異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件

メル

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死闘続発★ホモら共存編

ガレと一緒に魔法の練習!

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「んぬぅーーーーーっ…! ……んん? 知らない天井だ……。あ、ガレおはよ」

「おう、おはよう。これから見慣れた天井にしていこうな」

「うーん連れ込む気満々発言…」

ちゅ

「んむ」

「朝飯にしようぜ。その後で読みたがってた本、読ませてやる。一緒に練習しような」

本!!
昨日の甘々セッセですっかり忘れられていた、とある国の本!!
なんでも、この世界に存在する全ての魔法が載ってあるらしいんだけど…、正直ワクワクが止まらない。
夢の異世界チートの第一歩だ!
なんかさ、ほら、火柱とかが立つような派手な魔法使ってみたいよな!!
あとっあとっ、氷でお城とか造れたらカッコいいよな!! 歌いだしちゃうよなっ!!
ありのぉ~ままのぉ~姿見せ~るのよぉ~!

そうと決まればちゃっちゃと食べよう! でもその前にお顔を洗っておめめパッチリだ!

「ほ~らタオルだぞ~~」

ぼふっ

水も滴るコージくん。ガレが差し出してくれたタオルを受け取ろうとするも、それより早く、ガレが俺の顔面にタオルを押し付けた。

「ふがが」

「うぉ、肌ぷるんぷるんだな。ゆでたまごか?」

「それリイサスさんにも言われた…。ゆでたまごって表現、どうかと思うな…」

ゆでたまごって、幼女とかに使うならまだしも、15歳男である俺にはちょっとなぁ………。褒められるのは嬉しいんだけど、その後ほぼ100%、ほっぺをもちもちされちゃうからなぁ。

もちもち

「やわらけェ~」


ほら、な?





********************




「ふは、トマトソース付いてんぞ」

そう言われ、朝飯を持っている手とは反対の手で拭おうとするも、一足早くガレがペロッと舐め取ってしまった。
色気ムンムンに軽く自身の唇を舐めているくせに、小動物を見るような穏やかな目で微笑まれ、ぷくぅと頬を膨らませるも、すぐに朝食にかぶり付く。

「良い食べっぷり。腹減ってたか?」

「んーん! 朝から本場のピザ食べれて嬉しいだけ!」

「それでテンション高いのか? 可愛いな…。ま、ピザの本場は、トラジアっつぅー隣国なんだがな」

「へぇ。でも俺にとっちゃ、ヨーロッパっぽい国々のピザってだけでもう本場の味なんだよ!」

「……よーろっぱ…?」

首を傾げるガレをスルーして、ピザにがぶりんちょ!
熱々とろとろチーズ、固まっちゃったらヤだからな。いやーほんと、ワーナーさんのできたてピザ美味い!! 速達で届けてくれたチーターの獣人さんにも感謝だな~。うまうま。

「ごちそーさま! はぁ~朝から美味いもんで腹一杯とか幸せ~」

「そりゃ良かった。口内洗浄すっぞー」

「あーい」








さてさてっ! お待ちかねの魔法図鑑! ガレと一緒にオープンでございまーすっ!
期待に胸を膨らませ、古びたアンティーク調の分厚い表紙を両手で捲る。
目次には大きく3つ。一般編と、伝説編と、禁忌編で別れていて、そこから更に属性に分類されている。
試しに数ページ捲ってみると、一般的な火炎属性の魔法が載っていた。

「『ファイアーボール』…『ファイアフィスト』…『紅蓮大華』…英語か日本語か統一しろよ……」

「えいご? にほんご?」

「あ、いや…」

言語はこっちの世界に来た時から、俺に分かるように自動で翻訳されてるんだけど、所々おかしいと思うところはある。
ゼロアによると、日本語の表現の多さに俺の脳が馴れていて、こっちの世界の表現を俺が理解イメージしやすいように翻訳しているとか。
確かに、『紅蓮大華』を日本語英語にすると『ライトレッドラージフラワー』になるし、『ライトレッドラージフラワー』より『紅蓮大華』の方がイメージしやすいな。

「一般編は普通の奴が使う魔法。伝説編は、存在するが誰も使えない魔法。『蘇生魔法』や『人心掌握』が当てはまる。禁忌編は誰も使えないし、使っちゃいけない魔法。『炎製錬魔法』や『生命創造魔法』だな」

「え、生命創れるの? てか人の心読めるの?」

夢が…! 夢が広がるよぅ…!

「試しに何かしてみるか。部下達を呼んでくるから、試したい魔法選んでろよ」

はーい…って、え? 狐さん達を使って実験…!?

引き留めようと思った時にはガレは既に扉から出ていて、俺は仕方なく安全そうな魔法を選ぶことにした。

えーっと、とりあえず『人心掌握』はプライバシーうんぬんかんぬんでダメだよな…。
チーターの獣人さんには祈願魔法で『マタタビ』を出してふにゃふにゃさせたい!
……お! 伝説編の慰安魔法には『傷心愛撫』なんてものまで…。
自然魔法の『万有引力』って…ふむふむ、【2つ以上の対象物(人)を強制的に引き合わせる。引力の大きさは物体の質量に依存】かぁ。
……禁忌編の暗黒属性にある、この『依存』って……。………も、文字通り何かに依存させちゃうのか…。怖いな…。
神聖属性のこれは…。上級魔法だけど、ギリギリ一般編だな。へぇ、『愛ノ形』か…。…【対象者Aが対象者Bに抱いている愛を具現化する】、ねぇ…。……………。

「選んだか?」

降ってきたバリトンにパッと顔を上げると、ガレが上から本を覗き込んでいた。
その後ろには、狐さんとミゲルさんを含めた5人のガレの部下さん達が立っていて、不思議そうに顔を見合わせている。
…………って、説明してないんかいっ!

「お前らは今からコージの魔法の実験動物になってもらう。ここで見た事、起きた事は他言無用だ。いいな?」

「「はい!」」

実験動物ってハッキリ言ったのに、元気良く即答だとぅ!? 忠誠心やべぇ…。

「あー…じゃあえっと、ミゲルさんと狐さんで自然属性の『万有引力』を…」

人同士の万有引力がどれほどのものかちょっと気になるし、まぁ人ぐらいの大きさなら危険もないだろ。
危険な実験はガレにしかしないって決めてるからな! 物理にも魔法にも強くて、博識で、いざという時にどうにかしてくれそうだしさ!

「最上級魔法ですね! いつでもどうぞ!」

狐さんとミゲルさんが数メートル離れて、俺に準備OKと声を掛ける。それを受けた俺は2人の間に障害物が無い事を確認して、2人に向かって『万有引力』と念じた。
途端に傾く2人の体。
俺とガレと部下3人が見守る中、バランスを崩しかけたような体勢で2人は『おっとっと…』と近付き、ついに0距離になった。

「うし、成功だな」

ぎゅっと抱き締め合うような形でぴとっとくっついた2人。
狐さんが『うっ!? 尻尾の付け根触んな!』って赤面してミゲルさんの押し退けようとするが、魔法が発動しているため2人は離れられず。
ミゲルさんが嬉しそうな顔でお耳と尻尾をもふもふしているので、しばらくは魔法かけたままで良いだろう。狐さんはいやいや言ってるが。

「次は、チーターの獣人さん」

「俺ですか! ど、どうぞ!」

長めの尻尾がゆーらゆらしているチーターの獣人さん。俺が祈願魔法でマタタビを出すと、凛々しいお顔が一変した。

「こ、コージさ…! それはいけません!! 猫科はそれに弱いんです!! ……わぁ、すっごい楽しそうなお顔!! や、やだ…! 来ないでぇ…! らめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

















「えーっと、お次は…『傷心愛撫』試したいんだけど、傷心の人っている?」

「ふにゃぁ~~~~~~♪」

「…ラーク、お前一昨日恋人にこっぴどくフラれてたよな?」

「……えぇ…、えぇ。フラれました…。……うっ、うぅ…」

「うにゃ~~~~~♪」

「あ…、その、ごめんなさい…。魔法、試しても良いですか…?」

「ぐすっ、どうぞぉ…」

「にゃあ♪ にゃんにゃん♪」

俺の足元にすり寄ってくるでっかいにゃんこをナデナデして、涙ぼろぼろなイケメンさんの頭も背伸びしてナデナデ。
きょとん顔の部下…ラークさんに、慰安魔法の『傷心愛撫』をかけた。
しばらく固まっていたラークさんだったが、すぐに穏やかな顔付きになり、俺に『ありがとうございます』と礼を告げてくれた。

「効きました…?」

「えぇ! 傷付いた心がコージさんの愛で包まれて癒されて…、本当にありがとうございます!」

「い、いえ…」

愛ではない…と思う。
いや、ガレの部下さん達には助けられる事も多々あったから、普通に好きだけど、愛……。愛…………?

「次は? 何試すんだ?」

「あ、うん。この『愛ノ形』を試したいんだけど……、ガレに、使っちゃだめ?」

「……………………」

本を凝視したまま黙ってしまったガレ。恐る恐る声をかけると、無言で俺を見て、その次に引っ付いたままの狐さん達を見た。そして一言…。

「外でやるぞ。ここじゃ、俺の【愛】で全員圧死する」

「え…!? そこまで!?」

「お前、俺の愛の重さを舐めるなよ?」

不敵な笑みでガレがドアをギィ…と開け、俺達は庭に移動した。面白いから『万有引力』は解かずに、狐さんはミゲルさんに抱っこされて移動。ミゲルさんが幸せそうで何よりです。

「ま、こんだけ広けりゃ充分か。ほら、良いぜ。『絶対防御』を全員に張ったらな」

「あいあい!」

柔らかな日差しの中、俺はそこにいた7人全員に『絶対防御』をかけて、ガレに対して『愛ノ形』をかけた。
愛を具現化すると言ってもどんな形で、どんな色で、どんな大きさで、どんな重さで、どこから出てくるのか分からないから、用心に用心を重ねてな?
空から10キロのハート型のものなんかが降ってきたら、尖った部分頭に刺さっちゃうから。痛いどころじゃないから。お陀仏だから。な?


んでんで、魔法をかけて数秒後。
地面に直径3メートルぐらいの大穴がいくつも出来始めた。
全員戸惑って大穴から逃げようとするけど、庭を越えて近くの森林の地面にまで穴は増え続けて、逃げ場などない。

あ、でも大穴と言っても、ポッカリとかじゃなくて、足を着けたらびちゃってなる浅い沼地?みたいなものだから、誰かが落ちたとかそういう訳じゃないんだけど。強いて言うなら靴が汚れたぐらいで。
穴の色は紫。ぱっと見、50個は越えた。一面が深紫の穴、穴、穴。
これがホラー映画なら絶対ゾンビとかが湧き出てくるな。

狐さんはビックリしたらしく、狐姿に戻ってミゲルさんの頭の上に飛び乗った。
チーターの獣人さんは毛を逆立てて屋根の上に退避済み。
その他の皆さんは穴と穴の数十センチの隙間にギリギリ立っている。恐いのかな。顔が青い。
俺? 俺は魔法をかけた張本人だから、俺の立ってる地面は無事だぜ!


「…湧き出てくるタイプだったか」

「このでかい穴、全部からガレの【愛】が出てくるの? ガレ、ちょっと俺のこと好き過ぎじゃね?」

「知らなかったか? 俺はコージが大好きだぞ」


………くそう、不覚にも照れた。



ぼこ…ぼこぼこっ…ごぽ……

50個を越える穴が一斉にぼこぼこ沸騰してびっくらぽん!
さらにそこから様々な色をした物体が出てきて更にびっくらぽん!

…えっと、多分これが…【愛】、かな?

「随分とイビツな物が多いな」

「俺、てっきりハート型かと思ってた」

「俺もだ。お、見てみろよコージ。これちょっとハートっぽいぞ」

ガレが指差したのは、ガレと同じぐらいの背丈のある赤黒い【愛】。
ガレの【愛】はほとんどが2メートル以上あって、横幅は1メートルから3メートル程度。カラフルだけど、ほぼほぼ黒っぽい。触った感じ、『岩石かな?』ってぐらい固かったけど、別の【愛】はスライムみたいにもにもにしていた。そんなのが50個以上。

部屋でやってたら、間違いなく潰されていたな…。

「これ全部、俺に対する【愛】? 限度って知ってる?」

「コージへの愛に限度はねェぞ? それに、普通はこんなもんじゃねーのか?」

「いやいや普通じゃないわ……。だって、ほら…。俺がガレに抱いてる【愛】ってこんなもんだぞ?」


そう言って、俺は自分の足元から湧き出た薄桃色の【愛】を抱き上げた。
5歳児ぐらいの大きさで、ぷるんっと瑞々しい。それ1つだけだし、ガレの【愛】とは大違いだ。


「…………………………」

ごぽごぽごぽ

ガレが俺からの【愛】を視認してすぐ。直径3メートルぐらいの穴が10個程増えて、ガレの俺に対する【愛】が出てきた。

「………………なんで増えてんだよ…」

「…コージをより愛するようになったから、だろうな…」

「………………」



この時、俺は知らなかった。
【愛】の色にはそれぞれ意味があり、桃色は『恋情』という意味だと言う事を。
ガレがそれを知っていたという事を。
そして、ガレの【愛】が更に湧き出た後、俺のガレへ対する【愛】の色味がほんのり強まった事を。




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