊魔法で空中に浮かぶ。少し上空に到達して地上を見下ろす形になった時にシーザーは、

「地上戦では敵わないとみて、空中に逃げやがったか! だが、魔剣ダインスレイフの誘導斬撃はどこまででも敵を追ってゆく。空中に逃げた所で逃げれやしない! 次の一撃で決めてくれるわ!!!」

 俺は別に空中に逃げたわけではなかった。空中に浮かんだ理由はシーザーが逃げ場がない状態にしてマジックアローの攻撃を加えるためであった。

 シーザーは更に自分の血を魔剣ダインスレイフに吸わしている。シーザーが纏う漆黒のオーラーは最早一つの炎が大きな火柱をたてるように沸き上がっている。ダインスレイフが振動するかのように黒い輝きを放ちはじめ、俺に斬撃波を放つ為にシーザーは構えに入る。
 
 一方の俺もマジックアローを構える。矢の先、矢じりに凄まじい魔力を集中させる。地上のニーナやライラたちの目にはマジックアローの弓矢とその矢からの眩いばかりの輝きはまるで、夜の夜空に小さな太陽が発生したようにも映る。

「てめぇを殺した後にはメスガキたちの陵辱の再開だ。その穴が使い物にならなくなるほどに犯しまくってやる!! その後には、お前の仲間の女二人も穴という穴を犯しまくっってやるぞ!! その後は惨たらしく殺してやる!! 生きてきたことを後悔するほどの苦痛を与えてなあッ!!!」

「黙れ、このゴミクズ野郎がぁッ!! 俺の命に変えても絶対にそんなことはさせないッ!! うぉおおおお゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙ッーーーー!!!!!」

 シーザーが魔剣ダインスレイフを振るって斬撃波を放つのと同時。

 俺からも眩い光を纏ったマジックアローの矢が解き放たれる。

 カッッッッッッッ!!!

 凄まじい衝撃音と衝撃波とともに辺りは眩い閃光に包まれる。それは目を開けていられないほどの輝きだった。



 ………………それから数秒程度経った後だろうか。

 俺は恐る恐るといった感じで目を開ける。

 その俺の眼下にはまるで隕石が落ちたかのように穿ったクレーターが形成されていた。そして墓標を示すかのように地面に突き刺さった魔剣ダインスレイフは見えるが、シーザーの姿は跡形もなく消え去っている。

「ひ、ひ、ひぃーーーーー!」

 残った領兵たちはその結果に悲鳴をもらす。俺は空中からゆっくりと地面に降りる。領兵を回し見てみる。その中にはシーザーの仇を討とうというものはおらず、全員が戦意を喪失しているようであった。

「それじゃあ、お前らみんな死にたくなければ刑に服して罪を償え」

「何をいっておる?」

 そこには腹立しげな表情をした貴族で領主でもあるフレドリックの姿があった。
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