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権力系ホモ★グリス王国編

だって2人とも俺の保護者

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「……ージく…」

すぴすぴ。

「コ……ジ」

すぴょー。

「……ダメ…起…ない…」
「わた……運ぼ…」

ん~…。誰かが何か言ってる気がする…。

「毛布……掛け………」
「かわ………寝顔…」

はん!? 可愛い寝顔だとぅ!?
最近ちょっと嬉しいって思い始めちゃってるからそれ以上言うなよ!!
うぅん…、もう、うとうとの人間にツッコミさせんなよぉ…。
……………すやぁ…。

「どう…運…?」
「無論、お姫様抱っこで」

「ギャーーーッ!!!」

目ぇ覚めた。超覚めたから!! お姫様抱っこだけはご勘弁を!!
…と思って飛び起きたら、視界には笑い転げるセキとオウが。
ゆっくりと顔を上げると、今度は必死に笑いを堪えるカイルとセイ。ロイは口角が数ミリ上がっている。
ルークさんはただ、可愛い物を見た時のような、ほわ~んとした微笑みで俺を見詰めていて。
御者のポールさんはニコニコだった。

………おはようございますコージですいつの間にかエジーナの街に到着していたようです俺は毛布にくるまって砂になって消えたい。


「おはようコージくん! 今朝はいつもより早かったから、眠ってしまっても仕方がない! 馬車に揺られて眠る君の顔は大変可愛らしかった!!」
「あぁぁぁぁぁ言わないでぇぇぇぇぇ…」

ふっかふかの毛布にすっぽりと頭を隠して悶える俺。その毛布ごと抱えてスリスリするルークさん。

仏のようにニコニコするポールさん…。
あの、お見苦しい所をお見せしてしまい、すみません…。





********************





さて、馬車から降りて街に何の検問もなく入ったVIP扱いな俺達。
ポールさんが警備の人に何かを見せたら、警備の人達全員が直角90度で頭を下げた。いやもう最早上半身を下げてた。
俺にも頭下げてたけど、俺自身はただの冒険者なんで頭上げて欲しかった。申し訳ない…。

案内されたのは、多分この街で一番豪華な宿だった。
この街のお偉いさんが住んでいた豪邸を改造したらしく、内装も超豪華。
ロイによると、なんとこの宿、1泊1人金貨10枚らしい。つまり10万円。
俺と同行者分は国が出してくれたらしいけど…俺ちょっと引いた。
部屋割りは基本的に1人1部屋。しかし俺とルークさんは同じ部屋。
城ではセキと同じ部屋になる予定だ。
安全の為だし、異論はない。

──ふ、ふふふ……。そして本日のお楽しみイベント…。
それぞれ今晩寝る部屋を確認したら、1階のホールに集まって、街にお出かけです!! やったね!



「離れないよう、手を繋ぐぞ」
「えっ」

ルンルン気分で宿を出た途端、カイルに右手を繋がれた。
じとーって睨んで抗議するも、『王都じゃ10秒で迷子になっただろう』って言われた…。
なんだいなんだい! あれは創造祭で人が多かったからだろ! 今回は大丈夫だし!!
離す気のない様子のカイルに俺は頬を膨らまし、ルークさん達に助けての視線を送る。
…でもニッコリ笑顔でスルーされた。むしろロイはもう片方の手を繋ぎたそうにこちらを見ている。

「…ルークさん、嫉妬しそうなのに」
「当然、嫉妬はしている。だが私より、顔が広く知られているマンハット殿の方が良い虫除けになる事は事実だ。…悔しいが、私では力不足だろう」

あ、我慢してくれているのね…。確かに聖騎士団長と手を繋いでる奴に、ちょっかい掛けようとは思わないよね、普通…。……普通は。
でも俺、カイルと手ぇ繋ぎたくないなぁ…。

「………そんなに、嫌か」
「うんイヤ」
「…っ」

ちょっと涙目になるカイル。体もプルプル震えていて…、やだ可愛い。ショック受けちゃったのね。
でも違うんだカイル。別にお前だけがイヤって訳じゃない。ルークさんもイヤだし、ガレもイヤだ。リイサスさんもジャックさんもイヤ。セキも当然イヤ。
何故だか分かるか?

「ほら見ろよカイル。お前みたいなデカい奴と手を繋いだら、俺の手がカイルの手にスッポリ納まっちまうだろ?」
「…だから嫌なのか?」
「うん、俺より背が高くて手がデカい奴とは繋ぎたくない。だから別にカイルだけって訳じゃないから、そんなショック受けんなよ…」

という俺の言葉でカイルは勿論、ルークさんやセキなどのデカブツまで、ニッコニコ愛しそうな表情で俺を見詰める事態が発生してしまった。

そして手は離して貰えなかった。





********************




「こちら、王都で大流行中の最新ファッションになりまぁ~す!」

エジーナの街の大通り。その中でも特に人気な服屋。
私…、ルーク・アラウザはコージくんのショッピングに付き合っていた。
服屋では白粉を顔に塗りたくった女が甲高い声で最新ファッションとやらをロイやセイ殿に勧めている。
やはり流行の服を扱う店なだけあり、客も店員も女が多いが、その視線はほとんどがマンハット殿やロイ、セキ殿、セイ殿、オウ殿に注がれていた。
全員美形であるから仕方がない。せいぜい絡まれて足止めされていれば良いと思う。その間、コージくんの側には私がいるので。

コージくんはメンズコーナーにて、ネクタイを真剣に選んでいた。
……? コージくんが身に付けるにしてはいささか大きいような…。

「コージくん、決まったかね?」
「あ、ルークさん! 実はまだ…。ルークさんなら、どっちが良いですか?」

そう言って差し出された2本のネクタイ。
1本は青色の無地で、もう1本はネコチャンが描かれた可愛らしいネクタイ。

「…私が身に付けるとしたら、ネコチャンだろう」
「!? …ルークさんがネコチャンのネクタイ…?」
「君の言いたい事は分かるよ。だが…、知っての通り私は顔が怖い。せめて格好だけはお茶目にしないと、中々みんな、話し掛けてくれないんだ…」
「あっ」

コージくんが眉をハの字に歪めて、ネコチャンネクタイをじっと見詰めた。
私自身、可愛らしいぬいぐるみや小物、小動物なども好きなので、身に付ける事に抵抗はない。…店で購入するとしたら無地を選ぶだろうが、人目が無ければネコチャンを買ってしまいたい所だ。
コージくんが身に付けるとしたら、可愛いの相乗効果で大変な事になるだろう。
可愛い過ぎて心臓が止まってしまうかも知れない。
可愛いコージくんが可愛いネコチャンのネクタイを身に付けるなんて…もうこれは見るしかない。コージくんが無地を選ぼうが、私はコージくんにネコチャンのネクタイを身に付けさせる。

「買ってあげよう」
「えっ」

コージくんが持っていたネコチャンネクタイを取り上げて、会計場所へと持って行こうと足を踏み出す。
しかし、コージくんに後ろから抱き締められ、私は止まらざるを得なくなった。

「待ってください! それっ、俺が買わなきゃいけないやつですから!」
「…? コージくんが買わなければいけない?」
「俺っ、前のストーンゴーレムの核を買い取って貰って、やっとまともに買い物出来るぐらいお金貯まったから、その…初任給とはまた違うんですけど、何かプレゼントしようと思って…」
「??? しょにんきゅう? プレゼント?」
「…??? あれ?」

…よく、分からないが…恐らく、コージくんのいた世界の風習なのだろう。
予想通り、コージくんが説明してくれた。
コージくんのいた日本という国では、子供が初めての給料…初任給で、両親にプレゼントする事があるそうだ。

「うむ、素晴らしい風習だ。それで、誰にプレゼントするのかね?」
「…ルークさんと、リイサスさんに。ずっとお世話になりっぱなしなんで、何か買ってあげたいなーと……」

気恥ずかしそうに唇を尖らせて、コージくんが小さく呟いた。
店内のざわめきで消えてしまいそうな程に小さかったが、私の熊耳は逃さない。

「っ…!! 嗚呼コージくん!! なんて事を言ってくれるんだ…!!! 胸の高鳴りが止まらない!!」

ぎゅうううううううう

感極まって抱き締めたが、前回の反省を生かして力は3割程度に抑えておく。コージくんを圧死させかけるような真似はもうしたくないからだ。
コージくんもあまり苦しくないようで、照れ臭そうに私の腕から素早く抜け出し、ネコチャンネクタイを引っ付かんで会計場所へトコトコと歩いて行く。
その後ろ姿でさえも堪らなく愛しい。

ただ、会計の時に『…えっと、このネクタイ、可愛い君にすごく似合うと思うけど…、君にはちょーっと大きいんじゃないかな…? 他のサイズもあるよ!』と言ってコージくんを拗ねさせた店員は許さん。





********************





「おぉルーク! 随分と可愛いネクタイだな!」
「えぇ、コージくんからのプレゼントでして」
「ぬっ!?」

ネコチャンネクタイを身に付けたルークさん、すっごく嬉しそうだ。周囲に花飛ばしてる。
セキやカイルが問い詰めても、デレデレとネクタイを見詰めていて…、そこまで喜ばれるとは。
さてと…、後はリイサスさんへの初任給プレゼント…。……何が良いかなぁ?

腕時計…はこの世界にはないし、万年筆とか? うーん、ルークさんがこの調子だし、リイサスさん大事にし過ぎて使わなそうだな。食べ物も同様。つかワーナーさんの料理の方が絶対美味しい。
服はサイズ分からないし…。靴は縁起が悪いんだったよな。
従兄弟の兄ちゃんは旅行券あげたーって言ってたけど、リイサスさん俺から離れたがらなそう。
んーーー!? 難しくねーー!?

…この大通りにある店は、服屋に香水屋に武具屋に家具屋…、あ、宝石屋さんもあるんだ。

「……。リイサスの分は王都で買うという手もあるが…、向こうに着けばドタバタで観光する暇はないかも知れない」
「ですよねぇ…。うーー…。ルークさんはリイサスさんの欲しいものとか知らないですか?」
「……………知っては、いるが…」
「…えっと、高級すぎるものは…」
「いや、コージくんの手持ちからでも出せるだろう。…ただコージくんの力を使う事になる」
「それは全然構いません!」
「…よし、ならば行こう」


そしてみんなで入ったのは、宝石屋さん。



…………俺の手持ちから、出せるんだよね…?





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