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権力系ホモ★グリス王国編
知識の泉、その名も図書室
しおりを挟む口喧嘩するカイルと王子様を放っておいて、図書室にレッツゴーした俺と、ルークさん達。
と思ったのに、図書室の前に来る頃には2人とも、普通に追い付いていた。
いや…、カイルはともかく、王子様は古代ベレンツェ語学の授業行けよ…。とは言えません。小心者なんで。
「コージくんは本が好きなのかい?」
「…あー、まぁはい。そうですね。俺のいた世界には魔法とか精霊とか、なかったので…」
「そうか、確かに未知のものは面白いよね! よし、じゃあ特別に、コージくんには閲覧レベル4の棚まで案内してあげよう!」
図書室の扉を開け、中に入った俺達。その本の世界に唖然とした。
図書室は長方形の形になっていて、中央にはテーブルと椅子。ソファもある。壁に沿うように3メートルはある大きな棚が図書室を囲んでいて、中には本がみっちり。
四隅には階段があり、2階…、いや、3階まであるのが、ここからでも見えた。
俺があまりの本の量に『ふぉぉぉぉ…!!』と感動していると、ロイが王子様に尋ねた。
「あの…、閲覧レベル4って…」
「…う、うん。本当はコージくんに説明したかったけど、今は感動しているっぽいし…。ここにある書物にはすべて、閲覧レベルというものが割り振られているんだ。普通の客人が見られるのは閲覧レベル2まで。3は文官らや魔法師団のメンバーらが閲覧可能。そしてレベル4は、宰相や大臣…、魔法師団長や、王族しか閲覧不可能なレベル。5は国王のみね」
「…そのレベル4に、コージを入れると?」
「あぁそうだよ。ちなみに君達は入れない。いくら古龍殿らでも、許可無く入れば大問題!」
「……王子とやら。その場所、魔法の使用は?」
「…? 厳禁ですよ。貴重な書物が置いてあるんです」
「ふむ! コージ!! 行くのは構わんが、結界を張っていけ!」
「へ? うん」
振り返ってセキ達を見ると、カイルとルークさんがかなーり嫌そうな顔をしていた。
話は聞いていたけど…、リイサスさんにあれだけ『1人にするな1人になるな1人でどこかに行くな!!』って言われてたのに…。みんなと離れて良いの?
いや閲覧レベル4とか超絶気になるのは気になるんだけどさ。
で、俺が『絶対防御』をぺぺっと張ると、王子様がちょっと不満そうな顔でセキ達を睨んだ。
「結界など必要ありませんよセキ殿。ここは安全です」
「それを決めるのは俺達だ! 見たところ、閲覧レベル4があるのは下なのだろうが、下に数名ヒトがいる!! コージを害さないと何故言える!?」
「…宰相が選び抜いた衛兵がいます。実力は確かです」
「ここの衛兵はガラが悪いとセイ達に聞いたが!!」
王子様が何も言えなくなった。
実際、図書室の衛兵さん達はガラ悪くないんだろうけど、セイ達がこの城の衛兵に絡まれたって知ってるから、信用してもらえないって悟ったんだろうな~。
「……仕方がありません。さぁ、行こうかコージくん」
「は、はぁい」
と返事はしたけれど、俺は動けなかった。
背後から手が伸びてきて、手の持ち主だったカイルに両手で頬をむにぃってされ、ボソッと耳元で呟かれたからだ。
何すんだよ、びっくりしただろ。
「気に食わんが、腐っても第1王子だ。お前に手を出す事はないだろう。だから、絶対に王子から離れるな。…いざとなれば攻撃魔法も使って構わん」
「!? でも貴重な書物があるって…」
「『神の愛し子』であるお前が傷付くよりは300倍マシだ。国王も同じ判断をするだろう。ただ、夕食の時間も迫っている。30分で帰ってこい」
「…りょーかいっ」
『気を付けてね』って言って心配そうに俺を見送るロイやルークさん、オウ達に手を振って、俺は王子様と一緒に下に降りた。
……なんか冒険に出掛ける時みたいだけど、ただ図書室内を移動するだけだからね?
「さぁ、ここが閲覧レベル4の書物が納められている場所だよ。好きなものを読むと良い!」
王子様に案内されて入った地下。…地下?
まぁ良いや。とにかく下の方。
不審な目で見てくる衛兵さん達を王子様が王子様スマイルで黙らせて入った、少し埃臭い部屋。お高いって一発で分かるダークブラウンの棚に、お高そうな本がいっぱい詰まっている、まるで本棚の迷路のような空間に出た。
『ふぁ…』と感嘆の声を漏らしながら、とりあえず1冊、引き抜いて見る。
【人類魔人化計画① 著:ノア・レイヴィッツ】
「!?」
「あぁ、それは30年ほど前に滅ぼされた、ポート街跡で見付かった資料を4冊の本にまとめたものなんだ。ただの子供の落書きなら良かったんだが、内容が恐ろしく現実的だったもので、これを閲覧レベル4に指定すると同時に、考案者であろうノア・レイヴィッツの捜索を今も続けているよ」
「こわ…」
本をパラパラと捲り棚に戻して、別の一冊を手に取る。
【魔導具による悪魔召喚】
これも、俺には必要ないかな。召喚しようと思えばいつでも出来るんだし。
そう思い、俺は更に別の一冊を手に。
【異世界からの勇者召喚】
「………………」
…これは、あれっすかね? 会社帰りの社畜や平凡な男子高校生がトラックに激突されて、召喚されてるパティーンですかね?
そういう異世界系作品によっては復讐もので大虐殺とか起こったりする事もあるらしいけど…、この世界、大丈夫ですよね?
ただでさえおんにゃのこの少ないこの世界、ただの男子高校生が1度少女を助けたぐらいで異世界チーレム(チートハーレムの略)なんて築いていたら俺許せないよ?
『ゆうべはお楽しみでしたね!』の現場に乗り込んで、俺はホモに囲まれてるって言うのにアンタはなんで…って勇者さんに散々愚痴っちゃうよ?
「……グリス王国では、勇者召喚は行われていない。それは帝国で記されたものだと聞いている」
「…? はぁ」
真剣なお顔で俺にそう言った王子様。一体何の主張だろうか。
「………勇者とは違うようだが、その、君は異世界から1人でやってきたのだろう? だから…、親が恋しくないのかと思い…」
「あー…」
なるほどなるほど。王子様は俺が『召喚された勇者たちにも家族や大切な人はいたのに、強制的にこの世界に連れてくるなんて!』って怒ると思ったのね。
いやまぁ? 確かに異世界系あるあるの10代の少年少女を召喚ってのはどうかと思うよ? ただ、それで俺が怒るかって言うとそうでもないんだよな。だって俺関係ないし。
え? 薄情だって?
知らんな! 知り合いがその立場になったのならともかく、俺が見知らぬ人の問題に口を出す事じゃない!
それに、この世界に来た他の異世界の方々はそれなりに楽しんだようだぜ!
だってな、本とか読んでると、所々に日本人の名前があったりするんだ。で、なんだかんだでみんな成功して、なんだかんだで幸せに暮らしたっぽいし。
日本人以外の異世界人に関しては分かりません。名前の見分けがつかないからな!
「俺は召喚じゃなくて、向こうで1回死んじゃってるから、もう諦めてますよ。恋しいって思う事もあるけど、家族にだって支えてくれる人はいますし、俺も色んな人に愛されて幸せですし」
「………そうか、なら良いんだ」
ホッとしたように微笑んだ王子様。キラッキラ過ぎて眩しいです。
ん、でも、衛兵さんによると今は俺達以外、誰もいないみたいだし、堂々と秘密にしている事を話せるのは嬉しいかな。
いやさぁ~? ぶっちゃけ、王子様って接し方に困るんだよね。
リイサスさんは保護者だから、保護者と接する感じでOK。肉体関係あるけど。
ルークさんはくまさんギルマスだから、くまさんと接する感じでOK。肉体関係あるけど。
ジャックさんは親戚のおじさんみたいな感じだから、接し方もそんな感じで。肉体関係あるけど。
ワーナーさんは兄貴だ。大好きな男前兄貴。接し方も兄貴。肉体関係は…まだない。
ガレは友達だな。ノリの合う、ちょっと意地悪な友達。肉体関係あるけど。
ロイはちょっと上の、仲の良い先輩。友達の方が近いかな? 肉体関係あるけど。
カイルは…、ポンコツだもんなぁ。俺にとって、どういう立ち位置なのか思い浮かばないけど、扱いやすい。肉体関係あるけど。
セキは俺の従魔で、俺に惚れてるから普通に接せられる。魔法と人生の大先輩だけど、友達みたいだ。肉体関係あるけど。
セイは俺を守ってくれる、おじいちゃんみたいな存在だ。頭が回って、常に冷静で、見守ってくれている。
オウは年の離れた兄弟だな。一緒にはしゃいでくれるから、友達と言ってもいいかも。
……王子様、性格的には、多分リイサスさんに近い。でも強引さはガレ並みで、俺を大臣達から庇うなど、ワーナーさんのような男気も見られる。
でも身分はダントツで高い。だから、リイサスさんのように保護者風に接するのは躊躇われるし、友達扱いなど論外。
不敬罪(?)とかあるんだろ? だから下手に話し掛けるのも怖いし…。
…さて、どうしたもんか。
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