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ハローおホモ達★ギルド入会編

変態サンドイッチ

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さて。番になりたい宣言したルークさんと、いつか堕とす宣言したリイサスさんとのドキドキ★性活はダイジェストでお送りしたくないので、割愛します。

…え、何? どうしても聞きたいだって? ………しゃーないな。ちょい恥ずかしいけど、今回だけだぞ!

はいまず朝!
おはよう異世界。観葉植物の飾られた出窓から朝日が差し込み、澄んだ空気が部屋を満たす。その日の調子を決めると言っても過言ではないくらい、大事な時間。なのに俺は朝から身動きが取れません。
一人で寝た筈なのに、起きたらどっちかに抱き締められている状態から始まります。キスの雨です。
わざわざ買ってきてくれた小さめサイズの服を、ベタベタ引っ付きながら着替えさせてくれたりと、子供みたいに世話を焼かれて、ルークさんとリイサスさんが当番制で作った朝ごはんを食べます。顔に少しでも食べかすを付けようもんなら、即座にペロリと舐められます。
最近は食べかす待機みたいにジッと見てくるもんだから、俺もいかにキレイにご飯を食べられるか、みたいな無言の攻防があります。

昼…。
こんにちは異世界。窓辺に座ると、そのぽかぽか陽気に包まれて、ジ○リ映画を見終わった後みたいな気分になれる。暖かな日差しが降り注ぐ、穏やかな時間。
でも必ずどっちかが家にいます。
リイサスさんだと魔物とか歴史のことを色々教えてくれるけど、ルークさんだとスメルクンクン祭りが開催されます。隙を付かれて押し倒されたこともあったけど、「家を出てく!」と言えば未遂で済みます。その代わり、過激なセクハラとディープなキッスをされます。リイサスさんはキスが上手いんで毎回腰が抜けそうになります。手を繋ぐという条件のもと、近所の散歩にも連れて行ってくれます。

夜…………。
こんばんは異世界。仕事に行っていたもうひとりが帰ってくる、ノスタルジックな時間帯。車も人もいない森の中なので、外はとっても静か。ですが家の中はドタバタです。
夕食を食べていると、あーんを狙ってきます。ここで喧嘩が起こるので、上手いことやって静めます。嬉しいことに、リイサスさんの家にはお風呂もあるので毎日入ってますが、前に一度、リイサスさんに洒落にならないセクハラをされて以降、ひとりで入っています。………隣接している脱衣場に、俺の匂いの染み付いた服を求めて熊さんがやって来ますが、それはもう無視。シコシコ音が聞こえても、完全スルー。
寝る時はふたりの頬にキスをして、与えられた自室でゆっくり寝ます。でも俺は知っています。
ふたりの息子さんがギンギンなのを、俺は知っています。


────くっっっっそ気持ち悪いよおっさんズーーーっ!!!
え? 自分でもビックリ。もうビックリするくらい気持ち悪い! こんなに気持ち悪い人初めて見た! 自分と同じ生き物とは思えない…っ!
いやマジで。現代日本なら慰謝料がっぽり取れるレベルなんだよ! 穏やかな顔のまま、圧倒的腕力で固定されて強制ベロチューされんだよ! 元々部屋のドアに付いてた鍵も、俺が来た次の日に「安全確認のため」とか言って取り外されたの! そんでルークさんに「発情期ですか?」ってキレ気味に聞いたら「私の発情期はこんなものではない」って真顔で返された俺の気持ち分かるゥ!? ケツがひゅんってなりました、はい。
この生活も今日で十日目だけど、一週間を越えたあたりから鏡に写る自分の目がレイプ目になってるんだよ!
ふたりとも顔が良くて助かったな! キスされても許しちゃうその顔面偏差値じゃなきゃ即通報だ! この世界に警察いるのか知らないけどーっ!!

いや……、正直セクハラは耐えられるんだ。苦痛なのは確かだけど、待遇はハチャメチャに良いから。
生活水準、なんと現代日本とほぼ変わらない。ご飯は美味しいし、オフトゥンはふかふかだし、家も体も清潔。風呂が付いてる家も珍しいらしいから、正直今の段階でここを出て行くとか考えられない。三食昼寝付きサイコー。絶対言わないけど。
だから一番の問題はセクハラじゃない。
一番の問題は……そう! 手を繋がないと外にも出してくれない、この軟禁状態!!!
常にどっちかが側にいて、俺が逃げないように見張ってんの! ギルドに入会出来たはずなのに、一回もギルドに連れてってもらってないの!! 出掛けたいとかギルドに行きたいとか、そういう話を切り出してもすぐに話題を変えられるんだよ!! どんだけだよコイツらぁーっ!!

うーむ、やっぱルークさんのレイプをあっさり許したのが良くなかったのかなぁ……。他のギルドに行っちゃおっかな~とか脅したのが良くなかったか……。
うぅ……、とにかく、こんな生活はもう嫌だ…!
取り敢えず、なんとかギルドまで連れてってもらわなくちゃ!
よぉし、今日という今日は逃がさないぞ! 絶対、ハッキリお願いしてやるんだ!
これでダメなら…うん、一人で行こう!!





そして夕食の席。

「リイサスさん、ルークさん、お願いがあるんですけど」
「ん? 何かな」
「明日、ギルドに」

ゴンッ

リイサスさんの手元にあったグラスが倒れ、中の水がテーブルに広がる。
ふたりとも、慌てた様子で布を持ってきたりトマトたっぷり野菜煮込みハンバーグのお皿を持ち上げたりとするけど、俺は知っている…。これ絶対わざとだ。
昨日も一昨日もそうだった。俺が〝ギルド〟って単語を出す度に、何かしらハプニングとかが起きてうやむやにされるのだ。
んで、やっぱり今日もそうだった。面と向かって「ダメ」って言われないのは、俺の逃亡リスクを下げるためか。
悪い大人たちめ…。でも今日はうやむやにしてやんない! まだ食い下がるぞ、俺は!

「あの、ギルドに」
「嗚呼そういえば! 今日、緊急クエストの依頼が来たのだ。エジーナの街付近の森で10メートルはある特殊個体のガルムが、洞窟から出て暴れているらしい。リイサス、行ってみてはどうか?」
「おぉちょうど良いな。腕も鈍ってきてたところだ。コージくんはルークとお留守番かな?」
「明日ギルドに」
「大丈夫だコージくん。ガルムという魔物は自然属性で、相性を考えるならば火炎属性のリイサスは適切。リイサスと同じC級だが、リイサスが負けることはまずないだろうからね」
「おいおい、あまりプレッシャーをかけないでくれよ」
「ギルd」
「ふふ。昇級試験を受けていないだけで、君の本来の実力はA級にも劣らないはず。問題無いだろう?」
「そりゃあな」
「………………」
「それよりコージくん、今日こそあーんを……」

あんまりにも無視されてビックリした。俺が口をあんぐり開けて驚いているのに、ふたりは平然とご飯を食べている。間違いなく確信犯だ。
このふたり、何がなんでも俺を外に出したくないらしい。
どっちかとキスするだけで、もう一方が激しく邪魔をしてくるぐらいだから、割と嫉妬深いというか執着強めなんだろうと思ってたけど……。正直、これほどとは。
…いや、おかしくない? 俺らまだ出会って10日の浅い関係なんですけど。絶対おかしい。

…………うん……なるべくこの手は使いたくなかったけど、仕方がない。明日、こっそり抜け出してリイサスさんに付いていこう。
怒られるだろうけど別に構わない。というか、こんな軟禁みたいな真似したリイサスさんとルークさんが悪いんだから、罪悪感なんて感じる必要はない……よな。
えぇい! 悩んでいても仕方がない! このままじゃ、本当に一生出られそうにないしっ!

「明日、気を付けてくださいね」
「……ッ! もっ勿論だよ! 這ってでも君のところに帰ってくるよ! でね、怪我をしないようにおまじないであーんを…」
「ご馳走さまでした」

リイサスさんが何かを嘆いているけど気にしない。
遠出になるだろうから、軽く準備をしないといけないな。リイサスさん、家を出るの早いし、今日は早くお風呂に入って早く寝よう。
……徒歩で日帰り出来る距離だと良いなぁ。



そんなこんなでさっさと頂いた一番風呂。

「おっふろーおっふろーばっぶるのおっふろ、おっふろー♪」

ここでおっ先ー♪と言ってくれる人がいないのは寂しいけど仕方ない。ここは異世界。むしろ応えられたら怖い。
俺は鼻歌を歌いながら、たっぷりのお湯で満たされた浴槽で足を伸ばした。このお風呂、すごく広い。泳げるくらい広い。もはや温泉の域だ。俺とリイサスさんとルークさん3人がのびのび入れるほどの余裕がある。
潔癖気味のリイサスさんが、金に物を言わせて特注で作らせたらしい。C級冒険者がなんでそんな大金持ってんだって、思わなくもないけどね。
いや~しかし、ホント待遇だけは超良い。異世界に来た時は、水浴び程度の風呂も覚悟してたんだ。何日も入れないってこともあるだろーなぁって思ってたし。
うん、暮らしは快適なんだよ。隣の脱衣場にフラリとやってくる、匂いフェチの変態さえいなければ。

「はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ」

…………もうね、慣れたよ。
脱ぎたてパンツでシコられるとかマジ気持ち悪いけど、入ってこないだけマシだって思うようにしたんだ。うん、お世話になってる分、俺も妥協すべきだって。
マジキモいけど。倫理的にアウトだけど……。

「ふぅーっ、ふぅーっ、ふぅーっ」

すりガラスに写るこのシルエット、ルークさんって丸分かり。巨大な影の上にピコピコお耳が乗ってるし。
うーん、鑑定では紳士って書いてあったはずなんだけどナ…? 地球とこの異世界じゃあ紳士の定義が違うのだろうか……。それとも俺以外には紳士とか?
匂いとか分かんねぇけど、こんなに執着されてるって変だよなー…。
悪化していくとは考えたくない。…でも10日でコレってことは……、1ヶ月後とかどーなってんだろ。怖。てか逃げたら俺、どうなっちゃうんだろ。うわー聞きたいけど聞きたくない……!

「……あの、ルークさん」

声をかけると、膝を付いて屈んでいたシルエットがビクッと揺れた。まさか気付かれてないとでも思っていたのだろうか…。

「もし、俺がこの家を出て行ったらどうしますか?」
「必ず捕まえる」

罪人か俺は! 即答な感じが本気感あってこえぇーっ!

「俺が嫌がってもっすか…」
「すまない。君を愛している」
「…あー、じゃあもし俺の記憶が戻って、恋人とか番がいたって分かったらどうするんですか?」
「…………………君が心配することはない。私の側にいたまえ」

うぉーこえーーーっ! 何するんだよ、何するつもりなんだよ! しかもシレッと俺の意志無視宣言しやがった!
ちくしょーめ、俺が俺だからギャグで済んでるけど、もし相手が俺じゃなかったらただの最低だかんな! 俺だから良かったけど!
俺はそうプンプン怒ったけど、それを口に出すと「君ならば良いのだね?」、なんて更に軟禁生活に拍車が掛かりかねないから、文句をごくんと飲み込んだ。

「リイサスさんも貴方と同じ意見?」
「恐らくそうだろう。君を手放すことは己の死よりも耐え難いと言っていた」
「なんすかそれぇ……」
「君と共にあるためならば、私たちは殺生だって厭わないということだよ」

ひっ……、ヒェーッ! よくもまぁ出会ってすぐの子供にそんなことを……!
伸ばしていた足をきゅっと畳んで、お湯に鼻まで浸ける。あまりにも怖かった。ルークさんたちなら本気で殺ると思ったからだ。
そして『これは…いわゆるヤンデレというヤツだな?』なんてピーンと思い付いて、乾いた笑いが出た。いや全然笑えない。笑えないよ……。
はぁーーーーーー………あぁもうやだやだヤンデレなんて。生前はヤンデレ妹とか憧れたけど、実際に執着されるとめんどくさいし怖いし重いし怖いし。好きでいてくれるのは嬉しいけど、こんなに過激じゃハラハラしちゃうよな。
俺に恋人が出来ても俺が守らなきゃいけないじゃん。ルークさんに敵う気がしないんだけど。
うん、ヤンデレは二次元に限る。そう痛感したコージくんでした。

「んじゃ、俺が貴方と番になりたくないって言ったら?」
「…………………」

ほかほかで暑いくらいのお風呂なのに、空気がスッと冷えた。ルークさん、俺にフラれる想像をしたのか、あからさまに落ち込んでいる。
風呂なんだから当たり前なんだけど、なんかキノコ生えそうなくらいジメっとした。今にもズーーーンって擬音が聞こえてきそうなくらい。
でも、怒らなくて良かった。ヤンデレにも攻撃的なタイプとかあるらしいし、ルークさんもリイサスさんもそういう感じじゃないのは不幸中の幸い。むしろ警戒されたり、敵意を向けられないだけ僥倖だったな。
そんで落ち込みルークさん、20秒ぐらいジメジメした後、俺の質問を思い出したように「あぁ……」と掠れた声で呟いた。

「……今は、言わないでおこう」

俺にフラれたらっていう想定の話なのに、ルークさんはおっそろしいほど低い声でノーコメントを残した。風呂場の気温が3℃下がる。
すりガラスの向こうでシコシコを止め、ピタッと止まった大きなの影。ルークさんが今何を考えてるのか、手に取るように分かった。『無理矢理にでも番にするけど、それを言ったら嫌われそう』だ。多分。
分かるんだ、この10日でルークさんの性格は分かったから。すごく強引な性格だって知ったから……。
てかレイプした相手に嫌われたくないってなんだよw
そう思って「なんすかそれw」と聞けば、ルークさんは巨体を揺らして「ふふ、すまないね」と笑った。笑い事じゃないけど、ガチにならない大人の対応である。
んーでも、マジでどうしようこの状況。
フったら無理矢理結婚コース? 最悪です。人としてあり得ないぞ熊さん! あっ、人じゃない。
いや、そうじゃなくて! …………ヤバイよなぁ普通に考えて。いつまた告白っていうかあれもうプロポーズか。プロポーズされるか分かんないから、ずっと警戒しとかないと……。
あー他人の心が分かればなぁ~~~……。

そこまで考えた後、肩まで浸かったお湯の中で、俺は目をパチッと開けた。
『……いや、スキルとかいうトンデモ能力蔓延る異世界なんだから、他人の心ぐらい分かるんじゃね…?』と、思ったのだ
今俺の使えるスキルで、可能性のあるヤツは……『鑑定』くらいか。じゃあ鑑定で他人の心って分からないのかな。
まぁ…取り敢えずやってみて、ダメだったら諦めよう。
何事もチャレンジ。トライアンドエラーだ! 白菜頭のジャンプ主人公も言ってた!
ルークさんの心を鑑定ー!

《ルーク・アラウザの心情
スキル『心情察知』は赤古龍に一定の好意を抱かれることを条件に、スキル『イミテイション』によって特殊スキルとして取得可能です》

お…? おぉ、おぉぉ何だそのムリゲー。つまり赤古龍とやらに好かれて、そのスキルを模倣するしかないってことかぁ。
やっぱチートにはそれなりに見合ったリスクが伴うんだなー。

………でも、もしその心情察知が取得出来たら? ルークさんがムラムラしてるって分かれば、襲われる前に回避出来るんじゃないか? そうだとしたら滅茶苦茶欲しい!
でも赤古龍かぁ……難度高いしなぁ、どこにいるかも………。
……………あれ? 確かルークさんの家って。

「ルークさんルークさん! この前、教えてくれましたよね? 家が古龍の影響で~って」
「んッ!? あ…、ああ。都市付近の丘で、古龍が数体暴れまわっているのだ。危険と判断された都市一帯の地域住民は、全員避難をしている」

ビクッと揺れたルークさん。まだシコシコやってたっぽい。嫌悪感とかはないけど、よく本人にバレてシコれるなー。とか思いながら、もしかしてと思ったことを聞く。

「暴れてる古龍の中に、赤古龍っていましたか?」
「赤古龍? いたと思うが……。赤古龍がどうかしたのかね?」
「……いえ! なんでもないっす……」

お湯の中でガッツポーズ。
いるって。赤古龍いるって! チャンスじゃね? すっげぇ危険そうだけど、滅多にないスーパーチャンスじゃね!?
ルークさんちの住所は1日3つの情報の中で教えてもらってたし、この家から抜け出せれば、行くことは可能そうだ。…でも、問題は好意を抱かれる方法。うーん、他の魔族で試して、色々研究が必要そうだ。
あとはルークさんの家への行き方だけど、これ以上ルークさんに聞くと怪しまれそうなので、もう聞けないや。
どのくらい遠いのかとか、馬車なのか徒歩なのかとか、リイサスさんたちが教えてくれなかった、この辺の地理についても! うん、明日ギルドに行ったら職員さんに聞いてみようっと。

「ふっ………ぐっ……あぁっコージくん…っ!」

俺にバレて開き直ったのか、一切声を隠そうとしなくなったルークさん。
ヤられた時から思ってたことけど、随分と遅漏らしい。風呂くらいゆっくりさせて欲しかったな…。

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