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権力系ホモ★グリス王国編

難しい知識いっぱい出してごめん

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「コージ、いい加減これ、外してくれないかな?」
「怖いからヤだ」
「何も怖くないよ。大丈夫さ。もう酷い事はしない」

ニッコリ笑顔のインテリメガネ。
でも、腹の中は黒いゲス野郎だって知ってるから、あまりにも綺麗すぎる笑顔の時は、信用しないようにした。


「………ネコチャン触らせてくれたら、いいよ」
「猫が好きなのかい? いいよ、好きなだけ触ってね。それぞれ名前があるんだ。撫でられると気持ち良いところもね」
「……ネコチャン、好き?」
「うん、大好きだよ!」

…ふむ。
いざとなったらまた拘束すれば良いし、『精神不干渉結界』はずっと張ってるし…。

何より、ネコチャン愛は本物みたいだ。
だって木の上のネコチャン達、みーんなぽよぽよ。さっきもふった時も思ったけど、ぽっちゃりさんだった。
ちゃんとご飯食べてる証拠だし、毛並みも良い。城の庭園を散歩出来るくらいにのんびりさんなんだから、酷い扱いは受けてないんだろう。

……あ、でもさっきのネコチャン、ここに集まって飼い主の愚痴とか喋ってるって言ってたな。
うーん、インテリメガネの前で『全言語理解』を見せるのは気が進まないけど、一応聞いてみるか。

『ネコチャーン、さっき飼い主の愚痴がどうとかって言ってたよね! この飼い主さんに何か不満があるの?』
『う、う、オメーら、おれらの集会場でケンカしてんじゃねぇよぉ~』
『あっ! ごっごめんね!』

木の上でブルブル震えるネコチャン達…。可愛いけど可哀想…。
あ、毛が逆立ってる!! わ~ホントごめんねぇ~!!

『もうケンカしないよ~! ごめんね、降りてきて~! 撫でさせて~!』

精一杯の申し訳なさを込めて、ごめんなさいする俺。そんな俺の言葉にネコチャン達、顔を見合わせて恐る恐る降りてきてくれた!
俺の肩に飛び降りたり、ルークさんの頭に着地したり、インテリメガネの後ろに隠れたりするネコチャン達…。かわゆい……。

「コージがにゃーにゃー鳴いてから猫達が降りだした……? まさかコージが…?」
「癪だけど変に詮索されるのウザいから先に教えとくわ。あれはコージのスキル。猫に限らず、大抵の相手なら言葉が分かる優れもの。コージは小動物が好きだから、ここに集まる猫を追っ掛けて、ここで猫と話してた。それをお前が邪魔したの」
「………つまり、犬と話す時はワンワン、と?」
「そゆこと」
「可愛い…」

そこで可愛い可愛い言ってるインテリメガネとオウは放っておいて、肩に乗って顔にすりすりするギャンかわネコチャンと、足元でお腹を見せて撫でろ撫でろって言ってるネコチャンを同時になでなでもふもふ。
可愛い…、ここが楽園だ…。

『…そんで、飼い主さんに不満はある?』
『あー、えっとなぁ。おれらの飼い主なぁ、疲れると気持ち悪くなるんだ』
『…? 気持ち悪くなる?』
『おう。鼻の下のばしてよ、おれらの腹に顔うずめてくるんだぜ? おれらがいやがってもぜってー離してくれねーの。おれらを5匹くらいだっこして、そんまま寝ちまうんだ』

………あら。
なんか人の知っちゃいけない部分を知ってしまった予感。
クール美女のぬいぐるみ好きや、学年1位の秀才のドルオタ発覚レベルのギャップ…。
インテリメガネのちょっとアブナイ私生活を知ってしまった。
いやまぁ? 虐待とかじゃなくて良かったけど?
ホントに猫好きなんだなぁ。いや…猫狂い?

「コージくん、どうしたのかね? そんなプリンと思って口に入れたら子羊のロースト味だった時のような顔をして」
「例えが分かりにくい…! でもあながち間違ってない…!! いや…、インテリメガネがネコチャン達をいじめてないか聞いたら、なんか残念な一面を教えられちゃって…」
「!? コージ? ヘレケナから何を聞いたのかな?」
『あ、きみヘレケナって言うの?』
『そうだぜぇ。飼い主がヘレケナの法則っつぅのを発見したときに拾われたから、ヘレケナって名付けられたんだぜ!』
「へぇ…、見付けた法則の名前を付けてるんだ」

俺のその言葉に、インテリメガネもどんな会話をしてるのか、察したみたいだ。
そしてちょっと間を置いた後、『………インテリメガネ?』ってボソッて呟いた。
うーん、インテリメガネって呼び名も、もう廃止かな。名乗られたし。

「…えっと、なんて呼べば良い? あ、タメ口で良い?」

いや相手は大人で魔導師団長なんだから、普通はダメなんだけどな。良い訳がない。
でももう今さらですし。おすし。敬語とか使う気にゃなれん。敬ってないから。

「構わないよ。僕の事はどうかヴァロと」
「えーと、ヴァロ?」
「なんだい」

拘束を解いて自由になったインテリメガネ…じゃないな、ヴァロが優しく微笑んだ。
ネコチャンがいっぱいいるからか、笑顔に裏は無さそうだ。

「ご、ごめんね…。その、ヘレケナから疲れた時のヴァロの様子を聞いちゃって…」
「………疲れた時の…僕?」
「ネコチャン吸ったり…色々と残念でダサい様子…」
「……………………」

…ヴァロが頭を押さえちゃった。
いやごめん。だって洗脳とかする奴だし。ネコチャンにも酷い事してるんじゃないかって思ってさ。
ヴァロ、ちょっと可哀想…。

「……ヘレケナはしばらくマタタビ禁止だな…」
『ヘレケナ、飼い主がマタタビ禁止って言ってるよ』
『んなっ!? せっしょーな!!』

ヴァロの言葉を通訳した途端、ショックを受けてヴァロに飛び掛かったヘレケナ。
鋭い猫パンチが素晴らしい。
セキセイオウは俺とヴァロの距離感をじっと見ている。
俺的には、タメ口で名前で呼び合うようになったら友達って認識だから、もうそんなに警戒してない。

……仕方ないだろ。優しい友達に囲まれて育ったんだ!
上っ面で仲良く装いながら、内心警戒するとかそんな器用な事できないんだよ!
上っ面で仲良くしたら、心まで仲良くなっちゃうタイプです。

「あ。あぁそうだコージ。僕、自身で魔法魔術の研究をしてるんだけども、少し手助けをして欲しいんだ。勿論、報酬は弾むよ」
「………ど、どんな」

ネコチャンに群がられていた、セキセイオウ、ルークさん、ロイからの視線が、グウィンッて一気に集まった。

俺の力を軍司利用しようとしてないか。金儲けに使おうとしていないか。危ない事に巻き込もうとしていないか。
それを知ろうと、みんなが俺とヴァロを見詰める。

でも、ヴァロは俺の力の事、詳しくは知らない筈だ。きっと王様達はヴァロに話してない。
じゃないと、あんな反応はしない。
俺もドキドキしながらヴァロの次の言葉を待つ。
ヴァロは猫パンチに飽きたヘレケナの頭を撫でながら、子供みたいな笑顔を浮かべた。
俺を洗脳して、愛妻にしようとしていた奴とは思えない…。

「翻訳魔導具だよ。ずっと、ずっと昔から思っていたんだ。猫と話せたら良いのにってね。もしも猫と話せたら、好きなオヤツや撫でられたい場所、どこを触られたくなくて、何のオモチャがお気に入りなのか、時間を掛けずとも分かるだろう? そして僕の目の前には猫とお話が出来るコージがいる! ね? ステキだろ?」

あら、思ってた8倍は可愛い手助け。
うんうん、でも分かるぞ。俺も日本にいた頃は、ネコチャンとお話がしたいってずっと思ってた。

もしそんな物があったら、なんで俺が寝ている間に部屋に侵入してくつろいでいたのか、教えて欲しかった。
そう、日本にある俺の部屋に、よく侵入されていたんだ。

朝起きたら、目の前にニャンタマがこんにちはだったもん。特に冬は寒いから、野良猫がベッドに潜り込んできた事も結構あったし、雨の日は雨宿りに使われてた。
でも流石に、野良猫ってバイ菌持ってそうだから、常連ネコチャンは取っ捕まえて、風呂でワシャワシャ洗うんだ。
んで、そのネコチャンたち、窓の鍵は毎晩締めてるのに、朝起きたらいるの。何故か。
でも窓は締まったままだから、密室侵入事件だったわ。
可愛かったし、うちの飼い犬とも仲良くしてたみたいだから、別に良いけどね。
猫飼ってないのに、部屋に猫の抜け毛が落ちてるミステリー。
首輪の付いたネコチャンもいたから、もしかして俺の部屋が集会場所にされていた…?
うーん、人畜無害とでも思われていたのだろうか…。

まぁいいや。えっとミャウリンガル開発への協力だっけ?
俺は全然良いよ! 『全言語理解』を持っていない人も、ネコチャンとお話出来ると嬉しいよな!!
だから俺的には構わない。
……俺的にはな。

でも、ルークさん的にはどうだろう。
セキセイオウ的には? カイル的には? ロイ的には?
秘密結社のボス(仮)になったからには、慎重に行動しないとな。
リイサスさんもガレも、安易な協力は止めとけって言ってたし。

「俺は良いと思う。ルークさんとセイはどう思う?」

ルークさんとセイは、秘密結社の運営係だ。セキ達にも意見は聞きたいところだけど、時短の為にとりあえずは2人にな。

「魔導師団長殿、その猫と話せる魔導具とやらが完成した際、販売は?」
「………何故コージへの協力依頼にオーディアンギルドマスターが口出しするのかは分かりませんが、完成品を僕が売る…、というよりは、設計と魔術式だけをどこかしらの機関に売る形になるでしょう。僕はあくまで自分の趣味として、翻訳魔導具を開発したいので、予備含め3つあれば充分です」

おぉう、口調は刺々しいけど、内容的には金儲け目当てじゃなさそうだな。
本当に稼ぎたいのなら、自分で特許とか取って自分の管理下の元で製造する筈だし。
ルークさんに向かって、メガネクイッってしたヴァロ。絵になるけど、イヤミな感じが凄い。

「誓えるか」
「えぇ。金は既に腐る程ありますから」

うわっイヤミ~…!
んでも、そう言ってくれた方がみんなも信じられるよな。
綺麗事を疑ってしまうのは人間のサガか…。それとも俺が歪んでいるのか…。
あ、佐賀行きたい。

「ならば報酬次第だな」
「何故コージへの協力依頼に青古龍殿が報酬を聞かれるのか分かりませんが、オーディアンギルドはヒュドラを売り払い、金貨は山ほどあるでしょう。ですから報酬は僕が見付けた新魔法と、既に詠唱ごと葬り去られた禁忌魔法の伝授。図書室のレベル4への立ち入りを手伝います。第一王子も暇ではありませんから、第一王子が付き添えなければ、僕が付き添いますよ」
「ほう。あの図書室でまた2人きりにするなど、我らが許すとでも?」

セイが不敵な笑みを浮かべて、ヴァロを見下ろす。
…おっと! 身長を説明してなかったな。

この中でぶっちぎりにデカいのはルークさん。身長は223センチ。
次にデカいのがセキセイオウで、3人ともそんなに変わらない。多分190くらいかな?
んで、お次がヴァロ。見た感じ、セキセイオウより15センチ程度低いみたいだから、175くらいでしょう。
次のロイはヴァロと僅差だし、172か、173センチ? でも成長期だから、もっと伸びるかも。
……最後は俺。165センチ。ぶっちぎり最下位です。
いやさ、でもさ、俺も成長期だし? あと1メートルくらい余裕で伸びるし? いつかロイくらい抱っこ出来るようになるし!!

「コージに『精神不干渉結界』を張ってもらえば解決でしょう。それに、あそこには騎士もいますよ」
「我らのうちの誰かを同行させる。いいな?」
「……横暴ですねぇ。まぁ聖騎士団長以外であれば良いでしょう」
「む? 何故カイルだけダメなのだ?」

ヴァロの言葉にビックリな俺とセキ。一方のヴァロは、当たり前でしょう、みたいな顔をしている。
カイルだけダメなんて、そんなの悲しい。ちゃんと理由があるなら教えて欲しいな。

「…レベル4の中には、宗教関係の本も多数あります。そして聖騎士団長が所属する正教会は、まさに世界の火薬庫。聖騎士団長は火薬庫に繋がる導線です。彼が正教会や女神教の『隠しておきたい真実』を知り、正教会本部に報告でもされてしまえば、途端に宗教戦争の幕開けですよ。ですから、戦争を未然に防ぐ為にも、彼を入れる訳にはいかないのです」
「ほう、『隠しておきたい真実』とは?」
「うぉっ!?」

最後に野太い悲鳴を上げたのは俺だ。
だって、ヴァロの後ろの木の後ろから、いきなりカイルが現れたんだ。
宰相さん達に秘密結社結成のお知らせをしに行ってくれていたけど、もう終わったのかな?

……つか、俺がぶん殴ったって知らないから、ヤバくね? カイルも俺が洗脳されかけて激おこだったし、なんとか落ち着いて貰わなきゃ…。

「……やぁ、お久しぶりですね、聖騎士団長。相変わらず『魔法知覚』に引っ掛かりませんね。一体どういう仕組みなんです?」

おや。昔馴染みな雰囲気? でも何だか刺々しい。少なくとも、肩組んで笑い合ってたような感じじゃなさそうだ。
ところで『魔法知覚』とは…。

「『魔法知覚』は結界属性の上級魔法だ。膜のような薄い結界を何重にも周囲に張り、その膜を突き破った生物の、大きさと形を知る…古代魔法なんだが。ヒトが使うとは聞いた事がない。ヴァロと言ったな。貴様、どこでそれを?」

俺の疑問を察したのか、セイが教えてくれた。…けど、古代魔法!!!

あ、古代魔法ってのはな、文字通り、おおーーーーーむかしの人や魔族が使ってた魔法なんだ!
大きな戦争で主要国が滅んで、詠唱とか魔方陣とか記録はほぼ消失しちゃったらしい…。

だけど、セキセイオウとか序列入りとかの、戦争以前から生きてる長寿の生き物なら、古代魔法を使えるんだ。

んで、その古代魔法…、めちゃんこ強いし便利なんだよね。
だから古代魔法って、魔法式が発見される度に大盛り上がり!! 発見者には大金が入ってくるとか!

……んでんで、その古代魔法をヴァロは普通に使っていると。

「『魔法知覚』は図書室のレベル4の本に魔法式が載っていましたよ。それを解読し、詠唱を導き出して使っています。自分で見付けた古代魔法もあるんですよ?」
「自身で古代魔法を見付ける? それは…、俺達でも苦戦するレベルだぞ」
「えぇ、とても大変でしたが、それだけの価値はありますよ。何せ古代魔法は万能と言っても、過言ではないのですから」

前にガレに見せて貰った、魔法一覧の本。あれは全部現代魔法で、古代魔法は載っていない。
だから、俺は今のところ古代魔法が使えない。
まぁ、使う魔法の効果とか教えて貰えれば、簡単なんですけど。
そして、今まで得意げに話していたヴァロが、カイルを見てため息を吐いた。

「……ですが、この聖騎士団長には『魔法知覚』が効かないのです。本に載っていた魔法式に欠陥があるのか、私の詠唱が間違っているのか、聖騎士団長がおかしいのか…」
「おい。俺を変人みたいに言うんじゃない」
「事実でしょう」
「うるさい。それよりも、正教会と女神教の『隠しておきたい真実』とは何だ、魔導師団長」

……宗教関係は怖いんだよなぁ。






********************



魔術式…紙に書いたり床や岩に刻んだりして発動する、いわゆる魔術。

魔法式…化学式みたいなもの。その魔法の『属性』・『強さ』・『発動する為に必要なレベルと技量』・『効果』・『詠唱のヒント』が暗号化されたもの。

魔法は詠唱があれば一発で発動出来るが、技量が足りなければ不発、まれに暴発するので、安全性と機密性を考慮し、実験記録などは魔法式として書き記す事が暗黙の了解。
難解なものは何十行にも及び、復号化…、つまり詠唱に戻すのは、専門家のお仕事。復号家という職種がある。


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