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第9話・夜の訪問者

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逃げた。どうにか風呂場逃げ切れた。あのままいたらどうなっていたか。
今は50畳はあろう部屋のベッドで一人寝ている。
どう逃げたというともうとりあえず走った。全速力で走った。そのまま部屋の一室に閉じこもった。
どんなに声をかけられても無視をし続ける。閉じこもるのは慣れている。俺がどれだけ閉じこもってきたと思ってる。どれだけ親に罵られても閉じこもってた思ってる。
閉じこもった理由は・・・・・まぁ今話す事じゃないか。
俺を追いかけてきた三人はドアを壊れない程度に叩きながら謝罪の言葉を繰り返してきた。
「ごめんなさい、マスター!!少し欲に勝てず・・・・!」
「ホントすまねぇ我が君!見るだけのつもりだったんだ!本当だ!」
「お許しを天使!僕は純粋にお背中を流そうと思ってだけで!」
「テメーだけ良い感じに言い訳してんじゃねぇよ!」
「本心です。あなたの見るだけってなんですか?見たらそれだけで済む訳ないでしょう。粗暴なあなたが!」
「マスター!ホントごめんなさい!!」
無視。本当に怖かったんだから。
一時間くらいアーズさんアラジンさんの言い合いと謝罪、バイコさんのごめんなさいが続いた。そのあと三人が聞こえない声でごにょごにょ話し、アラジンさんが代表して言ってきた。
「すみません天使。僕たちは一回ここを離れます。今回の事は本当にすみません。僕達を許して頂けるならまたその愛しいお顔をお見せください。・・・・あとその部屋には着替えとか生活に必要な物は全て揃っています、ご自由にお使いください。・・・では」
それから何の音もしなくなった。本当に部屋から離れたようだ。
俺は部屋にあったタオルで体を拭き、これまたカフェにはないだろう装飾で豪華なタンスからバスローブを取り出して着た。
人生で初めてバスローブを着た。なんかくすぐったい。
変に前の世界と似ていて、それでいてちょっとした物とかが高度だったり、そうじゃなかったりしていて混乱する。
時間は分からないけど、日は落ちていた。電気なのか火を使うのかこの世界の明かりが分からなかったから部屋は真っ暗になった。俺は疲れがドッときたのすごい眠気に襲われそのままベッドに倒れこんだ。
ベッドも高級ホテルにありそうなくらいフカフカで秒で寝れる気がした。
そしてその通り秒で寝た。
それから何時間経っただろう。ベッドの揺れで目が覚めた。
部屋はまだ暗い。夜中かな・・・・・。
ギシッとまたベッドが揺れた。
・・・・・・。地震?・・・・・また揺れた。何か人が乗ってるような・・・・・。
寝起きのボーっとした頭が一気に覚醒した。
人がいる!?ちょっと待って!誰だ!?バイコさん!?アーズさん!?アラジンさん!?
それとも別の誰か!?
あの三人なら命の危険はないけど別の危険がある!!
あの三人以外なら命の危険がある!能力かかってない人から見たら俺に価値はない!こんな高級な所にいるんだ、金持ちと間違われるだろう!盗賊や賞金稼ぎもいる世界だ!
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
どっちにしてもやばい!!逃げなきゃ!
でも疲れなのか怖さなのか体が全然動かなし声も出ない!これは本当にやばいやつ!
そうしてる内にベッドの揺れはどんどん近づてくる。
そして腕を押さえつけられ覆いかぶされた!
「~~~~~~~~~~!!?」
心臓が飛び出しそうなくらいにドキドキいってる。首元に変な汗を流れてる。
「あれ?痩せた~?腕めっちゃ細くなってるよ~」
「~~~ハァハァ!あ、あの!誰!?」
暗くて顔が見えない。
「ん~?何~その声~?声変わり~?」
「あの・・・・俺ここ・・・・のえっとここの人じゃななくてえっと・・・・」
上手く喋れない、頭が回らない。
「?よく分からないけど~アラジンじゃない、よね~?」
アラジンさんと勘違いされてる!?
「ち、違っ!違います!」
「あ~そっか~ごめんね~。いつもはここアラジンが使ってるからさ~」
そういうと腕を離し、俺は解放された。
俺は出来る限りベッドの上でその人から距離を取った。
「君はえっと誰~?アラジンは~?」
「アラジンさんは・・・・・」
言っていいのか?この人はアラジンさんの知り合いっぽいけど。もしかしたらそれを装った賞金首とかかもしれないし!
だって普通の知り合いはベッドに忍び込んで腕掴んで覆いかぶさらないでしょ!
「ああ~俺は怪しくないよ~この都市で一番怪しくない者です~。って暗くて見えないから分からないかw」
怪しくないって言った人が怪しくなかった事はないだろう。
どうする、とりあえずは自分の安全を確保しなければ!
「ん~どうしようか~。そうだまずは名前だ~。君の名前は?」
「・・・・・・・・」
分からないから答えられない・・・・。分かっていても答えちゃダメだろうけど。
「お~聞く前にこっちから答えなきゃマナー違反だよね~そうだよね~」
マナーについては前の世界でも色々問題になってるからこれについても何も言えない。
その時ちょうどよく雲が晴れ月明かりが俺たちを照らした。
俺の目の前にいたのは褐色肌で綺麗な銀髪に金の瞳、服は白と薄い金色の全身に巻き付けているかのような不思議な服。
「私の名前はシンドバッドだよ~」
無垢な笑顔でその人はそう言った。
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