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権力系ホモ★グリス王国編

交錯する思惑とジューシーなカツサンド

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俺の手には、一枚の手紙。
封筒は豪華って一発で分かる、金色の美しい装飾が施されていて、裏には複雑な模様の判子…。
えーっと、玉璽ぎょくじって言うんだっけ。王様の判子。それが押されていた。


そうです。ついに来ました登城命令。







「ではもう一度確認だ。コージくんに同行するのは、ルーク、聖騎士団長さん、セキ殿、セイ殿、オウ殿。……追加でロイ。『死神の吐息』の隠密に長けた団員も、遠くから着いていく。…城に着いたら、絶対に全員でコージくんの側にいること。部屋も必ず誰かと一緒にしてもらうんだ。あくまでこちらが優位である事を忘れてはいけないよ」
「はい!」
「能力や出生の事を聞かれたら、素直に答えるんだ。こっちには序列入りの古龍が3体いる。本気を出せば、この国どころか周辺の国々まで被害が出る事は、向こうも理解している筈だ。囲まれる心配はないさ。…ただ、万が一向こうが揺るぎない敵意を向けた場合は…、セキ殿、セイ殿、オウ殿、よろしくお願いします」
「うむ!! 任せよ!! 脆弱な人間共など吹き飛ばしてくれるわ!!!」
「承知した」
「おっけ~! 暴れれば良いんだよね!」
「ルークと聖騎士団長さんは、腹黒大臣たちの挙動に注意していてくれ。貴族には口を挟ませるな。…念を押すけど、コージくんを絶対に1人にさせてはいけない」
「あい分かった」
「国王には序列100位のアルバート・ビーターが付いているが」
「それは実の兄弟であるロイが対応する。任せたぞロイ」
「…はい」


リイサスさんが、いつになく真剣な表情で全員に色々言っている。
王都には、前に俺にお兄ちゃん呼びされて堕ちたジルもいる。協力してくれるらしいし、多分大丈夫だとは思うけど…。
……明日の朝、出発なんだ。王様が王都直通の馬車を手配してくれたらしいから、朝、それに乗って城に向かう。
王様に会ったセイとオウの話では、『愚かな選択をする王には見えない』らしいけど、兵士のガラは悪いそうだから、1人にはなれない。
…うん、気を付けよう。





翌朝。

「コージくん。絶対にだよ。絶対に1人になっちゃダメだからね。あぁもう…、どこまでも図々しい国だ…。コージくんに足を運ばせるなんて…、お前が来いっつぅの…!」

…心配し過ぎで口悪くなっちゃってますよ、リイサスさん。

「滞在は最短でも1週間? 移動時間を会わせたら9日? トラブルが起きれば更に延びるのか? 長過ぎだろ。その間コージに会えねェとか無理だ」
「あ~ごめんなガレ。ほらよしよし。もし延びたら手紙書くからさ」
「コージの手紙は欲しいがそれが滞在の延長とか辛い…」
「あぁ~落ち込むなって! よしよ~し!」

頭をわしゃわしゃ撫でて俺からガレにキスをして、ガレはようやく俺を離してくれた。
このでっかい赤ちゃんめ…。

「コージくん、王都には俺と同じ、『惑わしの瞳』を持つ魔法師団長がいる。当然、俺よりもずっと洗脳の威力は強い筈だ。……君が洗脳されてしまっては、例え序列入りの古龍でも君を止められないからな」
「…全力で気を付けます!!」

ジャックさんの言葉にハッとした。
そうだ…。俺、核弾頭の500倍の魔法が使えるんだ…。
いくらルークさんやセキ達が俺を守ろうとしてくれていても、俺自身が洗脳されたらどうしようもない。
俺が使える魔法をガンガン使って全力で暴れたら、それこそ序列入りが複数集まって止めないと…。
……兵器利用なんて、恐ろし過ぎだ。洗脳にだけは気を付けよう。

「コージ! これ、道中で食べてくれ!!」
「これ…サンドイッチですか? わぁ!! ワーナーさんのサンドイッチ!! ありがとうございます!!」

たまごにハムにカツサンド!! フルーツサンドもある!! 最高だぜワーナーさん!! 大好き! 抱いて!!



「コージくん、準備は出来たかね?」

お、ルークさん。はいはい、出来てますよ。着替えは何着かアイテムボックスに入れたし、護身用短剣も装備済み!
ガレに貰った虫除けアンクレットも、言われた通り左足に付けたし!
…これで本当に虫来ないの? 俺、ムカデとかは良いんだけどGだけは無理なんだよね。まぁGが寄ってくる機会もないだろうし、蚊やハエを追っ払えたら良いんだけどさ。
あと、ジャックさんに貰った、1回だけ洗脳スキルの干渉を弾くブレスレットな!
これが四散するようにして壊れた時は、誰かに洗脳を仕掛けられた時。そしたらすぐに全員に『精神不干渉結界』を張る。
……厄介なのは、最初から結界を張っちゃいけないって事だ。
俺達はあくまで、『コージ・アヤマは王国側に害を与えない』って事をアピールしに行く。
最初から攻撃される前提で行ったら、王様もずっ転けちゃうからな。


ルークさんと手を繋いで、ギルドの外まで行く。
…何百人ってギルドの人や、盗賊の人達…、聖騎士の人達もゾロゾロ付いてくるけど。なんだお前ら。見送りは良いから仕事しろ。

ギルドの門の前に停まっていた馬車は、THE・王家。赤の塗装に金色の装飾。王家の紋様的なやつもある。

「………盗賊の餌食まっしぐらでは?」
「他の国ならな。この国のほとんどは『死神の吐息』の縄張りだ。王家に手を出せば、聖騎士どころか王国騎士まで追ってくるだろ。だからうちでは徹底している」

……らしい。流石ですガレさん。


「お初にお目にかかります。わたくし、御者を務めます、ポールと申します。阿山康治郎様でお間違いないでしょうか」
「はっ、はい! 阿山康治郎です!!」

御者のポールさん、なんだか『おじいちゃーん!!』って抱き付きたくなるような、物腰穏やかなおじいちゃんだ。多分、60代ぐらいの。立派な洋服を着た、品のあるおじいちゃん。

「足元にお気を付けて、こちらにどうぞ。……あぁ、申し訳御座いません。この馬車は4名様までが限度でして…。もしもご同行される方がいらっしゃれば、馬車にお乗りするのは阿山様を除き、3名様までとさせて頂きます」

およ、マジか。
……まぁ普通に考えて、子供サイズ1人とでけぇ大人サイズ6人なんて入る訳ないな。いくら王家でも。

「えっと、どうする?」
「ルークとロイとカイルが乗れば良かろう!! 俺達は羽根を出して馬車の周囲を飛んで移動する!! 御者よ、それで良いな!?」
「勿論でございます。アラウザ様とマンハット様とビーター様も、どうぞこちらへ」

馬車の中はもう本当に豪華絢爛。でも、ギンギラギンっていう度の過ぎた豪華さではなく、実用的な豪華さ。
何このソファ。ふっかふかなんですけど。これなら何時間乗ってても尻が痛くなる事はなさそうだな…。最高だぜ王家。

ルークさんとロイとカイルも乗り込み、セキセイオウが羽根を広げ、馬車は出発した。
いつまでも心配そうな表情の見送り達に向かって窓から手を振ると、みんな振り返してくれた。嬉しくなってもっと手をブンブン振ったら痛くなった。当然だな。
ギルドが見えなくなった辺りで窓を閉め、一息…。

王都まで、今日を含めて大体2日。道中にあるエジーナの街で夜を過ごして明け方に出発すれば、明日の昼過ぎには到着する予定だ。

エジーナの街に到着するまで、ルークさんのおみみと尻尾をもふもふ。いっぱいもふもふして、いっぱいお喋り。ロイとカイルもルークさんのおみみをもふもふした。
ワーナーさんのサンドイッチはみんなで食べた。
やっぱりいつも通り美味しくて、ポールさんもスッゴく褒めてた。
『素晴らしい腕前です』って!


やっぱりワーナーさんの料理は最高だね!







********************




コージと団長らの乗った馬車が見えなくなったあと。
俺…スティーブは、部下に指令を出した。

「パトリック! 教皇に手紙は?」
「出しました」
「よし、第1部隊! 司教からの命令はガン無視だ! 教皇が出てきた場合のみ従え!」
「「はい!」」
「第3部隊はポルトの街で活動する女神教の制圧! 最近は布教活動も過激になってるらしいから、根付く前に潰せ!」
「「はい!」」
「第5部隊は…あー、『神聖パンチ』か『神聖キック』のみで盗賊を捕縛しろ!!」
「「はい! ……え?」」

無茶言うなって顔が向けられるが知らん。盗賊もパンチとキックしか使えないのは同じ。頑張ればいけるだろう。

ここにいるのが部隊の全てではない。聖騎士は全世界に散らばっている。
王都にいるのは第1部隊から第6部隊までで、それぞれの部隊には特性がある。

第1部隊は完全な実力主義。団長が隊長を務めるだけあり、その実力は人類屈指。例え武力に特化した帝国軍が攻めて来たとしても、第1部隊の100人のみで制圧する事が可能と言われる程だ。教会の発言力が強い理由もここにある。

第2部隊は権威主義。貴族の三男坊や、爵位を上げたい貴族の養子が送り込まれる。貴族の親類の上層部と繋がっていたり、聖騎士という立場から意見を通す際には役立つ部隊である。しかし実力主義の第1部隊を妬む素振りが目立つ上、平民の出の者を見下す言動は目に余り、団長と教皇は密かに第2部隊の解体を進めている。

第3部隊は現場を走り回る、ある程度の実力者が集まっている。第1部隊は戦力が過剰な為、第2部隊は現場仕事を嫌う為、余程の事がない限り、第1部隊と第2部隊は動かない。なので通常は、そこそこの実力を備えた第3部隊が現場に赴く。よって、第3部隊の者は修羅場を潜り抜けてきた経験豊富な猛者が多い。

第4部隊は煽動や囮役に長けた者が集まっている。大抵は第3部隊と同じく現場に赴く部隊だが、現在は王都にて、コージを司教共から守る為にいたる所に配置している。第1の壁、第2の壁、庶民街の裏路地から、城下町の一角や王城の堀にまで。…まぁ団長いるし、出番と言えばコージを狙う、人拐いの始末ぐらいだろうが。

第5部隊は魔法特化型だ。敵に突っ込んで行く他の部隊に防御魔法を付与したり、治療も行ったりする。戦況が悪くなると複数人で大規模な殲滅魔法を放ったりもするが、基本的には後方で援護。ただし、ある程度の接近戦も出来なければ、王都に常駐の第5部隊に配属される事はない。

第6部隊は諜報員が集まっている。今は『死神の吐息』に寝返ったミゲルもここの隊員で、隠密系や潜入系のスキルを使いこなせている者が配属されている。顔を無闇に知られる訳にはいかないので、聖騎士のシンボルである白い鎧は着用せず、普段は一般人として生活している。


1部隊におよそ100人。
団長と共にコージに会いに来たのは、第1部隊、第3部隊、第4部隊と、第5部隊。
合計438人だ。
この438人全員が、コージファンクラブの『K-A-M』に入会している。
ほとんどが、コージに命を救われた者だからだ。さもなければコージの容姿に惚れたか。


コージの正体…、コージが『神の愛し子』という事は、聖騎士の中では俺と団長しか知らない。
だが、もはや全員が察している。コージは普通ではないと。崇めるにふさわしい存在だと。

それを知らぬ上層部や第2部隊たちは、コージを淫乱呼ばわりし、貶した。団長がコージにゾッコンだと知ってからだ。
当然、許される事ではない。教皇であるドリー・スペクタル様には既に真実を知らせる手紙を出した。

忌々しい事に、上層部や第2部隊は権力を持っている。
コージを奴隷にして、性奉仕させようとしている輩も複数いる。むしろコージは1度、デネブ司教に襲われている。
未遂だったものの、コージはその隙に逃げてしまった。
デネブ司教は団長がOHANASHIしてボロボロになって帰ってきたが、他の上層部は諦めていない。


コージは団長が物理的に守っている。体が傷付く恐れはない。
しかし、精神はどうだ?
第2部隊の者と鉢合わせなどしてみれば、コージが直接言葉をぶつけられる可能性も充分にある。

だから俺達が根回しするんだ。
『王都に常駐する聖騎士のほとんどが、上層部に対して反乱を起こしている』と、教会に認識させる。
上層部が現在動かせる部隊は第2部隊だけだから、必然的に上層部も第2部隊も、反乱を起こしたとされる俺達に注目せざるを得なくなる。
王都にコージが来たと知っても、構う暇の無い程に慌ただしくさせるんだ。
俺達は俺達で、異教徒である女神教の信者の制圧を行っているから、教えを放棄した訳でも、違反を犯した訳でもない。
ただ、王都から異動しただけ。……無断で。
だが、普段からやましい事を裏でやってる奴らだから、真っ先に裏切りを疑う。
結果、実際には異動しただけなのに、反乱が起こっている事になる。
……それに、これからの計画が上手くいけば、コージの存在を教会に認めさせる事が出来る。
教会がコージを認めれば、他国だってそう簡単にコージに手を出せない。
ガレ・プリストファーによると、近々ビーター家…あの英雄一家がコージの後ろ楯になってくれるらしい。
なんでも英雄一家の末代、ロイ・ビーターがコージに惚れたらしく、まずは兄である王国騎士団長を説得しに行った。


現在進んでいる色んな計画。成功すれば、力を持つ者がコージの味方になる。
コージに魅了される者も新たに出てくるだろう。


……マ俺としては、団長と結ばれて欲しいんだがな。
…団長大丈夫かなぁ。大丈夫じゃないよなぁ。ポンコツだもんなぁ。




********************




はぁい(* ̄∇ ̄)ノ
メルです。



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