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権力系ホモ★グリス王国編

そして俺は考える事をやめた……

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「アルバートさん」
「はい」
「アルバートさんは、この国を守る王国騎士団の、団長ですよね」
「はい」
「国を任されてる騎士団長が、変な組織のリーダーに恋するとか、かなりマズくないですか」
「貴方が統べる結社は、いずれこの国を共に支えていく存在になるでしょう。立場の視点では、何も問題はありません」

そっか~~~何も問題ないか~~~~!! でも俺は問題あるんだよ~~!!
何故なら俺は見知らぬ兄ちゃんより、友達のロイを優先しなきゃいけないから~~~!!

「えっと、アルバートさん」
「はい」
「俺はですね、アルバートさんを選べないんです」
「……はい」
「…俺は、ロイの友達なので、ロイが悲しむ事は出来ません」
「………………」

よしっ! 素晴らしい回答!! 限りなくパーフェクトッ!!!
友達を想うように断って、俺の感情は入れてない! どこにも敵を作らない、完璧な答えだ!!
でもアルバートさん、黙っちゃった。
ただでさえ怖い強面。黙られたらもっと怖い。

「……貴方なら、そう言ってくれると思っていました」
「…………おん?」

長い沈黙の後、アルバートさんが変なことを言った。
おかげで俺は変な声が出た。隣のセキがちょっと笑ったのが見えたので、軽く小突く。

ええっと…、アルバートさんは俺がそう言う事を想定していたのか?
…じゃあ、なんで断られるって分かっていて、告白なんてしてきたんだろう。
あッ! もしかして、ロイの恋人としてふさわしいか、テストだった!? いや恋人じゃないんですけどね。
でも、そう考えるとしっくりくる。ちゃんとロイを大事に出来るか、見極めていたんだな! 凄い! 兄ちゃんの鏡!!

「俺は、アヤマ様とロイの恋路を応援します」
「は? 兄さん、何を……」

ほら~! やっぱりテストだった!
あー良かった。騎士団長と魔導士団長と王子様と宰相に告白されるとか、本気でシャレになんねぇもん。
王子様とブルーノ宰相とヴァロに関しては、頑張ってお断りするけど、ホモ候補が1人減って安心~!
今日は熟睡確定だな! ヤンデレズの嫉妬もちょっとはマシになるでしょう!


「俺は、幸せなそうなアヤマ様とロイを近くで見ているだけで充分です。ですので、どうかお側に置いてください。俺にも平等に愛を頂ければ、貴方様と結ばれなくても、俺は幸せです」

………………おっと。
予想外の斜め上から攻撃されちゃったぞ。

「兄さん、ちょっ…、何を」
「勿論、ロイやセキ様を優先して頂いて構いません。情事の際は気配を消しておりますので、どうかその場にいる事の許可を…」

おっと? おっとっと? じょーじのさいはけはいをけしておりますのでどうかそのばにいることのきょかを?
待て。ちょっと待て。整理させろ。

まず、テストなんかじゃなかったんだ。
アルバートさんは俺が好きだけど、俺には大切な弟のロイと結ばれて欲しい。
でもやっぱり俺が好きだから、結ばれなくても側にいたい。
だから、ホモホモワールドの中に入れて欲しいと。ロイやセキの次で良いから、同じくキスやセッセをして欲しいと。

うん、多分ここまでは理解できた。

そのあと。

『情事の際は』
セッセの時は。
『気配を消しておりますので』
静かに黙っているから。
『どうかその場に』
どうかセッセの現場に。
『いる事の許可を』
居させて欲しい。

セッセの時は静かに黙っているから、どうかセッセの現場に居させて欲しい。

は? ええ、何?
俺、ロイの兄ちゃんに監視されながらロイとセッセしなきゃいけないの?
なんで? なんでセッセを監視され…、え? はぁ?

「兄さん頭打った?」
「アルバート落ち着け。コージが困惑している」

ロイとセキが、さっきまでの威圧的な雰囲気を仕舞って、アルバートさんをどうどうと落ち着ける。
俺はと言うと、目が点になっていた。

「そうですね、配慮が足りませんでした。……アヤマ様、俺は昨夜、貴方様とセキ様の情事の様子を見て、貴方様が他人に抱かれている事実に大変性的興奮を覚えました。目覚めさせた責任を取って、抱かれている様子を見させてください」
「アルバート待てそれは言っちゃいけないヤツだ」

俺は握っていた紅茶のカップをガチャンとソーサーに叩き付けた。
アルバートさんも、ロイも、セキも、俺の顔を見て息を飲む。

昨夜のセキとの情事。セキとのセッセ。
つまりアルバートさんは、昨日の俺とセキのセッセを見ていたのか?
………………………………。

「…盗み見した事は申し訳ありません。部屋の前を通った時、声が聞こえたもので、欲に抗えず……。アヤマ様が眠った後、セキ様と決め、今回このようにお話させて頂きました」
「アルバート頼む。黙ってくれ。俺がコージに殺される」

セキが真っ青になって、俺を見ながらアルバートさんに訴える。ロイも俺から一歩一歩ゆっくりと下がって、アルバートさんの後ろに隠れる。
なんだかんだで、ロイも兄ちゃんを頼りにしてるんだなって、ほっこりするシーンだが、俺はそうも言っていられない。
恥ずかしさと怒りで腹の中がグチャグチャになって、だけど頭は冷静で。

セキがわざと防音魔法を外していた事が分かった。
なんで、アルバートさんにセッセを見せ付けたのかは分からない。でも、絶対にわざとだ。


「セキ、お前」
「すまなかった!! コージ、本当にすまなかった!!!」
「許さん。1ヶ月セッセ禁止。今日はルークさんの部屋で寝る。当分は口もききたくない」
「そんなッ!!?」

崩れ落ちたセキ。
そんなセキを無視して、俺はアルバートさんに向き直る。
アルバートさんがビクッとしたけど、俺はアルバートさんを責める気はない。
ドアの向こうから喘ぎ声が聞こえたら、覗きたくなっちゃう気持ちはすごく分かる。
多分、俺も覗きそう。健全な15歳だから。

だから、アルバートさんを怒るつもりはない。
それよりも、頭を冷やして話を進めよう。

「アルバートさん。貴方が加わりたいと言っているホモホモワールドですが、別に俺がメンバーのヤンデレ達に許可を出して入れている訳じゃないんです。アイツらが勝手に入ってきただけなんです」
「……アヤマ様の許可を得る必要はない、と?」
「まぁ…出来ればこれ以上のヤンデレは勘弁して欲しいですけどね。許可を得るなら、俺よりガレとかカイルとかリイサスさんだと思います。ぶっちゃけ、俺はただ流されてるだけなんで」
「周囲の…ライバルに許可を得なければならないのですか?」
「えーっと、なんだろ。説明が難しいな…」
「じゃあ、俺から説明するよ」

説明に困った俺に助け船を出したのは、すっかり冷静になった様子の、ロイだった。
感謝の気持ちを込めてニッコリ笑うと、ロイの口角も数ミリ上がる。
ちなみにセキは、干物みたいに床にペショッて落ちている。さっきの言葉がよっぽど効いたみたいだ。

「許可が必要なんじゃない。俺達に認められなきゃいけないんだ。『コージを絶対に傷付けず、すべてを捧げて愛し守り抜く』って心意気が認められなきゃ、コージの側にはいられないし、コージと体も重ねられない」
「アヤマ様を絶対に傷付けず、すべてを捧げて愛し守り抜く…」
「うん。他にもいくつか条件はあるけど、兄さんならそれはクリアできると思う。……すべての条件を達成して、なおかつコージに拒絶されなければ、俺達は追い出さない……って、決まってある」

えー初耳なんですけど?
条件なんてあったのか…。全然知らなかった。
逆に言うと、今俺とセッセしてる人は、全員条件を満たしている…? うーん、わからん。

「勿論、俺達はこれ以上のライバルなんてごめんだから、全員が全力で阻止しようとするけど……、それでも良いの、兄さん?」

煽るようにアルバートさんを見上げて言うロイ。
今日のロイは感情表現が豊かだなぁ。さっきまで怒鳴ってたのになぁ。
んで、そんな煽りよるロイを正面から見据えて、アルバートさんが口を開いた。

「あぁ。俺は、ロイ以外のライバルをすべて蹴落とし、ロイと俺とアヤマ様の3人で暮らしたい。その為ならば、すべてを捧げてアヤマ様を愛し守り抜こう。……例え、この手を血で染めようとも」

はい最後のセリフは俺聞かなかった!!

ははは、もうヤンデレ博物館でもオープンしちゃおっかな?
『アルバート・ビーター:NTR属性を持つヤンデレ』的な。
立派な博物館ができると思う。これから先の事も考えれば。
あ~考えたくねぇ~!

てかさぁ…。アルバートさん、本当におかしい。
弟の恋路を応援して、弟のライバルを蹴落とそうとするのは分かる。ちょっと過保護だとは思うけど。
でもそこに自分が入っちゃうの凄いな!? つまり弟夫婦と一緒に暮らそうとしてるって事だろ? いや俺とロイは夫婦じゃないけどさぁ…。
でも、弟夫婦の奥さんに惚れて、弟公認の上で同居? で、奥さんとセッセもするって?

んふふ? んー、わからん。アルバートさんの頭マジでわからん。それを言われて平然としているロイもわからん。
ブラコンにも程があるだろ。俺が言えた事じゃないけどさ。


「……じゃあ、ギルマスとカイルさんとセイさん達に報告しに行こう。あの人達が認めて、ギルドに残ってるリイサスさんやガレも認めて、コージが拒絶しなければ、ギルドに来なよ」
「…………オーディアンギルドにか?」
「うん。まさかこの城でコージが遊びに来るのを待ち続ける訳じゃないでしょ? 聖騎士団も死神の吐息も、みんなオーディアンギルドに集まってるけど」
「………………国王と相談する。お前達が帰るまでに結論を出そう」
「分かった」


あー、その問題があったな。
ブルーノ宰相も、ヴァロも、アルバートさんも、どうするんだろう。
俺はオーディアンギルドの冒険者だから、オーディアンギルドのリイサスさんの家から離れない。
でも、みんなも国の偉い人だから、ギルドの方へ来る訳にはいかない。
それぞれその場に残っても、会えても報告義務で王城に来る月1のタイミングだし…。
……ま、俺が悩む問題でもないか。各々好き勝手するだろ。

あ、王様とブルーノ宰相の結社入会について話さないと。えっと、結論は4日後の、俺達が帰るまでに出すって言ってたっけ。
じゃあ先にヴァロから転移魔法を教えて貰って、王子様は…、王子様どうしよう。

あーーーーー…なんか面倒臭くなってきたな。もういいや。
なるようになれ~★





********************




はぁい(* ̄∇ ̄)ノ
メルです。


お気に入り、6000…、本当にありがとうございますッッッッ!!!!嬉しい……。すごく嬉しい………。

6000記念、書きます。

『康治郎の素晴らしい休日』、『康治郎とパニック続きの修学旅行』、『ガレの優雅な日常』、『モブのモブによるモブの為のコージ観察日記』

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