侯爵と花

サイ

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侯爵と花

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私はどうしてここにいるのかしら。
はあ、と重いため息をついて、アンドレアはティーカップを置いた。
カチリ、と陶器の音が少しだけ鳴る。
あら、いけない。ドキリとして、思わず周りを見る。誰もこの音には気づかなかったようだ。
少しくらい音を立てたからと言ってアンドレアを叱責するものはもういないというのに。
はあ……。
アンドレアはまた長いため息をついた。

ここは首都の、とある伯爵家の庭園。
今日はそこでガーデンパーティーが開かれている。
社交活動というものにほとんど参加したことがないアンドレアには、友人と呼べる人が一人もいない。友人どころか、侯爵夫人として十年間領地からほとんど出たことのないアンドレアには、知り合いすらいなかった。
それなのに。
バース伯爵領へ出戻ってきてからと言うもの、あちこちから招待状が山のように届くのだった。
ほとんどは、若くして未亡人となったアンドレアを一目見たいといった興味本位のもの。次に多いのが、バース家の婿の座を狙った次男、三男。
すべてに断りの返事をしていたが、今回ばかりは避けられなかった。領地経営を任せている官吏が尋ねてきて、首都でお茶会に出てほしいと言ってきたのだ。
完全なる放置をしていた領地経営。恩恵ばかりを受け取るわけにもいかない。
出るだけでいいですから、顔を出してきてくださいと言われ、参加したのがこのお茶会だった。
詳しいことはよく分からなかったが、アンドレアがこのお茶会に出れば取引がスムーズに行くと言うから、何かしらの条件と取引があるのだろう。
首都観光も兼ねてアンドレアはタウンハウスに移ってきたのだった。

主催者に挨拶をして案内された席に座り、お茶をいただく。
誰も話しかけてこなかった。
一杯飲んだら帰ってもいいのかしら……。
とにかくこういった社交活動のことは、よく分からない。
遠巻きに視線を感じるが、まだ誰も話しかけてこない。
することがないせいでアンドレアは少しお茶を飲みすぎた。
側に控えるメイドにお手洗いを聞いて向かった。

廊下を進んでいると人影があった。
「アンドレア」
声をかけられて見れば、知った顔。
「久しぶりだね。元気そうだ」
アンドレアは表情を曇らせた。
お茶会に来たのか、比較的軽装ではあるがおしゃれな着こなしをしている。少し長い黒い髪を後ろで括り、紺色の服にシルバーの装飾。
「エラード……」
アンドレアが名を呼ぶとエラードはにこりと笑って見せた。
アンドレアはその笑みが苦手だった。この男は笑顔を見せながらも、すこしもアンドレアに対して警戒を解いてはいない。いつも目は笑っていなかった。
「母上、って呼んだ方がいいかな」
「やめて」
エラードがその気がないことは百も承知だ。その気があったとしてもお断りだが。
エラードはアンドレアの亡き夫の末息子である。数多くいる妾に産ませた子で、息子ではあるが現在でもまだ35くらい。
とはいえ、28のアンドレアの戸籍上は息子に当たる。
数多くいる兄たちを押し除け一気に侯爵後継の座に収まった切れ者である。
夫が死んだ葬式の翌日には誓約書を渡してきて、アンドレアに取引を持ちかけた。
かつての実家に帰らせる代わりに、侯爵家の一切に関与しない、と。
「伯爵領の暮らしはどうかな?」
興味もないくせに。
アンドレアは反抗的な表情を隠そうともせず、その場を通り過ぎようとした。
その手を掴まれ、むっとして睨み上げた。
「無礼ね」
「話の途中で立ち去る方も無礼じゃないかな」
「あなたと話すことはないでしょう。誓約書のこと、忘れたの?」
「覚えてるよ」
エラードはもう片方の手でアンドレアの髪をひとすくい手に取った。
「君が侯爵家のことに関与しないこと」
「だったら離して」
「それとこれは別だよ。離縁したわけじゃないんだ。依然として貴女は前侯爵夫人。息子としては親孝行しないとね」
「結構よ。心にもないことを」
「子の心、親知らずだね」
エラードはそう言ってアンドレアの髪に唇を寄せた。
獲物を見るような鋭い目が合い、アンドレアはぞくりとする。
「しばらく王都に滞在するんだろう?今夜は侯爵家に泊まるといい」
エラードは背後に控えている侍従に馬車と伝令の指示をしていた。
アンドレアは不愉快さを隠そうともしなかった。
「嫌よ。勝手に決めないで」
「たまに会った息子に親愛の情はないのか」
「息子は母親にそんな目はしないわ」
アンドレアが言い放つと、エラードはしばし目を見開き、次におかしそうに笑った。
あら、とアンドレアは少し意外に思う。
本当に笑うとエラードは目尻に皺ができるのね。
「そんな目って、どんな目かな」
「男の目よ」
ふん、とアンドレアは言って、しかしその後、ふわりと笑った。
「あなた、ちゃんと笑えるのね。初めて見たわ」
アンドレアが笑うと花が開くようだ。
程なくして侍従が馬車の準備が整ったことを知らせにくる。
「では、行こうか。主催者への挨拶をしておいで」
母と言いながらも、勝手に決めて、こうして強引に事を進めるのは相変わらずだ。
しかし相手は侯爵家当主。家格の違いだけではない。今のバース家の収入は半分以上を侯爵家に頼っている。
アンドレアは諦めたようにため息をついた。
「用事を済ませてから参りますので、先に馬車でお待ちくださいな」



侯爵家のタウンハウスはバース家の3倍くらいは広い。しかも綺麗で、使用人も沢山いる。
かつて夫と暮らしていた時を思い出してアンドレアは少し緊張しながらエラードとディナーを共にした。
「私は父上のようにうるさく言わないよ。楽に食べるといい」
エラードはそう言って、実際に作法を気にするそぶりはなかった。
「料理は気に入った?」
ディナーを終え食後のティータイムは、温室に移動して行った。
ガラスの壁から、庭園までよく手入れされているのが見える。
「ええ、ご馳走様」
簡単なテーブルを挟んで椅子に座っているから、いつもより距離が近い。
アンドレアはカップを口に運んだ。
早く飲んでさっさと寝てしまおうと思った。
「こっちにはいつまでいる予定なんだ?」
「目的は済んだし、もう帰るわ」
こうしてエラードに会ってしまった以上、さっさと帰るのが良さそうだ。首都でゆっくりするのはまたの機会にする。
「私を避けなくても。貴女にそこまで嫌われているとは思わなかったな」
「ご自分の胸に手を当ててごらんなさい」
夫が死ぬまでの10年、会ったのは数える程。しかしエラードはいつも冷たかった。一線どころか何重にも線を置いて、極力アンドレアと関わろうとしなかった。家族の集まりで必死で話しかけようとするアンドレアのことも、忙しいからと無視したし、用事がある時はいつも侍従を通して話しかけられた。
なによりその視線はいつも鋭く冷たかった。
「貴女に酷いことを言った覚えも、した覚えもないんだが」
「そうね。その代わり話しかけてもくれなかったじゃない」
「アンドレア。寂しかったのかい?」
「違うわ。変な方に話を運ばないで」
アンドレアはため息をついた。
「エラード。わからないわ。あの誓約書は、もう関わらないってことだったんじゃないの?私は侯爵家のことにもちろん関心はないし、伯爵領でゆっくりするつもりよ。どうして今になってこんなふうに交流を持とうとするの」
「わからない?」
エラードはアンドレアの手を取った。その甲にそっとキスをする。挨拶などではない。しっかりと唇を押し付けられ、アンドレアはぎょっとして手を引こうとした。ーーが、エラードの手が握って離さない。
「ちょっと…!」
「男の目をしていた、と言ってたじゃないか」
エラードは楽しげにアンドレアの手を握りしめた。
大きな手にアンドレアの白く細い手が囚われたように収まる。
「私は貴女に、欲情している」
ガタン、とアンドレアは席を立った。椅子が後ろに倒れる。
エラードが立ち上がった。
端正な顔がゆっくりとアンドレアに近づいてくる。
ゆっくりと近づき、エラードはアンドレアの耳元で囁いた。
「ごめんね。今日は逃がしてあげられない」



どこが、引き返せるところだったのだろう。
考えてみてもアンドレアにはわからなかった。
ディナーを終えた時?
お茶会で会った時?
それとも、そもそも、王都に来たのがよくなかったのか。
考えたところで答えなどわかるはずはない。



「とても紳士のなされようではありませんね」
アンドレアはエラードを睨みつけた。そんなことをしても無駄だとわかってはいるけれど。
まさか、ベッドに括り付けられるとは思ってもいなかった。
こんなことをされたのは初めてだ。
「アンドレア。そんなふうに見上げたら、私を昂らせるだけだとわからないのかい」
「わからないわ。そうね、あなたがどうしようもない変態だってことは、よくわかったわ」
エラードは楽しそうに笑ってアンドレアの上に乗ってきた。
シャツの前をはだけさせ、男らしい胸がのぞいている。
アンドレアは目のやり場に困って視線を泳がせた。
「さて、今の威勢の良さがどこまで続くか。見ものだな」
 そう言ってエラードは、香油の瓶を傾けた。ゆっくりと手の平にたらし、見せつけるかのようにゆっくりと近づく。
 縛られた両腕はびくともしない。エラードに乗られた身体も。
 衣服のはだけたところから、ぬるりと手が入ってくる。ふわりと甘い香りの香油が、首筋、鎖骨をつつ、と通り、やがて胸の突起にたどり着く。
「んっ…」
 思わず声が出て、慌てて顔を背けた。羞恥に直視できないが、見なくてもわかる。エラードが今、どんな顔をしているか。
 こと、と瓶を置き、エラードの両手は胸の頂を嬲った。緩急つけた動きに、じわりと下部に熱がはいるのを感じる。
 じきに、ピリピリとした違和感に襲われた。
「気づいたか?ただの香油ではない」
「何を…」
 優しく撫でたかと思うと、時折強く。撫でられ、つままれて、さらに敏感になる。身体中の神経が、香油を塗られた場所に集まっているかのようだ。
「皮膚でこの反応か。悪くないな。粘膜に塗ればこの比ではないだろう」
 恐ろしい言葉に、体が先に反応した。よじろうとして、さらに強い力で抑えられる。
「嫌だ。いやです、やめっ…」
 グッと足を固定され、エラードの指が秘部に侵入する。なんの前触れもなく、あまりにも急で無遠慮な触り方だった。
 クチュ、という音が響いた。
「まだ胸しか触っていないのに、これほど蜜を垂らすとは」
 指が1本入っただけで、全身が痙攣しそうな程の快感。その異物が、とんでもなく気持ちよくて。でもどこかもどかしいような。
「そう締め付けるな。ほぐしてやるが、その前に」
 エラードの意地の悪い笑みが見えた。
 まさか。
「や…やめてください。まさか、そんなところに…」
「たっぷり注いでやろう。さあ、天国が見れるかな?」
「や、いや…やめて…お願い、しまっ…!!」
 台詞すらいわせてもらえない。全部言う前に、エラードの指が抜かれたと思ったら、油をたっぷりと含んで指が再び侵入した。
「はっ…あ、あああん!」
 自分の声とは思えないほどの嬌声だった。しかしそれを気にするほどの余裕などもちろんない。
 エラードの指が、くるりと中で回る。どこを刺激されているわけでもないのに。突き抜けるような快感に、ぎゅっと全身が強張る。
 そして次の瞬間からの、熱い、熱い感覚。
 中が熱い。熱く、そしてジリジリと我慢できない感覚。
身を捩りたくて、内腿を擦り合わせたくて体を捻ろうとする。しかしそれも許されず、それどころかガバリと両脚を、広げさせられ、まじまじと秘部をのぞかれた。
「み、見ない…でっ」
「よく見えるよアンドレア。ああ、もどかしい?刺激がほしくてヒクヒクとうごめいているよ。なんていやらしいんだろう。指を入れて少し掻き回すだけでも、あっという間に達してしまいそうだね」
 エラードの恍惚とした声がするたび、その吐息だけでたまらない。
「はっ、あ…」
 声が出てしまう。なんでもいい、なんでもいいからこすって、入れて、ああ、もう、何も考えられない。
「どうしようかな。このまま夜が明けるまで眺めていようか。君の美しい顔が快楽に歪むのを見るだけで、私は十分楽しめる」
  そう言って、つ、と指を秘部の外側に滑らせる。
 決して中まで入るわけではないその刺激に、自分でもキュッとそこが締め付けるのを感じた。
「ああ、なんていやらしい動きで誘うんだ?ほうら、垂れてきた…」
「!!!!!」
 エラードの舌が、すっと下から上へ滑った。とんでもない刺激に身体が跳ね上がる。
「そんな、ところ…」
「ふふ…恥ずかしいねアンドレア。蜜をこぼして、お漏らししたみたいだよ。私がきれいにしてあげようか?」
 もう、だめだ。とても耐えられそうにない。
 ぎゅっと目を閉じて、熱くてたまらない体の置き場を探した。
 どうしようもない。目の前のこの男に縋るしかないのだ。
「お願い、します…エラード…。助けて…」
「アンドレア。音を上げるのが早いんじゃない?昼間の澄ました顔が嘘みたいだね。ああ、たまらないな」
「ふっ、はあ!!」
 ぐ、と再び入ってきたエラードの指が、ゆっくりとなかを掻き回す。そこも、そこも、快感の渦の中で、アンドレアは呼吸を絶やさないことが精一杯だった。
 そのうち息をするのも忘れてしまうに違いない。それほどの快感だった。
「可愛く助けて、って言えたご褒美だ。一度達しておこうか」
 言うや否や、エラードの指が少し強く動く。同時に胸の突起を舐められ、もう片方の手でもう一方の胸を強くつままれる。
 信じられない程の水音が響いた。
 すぐに目の前が真っ白になって、アンドレアは達した。体と心が離れてしまったのではないかと思う快感だった。全身が痙攣する。
「座りなさい」
 エラードの声がする。
 力が入らない体を、半ば無理やりに起こされる。
「ふう、っん…」
腰を触られるだけでまだ熱が戻る。
「ほら、まだ始まったばかりだよ?しっかりするんだ」
 いつの間に解かれたのか、両手の拘束は無くなっていた。衣服ももうない。しかし力は入らず、座ることさえ難しい。
エラードの膝の上に乗せられる。足の間に固く怒張したものが当たる。
「ふ、うう、うっ…」
ただ当たっているだけなのに。びく、びく、と自分のそこが、早く入れてと動いている。
「アンドレア。なんて煽情的な顔だ」
エラードがペロリと顎を舐める。それだけでびくびくと体ははねた。
もどかしい。擦り付けて、入れて、かき混ぜてほしい。
中が熱くて、焦れたようにいつの間にかアンドレアはエラードのものに、自分のそこを擦り付けていた。
「あ、ああ、ん、はあ…」
「アンドレア…ああ、いけない人だ。そんなにぐちょぐちょにして、擦り付けたら…」
エラードの固い陰茎のくびれが、ずくり、とアンドレアの敏感な芯を刺激する。その度に熱く重い快感が全身を駆け巡り、内側からどんどん波が押し寄せてくる。
「ん、んん、んああ――」
「こら」
エラードがアンドレアの腰を止めた。後少しで、この波が弾けたと言うのに。
アンドレアは涙目になってエラードを見た。
「ひどい」
「ああ、泣かないで。そんな顔をされたら、もっと泣かせたくなる」
エラードはアンドレアの腰を浮かし、ぴたりと自分のものをその蜜の滴る秘部に当てた。
「これから私のこれで、貴女をしっかり擦って、カリカリして、そして奥をゴリゴリと押し潰してあげるから」
耳元で囁かれると、アンドレアはきゅう、っとそこが締まるのを感じた。
「あ、だめ、今、入れたら」
「入れたら――?」
「あ、あ、あああああ―――っ!」
ずぶ、とそれは容赦なく沈み込んだ。
太いそこを難なく飲み込んで行く。その質量のものが通り過ぎる快感にアンドレアは目の前が真っ白になるのを感じた。
力無く開いた口に、エラードの唇が重なる。
舌を巻き取られ、舐め上げられ、時に噛まれるように吸われ。
中にあるエラードのものがどく、どく、と存在を主張した。
串刺しにされ逃げ場のないところに、呼吸も阻まれ、アンドレアは意識を手放しそうになる。
ぎゅう、と締め付けてしまうと、エラードのそれがより一層形がわかってしまうような気がする。
「ああ。熱いね。アンドレア。貴女の中は、こんなにきゅうきゅうとして、私のものに必死に吸い付いているよ」
「いや、いや…もうやめて。もうだめ。これ以上は…」
狂ってしまう。
あまりの快感に…後少しでも動いたら、弾け飛んでしまう。
エラードは本当に楽しそうに笑った。そしてアンドレアの腰を掴むと、一気に揺らす。
「あ、あ、ああ、あっ!」
気持ちのいいところを全部擦られて、アンドレアは達した。
その余韻も強く残るうちに、エラードがアンドレアの肩に手を回し、ぎゅう、と下におさえつけた。
「あ、や、やめ…ふか、だめ…ふ、深すぎる!」
「そうだよ。ゴリゴリ押してあげるって言ったでしょう。潰れるほど…押し付けてあげる」
ぎゅう、ぎゅうと、言ったばかりで熱い奥の奥にエラードのものが侵入してくる。
「ん、い、あー!!」
深い深い快感だった。足のつま先まで電流が駆け抜け、アンドレアは声にならない叫びを上げた。その奥へエラードの熱いものも放たれた。





「それで、いつ伯爵領に帰るって?」
「そうね、今すぐにでも」
ひとしきり行為を終えて、ベッドの上。エラードはアンドレアのふわふわと広がる髪をといていた。
「貴女もそんな冗談を言うんだな」
「いやだ。私は本気よ」
エラードはアンドレアを抱き寄せた。
暖かな肌の感触がピッタリと背後に感じる。
散々達したと言うのに、エラードの手が抱きしめるだけでまた芽を吹き返しそうだ。
ちゅ、と首筋にキスをされる。微かにびくりと身体が跳ねる。
「もう少しここに滞在してくれないかな。昨日の今日では、寂しすぎるじゃないか」
「あなた、そんな人だったかしら?あんなに私を嫌っていたじゃない」
「嫌う?私が、貴女を?」
エラードは体を起こした。アンドレアは仰向けになり、エラードの両腕に囲まれる形となる。
「そう、誤解していたんだね。嫌ってはいないよ」
「あんなに冷たくしておいて?」
「だって貴女は父の妻だよ。こんな目で見るわけにはいかないだろう」
エラードはまた情欲を覗かせた目をして、アンドレアに唇を重ねた。
軽い口付けかと思ったら、舌が入ってきて歯列をなぞられる。くちゅ、と音を立ててエラードの舌がアンドレアの舌に絡められた。
「ん、んう…」
「それに、どうしようもなかったんだ。もし貴女が子供を産んだら、私と敵対する存在になってしまうから」
はあ、とエラードは再びアンドレアの横に寝た。
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「愛してはいけないとわかっていたけど、この感情は思い通りにはいかないな。それでも忘れられなかったんだ。おかげで私は、まだ妻を迎えられずにいるっていうのに」
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「人ごとだもの」
アンドレアがにこりと笑って言うので、エラードはいたずらをするように首筋ににキスをし、そのまま舌を這わせた。
「エラード、やめ…くすぐった、あ、はあっ」
「貴女は本当に、小悪魔のように人だ」
その後また2回目、3回目の情事へと発展したのは言うまでもない。
結果アンドレアは侯爵家へ3日滞在し、4日目にしてようやく侯爵が領地に帰るのに合わせ、伯爵家のタウンハウスへと帰ってくることができたのだった。
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