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死闘続発★ホモら共存編

予想ぐらいしろよ、と思いました。

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チュンチュンギョエー
そよそよ…ぴよぴよ…

リイサスさんに抱かれた夜から1週間経過した。
今日、俺はギルドへ行かず、リイサスさんの家の庭…ルークさんが改造した事によってだいぶメルヘンな感じになった場所で、もふもふの小動物たちともふもふ戯れていた。
平和だ。こここそが平和の象徴なんや…。

あ、ちなみにルークさんもリイサスさんも今日はいない。
どこかで国のお偉い方々とヒュドラの取引をするらしく、俺の側にはもふもふと、ガレに派遣された『死神の吐息』の見守りの人しかいない。見守りの人は俺に見付からないようにしているので場所すら分からない。

暖かい太陽が照らす中、そよ風が優しく吹いて俺たちを包み込み……。

……………あぁ、平和だなぁ…。




パカラッパカラッパカラッパカラッ


………ん?


パカラッパカラッパカラッパカラッパカラッパカラッ


…蹄の音? 馬車が来たのかな?
……いや、車輪の音は聞こえない…。………馬のみってこと?


パカラッパカラッパカラッパカラッパカラッパカラッパカラッパカラッパカラッパカラッパカラッ

段々近付いて来る蹄の音。
危険であれば見守りの人が対応してくれるが、見守りの人は動かない。
なら大丈夫かなって思ったけど、やっぱり蹄の音は一直線にこの庭に向かって来ている。
俺は自分の腕の中で眠りこけてる2匹のウサギを起こさないようソッと地面に置き、街道の方へ顔を出した。

…うん、やっぱり馬が一直線に来てる。綺麗な白馬が猛スピードで遠くから。
………………ん? あの鞍見たことあるような…、というか、あの巨大な白馬って……。

「……ジュラム!!!??」
「ヒヒィーーーーーンッ!」

間違いない。カイルの愛馬のジュラムだ!
あ、皆さん覚えてる? 俺、ジュラムに乗って王都の中を全力疾走したんだぜ! 寿命5日ぐらい縮んだんだぜ!!

俺の目の前にまで来たジュラムはキキーッと急ブレーキを掛けて、巨大な頭を俺にスリスリしてきた。
うんうんっ! 相変わらず可愛い奴め! よしよーし!

「ヒィーーーンッ!!」

マジでけぇけどマジ可愛いこのジュラム、バリッバリの戦闘馬なんですよ。まぁカイルが飼い主だし、ねー。


…………あれ? ジュラムさん貴方なんでここにいるの?
……………………あれれ? 飼い主さんは? というか貴方、ギルド方面から来ましたよね?
……そうだ俺、カイルに『職場に戻る』って言って兵舎を飛び出して来たんだった。じゃあカイル、ギルドに来てるのか!
なら会いに行かなきゃな!
………………………………………待って? 今ギルドって誰がいましたっけ?

ルークさんリイサスさんは国の偉い人と取引だから、いないんだよね?
ジャックさんは? 多分いる。
ワーナーさんは? 絶対いる。
…………ガレは?? ……………いるよね、最近毎日ギルドにいたし、今日もいるよね!?

えーっと、ガレは1回カイルに殺されかけてて、カイルはガレを捕まえようとしてて…。俺を兵舎から拐ったの、ガレだって知ってたら……。


ヤバくね? いやヤバイよね!? あの2人冒険者で例えるとS級だよね!? 2人だけじゃなくて周囲も大ピンチだよね!!?


「ちょっジュラム乗せて!! あの2人止めないと!!」
「ヒヒィンッ!」

『任せろ』って膝を曲げて俺を乗せてくれたジュラム。俺、『全言語理解』を持ってるから、ジュラムの言葉が分かるし、ジュラムも俺の言葉が分かる筈だ。
言葉が理解出来る今だから分かるが…、ジュラム、武人って感じだ。カッコいい。

って、それは後で!!
今はガレとカイルだ!!!










ドドドドドドドドドドドドド……

ジュラム全力疾走。前に王都で走った時の6倍は速い。俺は黙ってしがみつく事しか出来ない……。

ドドドドドドドドドドドドド……キキィーーッ!!

えっ嘘だろもう着いちゃった…。
いやいや、早く2人を止めないと! うわっ聖騎士の馬達だ! 
やっぱりここに来てるんだ。それも集団で!
俺は急いでジュラムから飛び降りて、ギルドへ走った。

……騒ぎが起きてる様子はない。良かった、なんとか間に合っ




ズドォォォォォォォォォォン




………遅かったか…。










********************




~ちょっと前~


「……あれがオーディアンギルドか…」
「団長、上層部の者から抗議の手紙が…。やはり団長が王都から異動というのはマズいのでは……」
「差出人は?」
「司教一同、とだけ」
「知らん。あんな信仰を忘れた豚どもの言う事など聞く価値もない。俺が従うのはドリー・スペクタクルにのみだ」
「団長は気にしないかもっすけど、第2部隊は全員貴族っすから、貴族と関わりのある司教がいたら第2部隊が敵に回ると思うんすけど…」
「知らん。………コージが協力してくれるのであれば、第2部隊など敵ではない。……恐らくコージは知っているんだ」
「何をですか?」
「教会の進むべき道をだ」
「…! だから団長は失墜も恐れずにここに来たんですね!」
「……………………………………………………………まぁな」
「(…これ絶対コージくんに会いたいだけだよな)」
「(なんでうちの団長はこうなんかなー…)」
「(強いし頭回るし口も回るし仕事出来るしイケメンだし地位も権力も金も持ってるのになんでこう恋愛だけポンコツなんだか………)」


異動に着いてきた部下達がコソコソ話していても、団長は素知らぬ顔。いつもなら眉間にシワを寄せて軽く睨むが、コージに会えるからか耳に入っていない様子だ。

……いやぁ、本当に大変だった…。コージを逃がしてしまった後始末は勿論、団長の強引な異動に副団長で貴族出身の俺が超言われた…。
疲れた…。これはもう元凶であるコージに全力で慰めて貰うしかねぇよな…。
馬から降りてギルドの入り口を目指すと、建物の前に大きな門があり、2人の門番がかなり警戒した様子で俺達を見ていた。
団長が気にせず歩みより、普通に話し掛ける。
……穏便に、ってさっき言ったんだけどちゃんと聞いててくれたかな~…。

「何者だ」
「突然の訪問、謝罪する。聖騎士団団長のカイル・マンハットだ。本日よりこの地域で活動する事となったので、挨拶をと」
「…………聖騎士の団長がこんな片田舎にか?」
「その辺りの事情も踏まえて説明する為、ギルドマスターと面会を」
「現在ギルドマスターは不在だ。後日出直して来てくれ」
「………サブマスはいないのか」
「入籍希望者じゃない奴のギルドへの立ち入り許可はギルマスのみが出せるんでな」

門番をじっと見詰める団長。団長を軽く睨む門番。
コージから『みんな過保護』だと聞かされてはいたが、どうやら俺の想像以上にコージは愛されているらしい。
もう1人の門番は嫌悪感を隠そうともしていない。

「………仕方がない…」

団長がため息を吐いた。
あからさまに門番達がホッとした顔付きになったが、安心するにはまだ早い。
うちの団長は手段を選ばないんだ。

「我らは聖騎士団である。ここにコージ・アヤマという冒険者がいる筈だ。彼は先日起きた事件の重要参考人ゆえ、コージ・アヤマとの面会を教会の名の下に命ずる」
「なっ…!?」

職権乱用。それは団長も分かってる。だが、教会がコージを探しているのは事実なので、団長の行動に問題はない。
敵を増やすだけなので、なるべく使いたくはなかった手だが。

「素直に応じるとでも?」
「なんだ、引き渡しの方が良かったか? ちなみに拒否した場合は全員拘束させて貰う」
「……………」

門番が顔を歪め、長考している。
コージが大切なのはこちらも同じ。コージの仲間を傷付けるような事態にはしたくない。

「……コージ・アヤマは今はいない。明日であれば…」

苦し紛れの言い訳。俺はそう思ったが、団長は少し違ったようだった。

「…念の為確認させて貰うぞ」
「あっおい!!!!」

門をくぐりギルドへ向かった団長に、焦ったように門番が叫んだ。
ただ聖騎士団団長という立場だからか、剣を抜く事はせずに引き留めようとしている。
ここら辺で俺も違和感に気が付いた。

…普通、面会だけでここまで焦るものか? 何か、他に秘密でも隠している……?

門番を無視して団長が大きな扉に手を掛ける。
ギギーッと大きな音を立てて扉が開き、突然団長が固まった。

不審に思い、団長の後ろからギルド内を覗いて…俺も固まった。



ギルド内にはエール片手に固まる、ガレ・プリストファーがいた。

団長の宿敵。コージを拐った憎き盗賊頭。
団長とガレ・プリストファーはしばらく驚愕の表情で見詰め合った後、同時に大声で詠唱をし、同時に大魔法を互いにぶつけた。


俺が覚えているのは、大魔法がぶつかり合った時の爆音と眩しい光まで。




次に目を覚ました時、俺が見たのは、コージの泣きそうな顔だった。





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