異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件

メル

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権力系ホモ★グリス王国編

5000記念 腐った貴族にお色気を!

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※攻め達がモブおじさんにお尻を狙われている描写があります。
※攻めがモブおじさんを誘惑(笑)する描写があります。










~登城命令が下るちょっと前~
 
 
コツコツ。コツコツ。

「………」

コツコツ。コツコツ。

「…………………」
「コージくん、朝だよ。おはよう」
「……………ぐぅ……」

早朝6時。鳥がくちばしで窓を叩く音と共に、リイサスさんが起こしに来た。
俺の隣には俺を抱き締めてぐーすか状態のルークさん。朝からもふもふだ。

「コージくん、ご飯出来てるよ」
「………あい。おはよーございます…」
「うん、良い子だね。じゃあルークの耳から手を離せるかな?」
「イーッ!」
「ありゃ。ご機嫌斜めか」

しばらく朝のベッド攻防は続いたけど、リイサスさんに耳を内側を舐められて、俺は完全に目が覚めてしまった。二度寝ならず。敗北だ。

「ほら、ルークも起きろ。飯だぞ」
「ぐぉぉ…、……コージくん…」
「もうお着替え中だ。お前も起きて顔を洗え」
「……リイサス、今日の予定はなんだったか」
「お前は会議だ。エプルの樹林で目撃された魔人の情報を纏めるギルマス総会だろう」
「行きたくない」
「うるさい。エジーナの街なんだから日帰り出来るだけ喜べ」
「…コージくんの予定は?」
「ポーションを10本作って貰ったあと、剣術の訓練を受けてクエストだ。泉の底の植物を魔法で取って貰うんだ」
「変な虫が付かないよう、見張っていてくれたまえ」
「もちろん。だからさっさと起きて無精髭を剃れ見苦しいぞ先に飯は食べておくからな」
「……リイサス、最近私に当たりが強くないかね?」
「気のせいだ」

寝間着をぺぺっと脱いで、軽くジャンプしてズボンをしっかり履いた俺。その間もリイサスさんはベッドにゴロンってしてるルークさんに毒を含んだ言葉を浴びせている。
…気のせいじゃないな。リイサスさん、明らかにルークさんにトゲトゲだ。トゲトゲチクチクハリセンボン。
うーん、昨日までは比較的普通だったと思うんだけど…。どうしちゃったんだろう。

「…気にしないで、コージくん。ただの八つ当たりだから」
「八つ当たりなのか」
「八つ当たりなのかね」

俺とルークさん、同時に顔を見合わせて首を傾げた。朝一だと言うのに、ここまでどんよりムカムカなリイサスさんは珍しい。というか、初めてかも。

「何か嫌な事でも?」
「……………………………」

気まずそうな、言いにくそうな顔をしてリイサスさんが黙る。
…これはやっぱり何かあったな。
よしっ! セラピストコージくんの出番ですな!
こう見えて俺、生前はセラピストとして重宝されてたんだ。
同級生や後輩、先生たちからも良く悩みを相談されてたし、勇輝や瀬戸が疲れてた時は、凶悪面をなんとかする為に駆り出されてたし。
アイツらにとっちゃ、身長の低い俺は良い抱き枕になるみたいでさ。ぎゅーってハグされて撫でられまくったんだ。なんか、超癒されるらしい。
そうと決まれば話を聞き出す為にリイサスさんにハグ! ぎゅっとな。

「リイサスさん。その、無理にとは言わないですけど、嫌な事はみんなで共有した方が楽になると思うんです。何か出来る事があるかも知れないですし」
「…うん、そうだね。その通りだ。…2人とも、聞いてくれるかい?」
「もちろんです!」
「うむ、私たちはコージくんを奪い合うライバルではあるが、同時に良き友人でもある。コージくん関係以外でならば、君の悩みは出来る限り除きたい」

おや、おやおや。ルークさんが優しい。あ、いや俺にはいつもだけど、リイサスさんとはライバルってイメージが強かったからさ。
友達としてリイサスさんに接するルークさん、結構珍しい。
良いもの見れたな。なごなごだ。

「…コージくん関係だ。が、俺とルークが争う事じゃない。……昨日な、出資者の貴族が来たんだ。ルークは不在だったから、俺が対応した」
「……報告を受けていないが」
「報告したらお前は殺しに行くと思った。その貴族、コージくんの噂を聞き付けてやって来たんだ。ウチの冒険者から細かい容姿を聞き出して肥えた腹を揺らしながら恩着せがましくコージくんと同衾させろと。いくら性根の腐ったがめつい落ちぶれた臆病者の卑しいとんちんかんな成り金しみったれ糞国賊とは言え、ギルド建設の際に出資して貰った手前、往復殴打で追い返す訳にもいかず。かと言って行方不明になって貰うには少し名が高い。取り敢えずは酒を飲ませて前後不覚にさせ、帰りの馬車に放り込んだよ。下戸で助かった」

…色々と言いたい事あるけど、とりあえずリイサスさん悪口のボキャブラリーすごいな。国賊ってなぁに? 初めて聞いた。
そしてそんなリイサスさんの報告に、ルークさんがどんどん青筋を立てていく。
これは…、やっぱり報告するべきじゃなかったかな。その貴族さん、死ななきゃ良いけど。

「………どこのどなたかね」
「殺すだろ、お前」
「まさか。こんな辺鄙な場所までご足労頂いたのだ。お礼をしに行くだけだ」

お礼じゃなくてお礼参りだろ。ルークさんってば、殺気が全然隠せてないよ。
荒ぶる熊さん。憤る熊さん。でもやっぱり熊さんだから、お耳に目が行ってしまう。
つか、どうきんってアレだよな。つまりは性接待だよな。それを俺にしろと? ホワイ?

「それにしても、リイサス。いつもの君ならそんな輩、気にも留めなかっただろう。どうしてそんなに不機嫌に?」
「…………ソイツ、コージくんがダメなら、妥協して俺で良いって」
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………」

…………………えっと、という事は、リイサスさんのお尻もピンチ?
まぁこのお顔だもんな。そりゃモテるよな。
ネコのリイサスさん…。…うん、エッチなんだろうな。ちょっと見てみたい気もするけど、流石に可哀想だ。
ん? アレ? リイサスさん、平然と俺の尻を掘ったよな? 俺から誘ったようなもんだけど、何の躊躇も同情もしなかったよな?
やっぱり掘られちまえ。

「俺としてはコージくんが試したいとか言って後ろを使うのは全然良いんだ」

あっ、それは良いんだ。
うーん、俺がタチか…。………男の尻で童貞卒業なんてしたくはないけど、リイサスさんなら…。
いや、ダメだ。俺はエッチなお姉さんに童貞を奪われたいんだ。
女の子と健全エッチも良いけど、童貞野郎の俺は上手く出来る自信がないのでお姉さんにリードしてもらいたいんです。エッチなお姉さん…。
あ、違う。リイサスさんのお尻がピンチって話だった。

「だけどあんな野郎に使わせる穴はないし、あの野郎に触れられたくもない。しかしコージくんに同衾させるのは絶対にあり得ない。だから悩んでいてね。八つ当たりしてすまなかったよ」
「何故すぐに言ってくれなかったんだ! コージくんだけでなくリイサスにまで売女の真似をさせようとは…生かしてはならん。すぐにでも家畜の餌に!!」
「あぁ~もうほら~! そう言うと思ったから黙っていたんだ! 俺は大丈夫だ! なんとかしてみせる!」
「それでもし君が尻を差し出すような事になれば…! 殺した方が良い!」
「リイサスさん。俺、リイサスさんの尻を犠牲してまで自分の尻を守ろうとは思わないっす。どうすれば良いか一緒に考えましょ?」
「コージくん…」
「俺、リイサスさんの事、大好きなんですから! あっ、親愛って意味ですよ!」
「私もコージくんも、共に暮らす家族として君を愛している。私は今日不在だが…、ガレ・プリストファーや古龍殿らにも話は通しておこう。リイサスほどの高嶺の花を狙う身の程知らずの事だ。同じく美形な彼らだって狙われる可能性は充分にある」
「打倒・変態貴族、です! 対策を考えて、追っ払っちまいましょう!」

俺とルークさんの言葉に、とっても素敵な優しい笑みを浮かべてリイサスさんが頷いた。
…くそう。可愛いなぁ。

「……あぁ…、あぁそうだね! 一緒に考えよう! コージくんがいるなら百人力だ! じゃあ朝ごはんを食べながら作戦会議といこう! そしてルークはさっさと髭を剃って着替えろこの寝坊助が」
「!? 何故だね!? ちょっと良い雰囲気だったではないか!!」
「これは八つ当たりじゃなくてコージくんと一緒に寝た僻みだ」

……イイハナシダッタノニナー。






********************



「おっはよーございまーす!」
「おはようコージくん!」
「コージくんおはよう」
「今日も元気いっぱいだな!」
「おはよう」
「今日も見事にもちもちだ」
「芸術的なまでにぷるんぷるんなお肌だ…」
「うん、いつも通り可愛い!」

仲良くなった冒険者さん達が口々に可愛い可愛いふわふわもちもちぷるんぷるんとか言ってるが、まぁいつもの事だ。気にしてないしみんなも気にすんな。

……気にしてないって言ってんだろ!

「よぉコージ! 今日も絶好調に小悪魔だな!」
「馬鹿め。コージは天使だ!」
「人間だからな? おはようガレ! カイル!」

ガレとカイル、口喧嘩はしょっちゅうだし暇さえあればボカスカ殴り合ってるけど、殺し合いには発展してない。お酒が入れば死神の吐息の団員さんと聖騎士の人が腕相撲で大盛り上がりって事もある。
うん、良い感じに仲良く出来ているようだ。

「ガレ、カイル…、ちょっと相談があるんだ」
「あぁ? 式場は精霊ダンジョンの最深部だぞ。何か他に希望があったか?」
「指輪はもう決めているが、念のため一度見に行くか」
「いや結婚の相談じゃなくてな…。そもそも結婚しないからな…。リイサスさんの事なんだけど」
「過保護野郎? は?」
「まさかアイツと付き合うなど言わないだろう? 閉じ込めるぞ?」
「違うから。監禁しようとすんなし」

一瞬、目から光が消えた二人をどうにか宥めつつ、リイサスさんのお尻がピンチな事だけを簡潔に伝えた。それを聞いた二人は少し顔を見合わせて、首を傾げる。

「別に良いんじゃねェか?」
「ライバルが減るな」

うぅん、薄情者め。俺への想いの重さを良い感じに他にも振り分けて欲しいもんだ。

「その変態貴族、美形なら誰彼構わずらしいから、多分見付かったら二人もお尻ピンチだよ」
「よしぶっ殺してやるぜ」
「任せろコージ。跡形も残さん」
「殺しちゃダメだっつぅの。脅かして二度と勃たないようにしてやるだけ!」
「中々に残酷だなw」
「……コージ、もしかして怒っているのか?」
「………別にぃ」

別に怒ってねーし。リイサスさんのお尻を狙われても、俺恋人じゃないから関係ねーし。怒ってねーし。

「おこじゃねーか」
「おこだな。可愛い」
「過保護野郎に独占欲を覚えたのは不愉快だがおこ顔は可愛いな」
「頬が真っ赤だぞ」
「いつもだろ。リンゴだろ」
「齧りたいな」
「はむはむしてェ」

うっせ! おこじゃねーもん!! さりげなくセクハラすんなし!!

「んで、その変態貴族って? どこのどいつだ?」
「ディバナ子爵だって。偉いの?」
「子爵程度ならどうとでも出来る。神聖児性的消費未遂罪で地下街送りなんざ容易いものだ」
「神聖児って俺のこと?」
「『神の愛し子』の称号を持つお前以外に誰がいると?」

むむっ、確かに…。それっぽい単語が並べば立派な法律違反に聞こえるんだから、人間の脳って単純だよな。
…え、俺が単純なだけ?

「マ、行方不明になってもらうにはちと有名過ぎるなァ。だが地下街送りだけじゃ生ぬるい。拷問、やるか」
「やらなくてよろしい。セキ達にも協力してもらって、いっぱい脅かすだけっての!」
「古龍から脅迫されんのはマジでトラウマだと思うがな…」

あーあー聞こえなぁーい。
大切な人を盾にお尻を狙う変態親父なんかどうなっても知らなぁーい。

「古龍らには伝えたのか?」
「いんや、今から。…あっ、セキーセイーオウーッ!!! ちょっとご相談がありけりーー!!」
「式には名のある神獣たちを招待する予定だ!! コージ側で招待したい者がいれば手紙を出す準備をしていてくれ!」
「結婚はしません!!!」






かくかくしかじか

「ほう、なるほど! つまりリイサスとコージが狙われているのだな!! よし分かった!! 売ろう!!」
「え? 売ろう…? どこに?」
「魔女や魔法使い共にだ!! 人間の皮膚は呪術書の革表紙にするのにピッタリなんだ!」
「ひぇっ!?」

笑顔ハツラツとおっそろしい事を言うセキ。それに続いて、セイとオウも口々に人間の使い道を教えてくれる。

「目玉は東に住む天狗共が好むし、脳はあのマッドサイエンティストにでも売れば良かろう。記憶を吸い出せればスキルをいくつかくれるぞ」
「スキルを!?」
「生き物からスキルを奪って他人に付与する魔道具があるんだ。持っているのはソイツくらいだろうがな」
「スゲー…」

セキもセイもオウも、やっぱ17000歳生きてるだけあるよなぁ。物知りだし、ワクワクさせるような事を教えてくれるし。
まぁ言ってることは恐ろしいんですけど。

「それ実質殺してるだろー。脅かすの!」
「ふむ…。分かった! 俺たちの全力を持って脅かそう!! 二度と外に出られぬようになるぞ!!」
「………おいコージ。この古龍、なんかさりげなく恐ろしい事言ってんぞ」
「人を脅してケツ掘ろうとする野郎なんざ一生部屋に引き込もっていれば良いんじゃね?」

俺がそう言うとガレは目を見開いて頷いた。
俺は扉から入ってきたロイに事の次第を伝えるべく駆け寄って行く。
ロイの後ろにジャックさんもいたから、ついでに教えなきゃな。

今回はみんなに協力して貰うぞ!
変態貴族におさらばを!!





「……コージの奴、実はかなりキレてんなァ。珍しいっつぅーか…、初めてだ」
「ディバナ子爵の脅迫して性を貪ろうとする姿勢に怒っているのか? …それとも、やはりリイサスに独占欲を覚えたのか?」
「どっちもだろ。割合的には2:8くらいだろーがな。殺そうとしないのは俺らと違って良心があるからか」
「…俺が言うのも何だが、リイサスを汚した訳でもなく、脅迫要素を匂わせた程度でコージのあの怒りようは…、少し、異常では」
「マジで俺らが言える事じゃねーなw」
「………なぁ、ガレ・プリストファー。コージって、まさか」
「細けェこと気にすんだな聖騎士団長サマは。コージがどれだけ嫉妬深かろうと俺らはただ愛するだけだろ」
「…あぁ、そうだな。嫉妬しているコージは可愛い」
「それなァ!」






********************





「邪魔するぞぉ!」

乱暴にドアを開け放ったのは、昨日と同じあのクソ貴族。ギルマスのルークがいないから俺が対応に当たる。
みんなで爆笑しながら考えた作戦通りに。

「…これはディバナ子爵。2日も続けてご足労頂けるとは」
「昨日の返答を聞いていないからな! それで、どうするつもりだ? コージ・アヤマを差し出すか、それとも貴様が私と寝るか?」
「………………」

豚野郎めが。どこまでいっても業腹な奴だ。

俺の尻の谷間に指を滑らせるこの男こそ、コージくんと同衾させろと言ってきた鉄面皮のディバナ子爵。
色狂いで有名で、美しい者は男も女も貪り食う。隠し子が100人いるだとか、家には性奴隷や肉便器が何人もいるだとか、夫のいる婦人を夫の目の前で犯して夫には小便を掛けただとか、下品な噂が絶えない男である。

正直、今すぐにでもぶちのめして虫か魚の餌にしてやりたいが、作戦の成功の為には我慢しなければ。
こんな多くの冒険者の前でをする訳にはいかない。警護に来た私兵共々、奥の部屋に案内しよう。
きっとこれがこの男にとって最期になるだろうから、期待させてやるか。
いや~、死ぬ者に対してなら優しくなれるんだよな。不思議。

「…あのですね、ディバナ、子爵…。昨夜、コージくんと協議したのですが…、その、お恥ずかしながら、私もコージくんも高貴なあなた様に、その、抱かれたく…」
「…!!!」
「二人で、ご奉仕させて頂く訳にはいきませんか…?」
「あ、あ、あぁ!! 勿論だ!!!」

耳元で囁き、ぶよぶよの胸部に右手を添える。左手はそっと下半身へ。
こんな誘惑するような言動、コージくんやルーク、古龍達に見られれば軽く死ねるが、全員奥の部屋でスタンバイしているから大丈夫だ。
それにしてもこの子爵、笑える程にのうたりんだ。昨日はあれだけ敵意剥き出しだった俺が、こんなに分かりやすく誘っているのだから、もう少し警戒心を持っても良いだろうに。

「他にもあなた様の剛直で中を掻き回されたいと言う者が多く、お待ちしております。どうぞ、あちらのお部屋に。あぁ、私兵の方々にもご奉仕させてください。コージくんには劣りますが、美しい者達が股を濡らしてあなた様方のご立派なものに貫かれたがっておりますので」

バカはエロい言葉だけで欲情する。
はは、やっぱり子爵の私兵ごとき、この程度でギンギンだな。
さて、コージくんたちは準備出来たかな。
これ以上尻を撫でられて揉まれればホントに手が出てしまいそうだから、いい加減案内しよう。
最初は天国を見せる為にコージくんも薄着をするそうだから、ちょっと楽しみだ。

だが反応はするなよ俺の愚息…!!





*********************




扉を開けて、息を飲んだ。

その部屋は普通の仮眠室だった。ベッドが10個あって、特別豪華な訳ではない。装飾もセンスは良いとは思うが、金を掛けているのではないのだろう。
だがそこにいた者達は、豪華とかそんな言葉で纏めるには余りにも美しかった。
雇い主であるディバナ子爵も、あまりの美しさに唖然としている。

9人、いた。

1人目は人懐っこい笑顔を浮かべた、ベージュでふわふわの髪を持つ青年。子供っぽくて愛らしい笑顔と、これから行う行為のギャップがたまらない。

2人目はクールビューティという言葉がよく似合う、珍しい青い髪を持つ青年。その余裕そうな顔がベッドの中でどれだけ歪むのか気になってしまう。

3人目はやんちゃな笑顔でニコニコ笑う赤髪の青年。薄着をしていて、見える肌は健康的な色合いで、たくましいが健全に楽しめそうだ。

4人目は真顔の目が死んでいる青年。さらさらな黒髪が特徴的だ。抱けるとなれば、泣かせたいと思うのはきっと必然だろう。

5人目はそばかすの目立つオレンジ色の髪の青年。緊張しているのか、表情は固いが、何故か体から美味しそうな匂いがする。

6人目は髭を生やしたオールバックのたくましい男。元々美形だが、年を重ねて良い感じに熟れている。あっちの方もリードが上手そうだ。

7人目は美しく長い銀髪を持つ男。その端正な顔と銀髪を汚したくてたまらなくなる。どこかで見た事がある気がするが…。

8人目は危険な雰囲気を纏った色男。触れば火傷しそうな程に妖しく、今にも飲み込まれそうだ。

最後の1人は最も目立ち、最も美しく、最も愛らしい。
まだ子供だろうか? 白く柔い肌に潤んだ瞳と赤いぷるぷるの唇。髪は茶色のふわふわで、冒険者にしては小柄で細い。
視線にも動作にも目が釘付けで、神聖さすら感じてしまう。

「…なんと、可愛らしい……」

ディバナ子爵が震える声でそう呟いた。
本当にその通りだ。一人一人が規格外に魅力的だが、中央のベッドに座り込む少年は、正に別格。
天使と言われてもきっと信じてしまう。

と、思っていると、中央の少年以外の者が一斉に立ち上がり、俺たち私兵に近付いてきた。
それぞれがそれぞれに誘惑され、すり寄られている。
同僚のカリスなんて、危険な雰囲気を出す色男に顔を覗き込まれてデレデレだ。
その様子を呆然と見詰めていると、俺の肩にも手が掛けられた。
俺にすり寄ってきたのは、長い銀髪の美しい男。長身な上に思ったより力があり、今にも押し倒されてしまいそうだ。
もう流されてこの男の尻を滅茶苦茶に突き上げてしまいたいと思考が停止しかけるが、やはり未練はあの少年。
この男も恐ろしく魅力的なのだが、少年を抱きたかった。
しかし少年はディバナ子爵が独り占めしてしまうだろう。それが残念でならない。
あの少年は決して誰かが独占してはいけない人物なのだと、俺は思っているのだが。

「………コージが、気になりますか?」
「えっ。あ、いや…」

視線を少年に向けていた事に気付いたのか、銀髪の男が小声で尋ねてきた。
どこかで聞いた事のあるような気がするが、香でも焚かれているのか思考が纏まらず、動悸も出てきた。
が、流されて押し倒される同僚を見ていると、疑問が沸いてくる。

「…あ、あのコージという少年は…」
「……はい」
「男娼では、ないですよね。あんな子がいれば今までディバナ子爵が知らなかった訳がありませんし…、なにより、あの子の雰囲気は、男娼のような淫らなものでは…」
「…………………」

リイサスという冒険者の青年と、コージという少年にベッドに招かれて鼻の下を伸ばすディバナ子爵。
内心、下劣だと思いつつも、文字も読めない俺は子爵の私兵でもしていないと食べていけない。

少年の太ももに触れようとしては少年に逃げられ、焦らされるディバナ子爵を羨ましく思いつつ、銀髪の男に疑問をぶつけると、それまで猫のように美しいだけであった銀髪の男が、鋭い視線を向けてきた。
慌てて目線を合わせるも、それは自分をないがしろにされて怒る者の視線ではない。
何か隠しているのだろうが、俺は悟ってしまった。

俺はこの男に勝つ事は出来ない。例え剣を抜こうと、この男には傷ひとつ付けられないだろう。
それなりに剣を道を進んできたのだから、分かってしまう。
この男はとんでもなく強い。ここの私兵全員が切って掛かってもきっと敵わない。

「…貴方のような強い人が、何故こんなこと……」
「コージ、俺はこの男を気に入った。奥の部屋で少し話してくるが、構わないか?」
「へ? あぁ、うん、良いよ。楽しんで」

少年の鳥の囀りのような声が聞こえたと思ったら、強く肩を抱かれ、抵抗する間も与えられずに隣の部屋に連れて行かれた。
扉が閉じる寸前、同僚のカリスがニヤニヤして俺を見ていたのが分かった。
何とか危機的状況を伝えようとするも、無慈悲に扉は閉じられる。
高揚はとっくに過ぎ去った。背筋に汗が流れ、その男を見上げる他ない。

人を誘う男娼のような雰囲気は既になく、そこにいたのは恐ろしい化け物のような男だった。






********************





はぁい(* ̄∇ ̄)ノ
メルです。


遅れてごめんなさーい!
今回のお話ですが、長くなったので前編と後編に分けます!
そしてコージくんの本質がちょっと垣間見えます。
攻めが受けっぽく振る舞う展開が苦手な方は申し訳ないです…。ただギャグ路線を目指したので許して欲しいっす…。


いつも暖かいコメントを本当にありがとうございます。そんな皆様にお願いがございまして…。
こんなご時世です。コメントされる際は、アルファポリス様からのお知らせを一読してからお願いします。
違反が見られるコメントは承認しかねますので、ご協力お願い致します。


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