68 / 127
イヴ視点22
しおりを挟む
ユーリの寝顔を見つめて、本棚に向かって風の魔術を使うと一つの本が浮いてこちらにやってきた。
それを手に取り、ページを捲る。
ユーリが見ていた聖騎士伝説、俺は魔騎士が出てくる場面を読んだ。
魔物は魔騎士になるために、魔騎士を喰らい力を得る。
魔騎士は魔物を喰らいより強い力を得る…それは知っている。
幼少期から俺の周りには魔物がいた、なりそこないの魔騎士がいた。
俺の隙を伺い、喰らおうと狙ってくる。
魔物の力は正直いらないから、俺はほとんど殺している…ユーリを怖がらせる存在だから当然だ。
でも、何故ユーリも魔騎士のように魔物に襲われるのか。
まさかユーリも魔騎士?そんな気配は全然しない。
俺の傍にいるから、俺がユーリの心に入り込んだから魔騎士の力が少し目覚めたのかもしれない。
本をベッドに置いてユーリの寝顔を見つめる。
全部俺のものだ、誰にも渡さない…触れさせない……お前にも…
目線をユーリからユーリの隣で寝ている黒猫に向ける。
黒猫に手を伸ばすと、触れる事なく見えない結界が邪魔して通れない。
結界には術式というものがある。
どのくらいの魔術を使うとか、その力は人それぞれで…皆違う魔法陣の結界が出来る。
そしてこの黒猫の結界には見覚えがあった。
当然だ、俺の魔術結界の術式が使われているものだった。
使えるのは本人だけ、そうなるとこの黒猫の正体も見えてきた。
「……お前は、俺か」
「ニャー」
黒猫は立ち上がって、その場で背伸びしていた。
この黒猫は魔物、俺が生み出したものだ。
ユーリが心配で俺の中から魔騎士の力が漏れていた。
その時に俺の気持ちが具現化してしまった。
だからこの黒猫はユーリから離れないのだろう。
俺の代わりにユーリを守る、コイツも俺なんだ。
「…俺が…俺自身がユーリを守りたいのに、なんで…他の奴にユーリを守らせなきゃならないんだ」
いくらこの黒猫が俺だとしてもそんなの関係ない。
他の奴よりはマシというだけだ、ユーリの傍にいられるのは俺でなくてはならない。
…でも、現実的な話ではユーリとずっといるわけにはいかない。
ユーリを養うためには働かなくてはいけない、一番自由が多いのは騎士団だ……聖騎士の俺がそれ以外の仕事をさせてもらえると思えないけど…
ユーリの理想の俺になるために…
ユーリは何も分かっていない、俺は人のためにやっているわけではない。
ユーリのために俺は命を捧げているんだ。
それなのにユーリは俺の事より、あの女の名前を口にした。
こんなにユーリに尽くしているのに……あの女が聖女の方がいいのか?
聖騎士と聖女は力は違えど、立場は一緒だ。
ユーリを取られるくらいなら、俺はこの国の反逆者になってもユーリを取り戻す。
黒猫を掴み、黒猫は泥のように形が崩れる。
いつも魔物が死ぬ時のように砂になるわけではなく、俺の中に吸収された。
元は俺の一部だったんだ、当然だ。
俺のものだ、他人を見させないし見せない…俺とユーリの仲を引き裂く奴は俺が八つ裂きにしてやる、必ず…
俺が消した奴をユーリが覚えているから、ずっとユーリの記憶に残る………腹立たしい……腹立たしくて、死にそうだ。
やっぱり向き合ってじっくりお互いを理解して話し合うのは俺には向いていない。
そんなのんびりな事ばかりしていると今にもユーリが他の人に取られてしまう。
俺は俺のやり方でユーリを手に入れる、それが決して褒められるものではないとしても…
ユーリの口が動き、起きたのかと体を離す。
でもユーリは唸っていて、苦しそうだ。
悪い夢でも見ているのか、ユーリに近付くと汗が凄くてサイドテーブルに置いてあった布を掴んで汗を拭う。
「うっ…うぅ…ハルフィリア…さま」
「………」
ユーリがその名前を口にした瞬間に、俺は目を見開いて固まった。
俺がユーリから離れると、すぐにユーリは飛び起きた。
やはり悪夢を見ていたんだな、可哀想に…ユーリの悪夢は俺が取り除く。
でもハルフィリアはもうこの世にいない、どうしたらユーリの悪夢をなくしてあげられるのかな。
俺のユーリなのに、なんで他の奴がユーリの中に入るんだ。
…ハルフィリアは初代聖騎士の男の名だ。
ユーリが読んだ本には名前は書いていなかったと思うけど知ってたんだな。
俺以外の名前なんて覚える必要はないのに…
ユーリの首筋に触れてユーリが俺の方を見て、不思議そうな顔をしていた。
それを手に取り、ページを捲る。
ユーリが見ていた聖騎士伝説、俺は魔騎士が出てくる場面を読んだ。
魔物は魔騎士になるために、魔騎士を喰らい力を得る。
魔騎士は魔物を喰らいより強い力を得る…それは知っている。
幼少期から俺の周りには魔物がいた、なりそこないの魔騎士がいた。
俺の隙を伺い、喰らおうと狙ってくる。
魔物の力は正直いらないから、俺はほとんど殺している…ユーリを怖がらせる存在だから当然だ。
でも、何故ユーリも魔騎士のように魔物に襲われるのか。
まさかユーリも魔騎士?そんな気配は全然しない。
俺の傍にいるから、俺がユーリの心に入り込んだから魔騎士の力が少し目覚めたのかもしれない。
本をベッドに置いてユーリの寝顔を見つめる。
全部俺のものだ、誰にも渡さない…触れさせない……お前にも…
目線をユーリからユーリの隣で寝ている黒猫に向ける。
黒猫に手を伸ばすと、触れる事なく見えない結界が邪魔して通れない。
結界には術式というものがある。
どのくらいの魔術を使うとか、その力は人それぞれで…皆違う魔法陣の結界が出来る。
そしてこの黒猫の結界には見覚えがあった。
当然だ、俺の魔術結界の術式が使われているものだった。
使えるのは本人だけ、そうなるとこの黒猫の正体も見えてきた。
「……お前は、俺か」
「ニャー」
黒猫は立ち上がって、その場で背伸びしていた。
この黒猫は魔物、俺が生み出したものだ。
ユーリが心配で俺の中から魔騎士の力が漏れていた。
その時に俺の気持ちが具現化してしまった。
だからこの黒猫はユーリから離れないのだろう。
俺の代わりにユーリを守る、コイツも俺なんだ。
「…俺が…俺自身がユーリを守りたいのに、なんで…他の奴にユーリを守らせなきゃならないんだ」
いくらこの黒猫が俺だとしてもそんなの関係ない。
他の奴よりはマシというだけだ、ユーリの傍にいられるのは俺でなくてはならない。
…でも、現実的な話ではユーリとずっといるわけにはいかない。
ユーリを養うためには働かなくてはいけない、一番自由が多いのは騎士団だ……聖騎士の俺がそれ以外の仕事をさせてもらえると思えないけど…
ユーリの理想の俺になるために…
ユーリは何も分かっていない、俺は人のためにやっているわけではない。
ユーリのために俺は命を捧げているんだ。
それなのにユーリは俺の事より、あの女の名前を口にした。
こんなにユーリに尽くしているのに……あの女が聖女の方がいいのか?
聖騎士と聖女は力は違えど、立場は一緒だ。
ユーリを取られるくらいなら、俺はこの国の反逆者になってもユーリを取り戻す。
黒猫を掴み、黒猫は泥のように形が崩れる。
いつも魔物が死ぬ時のように砂になるわけではなく、俺の中に吸収された。
元は俺の一部だったんだ、当然だ。
俺のものだ、他人を見させないし見せない…俺とユーリの仲を引き裂く奴は俺が八つ裂きにしてやる、必ず…
俺が消した奴をユーリが覚えているから、ずっとユーリの記憶に残る………腹立たしい……腹立たしくて、死にそうだ。
やっぱり向き合ってじっくりお互いを理解して話し合うのは俺には向いていない。
そんなのんびりな事ばかりしていると今にもユーリが他の人に取られてしまう。
俺は俺のやり方でユーリを手に入れる、それが決して褒められるものではないとしても…
ユーリの口が動き、起きたのかと体を離す。
でもユーリは唸っていて、苦しそうだ。
悪い夢でも見ているのか、ユーリに近付くと汗が凄くてサイドテーブルに置いてあった布を掴んで汗を拭う。
「うっ…うぅ…ハルフィリア…さま」
「………」
ユーリがその名前を口にした瞬間に、俺は目を見開いて固まった。
俺がユーリから離れると、すぐにユーリは飛び起きた。
やはり悪夢を見ていたんだな、可哀想に…ユーリの悪夢は俺が取り除く。
でもハルフィリアはもうこの世にいない、どうしたらユーリの悪夢をなくしてあげられるのかな。
俺のユーリなのに、なんで他の奴がユーリの中に入るんだ。
…ハルフィリアは初代聖騎士の男の名だ。
ユーリが読んだ本には名前は書いていなかったと思うけど知ってたんだな。
俺以外の名前なんて覚える必要はないのに…
ユーリの首筋に触れてユーリが俺の方を見て、不思議そうな顔をしていた。
24
お気に入りに追加
3,766
あなたにおすすめの小説
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。
riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。
召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。
しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。
別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。
そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ?
最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる)
※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。

転生したら同性から性的な目で見られている俺の冒険紀行
蛍
BL
ある日突然トラックに跳ねられ死んだと思ったら知らない森の中にいた神崎満(かんざきみちる)。異世界への暮らしに心踊らされるも同性から言い寄られるばかりで・・・
主人公チートの総受けストリーです。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
ド平凡な俺が全員美形な四兄弟からなぜか愛され…執着されているらしい
パイ生地製作委員会
BL
それぞれ別ベクトルの執着攻め4人×平凡受け
★一言でも感想・質問嬉しいです:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion
更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です
X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。
あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。
だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。
よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。
弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。
そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。
どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。
俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。
そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。
◎1話完結型になります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる