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権力系ホモ★グリス王国編
番外編 君がいたクリスマス②
しおりを挟むピンポーンピンポーン…ピンポーン
「こーちゃーん! ごめん水溢しちゃったー!」
「すぐに台拭きお持ちしますねー!」
「こうじろー! ハンバーグまだかー!!」
「えぇっと…、あ! もうすぐですよ!! 少々お待ちくださーい!」
「康治郎くん、お会計頼めるかな」
「うぃっす! あ間違えた。すぐ参ります!!」
「ふふふ、ごめんね。忙しいのに」
店内はカップルが半分、常連さん達が半分で大にぎわい!
更に常連さん達が俺を呼ぶから、もう右も左も分からない…。
…ん? あれ? 尾坂さんの所、生ハム行ってなくね?
「店長、尾坂さんのオーダー通ってますか!」
「尾坂サン!?」
「7番テーブルの!」
「あぁあの人…。おい7番テーブルのオーダーは?」
「え。来てませんよ!」
「んな訳あるか俺ぁ江口がオーダー取ってんの見たぞ! 江口! 7番テーブルのオーダーは!?」
「え? …あッ! 『いつもの』って言われて康治郎くんに聞こうとして忘れてました!!」
「テメェ後でこめかみグリグリの刑だからな! 康治郎、尾坂サンのいつものオーダーって何だ!」
「イカスミパスタと生ハム、ドリンクバーセットです!」
「送ったか? 送ったな!? キッチン今の最優先!」
……多忙の極み…。
「康治郎ー! このギフト券使えるかーッ!」
ホールから、また俺を呼ぶ声が。…ホールにスタッフ残っているのに何故俺だけ…。
いや、可愛がってくれているって事だよなっ! よっしゃ、頑張ろ!!
「はーーいすぐ参りますー!」
「2名様でお待ちのエノキダ様ーッ。お待たせ致しましたこちらの席にお願いします!」
「5名様でお待ちのカワグチ様ーッ。お待たせ致しました! はい、こちらの席ですねー」
「よう康治郎! 今日は大忙しだな!」
「あー! 河口さーん! こんにちはー! 今日はクリスマスですからねー!」
「あぁそれでカップルが多いのか。ちなみに康治郎、恋人は?」
「ははははいたらクリスマスにバイトなんてしませんよははははは」
「お、おう…。なんかごめんな…。ま、頑張れよ! あそうだ。コイツら、現場の後輩ら。体格も食欲もヒデェから、覚悟しておいた方が良いぜ」
「お手柔らかにお願いします…」
「いやぁそれにしても腹減ったぁ~! 今、駅前の大型モールの建設してんだけどな…、今日いきなり変更があって現場、大騒ぎ。上ってホント現場の事考えないんだよなー」
「それちょっと分かります。こっちも万年人手不足で…」
「…ん? 先月新しいバイト入って来てたよな? あのメガネの男」
「なんか、この店のスタッフ目当てで入ってきたストーカーだったみたいで…。その人のロッカーに悪戯しようとしてたから、店長がシメて追い出したみたいです」
「あー……、察した」
「えっ何を!?」
と、お喋りしている場合じゃないな。さっきからピンポン鳴りっぱなしだし、そろそろ仕事に戻ろう!
「じゃ、決まったら呼んでくださいねー」
「おう。頑張ってな!」
仕事に戻ったら、店長から『忙しい時間帯に常連に捕まってお喋りしてた罪』で頬っぺたをむにぃーーーーんってされた。
痛かったけど、尾坂さんのオーダーが通ってないのに気付いたご褒美に、休憩中にオーダーミスで店長が買い取ったサイコロステーキ、一切れ貰ったから幸せハッピー!
********************
「あぁやっと終わった…」
「大変だったな。少ないけど特別手当て出るから、元気出せよ」
「特別手当て!」
「あ、康治郎くん19まで? お疲れ様~」
「お疲れ様です!」
「忘れもんねェな? スマホと財布と制服持ったか?」
「はい! 持ちました!」
「おしっ! じゃあ気を付けて帰れよ! なるべく人通りの多い道を通るんだぞ!」
「うぃっす! お疲れ様でした!」
「おう、お疲れ!!」
帰り際、店長に頭をわしゃわしゃ撫でられて嬉しー! 店長にとっては俺なんて親戚の子供感覚なんだろうな…。退勤時間が一緒の時とか、よく家まで車で送ってくれるし!
さて、店を出て向かうは『恋人の聖地』であるハートの噴水広場。何故なら勇輝がそこで待ってる筈だから…!
もうあいつ信じられない。
街を歩いてるだけでも視界からのカップルの過剰摂取で死にそうになりそうなのに。よりにもよって『恋人の聖地』とか。
あっバカップルめ! 街中でいちゃこらキスしてんじゃねーよ!! 妬みじゃねーよハーゲ! 羨ましくなんてないんだからなバーカバーカ!!
ところで誰か俺を抱き締めて。忘れられない夜にして。
そして問題の噴水広場ですが…。
もう無理。泣きそう。カップルしかいない。視線も痛い。助けて勇輝。
……あっ勇輝いた!!
「ゆうきー! このあほんだらぁぁぁ!!」
「ごふっ!? こ、こうじろテメ…、いくら俺がお前より体格良かろうと、んな砲弾みたいな勢いで突進されたら死ぬわ!!」
「うるせーバーカバーカ! 死ぬわとか言ってちゃんと受け止めてんじゃねぇかよ!」
「なんでそんなにご機嫌斜めなんだよ…って、あぁ。カップルが羨ましくなったか?」
「そっそそそそそそんな訳ねぇし!!? ほらさっさと帰るぞ!!」
図星を誤魔化すように勇輝の手を引き、俺達はハートの噴水広場を出て俺の家に向かう。
大通りから外れるまではカップルばっかりで、公園の木陰から女の人の艶っぽい声が聞こえていたけど気のせいだ。
当然、足早に立ち去った。
そして到着俺の家!
時間的に母さんも父さんも康太郎もいるはずだ。さっさと着替えて、昨日のうちにまとめていたお泊まりセットを持って、勇輝ん家に行こーっと。
ガチャン
「ただいまー」
「おじゃましまーす」
「お兄ちゃ~ん! あ、ゆーきくん!」
玄関開けて数秒。あむと康太郎が俺に気付いて、駆け寄ってきた。可愛い。
ご飯はもう食べ終わったのか、お腹がぽっこりと出ている。可愛い。
ひょいっと抱き上げれば、俺の頬っぺたにちゅーをして頬擦りしている。可愛い。
「よう康太郎。相変わらずもちんもちんだな。お前の兄ちゃんももちもちだからもうお餅兄弟って呼んで良いか?」
「んーと…、いいよ!」
「良くない! 荷物取ってくるから康太郎とあむ、可愛がってやってて」
「はいよ」
勇輝が康太郎と同じ目線まで腰を落としたのを見て、俺は2階に上がり、学校の制服を脱ぎ、バイトの制服をバッグから取り出し、普段着をスポッ。今日は寒いので、もこもこ乳白色のタートルネックにジーンズだ。
バイトの制服とシャツ。それにお泊まりセットが詰まったリュックに財布と携帯を放り込んで、その2つを持ち1階に降りる。
玄関に戻る途中、洗濯機にバイトの制服なんかを突っ込んで玄関に戻ると、母さんと父さんが勇輝とお話をしていた。
「あら、康治郎。リビングに顔出しなさいよ。気付かなかったわ」
「康治郎。もう高校生だから大丈夫だとは思うけど、勇輝くんのおうちを汚したりしちゃダメだぞ。勇輝くんも、康治郎を甘やかさないでね」
「勇輝くんって、昔から康治郎に甘いものね~」
「あはは、俺も甘やかして貰ってますよ」
……自分の親と友達が話してる時って、なんか気まずいよな。ええい、俺は康太郎に構う!
「康太郎ごめんな~一緒に寝られなくて。一人でも大丈夫か?」
「うんっ! 僕もう3年生なんだよ! 一人で眠れるよ!」
「そっかぁ~偉いなぁ~~!」
実は先々月、俺達の従兄弟が生まれたんだ。初めての年下の子供に、康太郎張り切ってたっけ。
…もうすっかりお兄さんなんだなぁ…。可愛い。
「それにねっ、あむと一緒に寝るからいーの!」
「あむと、一緒に…?」
疑問に思って母さんの方を見ると、何やらスマホをポチポチ…。そうして見せられたのは、1週間先までの天気と気温予報だった。
「ね? 昨日から急に寒くなったから、3月くらいまであむを家に入れちゃおうと思って。だから明日か明後日にでも、自分の部屋の大事な物をしまっておいて。勇輝くんの家に泊まってる間は、ドア閉めておくから」
「分かったー。…あれ。勇輝、チキンの受け取りって何時だっけ?」
「19時30分だな」
「…ヤバくね?」
「ヤバいな」
「行ってきまーすっ!!!」
危機的状況を同時に理解した俺と勇輝。康太郎のおでこにちゅっとだけして、全力ダッシュで某チキン屋に向かった。
時刻は19時20分。某チキン屋まで、歩いて15分。別に遅れたからって罰金とかはないんだけど、普通にお店の人に迷惑だから急ぎます。
だけどまぁ当然のように勇輝に引っ張られるハメになるんですね。基礎体力も足の長さも違うからさ。
泣いてなんかいない。
「ありがとーございましたー」
よっしゃ無事チキンゲット!
代金は、仕事で年末まで留守の勇輝のご両親に頂きました。
かなりの額を頂きました。
ほら、勇輝の家ってお父さんが技術職で、お母さんが外科医さんだから、金持ち過ぎるんだよな。
だから勇輝の恐ろしい食費も余裕のよっちゃんだし、某チキン屋のチキンを男子高校生×2人分、余裕で出せちゃうのだ。金持ちってすごい。
俺も、かなーりお金的な意味でお世話になっている。お泊まりの時や、勇輝と2人で遊びに行く時のお小遣い等々…。
本当にありがたいです。
「康治郎、スーパー寄って良いか?」
「え? 別に良いけど…。どうした? 何か買い忘れ?」
「や、お菓子とかアイスとかいるだろ?」
「!! いるぅ!!!」
住宅街の端にある大きなスーパー。お菓子とかジュースとかアイスを買うには充分過ぎるほどの大きさで、食欲お化けな勇輝がポンポンと食べ物をカートに突っ込み…。量がエグい。
「…どんだけ食うの? 満腹って知ってる?」
「俺、燃費悪いからな。それに三大欲求の残り2つを食欲で補ってる部分はあるし」
「睡眠欲と性欲…? 器用だな」
「どっちかって言うと性欲だな。食ってねぇと爆発しそう」
「えーそんなヤバいんだ…。知らなかった!」
「言ってないからな。好きな奴が無防備に甘えてくるもんで毎日股間と戦ってるんだよ」
「えっ勇輝好きな子いるの!? それも知らなかった!!」
「言ってないからな」
「むむむ…勇輝がリア充になっちゃうのはムカつくけど、応援するな! 付き合えたとしても俺とも遊べよ!」
「………付き合えても遊ぶ頻度は変わらないっつーか…、むしろ増えそうだな。……夜も含めて」
シャーーッガラガラガラガラガラ
「うわっ危ないな…! 小さい子供にぶつかったら怪我するかもなのに…。あ、ごめん聞こえなかった」
「いや好都合」
「へ?」
ポテチBIGサイズを5種類と、適当にスナック菓子。でっかいチョコアイスとそれぞれ好きなダッツ。ピーナッツバターカップとポッキー、クッキーにブラウニーにチョコパイ、あとえびせん。あ、忘れちゃいけない、モナカもな!
M-1面白かったな! 俺は好きだぜモナカ! コーンフレークもな!!
「ジュースは?」
「コーラは必需っしょ。後は…メロンソーダとか?」
「良いな。午後ティーも買お」
「午前に飲んじゃうか」
「禁忌~w」
「朝飯どうするよ」
「あ、おばさんいないんだもんな。何か買っておかないと」
「ワッフルとかどうよ。肉ならうちにあるし」
「ワッフルワッフル! うーん、結構種類あるぜ?」
「プレーンにバターミルク、アップルシナモン…、康治郎シナモン食えたよな? プレーンとアップルシナモンで良いか?」
「全然オッケー! あ! ドーナツ!」
「買うか。あとあれ何だったか。カラフルなふりかけ」
「………スプリンクルの事言ってる?」
「それだ。それも買おうぜ。チョコ溶かしてドーナツに掛けてスプリンクルをどばーっと」
「カロリーの宝石箱やぁ~! さいっこう!!」
「口直しは?」
「チキンで充分じゃね? 何個か残しておいて、スイーツ食べ終わった後ぐらいに温めて食べよ」
「そだな。あケーキあるぞ」
「ケーキ!!!」
「俺も相当だが康治郎もかなり食うよな?」
「甘い物っていくらでも入るし」
「太るぞ」
「聞こえねぇ~な~」
スーパーで買い物を済ませ、両手にいっぱいの袋を抱えて勇輝の家にスタスタと帰り中…。
街路樹がイルミネーションでキラキラに輝いていて、でもこの辺りはカップルもそんなにいない。
どっちかと言うと家族連れや老夫婦がいちゃいちゃしているくらいで、なんと言うか…、ほわほわする。心が暖まる感じ? 洗練された幸せって言うの? 見ていても幸せだよな。
「なぁなぁ勇輝。あのおじいちゃんとおばあちゃんラブラブで微笑ましいな」
「良いねぇ。あんな夫婦になりたいわ」
「好きな子と?」
「ソイツ以外と結婚するくらいなら一生独身で頑張るわ」
「超一途じゃん!」
「9年の片想いだからな」
「9年!? …という事は……、7歳!? 小1の時から!? えっ誰だよ~!」
「……俺が腹括ったら教えるわ」
「?? 何故に腹を…???」
疑問を投げ掛けると、勇輝は苦笑して俺の左手から荷物を1つ奪い、早足で道を歩いて行く。
慌てて俺も早足で追い掛けるけど、まぁ? 足の長さが違いますし? 悲しいよね。
だから途中で立ち止まって自分のペースで歩き出すと、俺が拗ねたのに気付いたのか、勇輝が戻ってきて撫でられたりもちもちされたりした。
もうっ! 撫でておけば機嫌良くなると思うなよ!
…嫌とは言ってない。
********************
「おじゃましますー」
「誰もいないんだぜ?」
「いや気持ち的に。荷物どこ置けば良い?」
「俺の部屋」
「置いてくるからアイス頼んだ!」
「任されよ。よし、チキンもまだ充分に熱いな」
てってってってっと転ばない程度に階段を駆け上がる俺。着替えや歯磨きセット…、念のための雪用ブーツも詰めてきているので、ボストンバッグはだいぶ重い。
鼻息をちょっと荒めながら階段を上りきり、勇輝の部屋の扉をガチャリと開けてボストンバッグをベッドのわきにどすんっ。
中から観る予定の映画のブルーレイディスクを数枚取り出して、スマホと歯磨きセット、ディスクを掴み1階に降りた。
ここはもはや俺の第2の家と言っても過言ではない程に勝手を知っているので、迷わずに洗面所にたどり着き、歯磨きセットを置いてリビングに向かう。
俺が今歩いている廊下には、勇輝の成長記録となる写真が貼られている箇所がある。
…が、よく見ると全部に俺が写っているんだ。
うん、そう。124枚全部に俺が。
俺と勇輝が出会う小学校以前のものは貼られていないし、おかしくはないんだけど…。
俺達ちょっと一緒にいすぎだよな。だってもうずぅーーっと一緒にいるし、小学生の頃は2人だけで遊んでいたし…。でもなんでかなぁ。
この写真の勇輝、全部カメラ目線じゃない…っつぅか、俺の方見てるな。
あ、めっちゃ見てる。小学3年生のヤンチャ真っ盛り勇輝が、小学生3年生のニッカリ笑った俺を凝視してる。
あはは、俺、前歯がない!
懐かしいなぁ~。運動会の時かぁ。小学3年生の運動会…確か、勇輝がスーパーヒーローになった時だな。
勇輝ってな、この時ものすっっごく愛想悪かったんだ。俺とは今みたいに仲良しだったけど、俺以外に友達いなくてさ。
でも、この運動会のリレーでな、うちのクラス最下位だったんだよ。転んじゃった子がいたから。
でもさぁ、勇輝のお母さんに『康治郎くん、全力で勇輝の名前呼んで応援して!』って言われて、『勇輝頑張れーーーッ!!』って叫んだ途端にもうリニアモーターカー。
残像見えたよね。実況も『は?』って言ったよね。
小学生というものは足の速い男の子がモテますので? 翌日からハーレムですね、はい。放課後、しばらく遊べなくて悲しかった。
でも少し経ったら、一気に女の子が減ったと言うか…、ハーレム消えたけど何があったんだろ?
と、俺があの頃を思い出して懐かしんでいると、リビングの扉が開いて勇輝が顔を出した。
「康治郎何やってんだ? チキン冷めるぞ?」
「ごめんごめん。写真、懐かしいと思って」
「あぁ…。ま、それより飯食おうぜ」
「うぇーい!!」
「「いただきまーす(!)」」
重なった声と同時に、テーブル中央の山盛りチキンに手が伸びる。油が付くとか気にせずに、鷲掴みにしてかぶり付く。骨にこびり付いた肉1片も残さず、軟骨部分さえバクムシャァ。
うんっ、うまい!!!
皮のかりっとした部分とか最高!! 熱々の肉汁が口の中にいっぱい広がって幸せ!! もう1個!!
「康治郎、もぐもぐ。相変わらず、もぐもぐ。超うまそうに食うよな、もぐもぐ。見ていて腹が空く。もぐもぐ」
「だって、もちゃもちゃ。うまいんだもん! もちゃもちゃ。勇輝も、もちゃもちゃ。うまいと思うだろ? もちゃもちゃ」
「うん、うまい。もぐもぐ」
え? 行儀が悪いって?
良いんだよ! 今は俺達以外誰もいないんだし、俺達も外で食いながら話すとかしないし!
男子高校生だけのクリスマスパーティー、全力で楽しむぜ!!
「康治郎それ取って」
「はい。あ勇輝それ」
「コーラな。ほら」
「サンキュ」
指に付いた油を拭き取り、胡椒とコーラを交換。後はもくもくでもぐもぐ。
俺達は親友だから、無言でも全然気まずくならないんだぜ!
たまに会話しながら、チキンを山を削っていき…、残り5個くらいで、1度ごちそうさまをした。
時刻は20時45分。
勇輝と一緒にチキンが乗っている皿以外をシンクに運び、2人同時に袖を捲った。
「「ん?」」
「…あー、風呂沸いてるから入ってこいよ。皿洗っておくし」
「いやいや。俺が洗うから勇輝こそ風呂行けよ」
「良いって。客に皿洗いなんてさせられねぇから」
「俺が来なければこの皿達は汚れなかった…。つまり俺が洗う!」
「じゃあ一緒に洗って一緒に風呂入るか」
「そっか…、うん! そうしよ!」
俺と勇輝は親友だから、風呂だって一緒に入れちゃうのだ。小学生の頃からお泊まりの時の風呂は一緒で、よく洗いっこしてた。
中学3年生のあたりから受験勉強が忙しくて、お泊まりも全然出来なくて。高校生になって最初のお泊まりは、風呂は別々だったんだ。
だから、久しぶりの一緒に風呂! 勇輝の筋肉とちんこ、どれだけ成長してるかなぁ~。
風呂場にて。俺は勇輝の長い腕から逃げようとしていた。しかし虚しく捕まってしまう。何故ならいくら広い風呂場でも、勇輝の素早い動きの前では意味を成さないからだ。
ガッチリ
「はいはい逃げんな。お前も俺の体洗ったろ~。次は俺の番だ」
「ノン」
「ノンか」
「だって勇輝、隅々まで洗うだろ! 足の付け根とか足の裏とか指と指の間とか尻穴まで!!」
「洗うだろ普通」
「そうだけどっ! 俺みたいにデリケートな場所は本人に任せれば良いだろ!」
「やだね。俺は康治郎を丸洗いしたい」
「わぎゃーーーっ!!!」
ごしごしごしごし
「のぉーーーーーーッ!!!」
するんっごしごしごしごし
「そこダメーーーーーーーッッ!!!」
ぎゅっがばっ
「ちょちょちょっと勇輝さん! 股は自分で…!! 自分でやりますからぁ!!!」
ごしごしごし
「キャーーーーーッッッ!!!」
「ぐすっ…もうお婿に行けない…」
「俺が貰ってやるよ」
「お前と結婚したら毎日隅々まで丸洗いされるだろ!! やだ!!」
「毎日一緒に入る前提なんだな」
…あれ、勇輝って心に決めた人以外と結婚する気はないって…。まぁ俺と結婚するなんて昔から言ってたし、今さらガチで言ってるとも思えないから冗談で言ったんだろうな。
「ほらこっち来い。くっついた方が暖かいだろ」
「すいすい~」
広い浴槽の中を泳いで、勇輝の方に近付く。到着したら勇輝を椅子にして『ふぃ~~~…』と一息。
非リアは人肌が恋しいとか言うけど、俺はスキンシップが苦じゃない勇輝がいるから人肌は間に合っています!
あっ俺の人肌を感じたいって言う女の子がいたら、いつでもウェルカムだからな!
24時間365日恋人受付中!!
「ぬくぬく」
「風呂上がったら何観るよ?」
「あ、俺『実写版金魂』と『翔んでサイタマ』と『新ゴジラ』持ってきた!」
「良いねぇ。そうだ、うちVR買ったんだぜ」
「えっやりたい!」
「映画観たらするか」
「うんっ」
一緒に10まで数えてから風呂から上がる。わちゃわちゃしながら体を拭いてパジャマをズボッ。互いにドライヤーを掛け合い、リビングに戻った。
「ポテチ開けるか」
「じゃあチョコも溶かしてカロリー爆発ドーナツ作ろう!」
「観る映画は?」
「サイタマは2人で観に行ったし、金魂とシンゴジ観ない?」
「おしっ! 終わったら軽くVRして寝るか!」
「やったー!」
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……うんうんっ、良い感じに溶けてるな! 良い匂い~!
「ピーナッツバターカップとブラウニー…、まぁ風呂上がりはアイスだろ。溶けない程度に持ってくるか」
「ダッツ先に食べよ!」
「おう」
********************
「甘いの1度止める…。オレチキンクウ……」
「勇輝カタコトだぞ…どうした?」
「逆になんでお前耐えられんだよ…? いつも思うけどこの腹のどこにそんな量入ってんだよ…?」
「こっちのセリフなんだけど?」
「チキン温めるわ。いるものあるか?」
「チキン2本とチョコアイス!」
「嘘でしょ? まだ甘いもの摂取すんの?」
勇輝が『おそろしい子!』の顔で俺を見てキッチンに向かった。
そろそろ日付が変わる。映画もあと1時間くらいだし、お菓子類もちょうど良い感じに消費出来た。
明日は8時に起きれば瀬戸達との待ち合わせに余裕で間に合うから、多少夜更かししても大丈夫!
「そもそもこんな時間にポテチやらクッキーやらチキンを食う事が罪だよな」
「最高に甘美な大罪だぜ…。チキンサンキュー! はわぁ~うまそ! 甘いもの食べた後って肉食いたくなるよな!」
「そーだな。っうははははwwwさとーじろーwwwwwww菅田○暉wwwwwwwwちょwwwwナナオ笑ってんじゃんwwww」
「あ、その場所ボタンになってんだ…w」
「金魂って確か2でもさとーじろー出てたよな?」
「監督がさとーじろー好きなんだろ」
「面白いもんな」
「ベストファーザー賞だもんな」
「…康治郎、さとーじろー好きだっけ」
「んー、ファンって程でもないけど、テレビに出てるとつい観ちゃう」
「分かる」
「あ、日付過ぎた」
「おう、メリークリスマス」
「メリクリ。今年も男2人かぁ…」
「でも楽しいだろ」
「そうなんだよ。楽しすぎて困ってんだよ。俺、彼女にするなら勇輝みたいなノリの良い子がいいなぁ。クリスマスにすき家とかサイゼで一緒に笑ってくれる子」
「女って金掛かるもんな」
「正直お金掛かるのは良いんだ。お金で幸せになってくれるのなら充分良いんだけど、実際問題お金ないし…。重要なのはどんなにピンチの時でも隣で笑って、支えてくれるってこと!」
「………じゃ、俺がある日突然女になったら、どうするよ」
「え? …んー……、おっぱい揉む」
「責任取ってくれんのか?w」
「勇輝が望むならな」
「ひゅ~イケメーン」
********************
午前1時16分。俺はVRのゴーグルをスッポリと被り、クリーチャーから逃げていた。
「なんでよりにもよってバイオハザーどぅわぁぁぁぁッ!!」
「おぉ、良い反応するじゃねーかw」
「待って待って待ってホント生命の危機あぁぁぁぁぁ知ってた!!! いるって知ってたから脅かすのやめてぇぇぇぇぃやぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」
「落ち着けー。大丈夫大丈夫。偽物だから」
「分かっていてもこれはこわぃああぁぁぁぁぁぁぁ」
突如俺の頭に手が触れた。勇輝のだって分かってはいても、怖いもんは怖い。
と、勇輝が何やらガチャガチャして、俺の視界は暗いゾンビ世界から一転、勇輝がいる明るい世界に戻ってきた。
「ゆうきぃぃぃぃぃぃ…」
「わはは半べそwwww」
「だって本当にそこにいるみたいで怖かったんだもん! どわぁーって襲ってきてさ!? 『呪怨』のあの声みたいでさ!? なんでこんなの買ってんの!? ホラー好きだっけ!?」
「いや、康治郎のその反応が見たくて…」
「このドS!!!」
あ、さっきから俺、超叫んでますが、騒音の心配はございません。何故ならこの家は戸建てで、お隣とはちょっと距離があるから!
本気の大絶叫は流石にダメだけど、ある程度は声を出しても大丈夫なのだ!
「んじゃ、良い時間だし、そろそろ寝るか」
「えぇっ!? あんなの見た後に眠れないんですけど!?」
「一緒に寝てやるから、な?」
「夜中のトイレにも付いてこいよ!」
「寝る前にトイレ行けよ」
「付いてきてぇぇぇぇ」
勇輝にしがみついて廊下を歩き、一緒に歯磨きシャカシャカ。
トイレにも付いてきてもらって、俺達は2階の勇輝の部屋に戻った。
「壁側と外側、どっちが良い?」
「壁側!!」
ベッドの話な。
一緒に寝る事になったら、ベッドのどっち側に寝るか決めるだろ? それで、壁側に寝たら隣の勇輝と隣の壁でガードされるだろ? 気分的に安心出来るだろ?
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「心を読んで怖いこと言うなっ!」
「充電器差したか? ほら、携帯貸せ。目覚ましは8時だよな」
「ベッドにスライディングもぐり!」
「テンション高いなー。学校とバイトと買い物と映画2本とVRして疲れてねぇの?」
「だってお泊まりもそうだけど、一緒に寝るのって修学旅行以来じゃん!」
「それでそんなにはしゃいでいるのか。かぁわいいww」
「む! 勇輝は嬉しくないのかよ?」
「は? 幸せの絶頂だわ」
「分かりにくい…」
がさごそ…
「ほら、もっとつめろ。俺が入らねぇ。あっコラ布団を取るな」
「じゃあもっとくっつけ」
「あぁ怖いもんなw」
「うるへー!」
ごそごそ…ぴとっ
「ほら、これで隙間ないだろ」
「うん…。勇輝あったけぇ~」
「電気消すぞ」
勇輝の厚い胸板でふごふごして暖を取る。勇輝の匂いで包まれて、もうあれだ。絶対安全な領域って感じだ。
この俺のポジションを狙ってる女の子、多分かなりいるよなぁ。だって勇輝モテるし。
「狭くねぇか?」
「ん。ちょーど良い窮屈さ。もっとぎゅっとカモン」
「へいへい。ぎゅー」
「ふぉぉぉ」
「お返しハグカモン」
「はぁーい。ぎゅっ」
谷川あたりに見られたら『ホモォォォォォォォ』と騒ぎ出しそうだが、俺らはホモではない。
小学生の頃、勇輝が『一緒に寝よう。その方が暖かいし、心もポカポカだ』って言って、一緒に寝てみたら本当に心がポカポカしたから、一緒に寝ているんだ。ハグもその一種。
スキンシップって本当に良いよな!
ハグでストレスが解消されるって話もあるし、勇輝と瀬戸とはよくハグしているんだぜ。
「あのな、あのな! 先週学校で先生がな!」
「うんうん」
「康太郎があむとお昼寝しててな」
「ほうほう」
「お母さんが某インクのゲームで30キルしてな…」
「すげーな」
「おとーさんが酔っぱらって…会社の部下の人と…戦慄迷宮……」
「え、それ気になる。どうなったんだよそれ」
「…………すぴー……」
「うそっしょ?」
「すぴすぴ」
「……………………………」
ちゅう…、れろ……、ちゅうちゅう
「…おやすみ。康治郎」
********************
皆さん正直に教えてほしいんですけど地球の番外編いります?
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幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です
蔑まれ王子と愛され王子
あぎ
BL
蔑まれ王子と愛され王子
蔑まれ王子
顔が醜いからと城の別邸に幽閉されている。
基本的なことは1人でできる。
父と母にここ何年もあっていない
愛され王子
顔が美しく、次の国大使。
全属性を使える。光魔法も抜かりなく使える
兄として弟のために頑張らないと!と頑張っていたが弟がいなくなっていて病んだ
父と母はこの世界でいちばん大嫌い
※pixiv掲載小説※
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