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死闘続発★ホモら共存編
かたくておっきなアイツ
しおりを挟むズバッ、ドォン
「これで20体か?」
「いでよアイテムボーックス! いちにぃさんし……うん、これで核が20個目だから、目標達成だな!」
「良くやった。んじゃ、帰るか」
「馬車はあっちの街道で待機してるよ」
体に付いた汚れを魔法でちゃっちゃと落とし、ガレとリイサスさんの手を握ってゴツゴツの岩だらけな道を歩く。
この世界の靴って、基本的に革1、2枚とかだから、ピカピカのスニーカーやローファーで守られてきたふにふにの足裏じゃ、獣道や砂利道を満足に歩けないのだ。
「っ避けろ!!」
突然、ガレに突き飛ばされ、リイサスさんに抱えられて俺はその場から離れる事が出来た。
突然の事に目を白黒させていると、直後にドゴォォォォンって破壊音が響き、ふと俺達が立っていた場所を見ると、下の岩が無数の小石に変化していた。
あ、つまり粉々に砕け散ってたって事な?
攻撃された、と認識してすぐに剣を抜くと、少し離れた所で剣を抜いていたガレが『俺に任せて先に行け』って。
いやいや、そんな死亡フラグビンビンで行く訳ねーじゃん?
それにさ、攻撃してきた奴、7メートル近いストーンゴーレムだったんだよね。
「待ってガレ! 俺が倒したい!!」
「あァ!? A級モンスターだぞ! 2人で逃げてろ!」
「魔法は通じるだろ!? ソイツ倒してレベルアップ狙う! それに、ガレを残して行けるかよ!」
「冒険者として考えたら俺はS級なんだよ! 余裕だから安心しな!」
「コージくん、早く逃げよう! 仲間がいる可能性がある!」
「………………………………………ぐすん」
「っっっっ!!? とっ、盗賊頭!! コージくんが泣いてしまった!!!」
「!!!? …………分かった! 分かったから泣くなコージ!! 倒して良いから!!」
あ、また迷惑を掛けてしまった。
まぁでも、甘やかしたいとか言ってたし、このくらいなら大丈夫かな。
え、涙? 勿論、嘘泣きです。どうしてもストーンゴーレムを倒して、レベルアップしたかったんです。
だって、ストーンゴーレムと言ったらA級のモンスター。通常2メートルくらいの普通のゴーレムの3倍~4倍の大きさと固さ、速さだけど、レベル4の俺ならば、大幅レベルアップが狙えるのだ。
そうすれば、現在はレベル60の人相手にしか使えない『媚び』も、レベルアップを必要とする魔法も、自由度が高くなる。
ズッシーンズッシーン
花火のような内臓に響く足音。地面が揺れる程のその衝撃。
でかい。超でかい。
岩石の集合体だから生半可な物理攻撃は通じない。
確か、とあるA級冒険者の昇格試験で、ストーンゴーレムが使われた事があるとかないとか。
RPGで言うならば、魔王城の2~3個前の山岳フィールドのボスとかかな。一見、岩に擬態してて分かんないんだよね。
まぁその分、経験値ウハウハなんですけど!
さて、はりきって倒しましょう!
まずはガレとリイサスさんにも『絶対防御』を張り張り…。
あ、そうだ! 念動属性、試してみたかったんだよな! せっかくだし、コイツで実験だ!
念動属性の神様! ストーンゴーレムを空中に浮かせたまま、動けなくしてくださいっ!
途端に、見えない何かに体を固定されて空中に浮いたストーンゴーレム。
数百Kg…下手したら何tはあるだろうその巨体を浮かせるとは…。念動属性、恐るべし。
で、やっぱりストーンゴーレムも普通のゴーレムと同じく、左胸に核がある。
でも俺の力じゃ剣だけで傷を付けられないから、核熱魔法で表面を軽く溶かして、俺も岩をよじ登って同じ高さまで目線を合わせ…。結界属性の『熱遮断』を手に張り付けて、ずぼっと溶けた穴に突っ込みます!
するとなんという事でしょう! B級冒険者がいくつかのパーティを組んで、やっと倒せるか倒せないかって言う程のストーンゴーレムが、あっという間にただの岩石に!
『レベルが4から17へ上がりました』
『スキル:媚び で対応可能レベルが80まで上がりました』
「うぉぉぉレベルめっちゃ上がった!」
「あーヒヤヒヤした……。おぉ、13も上がったのか。すげェな」
「13も!? ………スゴいなストーンゴーレム…。コージくん、怪我は無いかい?」
「無傷でっす! 倒させてくれてありがとうございます!」
俺のワガママで倒させて貰ったし、お礼は大事だよな!
そう思って頭を下げると、ガレが苦笑して、リイサスさんは急に真面目なお顔になった。
「『倒させてくれてありがとう』って…、妙なセリフだな…」
「…………S級クエストとA級クエストに、『南の海の巉巌に出没するストーンゴーレムの討伐』というクエストがあるんだが……、…………まさか? 移動していたのか?」
……えっ………それ、まずくね?
近くにある南東の森は、大体D~B級冒険者の人がクエストでよく訪れていて、そんな人達がA級のストーンゴーレムに遭遇したりしたら………。
今回はチートを貰った俺がいたから無傷で済んだけど…。
「……ギルドに戻ってルークに報告する必要があるな…。よし、他のストーンゴーレムが出てこないうちに帰ろう。流石に日が暮れる」
「はーいヽ( ・∀・)ノ」
********************
「ストーンゴーレムが南東の森付近に…!? ……それは…まずいな。急いでクエスト情報を訂正し、C級以下の冒険者の立ち入りを禁じよう」
「シーガルに伝えてくるよ。ルークはコージくんが倒したストーンゴーレムの核を見てやってくれ。コージくんの魔法で取り出しただけあって、非常に綺麗な状態だ」
リイサスさんがバチコーンってウインクして、ギルドマスターの執務室を出て行った。
これで執務室にはルークさんと2人きり。
ガレは広場で部下の人達を集めている。なんでも、ストーンゴーレムの核は高値で売れるらしく、強い部下さん達を集めて討伐に向かわせるそうだ。
盗賊なのに、案外まともな稼ぎ方もするんだなー。
俺はルークさんに促されて、アイテムボックスからストーンゴーレムの核を取り出して手渡した。
銀色に輝く丸いそれをルークさんは食い入るように見詰めて、やがて『ふぅ…』と息を吐き出し…。
「…素晴らしい。傷1つ無い。流石はコージくんだ。ギルドで買い取らせて貰っても?」
「勿論です!」
「感謝する。金貨1000枚でどうかね?」
「はい! 金貨せんま…1000枚!!?」
つまり一千万円………?
いや…、……はぁ……………?
はぁ……??
「あぁ、A級クエストに『ストーンゴーレム1体の討伐』というクエストがあってだね、それの成功報酬も含めているが…。ストーンゴーレムの核は魔石と同様、魔道具の動力として利用価値が高い。……アレキサンドライトの魔石と同等ぐらいか」
「ま、マジかよ……」
魔石。
天然物と人工物の2種類あって、どちらも宝石に魔力が込められたものを指す。
天然物は鉱山に魔力溜まりが出来て、長い年月をかけ、そこにあった宝石に魔力が染み込んだもの。
人工物は採掘された宝石に魔力を送り込んだもの。
宝石の硬度が高ければ高いほど、魔力容量は大きくなる。
例えば、魔道具Aを動かす為にエメラルドの魔石を使った時と、アレキサンドライトの魔石を使った時では、アレキサンドライトの魔石を使った時の方が魔道具Aは長持ちする。
…つまり、魔石は電池みたいなモンだ。
んで、アレキサンドライトの魔石は魔力容量が滅茶苦茶ある。
一般人の魔力で換算すると、大体3万人分くらいの魔力をアレキサンドライトに入れる事が出来るのだ。
加えて魔石っていうのはどれもこれもすっごく綺麗だから、観賞用としても取引される。
宝石自体はそこまで高価でなくても、そこに魔力を入れられないのだ。容量が大きすぎて。
だから魔石はすっっっっっごく高価だ。市民が一生を捧げても手が届かないレベル。
「………で、でも、せんまいって……」
「本来は700枚前後なのだが……、ここまで状態が良いものだと非常に珍しい。ストーンゴーレムの討伐は、核の状態など構っていられない程に大変で、傷が付いたものが多いのだ。それに、コージくんがセキ殿を連れて来てくれたおかげで、今このギルドの懐は潤っている。少々色を付けさせて貰ったよ」
「い、いや………いや…………」
そんな、俺15歳の身で一千万円とか持てねーよ…。いやさ、お金は欲しかったけど……。あんまり大きすぎると破滅しそうって言うかさ……。宝くじに当選した人、後々ヤバいって言うじゃん……?
「可能であれば君を経済的に私やリイサスに依存させておきたかったのだが……、このような物を持って来られては仕方がない…。コージくん、頼みがある。金をどう使おうが君の勝手である事は重々承知している。だが……、どうか、あの家から出て行かないでくれないだろうか………。君がガレ・プリストファーの元に泊まった、たった2日の間でさえ、君の顔が見られないのは耐え難い苦痛であった…。……愛してるのだ…。どうか…、どうか……」
「……………………………………」
新居を考えてたの、バレたか。
………でも、そんな風に言われちゃったらなぁ…。……出て行きづらいなぁ…。……………。………………待て………。
「…まずは、リイサスさんに相談ですかね……。…許可を貰えれば、これからは食費なんかをちゃんと渡して、住まわせて貰う形になると思います」
「…………!!!! 良いのかね!!?」
「いや…よく考えたら、俺って自炊とかまともに出来ないんですよね……」
家事スキル皆無の男子高校生に独り暮らしとか、無茶だよな。普通に考えて。
リイサスさんには即答で許可を貰えた挙げ句、食費なんていらないとお金を受け取って貰えなかったんだけど、これって今までとどう違うんだろうか。
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