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すきだよ
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髪を撫でられてとても気持ち良くて、寝返りをうった。
すると体中が悲鳴を上げていて、眠気が何処かに吹っ飛んだ。
目を見開いて前を見ると、そこには昨日の怖さはどこにいったのかベッドに頭を乗せて落ち込んでいるイヴがいた。
窓からは日差しが室内を照らしていたのに、イヴの周りだけ暗い。
何をしているのか分からないが、落ち込んでいるのは分かる。
俺の顔を見ていないのに、俺の頭に触れる手は止めていない。
見ていないから俺が起きた事にも気付いていないようだ。
「イヴ…さん」
「ユーリ、もうしないって言ったのに…俺は約束を破った」
「俺だって拒絶しなかったんだし…」
「ユーリは俺が怖かったんだよな、体が震えていたのに俺は自分が止められなかった……ユーリを見ると理性なんてないようなものだ」
「……俺で良かったら性処理の相手が出来ます、聖騎士様は女の子とそういう事が出来ないと思うし」
男だけど、イヴの役に立つならそれでいいかと思った…俺の気持ちなんて惚れた時から終わっていたんだ。
イヴは男とした事を後悔しているのかと思ってフォローのつもりで言っただけだった。
イヴは顔を上げて、手のひらを眺めていた。
手のひらに現れたのは真っ黒な剣で、イヴはそれを片手で握っていた。
何をするのか分からなくて、イヴを眺めていたらイヴは俺の肩を掴んで俺の顔の横に黒い剣が突き刺さった。
真っ赤に染まったイヴに、ぞくりと体が震えた。
「ユーリ、誰が誰のなんて言った?」
「……えっ、あ…」
「ユーリは俺の気持ちを疑うんだ、俺がユーリに触れた意味にも気付かずに」
「い、イヴ…さ…」
「そんなに疑うなら分かるまで閉じ込めようか……本当はそんな事、したくなかったけどユーリに分かってもらうために」
ベッドに黒い剣が刺さったところから黒いシミのようなものが出てきてシーツが黒くなる。
俺の体は黒くならないが、イヴの体と俺の視界は黒くなっていく。
俺の腕が鎖に繋がられて、イヴの口元に笑みを浮かべていた。
「ユーリ、俺はユーリに全てあげる…だからユーリの全てを俺のものに…」
その言葉を最後に俺の意識はフッと糸が切れたようになくなった。
次に目が覚めると、俺は色のある普通の世界の中にいた。
イヴはベッドに座って、俺に向かって微笑んでいた。
瞳は黒く、イヴの手には物騒な剣は握られていなかった。
何事もなかったかのように「おはようユーリ」と言うから俺も「イヴさん、おはようございます」と声を掛けた。
ベッドを見ても剣の傷跡はなくて、夢だったんだなと思った。
外は夕日に染まっていて、おはようの時間じゃないなと苦笑いする。
そうだ食事、今の時間だと夕飯かなと思いながらベッドから降りる
服に着替えようと思ってクローゼットを開けてから気付いた。
あんなに痛かったのに、もう体は痛くなかった。
あれ?痛かったのは夢だったんだっけ?イヴとしたのも?
なにが夢でなにが現実か分からないけど、今はとりあえず夕飯の事を考えよう。
イヴは気を利かせて部屋を出ていこうとして、扉の前で足を止めた。
俺の方に振り返りイヴは俺に「ユーリ、俺の気持ち分かった?」と聞いてきた。
何を言っているんだと不思議だったけど、当たり前のように言った。
「イヴさんの気持ち、分かってますよ」
そう言うと、イヴさんは満足そうに笑っていた。
いつものエプロン姿で大鳥の卵をかき混ぜていた。
今日のメニューはオムレツにしようと考えて食材を切っていた。
でも不思議だ、俺はいつの間にイヴの気持ちを理解したんだろう。
昨日までイヴがよく分かんなかった気がしたんだけどな。
今ではイヴが俺を大切に愛してくれる事が分かっている。
自分で思っててとても恥ずかしくなって、気を紛らわすために野菜を切った。
「ユーリ」
「な、なんですか?」
「…手」
カウンターに立っていつものように俺を見つめていたイヴが急に手首を掴んできた。
考え事をしていたからか、人差し指に赤い液体が付いていた。
痛みはないが傷口が熱くなり、急いで水の魔術で血を洗い流そうと思った。
その前にイヴに腕を引かれて、俺の人差し指をイヴが咥えた。
目を丸くしてイヴを見つめていたら、ぬるっとした感触がしてゾワゾワとした。
吸われて、ビクンと体が跳ねた。
「もう大丈夫ですから!後は救急箱で!」
「…どうして?」
「だって、こんな…汚いですよ」
「昔、ユーリだってしていたのに」
イヴは楽しそうにそう言って、一度口を離したのにまた咥えた。
昔?俺、昔何をしてたっけ……俺も同じように傷口を舐めた?
小さな頃、確かに一度初対面の少年と出会って…そこで、俺は黒い…ものを…
一瞬思考が停止して、倒れそうになったところでイヴに腕を掴まれて倒れなかった。
俺の名を呼ぶイヴの声がするが、それとは別の声が聞こえた。
*****
『エラー、エラー、強制修正ヲ開始シマス』
その声を何処かで聞いた事があった。
俺が生まれ変わる前に聞いた最後の声だった。
脳内に直接響く声は、ノイズに混じり不協和音になっていた。
エラーって何の事だ?強制修正ってどういう意味?
そうだ、イヴは俺の事を好きでいてくれている…俺の気持ちがそう訴えてる。
俺が告白したら、どう反応するのかな。
……分からない、分からないけど…なんだか嫌な感じがした。
その気持ちが分からないまま、俺の意識は深い深い黒い水の底に沈んだ。
すると体中が悲鳴を上げていて、眠気が何処かに吹っ飛んだ。
目を見開いて前を見ると、そこには昨日の怖さはどこにいったのかベッドに頭を乗せて落ち込んでいるイヴがいた。
窓からは日差しが室内を照らしていたのに、イヴの周りだけ暗い。
何をしているのか分からないが、落ち込んでいるのは分かる。
俺の顔を見ていないのに、俺の頭に触れる手は止めていない。
見ていないから俺が起きた事にも気付いていないようだ。
「イヴ…さん」
「ユーリ、もうしないって言ったのに…俺は約束を破った」
「俺だって拒絶しなかったんだし…」
「ユーリは俺が怖かったんだよな、体が震えていたのに俺は自分が止められなかった……ユーリを見ると理性なんてないようなものだ」
「……俺で良かったら性処理の相手が出来ます、聖騎士様は女の子とそういう事が出来ないと思うし」
男だけど、イヴの役に立つならそれでいいかと思った…俺の気持ちなんて惚れた時から終わっていたんだ。
イヴは男とした事を後悔しているのかと思ってフォローのつもりで言っただけだった。
イヴは顔を上げて、手のひらを眺めていた。
手のひらに現れたのは真っ黒な剣で、イヴはそれを片手で握っていた。
何をするのか分からなくて、イヴを眺めていたらイヴは俺の肩を掴んで俺の顔の横に黒い剣が突き刺さった。
真っ赤に染まったイヴに、ぞくりと体が震えた。
「ユーリ、誰が誰のなんて言った?」
「……えっ、あ…」
「ユーリは俺の気持ちを疑うんだ、俺がユーリに触れた意味にも気付かずに」
「い、イヴ…さ…」
「そんなに疑うなら分かるまで閉じ込めようか……本当はそんな事、したくなかったけどユーリに分かってもらうために」
ベッドに黒い剣が刺さったところから黒いシミのようなものが出てきてシーツが黒くなる。
俺の体は黒くならないが、イヴの体と俺の視界は黒くなっていく。
俺の腕が鎖に繋がられて、イヴの口元に笑みを浮かべていた。
「ユーリ、俺はユーリに全てあげる…だからユーリの全てを俺のものに…」
その言葉を最後に俺の意識はフッと糸が切れたようになくなった。
次に目が覚めると、俺は色のある普通の世界の中にいた。
イヴはベッドに座って、俺に向かって微笑んでいた。
瞳は黒く、イヴの手には物騒な剣は握られていなかった。
何事もなかったかのように「おはようユーリ」と言うから俺も「イヴさん、おはようございます」と声を掛けた。
ベッドを見ても剣の傷跡はなくて、夢だったんだなと思った。
外は夕日に染まっていて、おはようの時間じゃないなと苦笑いする。
そうだ食事、今の時間だと夕飯かなと思いながらベッドから降りる
服に着替えようと思ってクローゼットを開けてから気付いた。
あんなに痛かったのに、もう体は痛くなかった。
あれ?痛かったのは夢だったんだっけ?イヴとしたのも?
なにが夢でなにが現実か分からないけど、今はとりあえず夕飯の事を考えよう。
イヴは気を利かせて部屋を出ていこうとして、扉の前で足を止めた。
俺の方に振り返りイヴは俺に「ユーリ、俺の気持ち分かった?」と聞いてきた。
何を言っているんだと不思議だったけど、当たり前のように言った。
「イヴさんの気持ち、分かってますよ」
そう言うと、イヴさんは満足そうに笑っていた。
いつものエプロン姿で大鳥の卵をかき混ぜていた。
今日のメニューはオムレツにしようと考えて食材を切っていた。
でも不思議だ、俺はいつの間にイヴの気持ちを理解したんだろう。
昨日までイヴがよく分かんなかった気がしたんだけどな。
今ではイヴが俺を大切に愛してくれる事が分かっている。
自分で思っててとても恥ずかしくなって、気を紛らわすために野菜を切った。
「ユーリ」
「な、なんですか?」
「…手」
カウンターに立っていつものように俺を見つめていたイヴが急に手首を掴んできた。
考え事をしていたからか、人差し指に赤い液体が付いていた。
痛みはないが傷口が熱くなり、急いで水の魔術で血を洗い流そうと思った。
その前にイヴに腕を引かれて、俺の人差し指をイヴが咥えた。
目を丸くしてイヴを見つめていたら、ぬるっとした感触がしてゾワゾワとした。
吸われて、ビクンと体が跳ねた。
「もう大丈夫ですから!後は救急箱で!」
「…どうして?」
「だって、こんな…汚いですよ」
「昔、ユーリだってしていたのに」
イヴは楽しそうにそう言って、一度口を離したのにまた咥えた。
昔?俺、昔何をしてたっけ……俺も同じように傷口を舐めた?
小さな頃、確かに一度初対面の少年と出会って…そこで、俺は黒い…ものを…
一瞬思考が停止して、倒れそうになったところでイヴに腕を掴まれて倒れなかった。
俺の名を呼ぶイヴの声がするが、それとは別の声が聞こえた。
*****
『エラー、エラー、強制修正ヲ開始シマス』
その声を何処かで聞いた事があった。
俺が生まれ変わる前に聞いた最後の声だった。
脳内に直接響く声は、ノイズに混じり不協和音になっていた。
エラーって何の事だ?強制修正ってどういう意味?
そうだ、イヴは俺の事を好きでいてくれている…俺の気持ちがそう訴えてる。
俺が告白したら、どう反応するのかな。
……分からない、分からないけど…なんだか嫌な感じがした。
その気持ちが分からないまま、俺の意識は深い深い黒い水の底に沈んだ。
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