異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件

メル

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権力系ホモ★グリス王国編

かわいいこども

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国王とは、国民の代表であり、盾であり、矛であり、奴隷であると、誰かが言っていた。
国王は国一番の権力を持っていながらも、無力である。王の運命は、大抵3つだ。

1つ、理想の国王として、息子に玉座に譲り、死ぬ。
2つ、姿も見せない臆病者の使者に暗殺される。
3つ、正々堂々、正面から国ごと叩き潰される。

大抵は、この3つに収まっている。
先代国王…、つまり私の父は、北東の大国から送られてきた、ラッソーリニクという子牛の腎臓とすかんぼ入りスープに亜ヒ酸を盛られ、そのまま神の国へと逝かれてしまった。
私が19歳の時の話である。
以来、私は口にするものには人一倍気を付けてきた。通常の食事は勿論、菓子やナッツですら、毒味役を付けた。
厨房には信頼出来る料理長を置き、雇う料理人も厳しい審査を通った者のみだ。

料理だけではない。騎士団も、魔導師団も、文官達も。この城に勤めている役職ある者は、ほとんどが私自身で選んだ実力と信頼のある者だ。大臣達の世襲を撤廃した事から、相当恨まれている筈である。暗殺で息子達に被害が及ぶ事だけは避けたい。

だから結婚相手だって、慎重に選んでいる。
第一王子レオナルドの母親は、少ない妾のうちの1人だ。伯爵家の次女であり、もしも彼女が私と婚姻を結べば、伯爵家の位も上がる。一族総出で結婚を後押ししてくる訳だが、個人的に彼女は苦手だ。笑顔がわざとらしく、気が抜けない。
王家の人間は恋愛結婚が多かった。王妃は貴族から平民まで、様々な身分の者がいたと記録されている。
私も、そんな自由な恋愛結婚に憧れた。いつ殺しに来るか分からない貴族の者より、自分が『殺されても良い』と思える人を見付けたかった。
見合いを全て蹴って、学生時代からの婚約者を、金と共に追いやって、そうしてここまできた。
気付けば人生はとっくに折り返し地点を過ぎている。
運命の人も、一途に愛せる人も、まったく見付からない。このまま、恋愛の1つも経験出来ずに、糊で貼り付けたような笑顔が気持ち悪い妾と、指輪を交換する他ないのか。半ば諦めていた。

婚姻の儀、1年前にして、レオナルドがとある子供に恋をしたと言った。
創造祭の日、城下町で見掛けたというその子供は、笑顔がとても素敵な可愛らしい少年だったと言う。ロワナの嫡男を妙な語彙で罵り、励まし、聖騎士団達を侍らせてフったと。
驚きはしなかった。息子も歴代国王と同じく、恋愛結婚に踏み出したのだ。
また、おかしな子供を好いたものだと笑った。お転婆な王妃は数多くいたので、少しくらい変わった子供でも、確かな愛があれば平民だろうと結婚を許可しようと、そう思った。

王国騎士団長に任命しているアルバートから、序列入り3体が1人の人間と従魔契約を結んだと、報告が入った。
契約者の名前は『阿山康治郎』。レオナルドが惚れたという、『コージ・アヤマ』と酷似していた。更にオーディアンギルドが探し求めていた『コージ・アヤマ』。死神の吐息の拠点から聖騎士団に助け出され、また死神の吐息に奪われた『コージ・アヤマ』。
耳に入ってくる話のほとんどに、『コージ・アヤマ』の名前が入っていたのだ。
流石におかしいと思って諜報のジル・ブレイクを偵察に向かわせたと言うのに、冷酷無比と呼ばれるジル・ブレイクは、あっさり『コージ・アヤマ』を擁護するようになってしまった。
意を決して登城命令を出したと思えば、迎えに行かせた御者のポールまで、『コージ・アヤマ』を庇いだした。



一目見て、その容姿に惚れた。会話を重ねて、父性を覚えた。

ギルドマスターや聖騎士団長、序列入りや神さえも惚れた子供だ。並大抵ではないと分かってはいたが、それでも抗えなかった。
赤子のような瞳で見詰められ、尊敬の念をこうも素直にぶつけられ、好きにならない者は相当なひねくれ者であろう。
運命だと、愚かにも思ってしまった。コージ・アヤマと出会う為に、私は独身を貫いてきたのだと。



『コージ・アヤマ』はこれからのグリス王国にとって、大きな柱になるだろう。
それ程の力と人望。正体の知らぬうちから、結婚したいと言っていたレオナルドの人を見る目は、確かだったのだ。
しかし余りにも事が大きすぎる。扱いを間違えれば、グリス王国は勿論、人類ごと滅びかねない案件だ。
まだ経験の浅いレオナルドに、そう易々と任せる訳にはいかない。レオナルドは座学こそ優秀ではあるが、座学とマナーのみで世は渡れぬ。
もしもコージ・アヤマを婚姻という形でこの国に留めるのであれば、学があり、豊富な経験があり、地位と力のある者が最適である。

つまり、私だ。
王としては優秀だと自負している。
数多くの修羅場をくぐり抜け、兄弟達との熾烈な継承紛争で勝ち抜き、この玉座に座った。
この国に、コージ・アヤマと結ばれるにふさわしいのは、私以外にいないだろう。
コージ・アヤマと婚姻を結ぼうが結ぶまいが、息子には渡せない。レオナルドでは、コージ・アヤマを適切に扱えないからだ。

国民の豊かな生活のために。科学技術の発展のために。異世界のより良い制度の導入のために。全てはこの国の繁栄のために。
私はコージ・アヤマを、何としてでもグリス王国に引き留め続けなければいけない。
それが、バージル・A・ガーディアンがこの時代、この国の王に生まれた理由である。
















なんて建前に決まっている!!!!!!


私はコージを愛してしまった!! あのこどもは私のものだ!! 息子に譲ってやりなどはしない! 私のものだ! 私のものだ!!
あぁぁぁぁあぁあぁぁあぁああぁぁぁ渡すものか離すものか。何がなんでも何としてでも縛り付けてやる。国の繁栄など知った事か。さっさとレオナルドに地位を譲ってあのこどもと共にゆったりと隠居生活を過ごすのだ。やれ帝国を滅ぼせだの、やれ全領地に与える予算大幅増大だの、政治も国交も戦も知らぬ食うしか脳のない莫迦どもは口を縫って他国に流れれば良い。徴兵制度のある帝国にでも行けば、望み通りの名誉の死でヴァルハラに行けるだろう。どのみち、帝国を武力で叩きのめした後は古龍も何も気にせずに求婚してしまうつもりだ。寵愛のティアラを贈ってしまうのも良い。宮殿で囲い閉じ込め、世界中から集めた装飾で着飾り、側に居させる。厳重に周囲を堅め、生涯を共に。警護はアルバートに任せようか。ドレスはどんなものが良いだろう? フープドレスなんか似合いそうだが、アレは中に環状のフレームを入れるから重いらしい。巷では、フリルの付いたサロペットスカートが流行っているようだが、そもそもスカートを履いてくれるだろうか。あぁ、アラビアの使者がアラジンパンツを贈ってきていたな。あのデザインなら庭を駆け回れるだろう。トップスもそれに合わせ、カジュアルなものが良いかもしれない。ただアメリカンアームホールは譲らない。あれは良い。ロマンだ。走るなら、アンガジャントは相応しくないな。ドロップドカフスも駄目だ。リボンカフスかボタンドカフスがちょうど良い。走りやすい靴は何だろう。スニーカーやワラチが最適なんだろうが、たまにはサイハイブーツやベアフットサンダルも履いて欲しい。きっととんでもなくセクシーな筈だ。どの男も憧れる、Oバックは履いてほしい。だがテディやベビードールも可愛いな。網タイツは夢だ。絶対に履いてくれないだろうが、寝ている間にで絶対に履かせる。指輪はパパラチアサファイアをラウンドで。小粒のダイヤモンドを、プラチナで爪留めしようか。首飾りは小粒のレッドトパーズを使って、花を作ろう。耳飾りも着けてほしいが、活動的なコージにとっては、邪魔にしかならないだろう。ただ、式典用としてピジョンブラッドの小さなイヤリングを作らせておこう。嗚呼、考えるだけでワクワクが止まらない。あのこどもを私のものにする未来を考えるだけで、心臓が止まってしまいそうだ。

しかし、今は気付かれてはいけない。
無駄に警戒心を抱かせては、今後に支障が出てしまう。コージを囲うのは、戦争が終わった後だ。それまでに、私はコージの身内にならなければならない。
最短は結社に入る事である。味方であると完全に信じさせ、有能っぷりを分からせる。その為に、職権を利用しても構わない。国王の仲間など、そういるものでもないし、私がいれば、都合の良いようにこの国を動かせる。聖騎士団長も、ギルドマスターも、職業柄、私と個人的な面識があるのは、かなり助かるはず。感情を抜けば、断る理由もあるまい。
『助けを求める死にかけの子供と、コージの擦り傷のどちらを優先するか』だと? 無論コージだ。罪のない子供が死ぬのは悲しい事だが、犠牲はつきものである。神の愛し子の傷の方が、優先度は高い。明らかに。コージとグリス王国の命運でも、やはりコージが優先だ。国などいくつもあるし、人など世界中に腐るほどいる。グリス王国が失くなり、国民が死に絶えたとて、世界は変わらない。しかしコージはただ1人である。創造主ゼロアが唯一愛した子だ。比較など出来る訳がない。コージは何よりも優先されるべき、こどもである。
だが、即答するのはマズい。私と同じく、コージに惚れているらしいブルーノはともかく、私はまだ想いを告げていない。
コージから見れば、『親切な知り合いのおじさん』止まりの関係だ。
目指すは、コージの良き相談相手。まずはコージの身内となり、『何でも相談出来る大好きなおじさん』を目標に、頑張っていこう。
さて、手っ取り早く親密度を上げるには、2人きりの秘密が必要だな。






********************




「…アヤマ様、今からお時間頂けますか」
「おっ!? え? あ、はい…」

お話し合いが終わって、『さぁ絶品昼飯をもちゃもちゃしよー!』って時に、王国騎士団長が話し掛けてきた。やっぱり、目の下の隈が酷い。様子から見ても、寝てないみたいだ。
ロイの事について、いよいよ恐怖の個人面談か…と覚悟を決めた俺。えらい。

「セイ様、あるいはオウ様。ご同行お願い致します」
「む? 構わんが…。セキではダメなのか?」
「……色恋の話になります。嫉妬で殺されたくはありません」

…ありゃ? ロイとの関係について、問いただされるんじゃねーの? てっきり、『弟はやらん!!』って言われるかと…。
あ、別にいらないぜ? 友達として仲良くしていければ良いかんね! 男の恋人はノーセンキュー。

「わははは!! まさか、殺したりなどするものか! 正直、これ以上のライバルは目障りであるが、俺はビーター兄弟を気に入っている!! 後押ししたのは俺なのだから、俺が付き添おう!」

元気いっぱいにそう言ったセキ。王国騎士団長はちょっと考えた後、『分かりました、お願いします』ってセキにぺこり。
うーん、何の話かまったく分からない…。色恋の話? 嫉妬で殺される?
つか、セキと王国騎士団長、いつの間に仲良くなったんだろう。確かに、セキはロイの事気に入ってるみたいだけど、その兄ちゃんの王国騎士団長まで気に入っているとは…。
ビーター家の人って、古龍に好かれやすいのかな?

「待って…、待ってよ兄さん…。何、話すの。嘘だよね。だって…、応援してくれるって…」
「……ロイ、お前も同席しなさい。大切な話だ」

…なんか深刻な雰囲気…。
俺シリアス展開嫌いなんですけど!? 誰かラッパとシンバル持ってきて! ドンジャカ鳴らして遊ぼうぜ!!
もぉ~兄弟での争いとか、マジで良い事ないんだから! 俺もね、弟の康太郎と何回か喧嘩しちゃった事あるんだけど、最後には俺も康太郎もびゃんびゃん泣きながら、仲直り…とかばっかりだったからね。
まぁ原因は勝手におやつを食べちゃったとか、そんなものだけど。

「…会議室を用意しております。アヤマ様、セキ様。どうぞこちらに」
「…………兄さんの嘘吐き……」

恨めしそうに、悲しそうにポツリと呟いたロイに、俺は冷や汗びっちょりんこ。
だっ、誰かぁ~!! 追加でドラムとトランペットも持ってきてぇーッ!!!




********************



はぁい(* ̄∇ ̄)ノ
メルです


とある読者様から、『かなり似たお話を読んだ事があるのですが、もしかして同じ作者様ですか?』みたいな事を何度か聞かれたので調べたんですけど、見付からない(´・ω・`)
ので、もし似ている作品を知っているよ!という方がいましたら、こそーっと題名とサイト名を、ツイッターDMにでも教えてください!お願いします!




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