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第52話・千夜一夜物語 9[カシム・ユーセフ]

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弟と暮らしていた。
裕福ではなかった。これは私の落ち度。
だから弟は盗賊の宝を盗んできた。
だが、罪悪感もあったか私の話を聞いてくれた。
私達は宝を元の場所に返しに行った。
そこで出会ったのがシンドバッド様。
私達は盗賊と間違われ抵抗するもシンドバッド様に負けた。
思えばあの時のシンドバッド様は笑顔だった。楽しんでおられたのだろう。
弟だけは逃がそうとしたが願い虚しく私達は王宮に連れて行かれた。
私達はそこでシンドバッド様の警備隊に配属された。
そこまでは弟と同じ。
ここからが違う。
私はシンドバッド様の別働部隊にも入っている。
私は自らシンドバッド様に心願した。
シンドバッド様の為に何でも致します。と。
特に王宮のでの暮らしに不満はなかった。この願いによって私の利益はシンドバッド様の為に尽くせる幸せのみ。
弟の事は大好きだ。がそれと同じくらい出会った時のシンドバッド様の美しさに心酔してしまったのだ。
シンドバッド様は本当に何でも言ってこられた。
無理難題を。
さながら今私が見ている、いや見させられている物語のようだ。
王にある殺人犯を捕まえてこないと自分が死刑と言われる大臣。殺人犯が自首してきてもその話を聞くと犯人を許し原因の元になった者を捕まえてこないと死刑なると再び告げられる大臣。
理不尽だなぁ。
あ、物語の人物達の名前はあえて伏せさて頂きます。ネタバレになりますから。
話を戻しますとまぁシンドバッド様もコレぐらいの要求、願いを私に言われてきました。
私は理不尽とは思いませんでした。
それは喜びでしたから。
シンドバッド様の幸せと弟の幸せが私の幸せ。
そのシンドバッド様が願いの中でもっとも難しいのが今。
アラジン様の心を再びシンドバッド様に向ける事。
シンドバッド様とアラジン様は私達が出会うより先に一緒にいた。
その関係は友情を超えていた。
しかしアラジン様の心は今別の方の方へ向いている。
理由は分かりません。
この願いはシンドバッド様より命じられたものではない。
言うなれば私の願い。
シンドバッド様の隣はアラジン様が良い。
誰よりも。
クロちゃん様には申し訳ないですが。
その為には私は何でもします。なんでも。

物語が終わる。
この先に何があるのか。
この白い靄の先にはどんな現実があるのか。
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