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権力系ホモ★グリス王国編

スイーツは別腹。ただし肉も食う

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ルークさんに付いて行って入ったのは高級な雰囲気の宝石店。絶対に俺みたいな子供は場違いだ。
……でも、リイサスさんが欲しいものだし…。

高級っぽそうな黒い棚の上には、色んな種類の宝石が置いてあった。
地球のものほど綺麗なカットではないけれど、装飾品としては充分だろう。

「コージくん、こっそり『鑑定』してみたまえ」
「あ、はい」

店員さんは…、おぉ、セイとオウが気を引いてくれているな。よし、今のうちに…。


《ダイヤモンド:2.86カラット
モース硬度:10 靭性:7.5 品質:Aクラス》
《ルビー:4.16カラット
モース硬度:10 靭性:8 品質:Sクラス》
《エメラルド:3.04カラット
モース硬度:8.5 靭性:5.5 品質:Sクラス》
《サファイア:2.93カラット
モース硬度:10 靭性:8 品質:Sクラス》
《アメシスト:5.12カラット
モース硬度:7.5 靭性:7.5 品質:Aクラス》
《トパーズ:3.75カラット
モース硬度:8.5 靭性:5 品質:Sクラス》


「本物かね?」
「本物ですね」

宝石の代表格って感じの宝石から、マイナーなものまでずらーっと並んでいる。
んー…、普通にでけぇな。天然ならヤバくね?
あ、モース硬度とかは知ってるぜ! 『宝石の王国』、見てたからな! 確か、モース硬度が引っ掻き傷への強さで、靭性が衝撃への強さだったよな!

…でも、こんな大きくて品質Sクラスばかりなんて…、お高いんでしょう?
『いいえ! 今ならなんと!!』なんてタカタしゃちょーが言ってくれる筈もなく、俺はおそるおそる値札をチラリ…。

「あれ…? 意外とお手頃価格…」

ルビーのお値段、なんと金貨36枚。つまり36万円な。いや庶民感覚じゃ普通に高いんだけど…、それでもルビー4.16カラットで36万って安すぎじゃね…? え? 俺がおかしいの? 俺が世間知らずなだけ?? …分かんねぇ。

…ダイヤモンド金貨50枚…。サファイア金貨23枚…。
え? 価格設定まさかの適当?

「……この国は資源が豊富だから…。利益さえ出せればって感じで、宝石なんかは特に店主が価格を決めてたりするんだ…。ぼったくりも多いけど、この店は良心的だよ…」

後ろからロイがひょっこり。ついでに説明してくれた。
……自由だなぁ、異世界。

「それでルークさん、リイサスさんが欲しい物って…」
「む、あぁ。宝石自体はどれでも構わないだろう。あまりにも硬度が低すぎる物だと魔力が入れられないだろうが」
「……まさか…魔石を?」
「うむ。…今のギルドの財力であれば、買えない事もないのだが…コージくんの魔力である事が重要なのだ」
「俺の魔力?」
「リイサスが前に、『コージくんの魔力が入った魔石、欲しいなぁ…。アクセサリーなんかにしてさ、毎日身に付けたいよね』、と」
「………………」

それは、俺の魔力が欲しいという愛なのか。俺の無限の魔力を、いざという時の為に所持しておきたい策なのか。単純に魔石が見たい好奇心なのか…。
リイサスさんの場合、全部だろうなぁ。

「リイサスは宝石にこだわりがある訳ではないので、どれでも構わないだろう」
「そっかぁ。えーっと、硬度が高ければ高いほど、魔力の容量も大きくなるから…、モース硬度10のダイヤモンドか、ルビーか、サファイアが良いですね!」

魔石は、普通の宝石に魔力を流し込んで作る、人工魔石の方がよっぽど希少だったりする。
何故なら、魔石は宝石に魔力を流し込むだけじゃ、魔石にならないから。ちゃんと宝石の中で魔力が飽和状態にならないと、魔石にはなれない。
そしてどんな宝石でも、魔力の容量は滅茶苦茶大きい。

硬度、大きさ、品質、見た目を踏まえて俺が買う事にしたルビーも、魔石になるまでに必要な魔力は、大体成人男性4千万人分ぐらいだ。
優しそうな男性スタッフさんが、ルビーをすっごく素敵なペンダントに変身させてくれたから、最初は俺が身に付けて、暇な瞬間にでも魔力を超流す。
続ければ、帰る頃には魔石になっているだろう。

………………前にも言ったと思うが、魔石って言うのはひっっっっじょぉ~~~~に珍しく、高価だ。
小さな欠片だったとしても、魔石であれば無人島が買える。

そんなものをたった1週間強くらいで作ってしまう俺って…。
売ったりしていないのに、なんか転売してるような気分になってきちゃったなぁ。
相場が崩れたらヤバいから、俺の作った魔石は絶対に表に出さず…というか、不用意に魔石を作らず、どうしてもお金に困った時だけ、宝石を魔石に変えて売るって事に決めたけど…。
……まぁ、完全な転売って訳でもないから、別に良いか。

ただ普通にグッズやチケットを高額転売する奴は滅べ。この全オタクの敵め。
みんなも、悪質な転売ヤーからは絶対に買っちゃダメだかんな! コージくんとのお約束だかんな!



********************




この街に来てから4時間弱。
俺…カイル・マンハットの元に届いた、『コージを狙う人拐いの捕縛報告』は、3件だ。
聖騎士団第4部隊の一部を王都ではなく、このエジーナの街に配置しており、コージの周囲を見張らせていたのだが…。
まさか4時間弱で3件…、人数的には8人もの人拐いが、コージを狙うとは。

これは、もう絶対に1人で歩かせてはならない。

コージの保護者的存在であるリイサスが、あれだけ『1人にさせるな』と言っていた意味が分かった。

エジーナの街は、決して治安が良いとは言えない街だった。
この街にある教会には、強盗対策に聖騎士が常駐しているし、街の東は無法地帯も同然。毎日2~3人は平気で消えているだろう。
だが…、4時間弱で3件。コージがこの街で半年も過ごせば、街や付近で活動する全ての人拐いが釣れそうな勢いだ。
無論、そんな危険な事はしないが。

………だが…、コージを狙った人拐い共は、赦されない。
コージは俺にとっても、教会にとっても、この世界にとっても大切な存在だ。
全知全能の創造主ゼロアに愛された、唯一無二の存在。
そのコージに接触を許されていない輩が、触れようとするとは。万死に値する。

そうだ。俺やガレ・プリストファー…その他、コージの周囲の者達は恐ろしく幸福者なんだ。
何せコージに接触を許されている…。
コージと肌を重ねて、コージの体温を感じながら朝を迎え、コージの顔にキスを降らし、唇を重ねる。
俺が懇願すれば、コージはこの行為を再び許してくれるだろう。
快楽に弱く、非常に優しいコージの事だ。俺でも、ガレ・プリストファーでも、リイサスやアラウザ殿でも、セキ殿やジャック、ワーナーでも…、許してしまうのだろう。

親愛と性愛の区別が付けない子供だ。俺のような狡い大人が快楽で思考を流し、余計にあやふやにさせている。
コージも気付いているだろう。
気付いた上で流されて、親愛か性愛か決めようとせずに、俺達をただただ愛してくれている。
これ以上ない幸福だ。だから俺は、他の奴らがコージに触れようと我慢しているんだ。
俺と同じく、コージに許されて触れているから、同じ立場の俺は何も言えない。
例え犯罪王と言っても過言ではないガレ・プリストファーでさえも、コージの許しを得て触れているので、俺は何も言わない。殴りはするが。

………しかし、人拐いは許しを得ていない。なのにコージに触れようとしたんだ。
赦されないし赦さない。
人拐い共は俺とアラウザ殿の手紙付きで、ガレ・プリストファーの元に身柄を送られる。
この手で罰してやりたいところだが…、拷問に関しては、アイツより適任などいないだろう。

「…? カイル? 顔が怖くなってるぜ。気分悪い?」
「…いや、なんでもない。考え事をしていただけだ。それより口周りの食べカスをなんとかしろ舐め取られたいのか」
「ひぇっ」

慌ててナプキンで口周りを拭くコージ。
隣では、アラウザ殿がコージにチーズケーキを勧めていた。拭き終わったコージが、嬉しそうにフォークを握る。
本当に単純で可愛い奴だな。ケーキ何個目だ?

俺達は、とあるカフェで休憩中だった。


「ほらコージ! 口直しにローストビーフでもどう!?」
「あ~良いね~!」

オウ殿が壁に書かれたメニューを指差してコージに言った。
何故スイーツメインのカフェにローストビーフがあるのか一瞬考えたが、2人の言う通り口直し用なのだろう。
それにしてもよく食うな。夕食は入るのか。

「えっチョコレートドリンク? 絶対に飲む」
「ねぇ見てよあの人が食べてるの! プレミアムタルトだよね!! 絶対美味しいよアレ!!」

15歳の体は怖いもの知らずだな。1万歳越えの古龍には胸焼けというものはないのか?
何にせよ、あっという間に積み上がっていく皿の山には、もはや感心すら覚える。

どうやらコージ、ストーンゴーレムの核を売り、だいぶ金が貯まっているようだった。
先ほどのアラウザ殿とリイサスへのプレゼントの他には、スイーツにしか金を使っていない。
ストーンゴーレムの核ならば、庶民思考のコージにとって、信じられないレベルの金貨が入って来たのだろう。
コージは現在、リイサスの家に住んでいる上に、買い物するような場所が近くにない為、たまには使ってみたいのだろう。スイーツを山盛り頼んで食べるのもまた、良いのかもしれない。
酒や煙草よりはよほど健全だ。

…それに、程よく肉が付けば、より抱き心地が良くなる事だろう。
コージに言ったら、もうケーキに手を付けなさそうだが。


「あれ? ロイ、もう良いの?」
「う、うん…。俺もローストビーフ食べる…」
「そう? あ、セキとセイも?」
「そこの店員!! すまないがローストビーフを4つ!」
「我は…、ごほんっ、俺は3つ」

ロイもセキ殿もセイ殿も、スイーツはもう食べられないようだ。
セイ殿は古龍の時の一人称まで出てしまうほど、スイーツに追い詰められている。

「コージは…、まだ甘味を食べるのか?」
「当然! オウは?」
「よゆ~! 人間って素晴らしいね! ワーナーもこのケーキ作れないかな~!?」
「あ~でも、デザート作ってくれるから、このケーキまでとはいかなくても作れるんじゃないかな?」
「わぁ~! 帰ったら作ってもらお~!」

キャピキャピはしゃぐコージとオウ殿。
その隣で、ネコチャンネクタイを身に付けたアラウザ殿が黙々とシュークリームを頬張っている。
俺はテーブルの上の鮮やかなケーキを見て、息を吐き…。

「店員。俺には紅茶と、ローストビーフを2つ頼む」

コージと同じ話題で盛り上がりたかったが、20代後半の身に過剰な糖分は受け付けられなかった…。




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