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最終章 決戦

【六十三】贈物(弥助)

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才蔵師匠はなんとか一命を取り留めたものの、動ける状態にはない為、城と繋がっていない洞窟の入口を岩で塞ぐ形をとり、片側通行とすることで安全な療養場所へと変えた。気を失っていた佐助は、厳重に拘束し見張りをつけて城跡に作られた小屋へと身柄を移送。

『弥助殿、安倍晴明の部隊と思われる一団が半日もかからず此方へと到着する模様です。如何致しましょうか?』

才蔵師匠が動けないということから、現場の指揮官を任された俺。左京と弥生には灘姫様と幸景殿の護衛についてもらい、俺は小太郎殿の助言を聞きながらこの場を収めている。

「残っている女、子供、老人を素早く避難させるのだ。城を燃やされた借りはこの場で返す!戦える者は武器を取ってくれ!」

国をあげての最期の戦となるであろう。勝てば堂々と暁国を再建できるが、負けてしまえば有無を言わさず敵の手に落ちることとなる。ここまで、この地を護ってくれていた住民達を見捨てる訳にはいかない。何としても勝利を掴むのみ。

『弥助、やはり俺も一緒に行くとしよう。姫様達三人は才蔵師匠の洞窟に連れて行ったから安心しろ。小太郎殿には、ここで迎え撃つから少しでも敵を減らして来いと言われた。』

敵の人数は恐らく百を超えている。こちらは、武器を取った住民を合わせても、恐らく五十人を超えた程しかいない…。いかに遠くで数を減らしてこちらで迎え撃つかが重要となって来るはず。その為に誰を連れて先陣を切ろうか迷っていたが、左京が来てくれるというのであれば百人力、これ以上心強いことはない。

「左京よ、腕は鈍っておらぬか?二人で敵を殲滅して安倍晴明をギャフンと言わせてやろうではないか!いざ、参らん!!」

報告を受けていた敵の位置から、通り道を分析し出来る限りの罠を仕掛け迎え撃つ準備をした。遠くの方から徐々に馬の足音が近づいてくる。

『弥助、あれを見てみろ!!』

左京に言われた方を見てみると、前方から誰も乗ってない馬が、四頭疾風の如く此方へと向かってきていた。

「左京、気をつけろ!何かおかしいぞ!」

俺の声に反応するように無人だったはずの馬上から四方八方に飛び出してきた人影。
剣を抜き、左右に分かれ切り裂いていく。

『ん?こ、これは、弥助!こいつは安倍晴明の式神だ!きっと近くに本体もいる。油断をするな!』

飛び出てきた人影を切ってみるも、手応えは一向に無く、刃が触れた瞬間に紙くずとなって消えた。”覚悟致せ!”俺たちが紙切れを相手にしている間に近づいてきた、本物の忍び相手に左京が先陣をきり、瞬きをする間もなく、刀で斬りつける。無駄な動きなど微塵もないその動きに感心するも、俺も負けてはいられない。左京が五人ならばこちらは十人倒してやろうではないか。

三日月と共に、飛び出してきた敵を切りつける。所詮、雇われの忍び達、自分の身が危ないとなると一旦引くような腰抜け共ばかり。我々とは背負うもの、覚悟が違うのだ。

俺達二人の攻撃力に怯んだのか、徐々に敵の軍勢の数は減りあっという間に半分程になった。しかしまだまだ、油断はできぬ。人間を相手にしながらも、ちょこちょこと姿を表す大量の式神に、俺達は体力を奪われ始めていた。

「この、式神が厄介だな…左京何か手はないのか?」

『何を甘い事を言っておる、俺の相方の千鶴はこんな奴ら泣き言も言わずに黙って倒しておったぞ?とにかく切る!それだけだ。』

『お?左京、私を褒めておるのか?仕方がないな、助太刀致そうではないか。 』

『弥助殿!私も来ましたよー!?』

「『お華殿!千鶴!』」

突然現れた、見知ったくノ一の登場に驚きながらも安堵した俺達。これ以上に心強い味方はいない。そして、五十名ほどいた軍勢は気づけば残り数十人といったところまで減っていた。

しかし、勝利を確信し始めた俺達の前についにあの男が現れ状況が崩れ始める。

『弥助、見ろ!あの大きな黒馬を、あれに乗っておるのが安倍晴明だ。気をつけろ!』

自分の背後から次々と式神を放ち、威嚇している。そして、安倍晴明の姿を見たお華が叫び声をあげた。

『お、おのれ!!貴様、
お千代様をどうしたのだ!!』

安倍晴明が自分の着物の上にわざとらしく羽織っていた着物、それはお千代殿が最後に身につけていたものだった。

『ふふふ、何か問題がありますか?裏切りに攻撃…貴女方には随分世話になりましたからね、何かお礼をしようと思っただけですよ?ほら、受け取りなさい?』

そう言って馬上から投げられた物
それは、綺麗に化粧の施された
お千代殿の生首であった。

「左京、一旦退却だ!!お主は千鶴殿を連れて行け!俺はお華殿を!!」

最愛の主人の亡骸を突然突きつけられて茫然自失となった二人を連れ、俺達は小太郎殿の元まで引き返すことにした…


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