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第六章 真相

【五十四】友人(佐助)

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才蔵と初めて出会ったのは、修行中に怪我をし傷口を洗い流そうと立ち寄った河川敷。先に河川敷にいた才蔵は拙者を見つけると走って近寄ってきた。なんだ?こいつは…?と睨みを利かせてみたが、全く怯む様子もない。そして拙者の怪我に気づくと塗り薬を差し出し、何か手伝えることはないか?と問うてきたのだ。

薬を受け取り礼を言うと、才蔵はとても喜び更に話を続けた。煩い奴だとは思ったが身なりから、こいつも忍なのだとわかり、この男はどんな忍なのだろうかと少し興味が出た。

それから時折、河川敷に行ってみるといつも才蔵はそこに居て修行をしたり、座り込んで空を見上げたりしていた。

ある日、母上との口論に疲れ果てた拙者は家を飛び出し何処へ行こうか迷った挙句、河川敷へと向かった。才蔵はやはりその日もそこに居て、拙者の姿を見ると嬉しそうに近寄ってきた。困った時だけ都合のいいやつめと思われるかとも思ったが、他に相談できる相手がいるわけでもない。意を決して拙者が追われていることを語ると、才蔵は驚いた表情を見せた後にとても悲しそうな目をして俺に任せろ!と言ってくれた。言葉通り母上を追い払ってくれた才蔵は、ほとんど話したこともないというのに、今から自分の家に来いと声までかけてくれたのだった。

初めて訪れた他人の家。迎えてくれた才蔵の家族は、才蔵が拙者を友だと紹介すると温かく迎えてくれたが、名前を聞いて表情が変わるのを見逃さなかった。あぁ、やはり自分は名を言うだけで人を遠ざけてしまうのかと思ったが才蔵の母親の対応は違った。”才蔵の友なのだから”と優しく微笑み今日は泊まって行きなさいと理由も聞かずに受け入れてくれた。自分の家とは全く違う、温かな対応に戸惑いはしたものの
その日は世話になる事にした。

翌日家に帰った拙者は、才蔵の家に行ったことは言わず、頭を冷やしたくて洞窟で一晩過ごしたと嘘をついた。母上は、拙者の勝手な行動に怒り狂い蔵へと閉じ込めた。蔵の中で拙者は自分の運命を呪った。

同じ忍一族に産まれたというのに、才蔵は次男というだけで、家族から過度な期待をかけられることも無く、伸び伸びと忍術の修行をし成長している。

それなのに自分は長男というだけで、負けることは許されず何事も出来て当たり前、褒められることもなく両親の言うことは絶対であり、挫けそうになっている時にかけられる言葉といえば”貴方の為”という言葉の鎖だった。

忍だからと言われれば忍ぶことも当たり前だが、産まれた時から続く母からの洗脳ともいえる狂気を帯びた愛情は拙者の人格形成を阻害し破壊した。自分の感情に蓋をし、自分だけでなく、他人を愛する事が出来ない内面を作り上げてしまったのだ。

それから暫く監禁されたのち、解放された拙者は一番にあの河川敷へと向かった。自分が何故そのような行動をとったのかは解らないが、その時は才蔵の顔が見たいと思った。

『佐助!佐助ではないか!あれから全く姿を現さないから心配したぞ…無事でよかった!』

拙者の母親の事を理解した才蔵は、この時から事ある毎に心配し、困った時には助けてくれるようになった。そして隠れて二人で修行をすることを始めたのもこの時くらいからだ。二人で修行するようになってから我々は周りが驚くような速度で成長していった。母上も息子の成長に驚いてはいたが、こうなるのは当たり前、私の息子なのだからといった感じであり、友人ができたという拙者の変化には気づいていなかった。

そして、これから五年後拙者はこの先の呪われた人生を決定づける事件を起こす事となる。

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