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権力系ホモ★グリス王国編
白米で白目
しおりを挟む「おう、坊主。ちょっとこっち来い!」
アルバートさんと会議室で別れて、ルークさん達の元へ向かう途中。
ピシッとコックさんの白い服を着こなした王室料理長…、『おっちゃん』が、大きな扉からひょっこり顔を出した。
セキとロイと顔を見合わせて、ハテナを浮かべながら近付く。
おっちゃんが顔を出していた所は、お客さん立ち入り禁止の厨房だった。
「おっちゃん。どうしたの?」
「一応、言われた通り米を炊いてみたんだが、上手くいったか分からん。だから坊主に確認してほしくてな。ついでに他の料理もつまみ食いさせてやる」
「マジで!?」
Foooooooooooo Japanese KOMEEEEEEE!!!
きたっ! きたっ! ついにきたーーーーッ!!
日本人の九分九厘が大好きなお米!! 白米!!! もっちもちの白ご飯!!
俺、玄米も好きだけど、やっぱり馴染み深いのは白米だよな~! 大抵のおかずにマッチする万能主食!
肉も魚も煮物も豆も、ぜーんぶ美味しく頂けるんですから! あ、でも俺が1番好きなのはTKGです。
「おーおー、はしゃぎまくりだな。ニホンジンの米狂い説は本当だったって訳か」
「あ! てかおっちゃん、大丈夫だった? 俺、具体的な炊き方とか説明してなかったけど」
「前王室料理長が米が手に入った時用に、精米と炊き方についてのメモを遺してたんでな、無事に炊けたぜ」
「やったーー!! 江口さんありがとーーー!!」
天国にいらっしゃるであろう江口さんに、即興の感謝の舞を捧げて、おっちゃんをキラキラ見詰める。
実に……何ヵ月ぶりだ? とにかく久しぶりの白米と対面するべく、俺はおっちゃんのコックコートの裾を掴んでおねだりした。
「んで、肝心のブツがこれなんだが……」
ヤの付く自由業者みたいな事を言っておっちゃんが持ってきたのは、平皿にべちゃっと乗せられた、艶々美しいほかほか白米……。
「は、はわ…………」
「へぇ、コレがコージの言ってたオコメ」
「穀物か。俺も食べた事がない」
「長年料理人をやってるが、米を見たのはコージが出してくれたコレが初めてだぜ。先代料理長の話を聞いて俺も探していたンだが、マァまったく流通してない」
「この世界には自生していない可能性も」
「でもコージならいつでも出せるでしょ? ね、コージ。………コージ?」
「ん? ……ん!? おいコージ息をしろ!! 白目を剥くな!!」
事態に気付いたセキに揺さぶられ、俺はなんとか意識を取り戻した。
危ない危ない…。米を見た嬉しさで天国に逝っちゃうところだった。流石にゼロアにもジズにも江口さんにも苦笑されそうだから、生きて帰れてちょっと安心……。
うーん。でもこのままじゃダメだな。平皿に盛るんなら、せめてチャーハンみたいに山の形にしないと、見た目がよろしくない。
でもこの異世界、お茶碗なんてないよな~。うーんうーん、まぁ白米食べられるし、しばらくは我慢しますか。
「この米は坊主の飯に出そうと思ってる。味噌汁と一緒にな。米は肉にもマッチするんだろ?」
「うんっ! 味の濃いものなら基本なんでもマッチ!」
「良かった。じゃあメニューはいつも通りで……。あ、坊主」
「うんっ?」
「噂で聞いたんだけどよ、オメー魔力めちゃくちゃあるんだって? 定期的につまみ食いさせてやるから、もうちょっと米、出してくんねェ?」
「!!!!」
つまみ食い…。あぁ、なんて甘美な響きなんだろう。
同じご飯でも本格的に食べるより、つまみ食いの方が美味しく感じた経験、あるよな。
例えば揚げたての唐揚げ。焼きたてのピザ。切り立てのキュウリとトマト。うん、全部美味しかった。
オーディアンギルドにいた時も、ワーナーさんからつまみ食いをさせて貰ってたんだ。料理で使わない肉の切れ端とかもよく貰ってさ。あー、どうしよ。ワーナーさんに会いたくなってきちゃった。
なんて自慢のドワーフ兄貴に想いを寄せかけて、思考が戻る。
しまった、米の話だったな。『いっぱい出してくれ』って? 勿論ですとも! いくらでも出しましょう!!
美味い料理とつまみ食いの為ならば例え1トン2トン……。え。そんなにいらない? ア、はい分かりました。
「んじゃ、とりあえず20kgドーン!!」
ドーン!!
両手を上に万歳して白い米を願えば、俺とおっちゃんの間にザザーーーッと降ってくる米。バラバラに散らばって、床一面が米に覆われてしまった。
…入れ物か何かを用意しなかった俺は馬鹿です。本当にすみませんでした。
苦笑するセキと一緒に、疾風魔法で米をブハーと1ヶ所に集めたら、おっちゃんからお礼を言われてフォークを渡された。
そう、俺はいよいよ白米を食べる。米20kgを出したから、今目の前にあるつやつやの白米は、もう食べて大丈夫だ。昼飯を待ってなんていられない。今ここで食べちゃうのだ!!
きんきら輝く白い宝石…、ただしもちもち。愛してやまない白米、いっただっきまーす!!
「あむ」
********************
「それで…、気絶したと?」
「ウン……。真顔で一言も喋らぬままオコメを喰らって…、最後の一粒を飲み込んだ瞬間にパタリと………」
「あらら」
「どうしましょう。コージをベッドに寝かせて我々もその部屋で昼食を摂りますか」
「えぇ。匂いで目を覚ますでしょう」
セキ殿にお姫様だっこされたコージくんをツンツンして、私…ルーク・アラウザはニッコリ笑った。
口をポカンと開けて目を閉じるコージくんは、本当に可愛い。気絶した理由も『うますぎ』とか、そんな所だろう。
「セバス、そういう事だ。昼食は部屋で構わないな」
「勿論で御座います。それとセキ様」
「ん?」
「魔導師団長が後ほどアヤマ様に魔法を教えたいと」
「あー……。そうか。そうだな。そうだった。15時にあずまやに来いと伝えろ」
「承知致しました」
そうだ。あのヴァロとか言う魔導師団長、コージくんに空間転移魔法を教えるとか言っていたな。
コージくんが空間転移魔法を覚えれば、便利な事この上ない。日帰りが叶わず禁止している遠方クエストも、コージくんの転移魔法があれば行けるようになる。
コージくんの気分1つでいつでも会えるし……、……いつでも、サヨナラ出来てしまう。
だから正直、気は進まない。彼の逃走手段になり得る魔法は覚えてほしくない。
可能ならば、いつまでも私の手の中に。何も知らずに笑っていてほしいのだ。
しかし昨今のクエストは難度が上がるばかり。強大な魔族が思わぬ行動を取り、僅かながら一般市民にも被害が出ている。高等級の冒険者へのしわ寄せは限界もそろそろだ。
うちのオーディアンギルドに所属するS級冒険者28名は、今も世界中を駆け回っている。
いや、オーディアンギルドだけではない。活発化する魔族の影響で、世界中の冒険者ギルドが忙殺されつつあるのだ。
そんな中、コージくんの力は喉から手が出るほど欲しい。無限の魔力と無敵の防御。更に空間転移魔法まで習得すれば、コージくんはオーディアンギルドを支える大黒柱になるだろう。
国境や距離に制限されない異質の冒険者だ。自身のギルドからそんな者が出るなど光栄な事だが、コージくんにそうなってほしいとは思わない。
「すぴょー……んが………」
……この子がそんな立場に押し潰されないよう、私が見てあげていなければならないのだ。
空間転移魔法を使用がバレてしまった時、この子が利用されないように。
跋扈する魔族を牽制する程度にクエストを課して、魔族の好き勝手もさせない。
調節は難しいだろうが、上手くコージくんにもクエストを割り振る。それで他のS級冒険者の負担も減る筈だ。
空間転移魔法という爆弾が増えてしまったが、私のやる事は変わらない。
ギルドマスターとして、今はただ最善の判断を。
********************
はぁい(* ̄∇ ̄)ノ
お久しぶりですメルですお待たせして大変申し訳ないですごめんなさい。
え?書きかけのハロウィーン番外編があるんですけどコレ私何ヵ月更新してないんですか?本当にごめんなさい。
2021は更新できるよう頑張ります…!!
では良いお年を!
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