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使用人の仕事
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とりあえず綺麗だけど、廊下を掃除したり窓を拭いたりしている。
余計に俺が汚していないか不安だ、大丈夫だろうか。
イヴは「掃除は俺がやるからいいのに」と言っていた。
ますます可笑しな話になってしまう、それは…
俺は何のために雇われたんだ?それとも、俺の掃除が全然出来ていないって事なのか?
そう思われているのなら、俺だってもっと頑張らないと…
「俺、もっと掃除を頑張ります!だから、俺にやらせて下さい!」
「…ごめん、ユーリの仕事を取るつもりはないから」
イヴはまるで怒られた子供のように、シュンと落ち込んでいた。
イヴを怒ったわけではないから慌ててイヴに俺も謝った。
次はイヴの部屋をお願いされたから、お邪魔する事になった。
イヴはほとんど私物がないから、ここも掃除が必要な部屋ではない。
やっぱりここは別宅で、イヴは城に住んでいるのかもな。
だから俺にあんな豪華な部屋を与えてくれたんだ、もしかしたら俺しか住まないのかもしれない。
こんな広い屋敷を一人で…なんか寂しくなってきた。
周りを見渡すと、漫画で出てきたエマが誕生日でイヴに渡した花がない。
きっと城の中の自分の部屋にあるんだろうな。
「ユーリ?部屋は汚れるから気にするな」
「えっ…違います、そうじゃないんです……俺、夕飯作ります!」
また俺が綺麗だから必要ないと思ったのを見透かしたかのようにイヴに言われた。
イヴに寂しいなんて言えない、俺はただの使用人なんだからわがままを言うわけにはいかない。
掃除は綺麗だから必要ない、なら…夕飯を作ろう!夕飯なら先に作ってはいないだろう。
イヴと一緒に食堂に向かい、厨房に案内してもらった。
やはり厨房もピカピカに綺麗で、冷蔵庫を開けると食材がびっしり詰まっていた。
イヴは「食べたらなくなる」と言っていた、俺が買い物に行く必要がないと言おうとしたら先回りされてしまった。
イヴは手伝いたそうにしていたが、俺はすぐに座って待ってて下さいとお願いした。
イヴが普段食べてる料理には劣るが、母さんに教えてもらった家庭料理を食べてほしい。
一度お礼で渡したんだけど、イヴは覚えていないよな…その話をイヴから話してこないし…
まだ母さんの味は出せないな、もっと美味く作らないと…
煮物の材料があったから煮物を作り、メインディッシュにいつも国のために頑張っているイヴにスタミナがある肉料理を作ろう!
ここの厨房はカウンターがあり、カウンターの向こう側が食堂になっている。
イヴがカウンターに肘を付いて、俺を見つめていた。
俺の仕事を見るのが楽しいのかな、見られると恥ずかしいな。
「あ、あの…」
「どうした?ユーリ」
「に、煮物好きですか!?」
俺はこの場の雰囲気に耐えられなくなり、煮物の事を話した。
これで嫌いとか言われたらどうしよう…とチラッと煮物が入った鍋を見つめる。
でもイヴは「ユーリの料理なら何でも好物だ」と言っていた。
これは好き嫌いはないって事…だよな、使用人に遠慮するわけがないから、多分本当だろう。
あの時は誰かのために料理を作った事がなくて、イヴは美味しくなかったのかもしれない。
でも今は仕事で夕飯の手伝いをした事があるから、料理の腕は上がった筈だ。
魔力レベルは上がらないけど、俺は俺の出来る事をする。
「美味しそうなにおいだな」
「あの時よりも腕を磨いたので美味しい自信があります」
「あの時?」
「イヴさんは覚えていないと思いますが、パレードの時助けられたお礼に煮物を持って行ったんです」
「……どういう事だ」
イヴは眉を寄せて俺の方をジッと見つめていた。
もしかしてこの話ってしちゃいけない話だったのか?
俺は慌てて「何でもないです!忘れてください」と言った。
イヴにとって忘れていたかった過去だったなんてショックだ。
俺がお礼に伺う事も迷惑だったのかな。
煮物、食べてくれないかもしれないからもう一品おかずを増やそうかなと考えていた。
肉を切ろうと包丁を握っていた手をイヴに掴まれて驚いた。
力が強くて腕が動かせない、俺が力を入れて抵抗したらどちらかが怪我をしてしまう。
「危ないですよ!」
「ユーリ…何の話をしてるんだ?」
「な、何のって…」
「お礼っていつの話だ?」
イヴは俺の瞳をジッと見つめていて、目が逸らせない。
お礼をしに行った日を今でもよく覚えている。
俺は退院してから、家でお礼の品として煮物を作っていた。
あの時の俺は、自分の料理に自信があって…美味しいって喜んでくれると思っていた。
本当は一晩寝かせた方が味が染み込んで美味しいんだけど、早く届けたくてすぐに持っていった。
だから俺が煮物を持っていったのは退院した日だ。
それをイヴに伝えると、さらに眉を寄せていた。
なんで嫌な思い出をそんなに深く聞きたいのか分からない。
「知らない…」
「え?」
「お礼を受け取ってない」
イヴの言葉は俺が想像していた言葉と違っていた。
まさか、嫌な思い出どころかお礼の存在そのものを知らなかったなんて…
イヴが俺の手を離して、カウンターから離れた。
何処に行ったのかと思ったら、厨房に入ってきてそのまま俺の事を後ろから抱きしめてきた。
俺は驚いて目を見開いて、包丁をまな板の上に置いた。
俺がそんなに辛そうな顔をしているように見えたのか、何度もイヴが「ごめん…」と謝っていた。
イヴは悪くない、俺が煮物を渡した騎士は見知らぬ人からの怪しい贈り物をイヴに届けなかっただけだ。
それに、今…食べてくれるというならそれだけで充分だ。
「イヴさん、煮物…食べてくれますか?」
「…食べたい、ユーリ」
それじゃあ別の意味になっちゃうよ、と笑った。
イヴに座るように言うと、またカウンターに戻って俺を見つめていた。
子供の頃から仕事をよく見ていたから、大人になっても癖で見てしまうのかなと考えて微笑ましく思う。
煮物沢山作ったから、イヴが城の自室に帰る時に渡そうかな。
城の方が俺のより豪華で美味しい料理が出てくるんだろうけど…
料理が完成して、皿に盛り付けをするとイヴは「テーブルに運ぶ」と手を差し出してきた。
本当に変わった雇い主だな、でも俺は給料を貰う身だからちゃんと仕事をするとイヴに座って待っててとお願いした。
シュンと落ち込んでいたが、イヴはカウンターから離れていき…俺も近くにあるワゴンに料理を乗せて運んだ。
長く大きなテーブルの真ん中にイヴが座って、後ろから俺が料理を並べた。
何人席か分からないほど豪邸に見合うテーブルに、見合わない料理が何とも虚しい。
余計に俺が汚していないか不安だ、大丈夫だろうか。
イヴは「掃除は俺がやるからいいのに」と言っていた。
ますます可笑しな話になってしまう、それは…
俺は何のために雇われたんだ?それとも、俺の掃除が全然出来ていないって事なのか?
そう思われているのなら、俺だってもっと頑張らないと…
「俺、もっと掃除を頑張ります!だから、俺にやらせて下さい!」
「…ごめん、ユーリの仕事を取るつもりはないから」
イヴはまるで怒られた子供のように、シュンと落ち込んでいた。
イヴを怒ったわけではないから慌ててイヴに俺も謝った。
次はイヴの部屋をお願いされたから、お邪魔する事になった。
イヴはほとんど私物がないから、ここも掃除が必要な部屋ではない。
やっぱりここは別宅で、イヴは城に住んでいるのかもな。
だから俺にあんな豪華な部屋を与えてくれたんだ、もしかしたら俺しか住まないのかもしれない。
こんな広い屋敷を一人で…なんか寂しくなってきた。
周りを見渡すと、漫画で出てきたエマが誕生日でイヴに渡した花がない。
きっと城の中の自分の部屋にあるんだろうな。
「ユーリ?部屋は汚れるから気にするな」
「えっ…違います、そうじゃないんです……俺、夕飯作ります!」
また俺が綺麗だから必要ないと思ったのを見透かしたかのようにイヴに言われた。
イヴに寂しいなんて言えない、俺はただの使用人なんだからわがままを言うわけにはいかない。
掃除は綺麗だから必要ない、なら…夕飯を作ろう!夕飯なら先に作ってはいないだろう。
イヴと一緒に食堂に向かい、厨房に案内してもらった。
やはり厨房もピカピカに綺麗で、冷蔵庫を開けると食材がびっしり詰まっていた。
イヴは「食べたらなくなる」と言っていた、俺が買い物に行く必要がないと言おうとしたら先回りされてしまった。
イヴは手伝いたそうにしていたが、俺はすぐに座って待ってて下さいとお願いした。
イヴが普段食べてる料理には劣るが、母さんに教えてもらった家庭料理を食べてほしい。
一度お礼で渡したんだけど、イヴは覚えていないよな…その話をイヴから話してこないし…
まだ母さんの味は出せないな、もっと美味く作らないと…
煮物の材料があったから煮物を作り、メインディッシュにいつも国のために頑張っているイヴにスタミナがある肉料理を作ろう!
ここの厨房はカウンターがあり、カウンターの向こう側が食堂になっている。
イヴがカウンターに肘を付いて、俺を見つめていた。
俺の仕事を見るのが楽しいのかな、見られると恥ずかしいな。
「あ、あの…」
「どうした?ユーリ」
「に、煮物好きですか!?」
俺はこの場の雰囲気に耐えられなくなり、煮物の事を話した。
これで嫌いとか言われたらどうしよう…とチラッと煮物が入った鍋を見つめる。
でもイヴは「ユーリの料理なら何でも好物だ」と言っていた。
これは好き嫌いはないって事…だよな、使用人に遠慮するわけがないから、多分本当だろう。
あの時は誰かのために料理を作った事がなくて、イヴは美味しくなかったのかもしれない。
でも今は仕事で夕飯の手伝いをした事があるから、料理の腕は上がった筈だ。
魔力レベルは上がらないけど、俺は俺の出来る事をする。
「美味しそうなにおいだな」
「あの時よりも腕を磨いたので美味しい自信があります」
「あの時?」
「イヴさんは覚えていないと思いますが、パレードの時助けられたお礼に煮物を持って行ったんです」
「……どういう事だ」
イヴは眉を寄せて俺の方をジッと見つめていた。
もしかしてこの話ってしちゃいけない話だったのか?
俺は慌てて「何でもないです!忘れてください」と言った。
イヴにとって忘れていたかった過去だったなんてショックだ。
俺がお礼に伺う事も迷惑だったのかな。
煮物、食べてくれないかもしれないからもう一品おかずを増やそうかなと考えていた。
肉を切ろうと包丁を握っていた手をイヴに掴まれて驚いた。
力が強くて腕が動かせない、俺が力を入れて抵抗したらどちらかが怪我をしてしまう。
「危ないですよ!」
「ユーリ…何の話をしてるんだ?」
「な、何のって…」
「お礼っていつの話だ?」
イヴは俺の瞳をジッと見つめていて、目が逸らせない。
お礼をしに行った日を今でもよく覚えている。
俺は退院してから、家でお礼の品として煮物を作っていた。
あの時の俺は、自分の料理に自信があって…美味しいって喜んでくれると思っていた。
本当は一晩寝かせた方が味が染み込んで美味しいんだけど、早く届けたくてすぐに持っていった。
だから俺が煮物を持っていったのは退院した日だ。
それをイヴに伝えると、さらに眉を寄せていた。
なんで嫌な思い出をそんなに深く聞きたいのか分からない。
「知らない…」
「え?」
「お礼を受け取ってない」
イヴの言葉は俺が想像していた言葉と違っていた。
まさか、嫌な思い出どころかお礼の存在そのものを知らなかったなんて…
イヴが俺の手を離して、カウンターから離れた。
何処に行ったのかと思ったら、厨房に入ってきてそのまま俺の事を後ろから抱きしめてきた。
俺は驚いて目を見開いて、包丁をまな板の上に置いた。
俺がそんなに辛そうな顔をしているように見えたのか、何度もイヴが「ごめん…」と謝っていた。
イヴは悪くない、俺が煮物を渡した騎士は見知らぬ人からの怪しい贈り物をイヴに届けなかっただけだ。
それに、今…食べてくれるというならそれだけで充分だ。
「イヴさん、煮物…食べてくれますか?」
「…食べたい、ユーリ」
それじゃあ別の意味になっちゃうよ、と笑った。
イヴに座るように言うと、またカウンターに戻って俺を見つめていた。
子供の頃から仕事をよく見ていたから、大人になっても癖で見てしまうのかなと考えて微笑ましく思う。
煮物沢山作ったから、イヴが城の自室に帰る時に渡そうかな。
城の方が俺のより豪華で美味しい料理が出てくるんだろうけど…
料理が完成して、皿に盛り付けをするとイヴは「テーブルに運ぶ」と手を差し出してきた。
本当に変わった雇い主だな、でも俺は給料を貰う身だからちゃんと仕事をするとイヴに座って待っててとお願いした。
シュンと落ち込んでいたが、イヴはカウンターから離れていき…俺も近くにあるワゴンに料理を乗せて運んだ。
長く大きなテーブルの真ん中にイヴが座って、後ろから俺が料理を並べた。
何人席か分からないほど豪邸に見合うテーブルに、見合わない料理が何とも虚しい。
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