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権力系ホモ★グリス王国編

セバス・チャンじゃなくてセバスチャンな!

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「あぁ、良く来たなガラン・スピーツ。なぜお前が俺の部屋の担当執事になったか分かるか? 俺がお前を選び、お前を担当執事にするよう執事長に頼んだからだ。コージがイく様を見て、勃起したお前をな」

椅子に腰掛け、長い足を組み、俺に向かってトゲのある言葉を投げ掛ける聖騎士団長様。
迫力満点だし、そろそろ漏らしそうだ。
俺はというと、もはや土下座に近い状態。殺されなかっただけでもありがたいが、なぜ俺が担当執事に選ばれたのか、検討も付かなかった。
とにかく、今は俺に出来る事を。すなわち謝罪と命乞いだ。

「た、大変っ申し訳ございませんでした!! どうか家族だけは…!」
「構わん。コージを見て惚れるのも、欲情するのも正直言って仕方がない。あの容姿だからな。…まぁ、お前やセイ殿らの部屋の担当執事に決まった者ら以外は、相応に罰を受けて貰うが」
「……………」

頭を下げたまま、顔が上げられない。汗だって止まらない。
目の前に、『白銀の裁定者』が、いるんだ。

とある街を襲った、魔物の軍勢。その数は優に万を超え、ワイバーンやグリフォンなどの強力な魔族も中にはいたと言う。
その軍勢をたった1人で蹴散らし、黒幕の魔人共々壊滅させた、魔を屠る者。

その名もカイル・マンハット。

この人を見ただけで大抵の魔人は尻尾を巻いて逃げ出すと言われているし、7年前に起きた事件…、暴走して村に突っ込もうとした若いフェンリルを、村にあった太刀で真っ二つにしたというのは、とても有名な話だった。

つまりこの人は、恐ろしく強い。序列入りでないのが不思議な程だ。
街も、国も、訓練された人類の軍勢さえも、この人はきっと壊滅させられる。この人がいるというだけで、どの国も教会に従わなければならない。
歯向かえば『異教徒』とされ、自国にこの人が乗り込んでくるから。


「さて、俺がお前をここの担当執事にした理由だが」
「はっ、はい」
「お前。コージの友達になれ」
「…はい?」

トモダチ…、ともだち…、……友達!?

「………???」
「友達と言えど、コージがこの城に留まっている期間限定のものだ。コージは庶民思考だからな…。王城などに来て、身分の高い者達と会い、気分が落ち着かないだろう。お前、田舎の両親を食わせる為に王都に出稼ぎに来たのだろう? 出は庶民という気軽さ。執事という礼儀正しさ。親孝行をする律儀さと心意気。コージの友達とするには、及第点といった所だ」

そうか、なるほど。アヤマ様は庶民出身なのか。あるいは辺境の貴族か…。とにかく、元の身分はそこまで高くないのだろう。
俺も、初めて国王のお顔を見るの、スッゲー緊張したし、何だか親近感…。
いやいや、あんな凄い人に親近感はまずいか。それこそ殺されるかもな…。

聖騎士団長を本気で惚れさせた人物。
もちろん存在は知っていた。とても有名だから。
みんな注目しているし、街はもっぱらこの話題だ。しかもその人は『死神の吐息』との繋がりがあると言われている。
身の回りのお世話をする数名の従者にしか知らされていない情報だが、世界序列に入る古龍3体と契約を結んでもいる。
コージ・アヤマ様。
大変可愛らしいお方だったが、その実力は不明。何せ、国王と宰相がここまで丁重に扱うお方である。見た目通り、可愛らしいだけの方とは思えない。

「是か非か答えろ。非と答えた場合には、その体犬に食わせてやる」
「もももも勿論! ありがたく、受けさせて頂きます!!」

脅されずとも受けるつもりではあったが、こうも凄まれては脅しに屈したようにしか答えられない。

「ならば良し。今からコージがこの城を去るまで、お前は自身の仕事を放棄して構わない。周囲には、『自分はコージくんの友達だ』と伝えよ」
「はい」
「勘違いはしてくれるなよ。コージの心の安寧の為に、仕方なくマシなお前を選んだだけだ。惚れることも、欲情することも許さない。妙な真似をすれば深海大迷宮の最深部にでも叩き落としてやる」
「…ひ、ひとつお伺いしてもよろしいでしょうか」
「なんだ」
「友達役が必要であれば、その…勃起しなかった者が最適では…?」
「コージに最低限の好意を持ち、まともな感覚を持った者を選んだ。俺やセキ殿、アラウザ殿やロイは、コージのあの顔を見た事があるので堪えられたが、初見の者は勃起しても仕方がない。むしろ、勃起することが正解と言える」
「は、はぁ…」

つまりこの人や古龍のセキ様達は、アヤマ様があんな顔をされるような場面にいたと…。
……つまりやることヤっていると…。

「俺に命令されたとはコージに伝えるな。理解出来ればコージの部屋に行け。セキ殿には伝えてあるし、執事長の了承も得ているので、執事長の補佐と説明しろ」
「…はい」





********************




「最悪だ、最悪だぁぁぁ…。イっちゃった。イっちゃった! あんなに人がいるところでぇぇ…! 食堂でぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「わはははは!! そう落ち込むな! 絶頂したのは最初の一口のみだろう!! 下着を替えた後は飯を堪能していたではないか!!」
「そうだけどぉっ! 腰抜けるくらい美味かったけどぉっ! でも思い出したら余裕で泣けるぅぅぅ…。羞恥の大勝利…」

ふっかふかのオフトゥンの上で、芋虫のようにぐにゃんぐにゃんになる俺氏。その名もコージ!
しかし今はテンション爆下げ………。何故ならご飯を食べてイっちゃったから。なんてこった。パンナコッタ。

「愛いなぁ。コージは本当に愛いなぁ……」
「ヤンチャ系キャラからいきなり妖艶風に微笑むの止めて貰えませんかねェ!? 不意打ちはドキドキッとしちゃうのよお年頃だからーッ!」
「ん? はは、本当の事を言ったまでだ。ほら、おいで。忘れる程に甘いキスをしよう」
「いつも語尾に付けてるビックリマークどこに落としたんだよ! キスとかはお風呂上がった後で!!」
「むぅ、少しもダメか。…本当に少しだぞ?」
「ちょっとだけよ!?」

セキのちょっと可愛いおねだりに負けて、俺はキレ気味にセキの上に乗っかった。
1度(合意で)セッセした相手ならば、キスくらいどうって事ない。
だってもっと凄い事してるんだし? ええ気にしませんとも。むしろキスは好きだぜ。

ちゅっ、ちゅーーー、ちゅうちゅう

「はむはむはむ」

ちゅ…、れろ

「むむっ! ちょっとだけって言ったろー。ディープはまた後で!」
「致し方なし! そうと決まればさっそく風呂だ!!」
「はいはい。じゃ、ルークさん達も呼んで来よーっと」
「あやつら置いて行っても良くないか?」
「それしたらお仕置き食らうの俺なんですけど?」

そんな話をしつつ、部屋のでっっかいクローゼットから貸してもらうパジャマを取る。
見るからにセキ用の大きな赤くてカッコいい服と、見るからに俺用の小さな水色もこもこ服…。
心が死んだ。

コンコン

死んだ魚のような目で2着のパジャマを見ていると、ドアをノックする音が部屋に響いた。
クローゼットを閉めてセキをチラッと見ると、『出て良いぞ』とアイコンタクト。セキが言うなら間違いないので、控えめにドアをガチャリと開けた。
すると困惑したようなお声が。

「あっ…! いけません! 扉の開閉は執事の仕事で…!」
「え。あ、何かすみません…」
「いっ、いえ! 大変失礼致しました!!」

そう言って頭を下げたのは、まだお若いだろう執事さん。
たしか…食堂にいた人だな。この部屋の担当は執事長さんって聞いてたけど…。どうしたんだろ?

「お忙しい中失礼します。執事長の補佐を務めます、執事のガラン・スピーツです。挨拶に参りました」
「あ、わざわざどうも。コージ・アヤマです。あっちでカーテンに絡まってるのがセキです」

執事のガランさんが、そんなセキを見て慌てて駆け寄る。
放っておけば良いのに…。執事も大変なんだなぁ。

「だっ、大丈夫ですか!」
「うむ!! 絡まった!! 燃やして良いか!!?」
「えぇぇぇぇちょっ、待ってくださぁぁぁぁぁああああ」






間。





「本当にうちのセキがごめんなさい」
「いえ…。お怪我がなくて幸いです…」

ちょっと焦げたカーテン。
絶対お高いだろうから、俺は全力で謝ります。セキにも頭を下げさせます。
ガランさんはてっぺんがチリチリに焦げちゃった髪を撫でながら、苦笑い。
いやホント、申し訳ない…。執事長さんにも謝らないと。

「お部屋の変更も可能ですが、どうなさいますか?」
「えっ!? あ、いえわざわざそんな…。このままで大丈夫です!」
「承知しました。では、代わりのカーテンをすぐに持って参ります」
「ごめんなさい…」


コンコン

「執事長のセバスです。悲鳴のようなものが聴こえましたが、いかがされましたか?」
「あっ、執事長」
「おやガラン。………その頭は…」
「いやぁ…あはは」

ごめーん! ほんとごめーーん!!
あ、こちら執事長のセバスチャンさん! 背筋シャッキーンで老いを感じさせないダンディーな白髭執事さん!
なんというか…、分かりやすい名前だよな!


かくかくしかじかまるまるうまうま…

「なんと! そのような事が…。お怪我はありませんか?」
「はい。ごめんなさい」
「すまん!!!」
「いえいえ。買い換え時でしたので、お気になさらず」

…こう言ってくれているセバスさんだが、実は俺は知っている。
メイドさんと執事さんの会話を偶然聞いてしまったのだが、俺や序列入りの古龍たちに、国の経済に多大に貢献しているオーディアンギルドのギルマス、国の軍事力に多大に貢献している聖騎士団長、更に王国騎士団長の弟までが来ると知り、みんな大慌てで俺達の泊まる部屋の物を全て新調したそうだった。
つまりセキが燃やしたのは新品カーテン。
…もはや土下座出来る申し訳なさだ。


「ではこれから皆様でご入浴でしょうか?」
「あ、はい。他に入っている人がいるなら後ででも…」
「今宵は皆様以外に客人はおりません。どうぞ、心行くまでおくつろぎください。ガラン、案内とご説明を」
「は、はいっ」

ニコニコ仏の笑みのセバスさんに見送られ、俺とセキは部屋を出て他の部屋のルークさん達を回収。
みんなでお風呂にGOだ!!

レッツお風呂! レッツ大浴場!! 温泉だー!




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