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カーヴェラの屋敷の中にある、木目のモダンな木でできた一室。そこでは、賑やかな朝食が行われていたーー。
「いや~、それにしてもよかったよ~!ユウキ君が自・分・か・ら・、あの部屋から意・図・的・に・、自・分・の・意・思・で・出てきてくれてさ~!」
「あ……あはは」
ニコニコと微笑むカーヴェラの横では、何かを吸い取られたようにしょぼくれているユウキの姿が。
ポピィの目には何が起こったのか、さっぱり頭が追いつかなかった。
「さて、まあ他にも住人がいるんだがとりあえず。今更だか改めて自己紹介でもしようか。私はカーヴェラ、この屋敷の主兼、管理人とでも言ったところかーー?まあ、よろしく頼む」
ニコッ、微笑みながら目線を送るカーヴェラ。
「私はグレイスだ。もう知っていると思うが、これでも聖騎士だ。よろしく頼む」
「元……だけどな今は〝不死王〟じゃねえか」
「ユウキ……致し方ない事実とはいえ、あまりそういう事を言われると心苦しいのだが……」
からかいながらケケケと笑いユウキ。
「で、この死んだ魚のフンみたいな奴が私の弟子のユウキだ」
「……お師匠さま~、せめて死んだ魚にしてくれませんか~」
「あら?だってそうだろう……?お前が小さい頃なんかはいつも私の後ろをついて回って『お師匠さま~、怖いから一緒におねんねして~』ってついてきたり、お風呂やトイレにいく時なんかも何かと私におねだりして」
「だああああああああああっ!!!昔の話をいちいち持ち出してくるんじゃねぇ!!!」
立ち上がって赤面するユウキに、わははと腹を抱えて涙を浮かべるカーヴェラ。
なんだかんだで仲良しなんだなと微笑ましく思えてくる。
「こちらこそ改めまして、ポピィ・レッドです。こっちはお姉ちゃんのヒュイ。よろしくお願いします!」
「……?お姉ちゃん……?妹じゃなくて……?」
ギョッと目を丸くするユウキ。
「はい!お姉ちゃんですよ?」
「…………頭痛くなってきた」
「お前は考えるのが苦手なタイプだからな……魔術だって感覚とセンスであれだけ〝特級魔術〟ができるのに、何で普通の他の奴ができるものができないのか……」
やれやれと首を振るカーヴェラ。
普段とは違う朝食は、わきあいあいとした雰囲気から始まったーー。
円卓の上に置かれた朝食は、ベーコンに目玉焼き、バターの塗ってある食パン、大きめの三つのティーポットにはそれぞれミルク、紅茶、コーヒーが入っており、中央には好みで使えるコショウや砂糖などの調味料やいちごジャムなどが置かれていた。
「っーー!グレイスさん、これすごく美味しいです!!」
料理を口にし、感嘆の声を上げるポピィ。
「そうだろう!?いや~、御前様の舌を唸らせる為に、料理の練習をずっとしてきたからな……!生まれてこのかた剣より軽い刃物を持った事がなかった私だが、ポピィ殿の口にもあったようでよかった……!」
涙ぐみながらガッツポーズをするグレイス。
ヘッ、と口を八の字にしてカーヴェラも料理を口に運ぶ。
「そういやレッドって、なんか前にいなかったっけ……有名な鍛冶師の人?」
「ああ~……お祖父様の事ですか?」
ジャムを塗って食パンをかじりながら、ポピィは答える。
「確かポピィ殿の祖父はゼフォラ殿だったか……?あの人はなかなか凄腕の鍛冶師だったーー。境地に達しているとも言える程にな……亡くすには惜しい人だった……」
どこか感慨深そうに、しかし残念そうに答えるグレイス。
「ああ、なかなかいい鍛冶師だった。そもそも私がちょくちょくポピィの様子を見にいくきっかけになったのが、かつてゼフォラを訪れた時の事だったからなーー」
と、紅茶をすすりながらカーヴェラが。
「っーー!それってつまり……私はお二人と昔に一度会った事がある……という事ですか?」
ガタッーーと立ち上がり、驚きを隠せない様子のポピィ。
二人は同時にコクリと頷いた。
「ああ、私の使うこの《魔剣ダークソード》を扱える鍛冶師は世界にもそうそういなくてな……ゼフォラ殿にメンテナンスを依頼するため、十数年程前に訪れた事があったのだーー。そうか、御前様はあの時ポピィ殿に一度会っていたのだな……」
「ああ、まあな。しかしあの小さかったお前が、立派に成長したものだ……」
ポピィは前世の記憶がある分、幼少期の記憶ははっきりしているーーが、カーヴェラの事は憶えていない。
おそらくカーヴェラの《隠蔽魔術ロスト》によって、存在が認識できなかったのだろう。
「そうだったんですね……」
どこか運命を感じる少女のように、嬉しそうな笑みを浮かべるポピィ。
隣のヒュイはグレイスの元に駆け寄り、朝食のおかわりをもらっていた。
「ふん~、じゃあお前もーー鍛冶師になりたいのか?」
ユウキの言葉に一瞬俯きながら、考え込む。
「……確かに、いつか鍛冶師になれたら……とは思います。でも今は、他にもやりたい事があるんです」
「やりたい事……?」
その場がしん、と静まり返る。
「家族を失って、家を失って、今はみなさんに出会えて本当に嬉しいんですけど……それでも、ヒュイは私が守ってあげたいんです。……もう、失わないように……。強くなりたい……。だから、カーヴェラさんの元で学んで強くなりたいんです。もう……二・度・と・」
そこには、前世も含めてーーというような、強い意志のようなものが込められていた。
辺りが暗い沈黙に包まれる。
ユウキの申し訳無さそうに頭を掻くそぶりを見て、暗い沈黙を振り払うように、カーヴェラが爆弾を投下した。
「ああ……そう言えば言い忘れたけどコイツーー《転生者》なんだよ」
「っーー!転生者……って、まさかあの……!?」
「…………ポピィ……殿が?」
「…………え?」
「「「ええええええええええええええええ」」」
円卓を囲む一室に、カーヴェラとヒュイを除く全員の叫び声が木霊したーー。
時間が動き出し、最初に口を開いたのはユウキだった。
「いや、なんでお前も驚いてるんだよ?」
「だってーー!だって誰にも話した事ないのに何で知ってる……の?カーヴェラさん……」
「いや、そんな事よりまず……御前様!ポピィ殿が《転生者》というのは、本当ですかーー!?本当にあの……?」
ミルクを混ぜた紅茶を嗜みながら、カーヴェラは口を開く。
「ああ、なんなら私がポピィの事を気にかけて度々訪れていたのもそういう理由だからなーー。まあ遠くから眺める程度だが……。〝不死王転生者〟ではない、正真正銘の《転生者》だーー。どうだ?驚いただろう?」
「てんせいしゃ?」
キョトンとするヒュイの頭を撫でながら、カーヴェラはニコリと微笑む。
ポピィは改めて、《転生者》がこの世界でとてつもなく重要な存在なんだなと、実感の湧かないままに感嘆する。
「すごいですねーー。誰にも話した事ないのに、私の前世のことに気づくひとが二・人・も・い・る・なんてーー」
と、そこまで行ってバンッーーとカーヴェラが机を叩いて目を丸くする。
ギョッとしたポピィもまた、目を丸くしていたーー。
「あ……あの、カーヴェラさん……?」
「ポピィ……お前が《転生者》だって事、他に勘付いている奴がいるのか……?」
同時にポピィを凝視するユウキとグレイス。
椅子に座り直し深く思慮するカーヴェラ。
グレイスも何かを思い悩むようにして、問いかける。
「もしそれが本当ならマズイですね……。ポピィ殿が《転生者》だという事が知れ渡ればいつ誰に狙われる事になるかー?それこそ、帝国に目を付けられれば、力づくでもポピィ殿を奪おうとするのではーー」
「いや、帝国は《転生者》をそこまで重要視してはいないーー。確かに軍事力となるポピィを放ってはおかないだろうが……鍛冶師としての腕前さえバレなければ大丈夫だ。それこそ私・と対立してまで取りに来はしないだろう……だが、問題は聖国だーー!奴らは狂信的なまでに《転生者》を神聖視している……。それこそもしポピィの事が知れ渡れば、私がいるとしても強引に奪いに来るだろうーー。」
二人があまりに重暗い雰囲気から、より自分の存在が
大きいものだと自覚するポピィ。
……と、ユウキがそこに。
「あの~……一応オレも聖国の元〝勇者パーティー〟になんだけど~……見た感じあんまり《転生者》を探しているような感じはなかったぞ……?」
ユウキのその言葉に、カーヴェラは重苦しく答える。
「だろうな……。《勇者》や《大賢者》、《聖女》や《大魔女》みたいな目・に・見・え・て・存・在・す・る・職業を探すのが当然だろうーー。だが、だ。奴らは《転生者》を見た事が無い……。にも関わらずのあの狂・人・的・崇・拝・思・想・だーー。もしポピィの存在がバレたらどうなるかーー!
」
今までにないカーヴェラの取り乱しようにどうしたものかと思い悩むポピィ。
だがその思いとは対照的に、どこか安心している自分もいたーー。
なぜならーー
「たぶん……ですけど、大丈夫じゃないでしょうか?皆さんの私を心配してくれる気持ちはとてもありがたいのですが、あ・の・人・は私を《転生者》だと気づいた上で助けてくれましたし、とても信頼できる人だと思いますーー!」
ずっと重苦しい表情だったカーヴェラが、ポピィを見つめて口を開く。
「そいつがお前を嵌めようとしている可能性は無いーーと、断言できるか?」
コクリ、と頷く。
「そうか……ならひとまずは安心だな……。ところで、お前の存在に気付いたそ・い・つ・は、何でお前の事に気づいたんだ?自分から話した……わけじゃあ無いんだろう?」
ようやく重荷から解放されたような表情のカーヴェラが、ポピィに問いかける。
「私もびっくりでした……。誰にも話した事が無かったのに。確かーー〝星の魔術〟?を使ったとかーー」
そこまで言ってガタッ、と再び机を叩き、先程よりも目を開いて驚きを隠せない様子のカーヴェラ。
そしてそれは、他の二人も同様であった。
「御前様ーー!まさかそれは……」
「ああ……、あ・い・つ・だ。間違いないーー!まったく……、半年も連絡を寄越さなかったと思ったら……。あっははは!そうか!……あいつがな~」
カーヴェラとグレイスのやり取りにイマイチ状況が掴めない様子のポピィ。
「あの~、お二方は何か知っているんですか?」
おずおずと聞き返すポピィに、カーヴェラが答える。
「ああ、お前の会ったそ・い・つ・……アシュリーは私の弟子の一人でな……つまり、お前の姉弟子に当たる人物だーー。まさかあの孤独大好きっ子が、他人であるお前を助けるだなんてな~!いや~、師匠としては弟子の成長が聞けて何より何よりだ!」
満足そうに両手を腰に当て、誇らしげに笑うカーヴェラ。
対してポピィは……
「え、えええええええええええええええ!!!!!」
驚きを隠せずにあんぐり顔をしていたーー。
「いや~、それにしてもよかったよ~!ユウキ君が自・分・か・ら・、あの部屋から意・図・的・に・、自・分・の・意・思・で・出てきてくれてさ~!」
「あ……あはは」
ニコニコと微笑むカーヴェラの横では、何かを吸い取られたようにしょぼくれているユウキの姿が。
ポピィの目には何が起こったのか、さっぱり頭が追いつかなかった。
「さて、まあ他にも住人がいるんだがとりあえず。今更だか改めて自己紹介でもしようか。私はカーヴェラ、この屋敷の主兼、管理人とでも言ったところかーー?まあ、よろしく頼む」
ニコッ、微笑みながら目線を送るカーヴェラ。
「私はグレイスだ。もう知っていると思うが、これでも聖騎士だ。よろしく頼む」
「元……だけどな今は〝不死王〟じゃねえか」
「ユウキ……致し方ない事実とはいえ、あまりそういう事を言われると心苦しいのだが……」
からかいながらケケケと笑いユウキ。
「で、この死んだ魚のフンみたいな奴が私の弟子のユウキだ」
「……お師匠さま~、せめて死んだ魚にしてくれませんか~」
「あら?だってそうだろう……?お前が小さい頃なんかはいつも私の後ろをついて回って『お師匠さま~、怖いから一緒におねんねして~』ってついてきたり、お風呂やトイレにいく時なんかも何かと私におねだりして」
「だああああああああああっ!!!昔の話をいちいち持ち出してくるんじゃねぇ!!!」
立ち上がって赤面するユウキに、わははと腹を抱えて涙を浮かべるカーヴェラ。
なんだかんだで仲良しなんだなと微笑ましく思えてくる。
「こちらこそ改めまして、ポピィ・レッドです。こっちはお姉ちゃんのヒュイ。よろしくお願いします!」
「……?お姉ちゃん……?妹じゃなくて……?」
ギョッと目を丸くするユウキ。
「はい!お姉ちゃんですよ?」
「…………頭痛くなってきた」
「お前は考えるのが苦手なタイプだからな……魔術だって感覚とセンスであれだけ〝特級魔術〟ができるのに、何で普通の他の奴ができるものができないのか……」
やれやれと首を振るカーヴェラ。
普段とは違う朝食は、わきあいあいとした雰囲気から始まったーー。
円卓の上に置かれた朝食は、ベーコンに目玉焼き、バターの塗ってある食パン、大きめの三つのティーポットにはそれぞれミルク、紅茶、コーヒーが入っており、中央には好みで使えるコショウや砂糖などの調味料やいちごジャムなどが置かれていた。
「っーー!グレイスさん、これすごく美味しいです!!」
料理を口にし、感嘆の声を上げるポピィ。
「そうだろう!?いや~、御前様の舌を唸らせる為に、料理の練習をずっとしてきたからな……!生まれてこのかた剣より軽い刃物を持った事がなかった私だが、ポピィ殿の口にもあったようでよかった……!」
涙ぐみながらガッツポーズをするグレイス。
ヘッ、と口を八の字にしてカーヴェラも料理を口に運ぶ。
「そういやレッドって、なんか前にいなかったっけ……有名な鍛冶師の人?」
「ああ~……お祖父様の事ですか?」
ジャムを塗って食パンをかじりながら、ポピィは答える。
「確かポピィ殿の祖父はゼフォラ殿だったか……?あの人はなかなか凄腕の鍛冶師だったーー。境地に達しているとも言える程にな……亡くすには惜しい人だった……」
どこか感慨深そうに、しかし残念そうに答えるグレイス。
「ああ、なかなかいい鍛冶師だった。そもそも私がちょくちょくポピィの様子を見にいくきっかけになったのが、かつてゼフォラを訪れた時の事だったからなーー」
と、紅茶をすすりながらカーヴェラが。
「っーー!それってつまり……私はお二人と昔に一度会った事がある……という事ですか?」
ガタッーーと立ち上がり、驚きを隠せない様子のポピィ。
二人は同時にコクリと頷いた。
「ああ、私の使うこの《魔剣ダークソード》を扱える鍛冶師は世界にもそうそういなくてな……ゼフォラ殿にメンテナンスを依頼するため、十数年程前に訪れた事があったのだーー。そうか、御前様はあの時ポピィ殿に一度会っていたのだな……」
「ああ、まあな。しかしあの小さかったお前が、立派に成長したものだ……」
ポピィは前世の記憶がある分、幼少期の記憶ははっきりしているーーが、カーヴェラの事は憶えていない。
おそらくカーヴェラの《隠蔽魔術ロスト》によって、存在が認識できなかったのだろう。
「そうだったんですね……」
どこか運命を感じる少女のように、嬉しそうな笑みを浮かべるポピィ。
隣のヒュイはグレイスの元に駆け寄り、朝食のおかわりをもらっていた。
「ふん~、じゃあお前もーー鍛冶師になりたいのか?」
ユウキの言葉に一瞬俯きながら、考え込む。
「……確かに、いつか鍛冶師になれたら……とは思います。でも今は、他にもやりたい事があるんです」
「やりたい事……?」
その場がしん、と静まり返る。
「家族を失って、家を失って、今はみなさんに出会えて本当に嬉しいんですけど……それでも、ヒュイは私が守ってあげたいんです。……もう、失わないように……。強くなりたい……。だから、カーヴェラさんの元で学んで強くなりたいんです。もう……二・度・と・」
そこには、前世も含めてーーというような、強い意志のようなものが込められていた。
辺りが暗い沈黙に包まれる。
ユウキの申し訳無さそうに頭を掻くそぶりを見て、暗い沈黙を振り払うように、カーヴェラが爆弾を投下した。
「ああ……そう言えば言い忘れたけどコイツーー《転生者》なんだよ」
「っーー!転生者……って、まさかあの……!?」
「…………ポピィ……殿が?」
「…………え?」
「「「ええええええええええええええええ」」」
円卓を囲む一室に、カーヴェラとヒュイを除く全員の叫び声が木霊したーー。
時間が動き出し、最初に口を開いたのはユウキだった。
「いや、なんでお前も驚いてるんだよ?」
「だってーー!だって誰にも話した事ないのに何で知ってる……の?カーヴェラさん……」
「いや、そんな事よりまず……御前様!ポピィ殿が《転生者》というのは、本当ですかーー!?本当にあの……?」
ミルクを混ぜた紅茶を嗜みながら、カーヴェラは口を開く。
「ああ、なんなら私がポピィの事を気にかけて度々訪れていたのもそういう理由だからなーー。まあ遠くから眺める程度だが……。〝不死王転生者〟ではない、正真正銘の《転生者》だーー。どうだ?驚いただろう?」
「てんせいしゃ?」
キョトンとするヒュイの頭を撫でながら、カーヴェラはニコリと微笑む。
ポピィは改めて、《転生者》がこの世界でとてつもなく重要な存在なんだなと、実感の湧かないままに感嘆する。
「すごいですねーー。誰にも話した事ないのに、私の前世のことに気づくひとが二・人・も・い・る・なんてーー」
と、そこまで行ってバンッーーとカーヴェラが机を叩いて目を丸くする。
ギョッとしたポピィもまた、目を丸くしていたーー。
「あ……あの、カーヴェラさん……?」
「ポピィ……お前が《転生者》だって事、他に勘付いている奴がいるのか……?」
同時にポピィを凝視するユウキとグレイス。
椅子に座り直し深く思慮するカーヴェラ。
グレイスも何かを思い悩むようにして、問いかける。
「もしそれが本当ならマズイですね……。ポピィ殿が《転生者》だという事が知れ渡ればいつ誰に狙われる事になるかー?それこそ、帝国に目を付けられれば、力づくでもポピィ殿を奪おうとするのではーー」
「いや、帝国は《転生者》をそこまで重要視してはいないーー。確かに軍事力となるポピィを放ってはおかないだろうが……鍛冶師としての腕前さえバレなければ大丈夫だ。それこそ私・と対立してまで取りに来はしないだろう……だが、問題は聖国だーー!奴らは狂信的なまでに《転生者》を神聖視している……。それこそもしポピィの事が知れ渡れば、私がいるとしても強引に奪いに来るだろうーー。」
二人があまりに重暗い雰囲気から、より自分の存在が
大きいものだと自覚するポピィ。
……と、ユウキがそこに。
「あの~……一応オレも聖国の元〝勇者パーティー〟になんだけど~……見た感じあんまり《転生者》を探しているような感じはなかったぞ……?」
ユウキのその言葉に、カーヴェラは重苦しく答える。
「だろうな……。《勇者》や《大賢者》、《聖女》や《大魔女》みたいな目・に・見・え・て・存・在・す・る・職業を探すのが当然だろうーー。だが、だ。奴らは《転生者》を見た事が無い……。にも関わらずのあの狂・人・的・崇・拝・思・想・だーー。もしポピィの存在がバレたらどうなるかーー!
」
今までにないカーヴェラの取り乱しようにどうしたものかと思い悩むポピィ。
だがその思いとは対照的に、どこか安心している自分もいたーー。
なぜならーー
「たぶん……ですけど、大丈夫じゃないでしょうか?皆さんの私を心配してくれる気持ちはとてもありがたいのですが、あ・の・人・は私を《転生者》だと気づいた上で助けてくれましたし、とても信頼できる人だと思いますーー!」
ずっと重苦しい表情だったカーヴェラが、ポピィを見つめて口を開く。
「そいつがお前を嵌めようとしている可能性は無いーーと、断言できるか?」
コクリ、と頷く。
「そうか……ならひとまずは安心だな……。ところで、お前の存在に気付いたそ・い・つ・は、何でお前の事に気づいたんだ?自分から話した……わけじゃあ無いんだろう?」
ようやく重荷から解放されたような表情のカーヴェラが、ポピィに問いかける。
「私もびっくりでした……。誰にも話した事が無かったのに。確かーー〝星の魔術〟?を使ったとかーー」
そこまで言ってガタッ、と再び机を叩き、先程よりも目を開いて驚きを隠せない様子のカーヴェラ。
そしてそれは、他の二人も同様であった。
「御前様ーー!まさかそれは……」
「ああ……、あ・い・つ・だ。間違いないーー!まったく……、半年も連絡を寄越さなかったと思ったら……。あっははは!そうか!……あいつがな~」
カーヴェラとグレイスのやり取りにイマイチ状況が掴めない様子のポピィ。
「あの~、お二方は何か知っているんですか?」
おずおずと聞き返すポピィに、カーヴェラが答える。
「ああ、お前の会ったそ・い・つ・……アシュリーは私の弟子の一人でな……つまり、お前の姉弟子に当たる人物だーー。まさかあの孤独大好きっ子が、他人であるお前を助けるだなんてな~!いや~、師匠としては弟子の成長が聞けて何より何よりだ!」
満足そうに両手を腰に当て、誇らしげに笑うカーヴェラ。
対してポピィは……
「え、えええええええええええええええ!!!!!」
驚きを隠せずにあんぐり顔をしていたーー。
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