異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件

メル

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権力系ホモ★グリス王国編

対ヤンデレ魔法、ゲットだぜ!

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「ねーねーヴァロー。教えてくれる禁忌魔法ってなぁに?」
「便利だけど、すっごく危険な魔法だよ。危険と言っても、コージにとってじゃないけどね。…国王や宰相に、秘密に出来るかい?」
「そ、そんなに…!? うん、秘密にする!!」

頷いた俺にニコニコのヴァロ。カイルはまだブツブツ言ってる。ヴァロと元カレなんて勘違いされた事が、相当気に食わなかったようだ。
いやごめん。冷静に考えればウブでポンコツで他人にツンツンツンデレのカイルが恋人とか作る訳がなかったな。
ん? じゃあなんで俺に求婚してんの?

…それは置いといて、危険な禁忌魔法にはすっごく興味がある。実際に使うかは分からないけど、禁忌魔法に指定されてるって事は、『人類への著しい被害の恐れ』があるものか、『権利消失の恐れ』があるものか、『人道的にアウト』なものか。

代表的なのは『生命創造魔法』だな。
生み出した生き物が人類の脅威になるかもだし、生命の創造は神様のお仕事だから、人類が手出しして良い領域じゃないって教会も言ってる。
まぁ『生命創造魔法』なんて、それこそ序列上位とか、名のある魔法使いや魔女くらいしか使えないんですけどね!

他の禁忌魔法と言えば…、あぁ、『液体化』も禁忌魔法に指定されてんな。
効果は文字通り、なんでも液体にしちゃうんだ。もちろん人間とかもね。
でもその魔法を掛けられた生き物は、死ぬ訳じゃない。体がドロドロした液体になっちゃうだけで、意識はある。神経も液体だから、痛覚もある。液体にされた人は、それはそれは苦しい思いをするとか…。
うぅ、鳥肌立っちゃうな。そんなの絶対しないし、されたくもないぜ。

んでんで、ヴァロはどんな魔法を教えてくれるんだろ?
怖いものじゃなければ良いんだけど。

「ここにいる人達はコージの安全を思い、他言しないだろうから言ってしまうけど…。───『空間転移魔法』」
「……!」
「正気か貴様」
「それマジで言ってんの?」
「本気か! 本気と書いてマジか!!」

ヴァロの息を潜めて発した声に、ドラゴンズが引いたような顔付きになった。ルークさんとカイルも、『うっそ~』みたいな顔してる。
んー、アホ面。でもそんな事言ったら、十中八九ベッドに引きずり込まれるか、頬っぺたをみょんみょんされるかなので、口には出しません。

あ、『空間転移魔法』な。実は俺もビビってるんだ。
だって、『空間転移魔法』とか伝説中の伝説だ。日本でいう、河童の存在くらい曖昧な魔法。
つまりは都市伝説みたいなものなんだ。

1度尋ねた事があるけど、セキセイオウも詠唱や仕組みは知らなかった。
『世界序列の上位10名や、魔王様や、ものすっっっごく強い勇者ならば、使えるかも…』だって。
存在することだけは、かろうじて知ってるらしい。

「えっと…、ヴァロはそれを…『空間転移魔法』を知ってるの?」
「うん、知ってるよ。使えないけれどね。あんな滅茶苦茶な魔法、使えるのなんて、魔力が多くて、古龍殿らを従えているコージか、管理者くらいしかいないと思う。…だけど、もしも本当に『空間転移魔法』を使える人間がいると知られれば、世界中が死に物狂いでコージを奪いに来るから、成功しても絶対に他人に教えてはいけないよ」
「う、うん…!」
「教えて良いのは、ここにいるオーディアンギルドのマスターと、聖騎士団長、王国騎士団長の弟、古龍殿ら全員が『教えて良い』と認めた者だけだ。良いね?」
「はい!」

そう、『空間転移魔法』が禁忌魔法に指定されている理由は簡単。軍事利用がめっちゃくちゃ怖いからだ。

考えてもみろよ。王都や街の中に、いきなり敵の戦車とかが出現したら、怖いだろ。ビックリだろ。
もしも王様の部屋の中に、敵の暗殺者が転移してきたら、もうダメでしょ。
あっという間に覇権国家の誕生だよ。世界征服も夢じゃないよ。

そんなこんなだから、『空間転移魔法』はみんなが欲しいし、みんなが警戒している。
歴史書とか見ると、何度か試みがあったみたいだけど…。全部失敗だって。
手しか転移してこなかったとか、頭だけどっか行っちゃったとか…。

そしてそんな便利&やべぇ魔法を、ヴァロは教えてくれるって言ってるんだ。翻訳魔導具の開発協力への見返りとして。

…は? おバカ???
明らかに釣り合ってない…。むしろ俺がお礼言いたい…。ありがとヴァロ!
『空間転移魔法』があれば、王都にもエジーナの街にも行き放題!
もう片道何時間も縛られなくて良いし、過保護なリイサスさん達も説得して、遊びに行けちゃう!
ハッ! もしかして、監禁されても自力で簡単に逃げられる…!!?
素晴らしい!! パーフェクトッ!!!
サイコーだぜヴァロ! 許した!! 洗脳仕掛けられたけど許した!! むしろ大好き!!!

「コージ、分かりやす過ぎだよ。顔に出まくりぃ。…ところでお前はどこで『空間転移魔法』なんて知ったわけ?」
「例え母親が魔女だろうと、一介の魔女が『空間転移魔法』なんて使える筈がない上に、存在を知っているかも…」

俺のニンマリ笑顔をもちもちしながら、オウとセイがヴァロに目を向ける。
ちなみにセキは俺の二の腕をもみもみしてるし、ルークさんはネコチャンに埋もれている。カイルはゴゴゴゴゴ…とヴァロを睨んで、ロイは俺の背後霊と化している。
みんな自由だなぁ。しかし視線はヴァロか俺に集まってるから、まだヴァロを警戒してるのかも。

「えぇ確かに、僕の母もこの魔法は使えません。しかし、母の家系に伝わる書物に書いてあったのです。『空間転移魔法』の魔法式が。恐らく、僕の先祖が序列入りだった頃、使っていたかと」
「先祖に序列入りか。あり得なくはないが、その魔法の安全性は」
「確認出来ていません。しかし母のツテを辿り、魔女王に尋ねた所、『使用者が充分な魔力を保持していれば、危険はない』と」
「マージがそう言ったのか?」
「えぇ。4年前の8月です」

マージって、あの序列77位のセキのお友達?
え、魔女王様なの? 魔女の王様で、魔女王様?
わーお! セキってば、凄い人と繋がってるんだな。まぁセキ自身が序列91位の凄い人なんですけど。
でもでも、そんな魔女王様が言ったんなら、魔力無限の俺なら安全だよなっ!

えへえへ、『空間転移魔法』を教えて貰ったら、1回オーディアンギルドに帰っちゃおっかな!
ガレ達、寂しがってるだろうし? みんなビックリするかなぁ!
ワーナーさんにも会いたいな。
ここのお城の料理、すっごく美味しいけど、美味しすぎて俺にはちょっと勿体無いと言うかなんと言うか…。
俺はワーナーさんの美味しくて、肉々しいご飯が大好きなのだ! ザ・男飯!!!
あっ、魔石もそろそろ完成するし、リイサスさんに渡そうかな!

はぁ~、たった数日会わなかっただけなのに、もうみんなが恋しくなってる…。
俺、やっぱりみんなが大好きなんだなぁ。





********************



ードローデスダンジョン16階層休息地ー

「さて…。5日目の終了だ。これから帰還魔導具で、ダンジョン前に戻る。その前にお前達、現在のレベルと進化したスキルを答えろ。まず、ユーキ!」
「レベルは62。『鑑定』が『叡知』に進化。『勇者覇気』が『英傑覇気』に進化。『詠唱短縮』が『詠唱破棄』に進化。『魔力察知』が『魔力感知』に進化。『思念直通』が『思念伝達』に進化。『思考分断』が『並列演算』に進化。『毒耐性』が『猛毒耐性』と統合され、『毒無効』に進化。各魔法耐性スキルが統合され、『魔法耐性』に進化。以上です」

自身の鑑定結果を見ながら、過去のスキルを思い出して答える。
全部答え切ると、教官が満足そうに笑って頷いた。想像以上に成長した事が、嬉しいようだ。
歴代勇者の中でも、俺は最高クラスと言われている。真面目な訓練態度や成長速度も相まって、帝国内では株が高い。

俺のレベルを聞いたキョウコが驚いた顔をする。
戦闘に消極的だったキョウコ、ナナ、シュンスケも、スパルタ教官に引きずられて、5日を過ごした。
あと一歩で死ぬ、みたいな環境に放り出された事で、それなりに戦えるようにはなっただろう。支援魔法に特化したシュンスケでも、オーガなどのB級モンスター程度なら余裕の筈だ。

「次、ケンゴ。レベルとスキルの進化」
「あー? レベル59。スキルは元のヤツを忘れたわ」
「なんだと? ならば現在のスキルを全部言え」
「50以上ある長ったらしいスキルをここで全部言えって? お断りだね。帰ってからにしてくれ」

不遜な態度で地面に座るケンゴ。
いくら鍛えていようとも、5日連続での気の抜けない戦闘はかなり堪えたらしい。教官もそれを分かっているのか、ため息を吐いてシュンスケに目を向けた。

「シュンスケ、お前の番だ」
「……レベルは36で、『鑑定』が『上位鑑定』になりました…。『狙撃補佐』が『狙撃』になって、『気配隠蔽』が『気配遮断』になって、『闘気付与』が『士気爆発』に進化しました…。…あと、『疲労耐性』を新しく獲得しました…」

そうだな。見るからに疲れてるもんな。可哀想に。
半ば引きこもりのオタクが、5日間のぶっ続けで戦闘を行えば、耐性が付いちまうくらいの疲労を感じても、おかしくはない。
康治郎がこんな思いをしていなければ良いが…。康治郎は辛い思いなんてしなくて良いからな。
一生、美味いものを頬いっぱいに詰め込んで、ふかふかのベッドでぐっすり眠って、俺の腕の中で笑っていれば良かったのに、介入者なんて奴のせいで、そんな未来は崩された。

マジで許さねぇ。ぶっ殺してやりたいが、そこは創造主ゼロアに任せるしかない。
その代わり、創造主ゼロアは俺に力と使命をくれた。
創造主ゼロアは、俺と康治郎が再会する事で、康治郎の人生はより良いものになり、康治郎の心の安寧も保たれると言っていた。
この世界に来て数ヶ月の康治郎が、誰よりも信用出来る人物を、康治郎の側に置いておく必要がある。康治郎を真剣に想い、康治郎の幸せに死力を尽くす人物。

簡単に言えば、康治郎と相思相愛の人物だ。
そしてそれは、10年もの間、ずっと側にいた俺しか役は勤まらない。康治郎と相思相愛の俺なら、こんな世界でも康治郎を心から安心させてやれるんだ。
だから、早く成長して、早く康治郎を見付け出す。大好きな康治郎を、早く抱き締めたい。

俺が康治郎とのムフフな妄想をしている間に、ナナとキョウコとリクトも、教官への報告を終えていた。
全員の報告を聞き終えた教官が、帰還魔導具を発動させる。
気付けばそこは、ドローデスダンジョンの目の前だった。空は快晴で、寝不足の体にこの暑さはキツい。
それは勇者全員が同じようで、ナナは耐えきれずに俺にもたれ掛かってきた。歩いて帝都まで帰る事も、難しそうだ。
教官や軍人が手を貸す様子もないので、まだ気力のある俺がしゃがんで、おんぶを促す。

「乗れよ」
「……いーの」
「おう。ナナくらいなら背負って帰れる」
「じゃなくて…、コウジロウくん。浮気になんないの」
「この状況でナナを助けない方が嫌われちまう。アイツ、何があっても女は守れっつぅ信条だから」
「………そっか。…良い子なんだね」
「自慢の親友だぜ」

俺の背中に体を預けたナナを背負って、立ち上がる。シュンスケが羨ましそうに視線を寄越してくるが、まぁ頑張って欲しい。
ぶっちゃけ康治郎以外の男とか背負いたくない。俺は康治郎が好きなだけで、同性愛者かって聞かれるとそうでもないからな。
ナナの太ももをしっかり支えて、俺はキョウコに声を掛けた。

「キョウコさんは歩けそうですか」
「なん、とかね…。営業で外回りばっかりしてたから、歩くのには馴れてるよ…え、な、キャーッ」

キョウコの後ろからのっそのっそと歩いてきたケンゴが、キョウコをひょいっと抱き上げた。キョウコは突然の浮遊感に悲鳴を上げて、ケンゴの頭部に抱き付く。

「無理してんじゃねーよオバサン」
「おっ、おばさっ…!?」
「俺はなぁ、この5日のハード合宿でかんっっっぜんに女不足なんだよ。運んでやるから黙って触られてな」
「清々しい程にゲスね…」
「Win-Winってヤツだろ?」

女好きのケンゴらしいが、キョウコは抵抗する事なく、ケンゴに担がれたまま、目を瞑った。どうやら一眠りするつもりらしい。図太い。
教官や軍人は何も言わないようなので、そのまま帝都方向に歩き出す。『しばらく歩けば馬車が停まっている』と教官が言った。
リクトとシュンスケがちゃんと歩けているかを確認して、ナナの足に剣が当たらないよう気を付けながらゆっくり歩く。

戻ったら、泥のように眠りたい。
康治郎の夢でも見れたら、嬉しいんだが。





********************




BL要素薄いですね。次回は頑張ります。




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