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瞳に奪われる
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体が揺れて、ゆりかごのように穏やかだ。
ゆっくり目を開けると、すぐ近くにイヴの顔があった。
イヴにお姫様抱っこされているみたいで、何処かに運ばれていた。
そうだ、腕…怪我をしていたんだと腕に触れる。
あんなに深く切ったから、まだ痛むと思っていたが痛みはなかった。
もぞもぞと体を動かしていたから、イヴの足が止まった。
「起こしちゃった?」
「イヴ、腕治してくれた?」
「舐めて綺麗にしたから大丈夫」
イヴはそう言っていて、俺はどんな反応をすればいいんだろう。
舐めて治療してくれたんだろうけど、恥ずかしいな。
俺の血でイヴの部屋を汚してしまったし、起きて掃除しないといけないのにイヴに運んでもらってるし…
イヴの足が動き出して、イヴの部屋に入った。
シーツや床も血で汚れているんだろうし、このままじゃイヴが寝れない。
イヴの肩を軽く押したが、イヴは俺を離す気配がない。
「イヴ、掃除するから降ろして」
「掃除?」
「俺の血で汚れちゃったし、掃除しないとイヴが寝れないだろうし」
「血なんて何処にもないよ」
イヴは不思議な事を言っていて、俺も目を丸くさせる。
そんなわけがない、だって俺の記憶には…
周りを見渡しても、そこには血の一滴もない綺麗なベッドがあった。
そこには元々なにかあったとは思えないほど綺麗だ。
俺の腕とか手から血が出て、それで…
シャツの前を開けて肩を見たり手のひらを見た。
何処にもない、だから俺が血を出した証拠がない。
あれ、俺…血を出してイヴを止めて…止めて……なんで止めたんだっけ。
イヴの顔が近付いてきて、額が触れて至近距離で見つめ合う。
イヴの瞳が黄色くなって、俺はイヴの綺麗な瞳をジッと見つめた。
暖かい光に包まれて、安心している…俺の夢だったのかな。
ベッドに降ろされて、俺の上にイヴが覆い被さってきた。
「ユーリ、疲れてるんじゃないか?」
「……疲れてる?そうなのかな」
「仕事のしすぎだよ…ゆっくりおやすみ…ユーリ」
イヴの声がスローモーションになって、心地よくなる。
まただ、この声を聞くと俺は何もかも頭の中が真っ白になる。
そうだ、血が綺麗でもまだ黒いシミは残ってるから掃除しないと…
必死に争うように首を横に振って「まだやり残した仕事が…」と言った。
最後まで言う前に、目蓋を閉じたイヴにキスされた。
舌を撫でられて、吸われて必死に抵抗していた理性は呆気なく崩れていった。
ゆっくりと瞳を開いたイヴの目は赤くなっていた。
俺が覚えているのはそこだけだった。
信じていた記憶はイヴによって否定される。
俺の記憶なのに、俺の記憶じゃない…そんな違和感を覚える。
でも、目を覚ましたら違和感は違和感でなくなる。
それは本当にいい事なのか、それすらも分からない。
でも、そう思っている記憶すら…覚えてはいないんだろうな。
「ユーリの記憶は俺が力を注いで綺麗に消すから、嫌な記憶からも守ってあげる…ユーリ」
ゆっくり目を開けると、すぐ近くにイヴの顔があった。
イヴにお姫様抱っこされているみたいで、何処かに運ばれていた。
そうだ、腕…怪我をしていたんだと腕に触れる。
あんなに深く切ったから、まだ痛むと思っていたが痛みはなかった。
もぞもぞと体を動かしていたから、イヴの足が止まった。
「起こしちゃった?」
「イヴ、腕治してくれた?」
「舐めて綺麗にしたから大丈夫」
イヴはそう言っていて、俺はどんな反応をすればいいんだろう。
舐めて治療してくれたんだろうけど、恥ずかしいな。
俺の血でイヴの部屋を汚してしまったし、起きて掃除しないといけないのにイヴに運んでもらってるし…
イヴの足が動き出して、イヴの部屋に入った。
シーツや床も血で汚れているんだろうし、このままじゃイヴが寝れない。
イヴの肩を軽く押したが、イヴは俺を離す気配がない。
「イヴ、掃除するから降ろして」
「掃除?」
「俺の血で汚れちゃったし、掃除しないとイヴが寝れないだろうし」
「血なんて何処にもないよ」
イヴは不思議な事を言っていて、俺も目を丸くさせる。
そんなわけがない、だって俺の記憶には…
周りを見渡しても、そこには血の一滴もない綺麗なベッドがあった。
そこには元々なにかあったとは思えないほど綺麗だ。
俺の腕とか手から血が出て、それで…
シャツの前を開けて肩を見たり手のひらを見た。
何処にもない、だから俺が血を出した証拠がない。
あれ、俺…血を出してイヴを止めて…止めて……なんで止めたんだっけ。
イヴの顔が近付いてきて、額が触れて至近距離で見つめ合う。
イヴの瞳が黄色くなって、俺はイヴの綺麗な瞳をジッと見つめた。
暖かい光に包まれて、安心している…俺の夢だったのかな。
ベッドに降ろされて、俺の上にイヴが覆い被さってきた。
「ユーリ、疲れてるんじゃないか?」
「……疲れてる?そうなのかな」
「仕事のしすぎだよ…ゆっくりおやすみ…ユーリ」
イヴの声がスローモーションになって、心地よくなる。
まただ、この声を聞くと俺は何もかも頭の中が真っ白になる。
そうだ、血が綺麗でもまだ黒いシミは残ってるから掃除しないと…
必死に争うように首を横に振って「まだやり残した仕事が…」と言った。
最後まで言う前に、目蓋を閉じたイヴにキスされた。
舌を撫でられて、吸われて必死に抵抗していた理性は呆気なく崩れていった。
ゆっくりと瞳を開いたイヴの目は赤くなっていた。
俺が覚えているのはそこだけだった。
信じていた記憶はイヴによって否定される。
俺の記憶なのに、俺の記憶じゃない…そんな違和感を覚える。
でも、目を覚ましたら違和感は違和感でなくなる。
それは本当にいい事なのか、それすらも分からない。
でも、そう思っている記憶すら…覚えてはいないんだろうな。
「ユーリの記憶は俺が力を注いで綺麗に消すから、嫌な記憶からも守ってあげる…ユーリ」
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