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お祝い
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目を覚ますと、視界には色が付いていて戻ってきたんだと分かる。
周りを見渡すと、イヴはいなくて…ベッドで横になる俺の膝の上に黒猫が座っていた。
黒猫は布で出来た袋を咥えていて、それを手に取った。
中身を見ると、丸いものが見えてそれを取り出す。
手のひらサイズのそれは水晶型の通信魔導機だった。
黒猫を見ると、役目が終わったと言いたげにその場で丸くなっていた。
イヴが黒猫に渡したのかな、本人がいないから真実は分からない。
分からないなら、本人に聞けばいい…これは連絡が取れる魔導機だから。
頭の中でイヴを思い浮かべて、水晶型の通信魔導機を握る。
水晶の中がだんだん光に満ち溢れてきて、輝いた。
繋がったのかな、と水晶型の通信魔導機に顔を近付けてみる。
「い、イヴ…聞こえる」
『聞こえるよ、ユーリ』
突然声が聞こえて、水晶の中に映像が浮かび上った。
そこは何処かの部屋のようで、イヴはなにかを書きながら俺のところに視線を向けていた。
仕事の邪魔をしてしまったから、通信を切ろうと思っていたら見透かしたみたいに『まだ消しちゃだめ』と言っていた。
イヴが机に向かって仕事をしているところを見るのが初めてで、食い入るように見つめる。
仕事のなにかをキリのいいところまで書き終わったのか、ペンを置いた。
イヴの手は水晶に触れているだけだが、それを超えて俺の頬に触れられているような気分になる。
「ユーリ、その通信魔導機気に入った?」
「俺…もらえないよ…高価なものじゃなくてももらう理由がない」
「理由ならあるよ」
イヴは俺をまっすぐと真剣に見つめて、口を開いた。
『ユーリ』
「え…?」
『誕生日おめでとう』
イヴにそう言われて、俺は忘れていた事を思い出した。
そうか、今日…俺の誕生日だったんだ。
家族と住んでいた時は祝ってくれたから覚えていたが、一人暮らしになってからすっかり忘れていた。
イヴに誕生日を教えたっけ、両親に教えてもらったのかな。
イヴは「誕生日プレゼントだったら受け取ってくれるよね」と笑っていた。
俺のためにプレゼントを選んでくれたイヴの気持ちを返すわけにはいかない。
…それに、正直もらえるとは思ってなかったから嬉しい。
「イヴ、ありがとう…大切にするね」
『俺以外に使ったらダメだよ』
「わ、分かった」
イヴと話しているとイヴの部屋の奥からノックする音が聞こえる。
イヴは後ろを気にもせず俺の方を向いてたわいもない話をしていた。
これ以上仕事の邪魔をしちゃいけないな、と思いイヴに「お仕事頑張ってね、美味しい料理作って待ってるから!」と手を振るとイヴは少しだけ不満そうな顔をしていた。
でも、俺に手を振り返してくれて水晶の中の映像は消えた。
プレゼントに見合う働きをイヴに見せようとやる気になってベッドから起き上がり、布団を干そうと持ち上げようとした。
俺は力を一切入れていないのに、布団が軽くなっていた。
いつもなら少し重くて大変なのに、今は手を添えているだけだった。
布団から手を離して、布団の下を覗き込むと黒猫が下から持ち上げていた。
黒猫の背中には小さく真っ黒な羽根が生えていてパタパタ動かしていた。
「黒猫くん、俺が持つから大丈夫だよ?」
「ニャア~」
黒猫は俺の言葉を無視して入り口に向かって、布団とドアがぶつかった。
慌ててドアを開けると黒猫はそのまま行ってしまった。
何処に運んだか分からないが、黒猫の後を付いて行く。
周りを見渡すと、イヴはいなくて…ベッドで横になる俺の膝の上に黒猫が座っていた。
黒猫は布で出来た袋を咥えていて、それを手に取った。
中身を見ると、丸いものが見えてそれを取り出す。
手のひらサイズのそれは水晶型の通信魔導機だった。
黒猫を見ると、役目が終わったと言いたげにその場で丸くなっていた。
イヴが黒猫に渡したのかな、本人がいないから真実は分からない。
分からないなら、本人に聞けばいい…これは連絡が取れる魔導機だから。
頭の中でイヴを思い浮かべて、水晶型の通信魔導機を握る。
水晶の中がだんだん光に満ち溢れてきて、輝いた。
繋がったのかな、と水晶型の通信魔導機に顔を近付けてみる。
「い、イヴ…聞こえる」
『聞こえるよ、ユーリ』
突然声が聞こえて、水晶の中に映像が浮かび上った。
そこは何処かの部屋のようで、イヴはなにかを書きながら俺のところに視線を向けていた。
仕事の邪魔をしてしまったから、通信を切ろうと思っていたら見透かしたみたいに『まだ消しちゃだめ』と言っていた。
イヴが机に向かって仕事をしているところを見るのが初めてで、食い入るように見つめる。
仕事のなにかをキリのいいところまで書き終わったのか、ペンを置いた。
イヴの手は水晶に触れているだけだが、それを超えて俺の頬に触れられているような気分になる。
「ユーリ、その通信魔導機気に入った?」
「俺…もらえないよ…高価なものじゃなくてももらう理由がない」
「理由ならあるよ」
イヴは俺をまっすぐと真剣に見つめて、口を開いた。
『ユーリ』
「え…?」
『誕生日おめでとう』
イヴにそう言われて、俺は忘れていた事を思い出した。
そうか、今日…俺の誕生日だったんだ。
家族と住んでいた時は祝ってくれたから覚えていたが、一人暮らしになってからすっかり忘れていた。
イヴに誕生日を教えたっけ、両親に教えてもらったのかな。
イヴは「誕生日プレゼントだったら受け取ってくれるよね」と笑っていた。
俺のためにプレゼントを選んでくれたイヴの気持ちを返すわけにはいかない。
…それに、正直もらえるとは思ってなかったから嬉しい。
「イヴ、ありがとう…大切にするね」
『俺以外に使ったらダメだよ』
「わ、分かった」
イヴと話しているとイヴの部屋の奥からノックする音が聞こえる。
イヴは後ろを気にもせず俺の方を向いてたわいもない話をしていた。
これ以上仕事の邪魔をしちゃいけないな、と思いイヴに「お仕事頑張ってね、美味しい料理作って待ってるから!」と手を振るとイヴは少しだけ不満そうな顔をしていた。
でも、俺に手を振り返してくれて水晶の中の映像は消えた。
プレゼントに見合う働きをイヴに見せようとやる気になってベッドから起き上がり、布団を干そうと持ち上げようとした。
俺は力を一切入れていないのに、布団が軽くなっていた。
いつもなら少し重くて大変なのに、今は手を添えているだけだった。
布団から手を離して、布団の下を覗き込むと黒猫が下から持ち上げていた。
黒猫の背中には小さく真っ黒な羽根が生えていてパタパタ動かしていた。
「黒猫くん、俺が持つから大丈夫だよ?」
「ニャア~」
黒猫は俺の言葉を無視して入り口に向かって、布団とドアがぶつかった。
慌ててドアを開けると黒猫はそのまま行ってしまった。
何処に運んだか分からないが、黒猫の後を付いて行く。
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