91 / 160
死闘続発★ホモら共存編
らぶらぶあまあま~ガレの壮絶過去編~
しおりを挟む「また負けたぁーーーッ!」
青色のカーペットが敷かれた床にorzするのは、毎度お馴染みコージくん。
そんな俺を見てクックックッと笑うのは、長い足を組んで椅子に座るガレ。
テーブルの上には、正確にマスの描かれた石板と、その上に散らばる黒と白の楕円形の石。
俺達は、豪邸の物置から出てきたオセロをしていた。
「なんで!? 四隅を取れば勝てるんじゃねーの!? なんでボロ負けしてんの俺!?」
「最初に四隅を取っちまったら、後は内側から食い破られるだけだろ?」
「ふちゃーーーーッ!!!」
奇声をあげ、ソファにダイブして手足をバタバタさせた俺の上に、ガレが覆い被さってきた。
不貞腐れていた俺は抵抗する気も起きなくて、数分の間、俺達は重なってごろごろだらだら。
そしてテーブルの上の石達を見て、俺はふと疑問に思った。
「……オセロってさ、いつからあんの?」
「いつから? ……さぁ…そう言えば知らねーな…」
「俺の世界にもあったんだ。スマホアプリにもなっててさ」
「すまほあぷり…?」
「あー…、1人1個持ってる機械? それをスマホって言って、その中の色んな機能をアプリって言うんだ」
「へぇ…コージがいた世界って、色々発展してんだな」
「まぁ、魔法が無いしな。その分、科学とか医療が発展してんだよ」
「…………羨ましい、と思ったが、まぁ分かんねェよな。コージはどう思うよ? どっちの世界が好きだ?」
「んーーーーー……。平和や娯楽を楽しむ人生を送りたいなら、前の世界かな。刺激やロマンを楽しみたいならこっち。でも危険だしな……………って、あ!」
「あん?」
夕食前の、黄昏時。
窓から差し込む夕陽が顔を照らす中、俺は俺の上にのし掛かったままのガレの顔を、両手で挟み込んでむにぃってした。
「せっかく2人きりなんだ…。聞きたかった事、全部聞かせてもらうぞ!」
「…お、おう」
俺の両手に挟まれて、ちょっとマヌケ面になったガレが、おめめをぱちくりして、頷いた。
前々から気になっていた、ガレの不思議な行動。何か理由があったんだろうから、今から聞こうと思う。
「その①! 俺とガレが出会った日さ、ガレ、ミゲルさんと狐さんを1回殺したじゃん…?」
「あぁ、殺したな」
「その理由ってさ…、ミゲルさんが裏切り者だったから?」
「…あー……、まぁ、そうだな。それがメインだ。コージの部屋作りに失敗してムカついたのもあったが」
「…なんで狐さんまで殺したんだよ」
俺がゼロアと面識があって、ゼロアが蘇生させてくれなきゃ、あの2人…、本当に死んでた。
だから、確かめなきゃいけない。狐さんもミゲルさんも、お友達として好きだから。
……ガレの前じゃ絶対に言わないけど。
「俺はアイツらがデキてると思ってたんだよ」
「………え、恋人って?」
「おう。だってアイツら超仲良いだろ。まぁ実際はただのダチだったんだが…」
「……えっと、ミゲルさんの恋人の狐さんも、裏切り者の可能性があったから殺した?」
「…いや? コナーは完全にこっち側だって分かってたぜ?」
じゃあ、なんで…、と言おうとして、俺はガレにキスされた。少しの間、ちゅっちゅして、顔を上げたガレは、普通な感じで言った。言いやがった。
「死んで独りは寂しいだろ」
完全にサイコパスの考え方で、ちょっと引いた。
********************
「はいじゃあ質問その②! 俺を『性奴隷』呼ばわりした挙げ句、聖騎士にあっさりと引き渡したこと!!」
「それはマジですまんかった」
項垂れた俺に驚いた様子のコージ。
俺の背中に両手を回したまま、控えめに『な、なんでだったの?』と聞いてくる。可愛い。
「『世界でも名の知れた極悪人が、意地でも手元に起きたがる少年』…。聖騎士にそんな認識を与えちゃいけねェ。コージがどう利用されるか、分かったもんじゃねーからな」
本心だった。
俺はコージを愛しているが、この愛は俺の敵にとって、物凄く都合の良いものだから。
コージを『弱者』と決め付けて、人質にしようと企む者が必ず出てくる。
だから、聖騎士団なんかに知られるのは一番マズかった。
「……えっと、つまり、ガレは俺を守ってくれたのか…?」
「俺が好きでやった事だ」
コージに礼を言わせたい訳じゃない。
恩着せがましく接するつもりもない。
『○○してやったのに、なんだその態度は!』と怒鳴るような奴にはなりなたくないだけで、頼まれてもいないのだから、俺が勝手にやった事だ。
コージは、俺に憤る資格がある。
が、優しいコージは困り眉になって、俺に謝罪と感謝を伝えてきた。
「そうならそうと…! もうっ…う、うぅ~~…。怒ってた俺が恩知らずみたいだろ…。あ、俺、結構根に持ってた。ごめんガレ…。んで、ありがと…」
怒るのはコージの筈なのに、『怒ってない?』とでも言いたげな表情で、コージは心配そうに俺を見上げている。可愛い。
俺の機嫌を窺うような、オロオロとした顔がもっと見たくて、でも早く安心させてやりたくて。
底抜けに優しいコージを、俺はいつも利用してつけ込むんだ。
俺も、相当狡い奴だと改めて感じながら、コージの中で『ガレ・プリストファー』を揺るぎないものにする為、言葉を紡いでいく。
「キスしてくれ」
こう言えば、優しくて可愛くてアホなコージは、頬を赤く染めながら俺に唇を重ねてくれる。
溢れそうになる狂喜を抑え込み、俺はコージの口に舌をねじ込んだ。
********************
「続きは今夜な?」
そう言ってガレは、キスだけでとろっとろになっちまった俺に妖艶に笑いかけ、俺の上から起き上がり普通にソファへと腰掛けた。
俺も息を整えてから、その隣に座る。
まだ、質問が残ってるから。
「あんまり激しくしないでくれよ…。はい気を取り直して最後の質問。ガレってさ、なんかロイに甘くねぇ?」
ロイにほっぺちゅーしてもガレは何も言わなかったし、この前は拠点に泊めたらしいし。
「生い立ちが似てねェ事もねェからな」
「おいたち」
「言ってなかったか? 俺、貴族の家に生まれたんだよ」
「えっ」
言われてみれば確かに、上品な顔立ちしてる気がする。
…いや上品な顔立ちってなんだ。
「ほら俺、暗黒属性だろ? 5歳の時に発覚して…。俺の存在を隠したかったアイツらは俺を地下牢にぶち込んで、ギリギリ死なない程度にクソ不味い飯を寄越してよ。んで、大体12、3歳くらいの時に、見張りの私兵を殺して脱出したんだよ。そっからどーにか生き抜いて、『死神の吐息』を作ったんだ」
「………………」
「プリストファーは家名だ。家への復讐として名乗って悪さしまくってたら、家の奴ら全員、俺を生んだ罪で教会から死刑にされたよ。プリストファーは俺以外、もういない。俺が家名を乗っ取ってやったんだ」
愉快そうに笑うガレ。
その一方で、俺は絶句していた。
ガレの受けた仕打ちに対して、哀しみと怒りが混ざり合って、何を言えば良いのか分からない。
「ロイの奴も、『英雄一家に生まれた唯一の凡人』ってバカにされてたんだとよ。アイツの場合は、家族がちゃんと家族してくれたらしいが。………悪い。気持ちの良い話じゃなかったな」
俺の顔を見たガレが謝ったが、俺は首を横に振った。だって、聞いたのは俺だし。
けど、それを言葉にする事は出来なくて、声を出しても嗚咽しか出ない気がして、黙り込む。
「……コージ?」
今ガレが話したのは、ガレの人生の大まかな粗筋で、きっと他にも酷い目に合ってきたんだろう。
そう思うと悲しくて悲しくて、胸が凄く痛い。
目の前のガレが、急に愛しく感じられた。
「…………お疲れ」
なんとか口に出した言葉は、そんな変な言葉。
もっと気が利いた事言えないのか俺は!
バカにしてるって捉えられたらどうしよう、なんて考えてガレを見ると、ガレは心底嬉しそうに笑って言った。
「俺は、コージと出会う為に耐えてきたんだろうな」
『今やっと、報われたよ』。
そう言われて、心臓が高鳴った。
192
お気に入りに追加
10,461
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる