残夢~思い残したことはありませんか?~

十文字心

文字の大きさ
26 / 39

【25】有能な部下

しおりを挟む
翌日、幸栄達には休んでもらい昨夜の片付けをするために匠君と會舘へときていた。

『いやー、昨日は楽しかったね!なんかさ
弥生ちゃんって年も離れてるし、みんなの妹って感じがするよ。翼もそうでしょ?』

「そうだね!まぁ、匠君は熟女好きだしね?これで若い子が好きって聞いてたら少しヤキモチ妬いちゃってたかもしれないけどさ。」

『もぉ、俺は翼一筋だから!』

「知ってるー。」

片付けを終えて自宅に戻ろうとしていると
事務所の電話が鳴り出した。どうやら神様は
私達に休みを与える気は更々ないらしい。

「はい、輪廻會舘でございます。……、はい家族葬のご依頼ですね、かしこまりました。……、承知しました、では明日の朝9時にお待ちしております。」

『…翼、何だって?』

「あ、家族葬の依頼なんだけど、どうも殺人事件の被害者らしくて…検死とかあるからここに御遺体が到着するのが明日の午後以降らしいの。でも、うちでやりたいから予約できますか?だってさ。とりあえず明日の朝から説明と契約ってことで、資料だけ準備したら今日は休みましょ!私、やっておくから寿郎君に電話しといてくれる?」

『…殺人事件か。何か重い依頼が続きますね。とりあえず電話しとくわ!』

今日一日でも、幸栄達に休んでもらうことが出来ただけよかったと思いながら明日の準備を進める。…あれ?頭が痛い…。今日は天気が悪いからなのか?久々の頭痛に耐えきれず
ソファーに横になっていると、電話を終えた匠君が戻ってきた。

『ただいまー!……って翼?大丈夫!!?』

「あ、ごめん、大丈夫。久しぶりに少し頭痛がきただけだからさ?天気悪いし、多分低気圧にやられちゃっただけだよ!」

『そう?…ならいいけどさ?とにかく今日は家に戻ってゆっくり休も!明日は寿郎達もくるしさ、朝痛かったら休んでくれても大丈夫だし!』

匠君に抱えられるようにして會舘を出ると
徒歩一分の帰宅時間。こういう時家が近いのは本当に助かる。帰宅後私はまた発熱してしまい、せっかくの休日を匠君と楽しむこともなく結局朝まで布団で過ごすこととなった。


『…翼?おはよー。うん、まだ少し熱があるみたいだ。9時に昨日の人くるから、とりあえず俺行ってくるわ!翼は俺が戻ってくるまで寝ててね?あ、朝食はおかゆ作っておいてあるからお腹空いたらたべてよね!じゃ行ってくるよ!翼?愛してるからね!』

言葉を発する間もなく、私のおでこにキスをしてそそくさと出勤してしまった匠君。
熱を測ってみると微熱よりも少し高いくらいの体温が表示されている。頭も昨日ほどではないがまだ少し痛い…。お言葉に甘えて少し休ませてもらうことにしよう。


~~~~~~~~~

『匠君おはよー!あれ?翼は?』

「二人ともおはよー!翼、また調子悪いみたいでさ?熱も少しあったから家に置いてきた!9時の説明だけ終わったら一回家に戻るけどいいかな?」

『え?また具合悪いの?もちろんだよ!一度大きい病院で検査したほうがいいかもしれないよね。この前もあったじゃん?』

「…そうだな。終わったら連れて行ってくるよ!よし、とりあえず仕事頑張るわ!」

応接室に準備をすませると、ちょうど見知らぬ車が駐車場へと入ってきたのが見えた。
降りてきたのは憔悴しきった初老の女性一人のみである。幸栄さんがお茶の準備を始め、寿郎は玄関で出迎えをしてくれている。阿吽の呼吸とはこのことだな、やはり俺はこの二人がいないと何もできないのかもしれない。

「渡辺様、朝早くからありがとうございます。私は当會舘の支配人をしております"岩崎"と申します。…この度は御愁傷様でございました。早速ですが話に入らせて頂いてもよろしいでしょうか?」

『…はい、よろしくお願い致します。』

「それでは早速…………」

何個かのプランを提案し、結局御遺体の到着が何時になるかわからないとのことだったので通夜は行わずに明日葬儀を執り行い、そのまま火葬へと出発をするプランで進めることとなった。

「渡辺様?大変な時に申し訳ありません。お見受けしたところ、かなりの心労でお疲れのようですが、他に親族と呼べる方はいらっしゃいますか?」

『……、すみません、最期くらい母親の私がしっかりとしていないといけないのに…。
聡は私が一人で育ててきたので父親はいません。私の母は生きているのですが遠方でこちらまでくることも体力的に無理なんです。しかも、大切な孫が殺されて死んだなんて聞いたらきっと心労で母まで亡くなってしまうような気がして、声をかけてないんです…。』

「…そうでしたか、辛い中お話頂きありがとうございました。私共のスタッフには女性も在籍しておりますので、同性のほうが言いやすいことなどありましたら遠慮なくお申し付けください。では、お忙しいと思いますので一度お引き取り頂いても大丈夫ですよ!困ったことなどありましたら、お電話頂けましたら検討いたしますので連絡お願いします。」

『岩崎さん、ご丁寧にありがとうございます。では、一度帰宅いたしますのでまた午後からよろしくお願い致します。』

渡辺様を見送ると、御遺体の受け入れと明日の葬儀の準備を二人に任せて一度自宅へ戻ることにした。

「ただいまー!」

翼の返事はないのでまだ二階にいるようだ。
寝室のドアを開けて中を覗いてみると、まだ寝ている様子の翼。おでこを触ってみると
朝一よりは熱が下がっているようだ。

『…あれ?匠君、もう終わったの?…ってもうあれから二時間も経っているじゃない!仕事は大丈夫なの?』

「うん、今日の通夜はなしで明日葬儀の後にそのまま火葬することになったからさ。準備は二人がゆっくり進めてくれてる!だからさ、病院行こ?」

『…うん、わかった。』

近くの総合病院の初診受付にギリギリで間に合い、何とか検査を受けることができたが
受診した時間が遅かったのと、本日は週の終わりということもあり、結果は週明けにということで今日は帰宅することになった。

「あー、翼俺モヤモヤするよー!総合病院って何であんなに待たされるのに、大事なところ焦らすんだろうな?」

『まぁまぁ、私単純だから病院きて検査受けたら治ってきた気がするよ?ほら、病は気からっていうし!それより、幸栄達頑張ってくれてるんだからお土産のケーキとお昼ご飯買って早く會舘に戻りましょう。』

「わかった!けど、翼はみんなでお昼ご飯食べたら帰って家で寝ててよね?これは社長命令だから!」

『社長!かしこまりました。』

馴染みの弁当屋と、ケーキ屋に寄って人数分の食料とデザートを調達し、會舘へと戻るともうすでに明日の葬儀の準備はほとんど終わりというところまで進められていた。
御遺体はまだ到着していないようだ。
そして、みんなで昼食を食べている時は元気なようにも見えたが、時折ふらついていたのを見逃さなかった幸栄さんにより、翼は強制退場させられてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

《完結》氷の侯爵令息 あなたが子供はいらないと言ったから

ヴァンドール
恋愛
氷の侯爵令息と言われたアラン。彼は結婚相手の伯爵令嬢にとにかく冷たい態度で接する。 彼女は義姉イライザから夫が子供はいらないと言ったと聞き、衝撃を受けるが気持ちを切り替え生きていく。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

野生なら許される ――だけど人間は違う

ファンタジー
自宅へ帰ると、妻から「子どもができた」と知らされる。 それに夫は……。 ※複数のサイトに投稿しています。

処理中です...