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【36】変わらぬ現状
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『翼~?なんで起こしてくれなかったの?ソファーで寝ちゃっ…そうか…翼は昨日倒れて病院にいるんだった…。』
毎日の癖は恐ろしいほど、体に染みついているのだと、つくづく感じ、翼の存在の大きさを痛感する。慌てて起き上がると眠気覚ましのシャワーを軽く浴び頭の中を整理する。
"夕方会社で倒れた翼は、救急車で運ばれ、今は総合病院に入院中"
やっと今の状況を自分の頭で理解した俺は、身支度を済ませ早めに会社に行く事にした。一人で家にいても寂しくなるだけだし寿郎や幸栄さんといる方が気が紛れる。帰宅後に、病院からの電話はなかったので、一日目の夜は乗り越えたということだろう。
徒歩一分の通勤を終えて會舘に到着。
綺麗に片付けられた室内を見て、二人は俺が行った後に頑張ってくれたのだと思った。よし、やったことはないけれど二人の為に美味しいコーヒーを入れてあげようではないか!
確か、翼はいつも…ん?あれ?
『おはよ~!ん?匠君何してるの?』
「あ、二人ともおはよう!昨日はありがとうございました!いやー、二人の為にコーヒーでも入れてみようかなーと思ってたら機械の使い方がわからなくて…」
『もー、慣れないことして壊したりしたら翼に怒られるわよー?ほら、貸して?』
先日の小林さんの旦那さんではないが俺は翼がいないとコーヒー、一つ淹れることができないのかと落ち込んでしまう。
『…、匠気にするな。俺もできない。』
『本当…、二人ともこれを機会にもう少し、しっかりしましょうね?匠君?翼が戻ってきたら全部報告しますからね?』
「えぇー!幸栄さん、怖いからー!!」
翼の事は頭から離れないが、やはり二人といると前を向いていないとダメだと実感できる。
『匠君、今日も病院行くんでしょ?』
「うん、面会時間が午後からみたいだからそれに合わせて行ってくるね!あ、依頼の電話は転送で俺のスマホにかかってくるしさ二人も、もう帰っていいからね?昨日も後片付けまでありがとうございました!」
『了解ー、依頼きたら受けて大丈夫だし遠慮しないで連絡してよね?仕事だけはできる寿郎さんがいるんだから!後、翼の状態の報告も忘れずに!』
『…なんだよ、幸栄…仕事だけって…。』
「寿郎?俺もお前の仕事能力は評価してるぞ?何も考えてなさそうだけど、ツボだけはしっかりと押さえている働きぶりね!」
『…、そういうことにしとくわ。』
二人と別れ、自宅で幸栄さんに持たされたおにぎりを一つ食べると、病院へと向かうことにした。"どうせ、一人だし食べなくてもいいや"とか思っているんでしょ?と俺の心を読まれていたらしく、わざわざ用意してくれていたのだ。山田夫婦には本当に足を向けて寝ることができないな。
一人での食事を終えて病院へと向かう。
受付で名前を言うと、昨日と同じ集中治療室に案内された。もしかしたら、一般病棟に移動しているのではと、考えていたが甘かったようだ。部屋の外から、昨日と変わらない様子の翼を見ていると俺に気づいた昨日の医師がドアを開けてくれた。酸素マスクをしている翼…
見ているだけで胸が張り裂けそうだ…。
できることなら変わってあげたいと思うが
そんなことはきっと翼も望んでいない。
「先生、翼の…妻の容体はどうですか?」
『…、そうですね、昨晩は特に変化もなく落ち着いた状態を保っていました。明日の朝まで特に悪化しなければ、一般病棟へ移そうとは思っています。医師という仕事柄、絶対ということは言いきれませんが…とにかく今は奥様の生命力を信じてあげましょう。』
「わかりました、よろしくお願いします。」
ベッドの横にパイプ椅子を持ってきて腰かけると、爪に繋がれた機械を外さないように、ゆっくりと翼の手を握る。いつもなら握り返してくれる手が今は動かないことがとても悲しかったが、暖かい手の温もりを感じ、彼女はまだ生きようとしているのだと実感させてくれた。何をするわけでもなく、ただ手を握り続け気づいた時には面会終了のアナウンスが流れていた。
帰り際、翼の頬にキスをして
『頑張れ翼!!また来るからね!
ずっと愛してるよ!』
耳元で語りかけると部屋を後にした。
※※※※※※※
匠、帰宅後の深夜二時。
体の異変を示すアラームがけたたましく部屋中に響き渡り、駆けつけた看護師や医師達が命を閉ざすまいと様々な治療を施していた。
心労と疲労から、深い眠りに落ちていた匠には病院からの電話のお知らせは届かない…。
毎日の癖は恐ろしいほど、体に染みついているのだと、つくづく感じ、翼の存在の大きさを痛感する。慌てて起き上がると眠気覚ましのシャワーを軽く浴び頭の中を整理する。
"夕方会社で倒れた翼は、救急車で運ばれ、今は総合病院に入院中"
やっと今の状況を自分の頭で理解した俺は、身支度を済ませ早めに会社に行く事にした。一人で家にいても寂しくなるだけだし寿郎や幸栄さんといる方が気が紛れる。帰宅後に、病院からの電話はなかったので、一日目の夜は乗り越えたということだろう。
徒歩一分の通勤を終えて會舘に到着。
綺麗に片付けられた室内を見て、二人は俺が行った後に頑張ってくれたのだと思った。よし、やったことはないけれど二人の為に美味しいコーヒーを入れてあげようではないか!
確か、翼はいつも…ん?あれ?
『おはよ~!ん?匠君何してるの?』
「あ、二人ともおはよう!昨日はありがとうございました!いやー、二人の為にコーヒーでも入れてみようかなーと思ってたら機械の使い方がわからなくて…」
『もー、慣れないことして壊したりしたら翼に怒られるわよー?ほら、貸して?』
先日の小林さんの旦那さんではないが俺は翼がいないとコーヒー、一つ淹れることができないのかと落ち込んでしまう。
『…、匠気にするな。俺もできない。』
『本当…、二人ともこれを機会にもう少し、しっかりしましょうね?匠君?翼が戻ってきたら全部報告しますからね?』
「えぇー!幸栄さん、怖いからー!!」
翼の事は頭から離れないが、やはり二人といると前を向いていないとダメだと実感できる。
『匠君、今日も病院行くんでしょ?』
「うん、面会時間が午後からみたいだからそれに合わせて行ってくるね!あ、依頼の電話は転送で俺のスマホにかかってくるしさ二人も、もう帰っていいからね?昨日も後片付けまでありがとうございました!」
『了解ー、依頼きたら受けて大丈夫だし遠慮しないで連絡してよね?仕事だけはできる寿郎さんがいるんだから!後、翼の状態の報告も忘れずに!』
『…なんだよ、幸栄…仕事だけって…。』
「寿郎?俺もお前の仕事能力は評価してるぞ?何も考えてなさそうだけど、ツボだけはしっかりと押さえている働きぶりね!」
『…、そういうことにしとくわ。』
二人と別れ、自宅で幸栄さんに持たされたおにぎりを一つ食べると、病院へと向かうことにした。"どうせ、一人だし食べなくてもいいや"とか思っているんでしょ?と俺の心を読まれていたらしく、わざわざ用意してくれていたのだ。山田夫婦には本当に足を向けて寝ることができないな。
一人での食事を終えて病院へと向かう。
受付で名前を言うと、昨日と同じ集中治療室に案内された。もしかしたら、一般病棟に移動しているのではと、考えていたが甘かったようだ。部屋の外から、昨日と変わらない様子の翼を見ていると俺に気づいた昨日の医師がドアを開けてくれた。酸素マスクをしている翼…
見ているだけで胸が張り裂けそうだ…。
できることなら変わってあげたいと思うが
そんなことはきっと翼も望んでいない。
「先生、翼の…妻の容体はどうですか?」
『…、そうですね、昨晩は特に変化もなく落ち着いた状態を保っていました。明日の朝まで特に悪化しなければ、一般病棟へ移そうとは思っています。医師という仕事柄、絶対ということは言いきれませんが…とにかく今は奥様の生命力を信じてあげましょう。』
「わかりました、よろしくお願いします。」
ベッドの横にパイプ椅子を持ってきて腰かけると、爪に繋がれた機械を外さないように、ゆっくりと翼の手を握る。いつもなら握り返してくれる手が今は動かないことがとても悲しかったが、暖かい手の温もりを感じ、彼女はまだ生きようとしているのだと実感させてくれた。何をするわけでもなく、ただ手を握り続け気づいた時には面会終了のアナウンスが流れていた。
帰り際、翼の頬にキスをして
『頑張れ翼!!また来るからね!
ずっと愛してるよ!』
耳元で語りかけると部屋を後にした。
※※※※※※※
匠、帰宅後の深夜二時。
体の異変を示すアラームがけたたましく部屋中に響き渡り、駆けつけた看護師や医師達が命を閉ざすまいと様々な治療を施していた。
心労と疲労から、深い眠りに落ちていた匠には病院からの電話のお知らせは届かない…。
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