上 下
42 / 70

第42話 忘れ得ぬ宴

しおりを挟む
「グレイス様……! あなたこそが我らの真の守護者です!」

 一人の僧が震える声でそう言うと、続いて他の僧たちも次々に口を開く。

「ラグナ郷をお救いくださり、ありがとうございます! あなたがいなければ、我々はどうなっていたか……!」
「リュウゲンの暴走を止め、本当に……本当に感謝しています!」

 僧たちは次々と俺に深々と頭を下げ、感謝の言葉を伝える。
 中には感極まって涙を浮かべる者もいた。

「よくぞナディア様への侮辱を晴らしてくださいました。グレイス様、あなたこそが神託の英雄に相応しい方です……!」

 シオンも立ち上がり疲れた顔を見せながらも、満足そうな微笑みを浮かべていた。
 さらに周囲の僧たちは、まるで神話の英雄のように讃える。

「我々の伝説に新たな英雄が加わりました……グレイス様こそ、真にラグナ郷を守護する存在!」
「かつての伝説の英雄たちと肩を並べるお方が、こうして我らの前に現れてくださるとは……!」

 僧たちの称賛の声はやむことがなく、敬意と感謝の言葉が次々に溢れていく。
 ギョクレイ大僧正が歩み寄り、穏やかな表情で頭を下げた。

「グレイス様、あなたが私たちラグナ郷を救ったこと、心から感謝します。あなたこそ、まさに我々が待ち望んでいた英雄です。神託はあなたの登場を予言していました……」

 大僧正はグレイスを見つめながら、静かに言葉を続ける。

「彼方より来たる 若き英雄 剣を掲げ 竜と出会い、ラグナに新たな風を吹かせる」

 短く神託を唱えた大僧正の目には、感謝と敬意が込められていた。

「あなたのような存在を迎えられたことは、我々にとって何よりの幸運です。グレイス様の力が、この地に光をもたらしてくれたのです!」

 僧たちから盛大な拍手が沸き起こる。
 傍らにはいつの間にかエリーゼもいて、俺に尊敬の目を向けながら拍手を送っていた。

「それでは元々の予定だった歓待といきましょう! 盛大に英雄の誕生を祝いましょう!! この日をラグナ郷の特別な日にしたいと思います!!」

 僧たちの拍手が鳴り響く中、ラグナ郷は英雄グレイスの勝利と誕生を祝う宴の準備に取り掛かり、やがて大広間は歓声と笑顔で溢れかえる。
 大僧正の号令のもと、次々と美しい装飾が施され、香り豊かな料理が並び始めた。

 大広間には煌びやかな灯りが灯され、テーブルには豪華な料理と飲み物が並んでいる。
 僧たちは次々と杯を捧げ、英雄としての功績を讃える。

「グレイス様、このワインは特別なものです。ラグナ郷で最も古く、竜神への祈りの際に使われるものです。ぜひお召し上がりください!」

 俺は杯を受け取り、一口飲むと、僧たちが再び歓声を上げる。
 ワインの年代ものの美味しさとかよく分からないけど、これは確かにコクみたいなのがあって美味しい気がする。
 宴の雰囲気はどんどん盛り上がり、やがて僧たちも次々と杯を交わし、踊り始める者まで現れる。

 エリーゼも楽しげに笑いながら、俺の隣に座っている。

「英雄の誕生の宴、まさにこの場にふさわしいわね!」

 エリーゼは優しく微笑み、俺の手を握る。

「ありがとう、エリーゼ。冒険の旅路の束の間の楽しみだ。今日は目一杯楽しんでこう!」

 宴が進むにつれ、僧たちは順番に俺に声をかけ、その勇敢な姿を讃え、時には冗談を交わしながら盛り上がっていく。
 僧たちだけでなく、町の人々も集まり、外では舞い踊る姿も見えるほどの賑わいとなる。

 そして、音楽が流れ始め、誰かが提案する。

「さあ、今夜はグレイス様のために特別な舞を披露しよう!」

 舞手たちが揃い、美しい舞を披露し始めると、会場全体がその優雅な動きに引き込まれる。
 ラグナ郷の伝統的な舞は、竜と英雄の物語を描き、まさに今夜の宴にふさわしい内容だった。

 宴は夜遅くまで続き、笑顔と笑い声が絶え間なく響き渡る。
 俺は皆に囲まれ、祝福と感謝の言葉が尽きることはなかった。
 ラグナ郷の人々は、新たな伝説の英雄を心に刻み、生涯忘れ得ぬ夜を過ごすのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!

こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。 ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。 最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。 だが、俺は知っていた。 魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。 外れスキル【超重量】の真の力を。 俺は思う。 【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか? 俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。

無能な悪役王子に転生した俺、推しの為に暗躍していたら主人公がキレているようです。どうやら主人公も転生者らしい~

そらら
ファンタジー
【ファンタジー小説大賞の投票お待ちしております!】 大人気ゲーム「剣と魔法のファンタジー」の悪役王子に転生した俺。 王族という血統でありながら、何も努力しない怠惰な第一王子。 中盤で主人公に暗殺されるざまぁ対象。 俺はそんな破滅的な運命を変える為に、魔法を極めて強くなる。 そんで推しの為に暗躍してたら、主人公がキレて来たんだが? 「お前なんかにヒロインと王位は渡さないぞ!?」 「俺は別に王位はいらないぞ? 推しの為に暗躍中だ」 「ふざけんな! 原作をぶっ壊しやがって、殺してやる」 「申し訳ないが、もう俺は主人公より強いぞ?」 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル総合週間ランキング50位入り。1300スター、3500フォロワーを達成!

「おっさんはいらない」とパーティーを追放された魔導師は若返り、最強の大賢者となる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

平山和人
ファンタジー
かつては伝説の魔法使いと謳われたアークは中年となり、衰えた存在になった。 ある日、所属していたパーティーのリーダーから「老いさらばえたおっさんは必要ない」とパーティーを追い出される。 身も心も疲弊したアークは、辺境の地と拠点を移し、自給自足のスローライフを送っていた。 そんなある日、森の中で呪いをかけられた瀕死のフェニックスを発見し、これを助ける。 フェニックスはお礼に、アークを若返らせてくれるのだった。若返ったおかげで、全盛期以上の力を手に入れたアークは、史上最強の大賢者となる。 一方アークを追放したパーティーはアークを失ったことで、没落の道を辿ることになる。

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

転生したらやられ役の悪役貴族だったので、死なないように頑張っていたらなぜかモテました

平山和人
ファンタジー
事故で死んだはずの俺は、生前やりこんでいたゲーム『エリシオンサーガ』の世界に転生していた。 しかし、転生先は不細工、クズ、無能、と負の三拍子が揃った悪役貴族、ゲルドフ・インペラートルであり、このままでは破滅は避けられない。 だが、前世の記憶とゲームの知識を活かせば、俺は『エリシオンサーガ』の世界で成り上がることができる! そう考えた俺は早速行動を開始する。 まずは強くなるために魔物を倒しまくってレベルを上げまくる。そうしていたら痩せたイケメンになり、なぜか美少女からモテまくることに。

ゲーム序盤で死ぬモブ炎使いに転生したので、主人公に先回りしてイベントをクリアしたらヒロインが俺について来た

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで日間・週間・月間総合1位獲得!ありがとうございます。 社畜として働き、いつものように寝て起きると、俺はゲーム『ブレイブクエストファンタジー』とよく似た世界のモブ『ゲット』に転生していた。俺は物語序盤で盗賊に襲われて死ぬ運命だ。しかも主人公のダストは俺を手下のようにこき使う。 「主人公にこき使われるのはもうごめんだ!死ぬのもごめんだ!俺がゲームのストーリーを覆してやる!」 幼いころから努力を続けていると、ゲームヒロインが俺に好意を寄せている? いや、気のせいだ。俺はしょせんモブ! 今は死亡フラグを解決する!そして次のステップに進む! 一方、同じく転生したダストは主人公キャラを利用して成り上がろうとするが、ダンジョンのお宝はすでに無く、仲間にするはずの美人キャラには見限られ、努力を嫌ったことでどんどん衰退していく。

処理中です...