異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件

メル

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死闘続発★ホモら共存編

らぶらぶあまあま~ガレの壮絶過去編~

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「また負けたぁーーーッ!」

青色のカーペットが敷かれた床にorzするのは、毎度お馴染みコージくん。
そんな俺を見てクックックッと笑うのは、長い足を組んで椅子に座るガレ。
テーブルの上には、正確にマスの描かれた石板と、その上に散らばる黒と白の楕円形の石。


俺達は、豪邸の物置から出てきたオセロをしていた。


「なんで!? 四隅を取れば勝てるんじゃねーの!? なんでボロ負けしてんの俺!?」

「最初に四隅を取っちまったら、後は内側から食い破られるだけだろ?」

「ふちゃーーーーッ!!!」

奇声をあげ、ソファにダイブして手足をバタバタさせた俺の上に、ガレが覆い被さってきた。
不貞腐れていた俺は抵抗する気も起きなくて、数分の間、俺達は重なってごろごろだらだら。
そしてテーブルの上の石達を見て、俺はふと疑問に思った。

「……オセロってさ、いつからあんの?」

「いつから? ……さぁ…そう言えば知らねーな…」

「俺の世界にもあったんだ。スマホアプリにもなっててさ」

「すまほあぷり…?」

「あー…、1人1個持ってる機械? それをスマホって言って、その中の色んな機能をアプリって言うんだ」

「へぇ…コージがいた世界って、色々発展してんだな」

「まぁ、魔法が無いしな。その分、科学とか医療が発展してんだよ」

「…………羨ましい、と思ったが、まぁ分かんねェよな。コージはどう思うよ? どっちの世界が好きだ?」

「んーーーーー……。平和や娯楽を楽しむ人生を送りたいなら、前の世界かな。刺激やロマンを楽しみたいならこっち。でも危険だしな……………って、あ!」

「あん?」

夕食前の、黄昏時。
窓から差し込む夕陽が顔を照らす中、俺は俺の上にのし掛かったままのガレの顔を、両手で挟み込んでむにぃってした。

「せっかく2人きりなんだ…。聞きたかった事、全部聞かせてもらうぞ!」

「…お、おう」

俺の両手に挟まれて、ちょっとマヌケ面になったガレが、おめめをぱちくりして、頷いた。
前々から気になっていた、ガレの不思議な行動。何か理由があったんだろうから、今から聞こうと思う。

「その①! 俺とガレが出会った日さ、ガレ、ミゲルさんと狐さんを1回殺したじゃん…?」

「あぁ、殺したな」

「その理由ってさ…、ミゲルさんが裏切り者だったから?」

「…あー……、まぁ、そうだな。それがメインだ。コージの部屋作りに失敗してムカついたのもあったが」

「…なんで狐さんまで殺したんだよ」

俺がゼロアと面識があって、ゼロアが蘇生させてくれなきゃ、あの2人…、本当に死んでた。
だから、確かめなきゃいけない。狐さんもミゲルさんも、お友達として好きだから。
……ガレの前じゃ絶対に言わないけど。

「俺はアイツらがデキてると思ってたんだよ」

「………え、恋人って?」

「おう。だってアイツら超仲良いだろ。まぁ実際はただのダチだったんだが…」

「……えっと、ミゲルさんの恋人の狐さんも、裏切り者の可能性があったから殺した?」

「…いや? コナーは完全にこっち側だって分かってたぜ?」

じゃあ、なんで…、と言おうとして、俺はガレにキスされた。少しの間、ちゅっちゅして、顔を上げたガレは、普通な感じで言った。言いやがった。

「死んで独りは寂しいだろ」


完全にサイコパスの考え方で、ちょっと引いた。




********************





「はいじゃあ質問その②! 俺を『性奴隷』呼ばわりした挙げ句、聖騎士にあっさりと引き渡したこと!!」

「それはマジですまんかった」


項垂れた俺に驚いた様子のコージ。
俺の背中に両手を回したまま、控えめに『な、なんでだったの?』と聞いてくる。可愛い。

「『世界でも名の知れた極悪人が、意地でも手元に起きたがる少年』…。聖騎士にそんな認識を与えちゃいけねェ。コージがどう利用されるか、分かったもんじゃねーからな」

本心だった。
俺はコージを愛しているが、この愛は俺の敵にとって、物凄く都合の良いものだから。
コージを『弱者』と決め付けて、人質にしようと企む者が必ず出てくる。
だから、聖騎士団なんかに知られるのは一番マズかった。

「……えっと、つまり、ガレは俺を守ってくれたのか…?」

「俺が好きでやった事だ」

コージに礼を言わせたい訳じゃない。
恩着せがましく接するつもりもない。
『○○してやったのに、なんだその態度は!』と怒鳴るような奴にはなりなたくないだけで、頼まれてもいないのだから、俺が勝手にやった事だ。
コージは、俺に憤る資格がある。
が、優しいコージは困り眉になって、俺に謝罪と感謝を伝えてきた。

「そうならそうと…! もうっ…う、うぅ~~…。怒ってた俺が恩知らずみたいだろ…。あ、俺、結構根に持ってた。ごめんガレ…。んで、ありがと…」

怒るのはコージの筈なのに、『怒ってない?』とでも言いたげな表情で、コージは心配そうに俺を見上げている。可愛い。
俺の機嫌を窺うような、オロオロとした顔がもっと見たくて、でも早く安心させてやりたくて。
底抜けに優しいコージを、俺はいつも利用してつけ込むんだ。
俺も、相当狡い奴だと改めて感じながら、コージの中で『ガレ・プリストファー』を揺るぎないものにする為、言葉を紡いでいく。

「キスしてくれ」


こう言えば、優しくて可愛くてアホなコージは、頬を赤く染めながら俺に唇を重ねてくれる。



溢れそうになる狂喜を抑え込み、俺はコージの口に舌をねじ込んだ。





********************



「続きは今夜な?」

そう言ってガレは、キスだけでとろっとろになっちまった俺に妖艶に笑いかけ、俺の上から起き上がり普通にソファへと腰掛けた。
俺も息を整えてから、その隣に座る。

まだ、質問が残ってるから。


「あんまり激しくしないでくれよ…。はい気を取り直して最後の質問。ガレってさ、なんかロイに甘くねぇ?」

ロイにほっぺちゅーしてもガレは何も言わなかったし、この前は拠点に泊めたらしいし。

「生い立ちが似てねェ事もねェからな」

「おいたち」

「言ってなかったか? 俺、貴族の家に生まれたんだよ」

「えっ」

言われてみれば確かに、上品な顔立ちしてる気がする。
…いや上品な顔立ちってなんだ。

「ほら俺、暗黒属性だろ? 5歳の時に発覚して…。俺の存在を隠したかったアイツらは俺を地下牢にぶち込んで、ギリギリ死なない程度にクソ不味い飯を寄越してよ。んで、大体12、3歳くらいの時に、見張りの私兵を殺して脱出したんだよ。そっからどーにか生き抜いて、『死神の吐息』を作ったんだ」

「………………」

「プリストファーは家名だ。家への復讐として名乗って悪さしまくってたら、家の奴ら全員、俺を生んだ罪で教会から死刑にされたよ。プリストファーは俺以外、もういない。俺が家名を乗っ取ってやったんだ」

愉快そうに笑うガレ。
その一方で、俺は絶句していた。
ガレの受けた仕打ちに対して、哀しみと怒りが混ざり合って、何を言えば良いのか分からない。

「ロイの奴も、『英雄一家に生まれた唯一の凡人』ってバカにされてたんだとよ。アイツの場合は、家族がちゃんと家族してくれたらしいが。………悪い。気持ちの良い話じゃなかったな」

俺の顔を見たガレが謝ったが、俺は首を横に振った。だって、聞いたのは俺だし。
けど、それを言葉にする事は出来なくて、声を出しても嗚咽しか出ない気がして、黙り込む。

「……コージ?」

今ガレが話したのは、ガレの人生の大まかな粗筋で、きっと他にも酷い目に合ってきたんだろう。
そう思うと悲しくて悲しくて、胸が凄く痛い。

目の前のガレが、急に愛しく感じられた。


「…………お疲れ」


なんとか口に出した言葉は、そんな変な言葉。
もっと気が利いた事言えないのか俺は!

バカにしてるって捉えられたらどうしよう、なんて考えてガレを見ると、ガレは心底嬉しそうに笑って言った。


「俺は、コージと出会う為に耐えてきたんだろうな」




『今やっと、報われたよ』。





そう言われて、心臓が高鳴った。





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