上 下
1 / 2

第1話・解散

しおりを挟む
後ろから見てると良く分かる。
このバンドのギターボーカルとキーボードは付き合ってる!
あーこのバンドも終わりかなぁ。
・・・・良かったんだけどなぁ。
バンドの解散の原因なんてほぼお金と色恋だからね。
次探すの面倒くさいなぁ。
と思ってると曲が終わった。ヤバッ最後の曲だったのかもしれないのに。

イベントが終わり、主催者さんに挨拶して恒例の飲み屋で打ち上げだ。
「君達付き合ってるでしょ」
私は乾杯直後に切り出した。
「ブハッ!!?」
「がはっ!!?」
おおよそ女子が出さない様な音でビールとカシオレを吐き出すギターボーカルとキーボード。
「な!?・・・何を言ってるんだい?」
カッコつけるなギターボーカル=紗夏。初手の反応でバレバレだろ。
「あーあーあのね!えっと!まだ!まだ手しか繋いでないから!」
だからなんだキーボード=春風。しかも手しかってなんだ、これからどこを繋がる気だ。
「春風。それもう言ってるよ・・・」
カシオレのグラスより頭をガクッと下げる紗夏。
「あーあーごめんー!」
「・・・いつから気付いてた?睡蓮」
ドラム=私、睡蓮は答える。
「いやまぁライブ中から2人で目配せしたり、ライブ始まる直前2人でコソコソ手握ったりしてたりとか。あとは」
「分かった!やめて!」
顔が真っ赤だ紗夏。ここまでのは初めて見た。
「まぁ他にも後ろから見てれば分かる事はあるわけよ」
「~~~~~!」
「あーあー」
今度は2人して顔真っ赤だ。これはこれで面白いな。
「柚花は気付いてた?」
さっきからトリカラに夢中なベース=柚花に聞いてみた。
「んーまぁんー別に?」
どっちだよ!
まぁ良いけど。柚花は良い意味でマイペース。夢は世界一のベーシストになるって小学生の様な夢を本気で叶えようとしてるヤツ。
「で、このバンドをいつ解散するかって話だけど」
私は本題を切り出す。
「解散!?」
「あー何で!?」
「え、だってバンドの内の色恋なんて解散原因の一番じゃん」
「それは三角関係とかギスった時だろ!?まさか睡蓮、アンタ春風の事を・・・!?」
「違うわ」
「じゃあ私か!」
「もっと違うわ!」
「あーじゃあ解散しなくても良いんじゃない?」
そういう事じゃないんだよ春風。色恋は人間関係だけじゃなくて・・・・。
「私も解散には賛成」
柚花が言う。
「柚花」
「柚花ちゃん・・・」
「何で?柚花」
私は聞く。意外だったから。柚花がここまでハッキリ言うなんて。
「2人が付き合うとかは全然良いけど、それが演奏に支障が出てるんだ。睡蓮が言った目配せとか、私は本気でやってる。だから曲に集中出来ない人とはやっていけない」
「え、でもでも、私はーこの4人でやっていきたいよー、いっぱい辛い事とか楽しい事とか思い出もあるしー!」
それはそう。そこは私も同意だけど。
「・・・・分かった。解散しよう」
「紗夏ちゃん!!」
その後春風は店を出るまでずっと泣いていた。
紗夏は俯いて自分の罪を悔いる様に春風を慰めていた。
店を出て、紗夏と春風と別れた。
これでこの2人とも最期か。
紗夏は頭を下げ、ごめんと一言。
初めて聞いたよ紗夏の謝罪。
強気で男っぽくてリーダー気質でいつもバンド引っ張っていってくれた。
あの紗夏が謝るなんて・・・・。
柚花との駅までの帰り道。
「や、ごめんね。急に解散とか」
「別に私も賛成したし。トドメ刺したのは私だしね」
「トドメって・・・まぁそうかな」
柚花の表情は変わらない。
バツの悪さとか後悔とかはないらしい。
「さてどうしようかこれから。新メンバー募集する??」
「ううん。ちょうど良い機会だから私海外行ってくる」
「は??」
海外?海外って外国??
「なんで?」
「バンドは私はモーメントが最高だと思ってるから。これ以上はない、だから世界一になる為には海外で勉強しようと思って」
「・・・そっか」
「ごめん」
「何で謝るの。応援してる」
「ありがとう」
柚花と別れて1人になった。
モーメントは嫌いじゃなかったよ。むしろ好き。
自分で言うのも何だけど地下の初ライブとか路上とか色々伝説があったんだよ(良い意味でも悪い意味でも)
初めて音が合ったあのライブは今でも思い出せる。最高だった。
楽しかったなぁ。
今はフリーのドラマー。さて本当にどうしよう。
柚花は本気で世界一のベーシストを目指してる。その為に恋人も切ったくらいだ。
あの時はなんて言うか、うん。
紗夏と春風は音より恋を。柚花は恋より音を。
じゃあ私は?
音かな。だから解散したんだけど。

それからあてなく歩く。
コンココン。スティックでガードレールを叩いて歩く。
夜中の2時。
明日バイトあったっけ?
気付くとさっきまでライブしてた店の前。
あてなく歩いてたつもりなんだけどなぁ。
ここから始まって、ここで終わった。
さて、帰るか!
自分から終わらせといていつまでも未練がましくしてちゃダメだよね~。
私が店に背を向けると声が飛んでくる。
「あのっ!!」
振り向くと1人の女性。
小柄でピンクの頭で右の目の下に星マーク?
ダボっとした服、男物かな。
「えー何でしょう?」
「モーメントのドラムの睡蓮さんですよね!?」
「はい・・・」
「大好きです!!ボクをこ、殺してください!!」
「はぁ!!?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【R18百合】会社のゆるふわ後輩女子に抱かれました

千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。 レズビアンの月岡美波が起きると、会社の後輩女子の桜庭ハルナと共にベッドで寝ていた。 一体何があったのか? 桜庭ハルナはどういうつもりなのか? 月岡美波はどんな選択をするのか? おすすめシチュエーション ・後輩に振り回される先輩 ・先輩が大好きな後輩 続きは「会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています」にて掲載しています。 だいぶ毛色が変わるのでシーズン2として別作品で登録することにしました。 読んでやってくれると幸いです。 「会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/759377035/615873195 ※タイトル画像はAI生成です

【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。

千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。 風月学園女子寮。 私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…! R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。 おすすめする人 ・百合/GL/ガールズラブが好きな人 ・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人 ・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人 ※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。 ※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)

レズビアン短編小説(R18)

hosimure
恋愛
ユリとアン、二人の女性のアダルトグッズを使った甘い一夜を書いています。

女の子なんてなりたくない?

我破破
恋愛
これは、「男」を取り戻す為の戦いだ――― 突如として「金の玉」を奪われ、女体化させられた桜田憧太は、「金の玉」を取り戻す為の戦いに巻き込まれてしまう。 魔法少女となった桜田憧太は大好きなあの娘に思いを告げる為、「男」を取り戻そうと奮闘するが……? ついにコミカライズ版も出ました。待望の新作を見届けよ‼ https://www.alphapolis.co.jp/manga/216382439/225307113

【R18百合】会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています

千鶴田ルト
恋愛
桜庭ハルナは、会社の先輩社員である月岡美波と付き合っている。 問題なく仲良く過ごしていたが、四月になり美波が異動して、色々と状況が変わってきた。 ハルナと美波の関係性はどうなっていくのか。 「会社のゆるふわ後輩女子に抱かれました」https://www.alphapolis.co.jp/novel/759377035/4808951 の続編です。 同じ二人の物語ではありますが、少し仕事の面が増えてきて毛色が変わるかもしれません。 前作よりも性的シーンは減るので、性的シーンありの話数には「※」をつけます。 ※タイトル画像はAI生成です

従順な女子高生と年上ビアン達の躾け

ビアンの世界
恋愛
華怜女学園高校に入学した菜々はレズビアンの先生達に躾けられる。ビアンの世界に足を踏み入れた彼女を待っていたのは少し刺激的な学園生活だった。発育保護のための健康診断と称した尿道責め、授業の補講ではワンツーマンでのイケない指導、授業の一環である職業体験ではさらなる刺激が彼女を襲う。 男性は一切出てきません。女子高生と年上女性によるソフトSM小説になります。 基本的に作者好みのアブノーマルなプレイ内容となっています。 かなり刺激的な表現の出てくる章には❤をつけています。

3年振りに帰ってきた地元で幼馴染が女の子とエッチしていた

ねんごろ
恋愛
3年ぶりに帰ってきた地元は、何かが違っていた。 俺が変わったのか…… 地元が変わったのか…… 主人公は倒錯した日常を過ごすことになる。 ※他Web小説サイトで連載していた作品です

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

処理中です...