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【7】短い生涯

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午前7時、起床して朝食を作っていると
電話がなった。輪廻會舘からの転送電話だ。
きっと、葬儀の依頼だろう。

「おはようございます、輪廻會舘でございます。はい、葬儀の依頼ですね、かしこまりました。喪主の方のお名前と電話番号、故人様のお名前と年齢を教えていただけますか?
………、はい、かしこまりました。それでは十時過ぎにお待ちしておりますね。」

電話を切るとタイミングよく、
二階から彼がおりてきた。

『翼、おはよ~?電話なってました?』

「匠君、おはよう。葬儀依頼の電話でした。…何かね、今日の故人は中学生みたい…。
若い子を送り出すのって辛いよね…。
とりあえず、幸栄達には連絡しておいた。
十時にご遺族が訪ねてこられるみたいだから、早めに行って準備だけしよう!」

『そっか…、今日も忙しい一日になりそうだからしっかりと食べておこうね!翼、作ってくれてありがとう。いただきます!』

慌ただしい朝食の時間が終わり
準備を済ませると、左足から靴を履き
二人で一緒に家を出る。

私達が到着して三十分後には幸栄達も
出勤してくれた。本日の故人概要を二人にも説明し、四人で分担して昨日の後片付けを
終わらせると、到着予定の一時間前に準備を終えた。

『はぁ、何とか間に合ったね。少し休憩してもいい?私達まだ朝ごはん食べてないんだよね~。』

幸栄の申し出に、人数分のコーヒーを
淹れる準備をする。

『いや~、二人にはさ、いつも急な呼び出しに応じてくれて、感謝しかありません。本当ありがとうね!』

『社長?…給料上げろよな?』

『もー、寿郎怖いから!充分貰ってるじゃない?この給料で、こんなに自由な職場他に
ないわよ?とりあえず焼肉行きましょ?
や・き・に・く♪』

『よーし!とりあえず今日の依頼が全て
片付いたら、みんなで焼肉だ!!』

「はーい、コーヒー入りましたよ。」

『翼ありがとー♪私、翼を嫁にほしいわ。』

『幸栄さん?そ、それはダメ!!
翼は俺の奥さんなのー!!』

『もう、冗談じゃない?匠君は
本当翼がいないとダメだよねー。』

基本無口な寿郎君以外で繰り広げられる
コントのような会話。
私はこの四人でいる時の空気感が大好きだ。
毎日のように人の"死"と向き合う仕事をしている私達。だからこそ、みんなには長生きしてもらいたいと常々思っている。

約束時刻の五分前、駐車場のほうから
エンジン音が聴こえる。
ご遺族が到着されたようだ。
私たちは、仕事スイッチをオンにして
お客様を迎える準備を整えた。

「小林様、おはようございます。支配人の
岩崎でございます。この度は御愁傷様でした。今後の流れを説明させて頂きますので
どうぞ中にお入りくださいませ。」

匠君が出迎え、私たちは並んで頭を下げる。奥の応接間に入ってきたご夫婦を案内し
幸栄がお茶を淹れて運んでくれた。

私と匠君で、火葬までの流れを説明し
納得いただけたら契約は成立する。
とにかく、ひっそりと行いたいという希望だったので、参列者はご夫婦と故人の兄姉のみで行われることとなった。話を聞いてわかったことだが、どうやら今回の故人は自殺…。

憔悴しきって、ただ泣いているだけの奥様と
自分の置かれた立場に怒りを覚え、それを必死に抑えながら対応してくださったご主人。
ご兄姉は関東に住んでいるので到着は夕方になりそうとのことだった。
精神的なショックも多い様子だったので
後の事は任せてもらい、一度帰宅をして
また夕方にきてもらうことにした。

小林夫婦が帰宅後、事務所にいた幸栄と
寿郎君に今回の事情を説明する。

『中学生が自殺か…何かやりきれないわね。
これから楽しいことが沢山あったかもしれないのに…。』

『…一番多感な年頃だからな。』

思ったことを口にする幸栄と寿郎君。
匠君は一人で難しい顔をしていた。

「…匠君?どうしたの?難しい顔をして。」

私が尋ねてみると、こっちにきてと
事務所の外に連れ出された。

『翼?俺、明日霊柩車の運転手だよね?
何か起こったりするのかな?急に不安に
なってきまして…。』

「え?そんなこと心配してたの?田中の婆さんはさ、占いとかやってたりして元々霊感あったんじゃない?だから死んでから現れたんだと思うし、今回の男の子が現れるとは限らないわよ?私が変なこと言っちゃったからだけど…今はご両親の助けになれるように支配人として頑張りましょう?」

少し落ち着いたのか、先ほどよりも
柔らかい表情になった彼。

『うん、翼の言うとおりだ!出てきたら出てきたで助けてあげればいいしな!よし、何かスッキリしました。ありがとう翼!あ、今日言ってなかった!愛してるよ?』

「知ってる~。さて、戻って準備しましょ!」

いつもの調子に戻った匠君に一安心。
ご遺族の心に寄り添うのも難しい案件では
あるが、四人で精一杯の準備をして故人を
送り出してあげよう。
後は、匠君が変なことに巻き込まれないことを祈るばかりである…。
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