上 下
87 / 160
死闘続発★ホモら共存編

酔っ払いの爆弾発言により被害者多数

しおりを挟む
 
 
「コージ、本当に俺の家、来ないのか? どんなものも揃えてやれるぞ?」

「ご、ごめんお兄ちゃん…。俺、こっちで魔法とか剣の練習もしたいんだ。ここなら適任がいっぱいいるだろ?」

「むぅ…」

ジルが名残惜しそうに俺の顔をペタペタと触って、なでなで。すっかり気を許しちゃったみたいだけど、ジルって結構強いんだろ? 王直属って言ってたし、ちょっとチョロ過ぎない? お兄ちゃんって呼ばれただけなのに、大丈夫?

「剣術なら俺だな。どこの流派にも属してねェ、実戦向きの型だから、冒険者や盗賊に向いてるぜ?」

ガレが腰の剣をぱしんっと叩き、『任せろ』とばかりに微笑んだ。
金の装飾が施された黒い剣は、ガレの雰囲気に恐ろしいほど似合っていて…、悔しいけど一瞬、見惚れてしまった。

「魔法なら俺とロイだね。基本的な法則なんかは全部教えられると思う。各属性については、その都度ベテランをギルドから紹介するよ」

リイサスさんもにっこりと微笑んで、俺の肩に手を置く。
周りを見ると、色んな冒険者さんがにっこり頷いていて、恵まれてるって実感出来る。

「……あれ? でも、俺の属性の事、あんまり知られちゃいけないんじゃ…」

色んな人に色んな属性を教わってたら、俺が全属性使えるってバレちゃうじゃん? 悪用されるかもだから、あんまり知られない方が良いんだろ?
俺の疑問にリイサスさんは笑って、周囲を見渡した。

「今さらそんな事で騒ぐような奴らじゃないよ。君の規格外さは、全員理解してるからね。それに、どうせ上京したら王にバレるんだし、周囲の理解は集めておいた方が良い」

そ、そういうもんか…。
近くにいて、聞こえていた筈のルークさんとガレが何も言わないところ、2人ともリイサスさんの意見に文句は無いのだろう。
いつか、俺が『神の愛し子』だって事すらバレそうな気がする。

「何はともあれ…、貴殿はさっさと帰りたまえ。王に報告するのだろう」

ジルに向き直ったルークさんが、半ば睨み付けるように言い放った。
無理矢理連れて来た癖にさっさと帰れとは…。中々鬼畜だなぁルークさん。ジルも『えぇ…』って顔してるし。

「…もう少しコージと」

「帰りたまえ」





********************




ルークさんの圧に、ジルが渋々と帰って数時間。
ギルドでは、盛大な宴が行われていた。

「今夜はギルマスの奢りだ! 全員、好きなだけ飲め!!」

「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

冷えたエールを片手にジャックさんが叫んで、数百人の冒険者さん達が雄叫びをあげる。そして、それぞれが一気にエールやジュースをグビグビ…。

「っかぁ~っ!! 冷えたエールなんて、何年ぶりだ!? うめぇ~~~!!」

白い口ひげを付けて上機嫌にそう言ったジャックさんに、リイサスさんもルークさんもロイも嬉しそうに『うんうん』と頷く。

お察しの通り、ここは文明が中世ヨーロッパレベルの異世界なので、冷蔵庫は勿論、電機なんてものはほとんどない。
昔は胡椒を保存料に使ってたらしいから、胡椒の値段もバカ高くて、飢饉も結構あったそうだが…。地球から来た誰かが『冷やして保存する』という概念を教えたのか、今は氷結魔法師を高賃金で雇っている飲食店も普通にあるらしい。
オーディアンギルドは、保存しなきゃいけない食材によって、氷結属性の冒険者さんを動員させていたみたいだけど…、今回は魔力無限な俺が、食材や飲み物が凍らないギリギリの冷風を、ロイと談笑する間、ずっと吹き付けていた。
つまり、エールもジュースも水も、全部キンキンに冷えている。

「こんなに冷えたエールは初めてだな…。うち死神の吐息じゃ、こんなに冷えきる前に、氷結属性の奴が魔力不足でぶっ倒れてたしな」

ガレも水滴の滴るジョッキを傾けて満足そうに微笑んでるし、狐さんは人型に戻って、ミゲルさんと笑いながら飲み合っている。
酒が入れば敵味方関係無いのか、冒険者さん達とガレの部下の盗賊団員さん達も、肩を組んで乾杯。楽しそうだ。
俺? 俺は果物ジュース。勿論美味いぞ! でも、夏の夜に飲みたいな。

「コージくんは…、あれ、ジュース? 酒飲まねェの?」

近付いてきたジャックさんが、俺のコップを覗いて首を傾げた。さっき、かなりでかいジョッキをイッキしてたけど、全然平気そうだ。酒、強いのかな?

「俺がいた国、酒は原則20歳からだったんで、その意識が残ってるというか…」

この世界に、酒の年齢制限は無い。
未成熟な少年少女や、幼い子供に飲ませて身体を壊したとしても、自己責任で済ませてしまうから。そして、小さい子供に酒を飲ませるとヤバいってのは、親なら全員が知っている。だから子供の安全の為に、親は子供を酒場には連れて行かないし、酒を家に置いたりもしない。けど、10代後半くらいからは、普通に飲む人も多いそう。
地球に比べ、医学がまったく発展していないこの世界では、病気になってからでは遅い。ある程度の外傷は簡単な魔法で治せるけども、体内となると、治療に使う魔法のレベルが格段に跳ね上がり、それに伴って治療費も跳ね上がる。なので、病気なんかは薬師からの薬(薬草とかを磨り潰した苦いやつ)で治すのが一般的だ。
……が、急性アルコール中毒なんかだと、薬師が対処する事が出来ず、ほとんどの場合、死に至る。
それを分かっているので、酒を飲む人は、絶対に無理な飲酒をしない。したとしてもやけ酒くらいだ。

「酒に年齢制限!? 面倒そうだが…まぁその方が子供には安全か。でもよ、ちょっとくらい良いだろ? コージくんも一口飲んでみなって!」

自分のジョッキをぐいっと差し出して来たジャックさんは、まんま『親戚の子供に酒を飲ませたがるおじさん』だった。我が家は母さんがそういうのに厳しかったから、俺も康太郎も酒から逃れて来れた。

なので俺、酒を飲んだ事が無い。

中学生の時、同級生が『やっぱアサヒかなぁ~』とか『いやいやキリンでしょ!』とか、女子をチラチラ気にしながら言ってたけど、俺はビールの匂いで忌避していた。
……こっ、子供で悪かったな! 味が想像出来なかったんだよ! 未成年の飲酒、絶対禁止! …でも、この世界じゃ年齢制限…無いんだよな……。なら…ちょっとだけ…。

ジャックさんが差し出して来たジョッキを恐る恐る受け取り、中を覗き込む。
白い泡が浮かんだ金色の液体がたぷんと揺れて、俺はそっと口を付けた。

周りは相変わらず騒がしいけど、視線が集まってるのが分かる。
ルークさんもリイサスさんもジャックさんも、ガレもロイもセキも、じっと俺を見てる。…ワーナーさんは厨房かな。

「不味かったらすぐに吐き出して良いからな?」

「ふぁい…」

どきどき。どきどき。
こく……。

ジョッキを傾けて、エールを一口。
口に流れ込んで来た独特の匂いの液体は結構苦くて、飲み込んだらのどに炭酸が通ってパチパチした。
苦いのはあまり得意じゃないけど、炭酸は好きだから、『まずっ』て程ではないかな。口付けたし、全部飲んじゃお。
……にしても、何だか体がふわふわする。

「コージくん!? 大丈夫か!? 顔真っ赤だぞ!?」

「…んへぇ?」

うへへ、何言ってんだジャックさん! いくら日本人が酒に弱い体質だからって、たった数口で酔うわけねぇ~だろぉ。ジャパニーズナメんなぁ~。
…うーんでも、顔が熱い気もする…。

「水持ってこい!」

リイサスさんが近くの冒険者さんに何かを指示して、ルークさんやガレ達が慌てた様子で駆け寄って来た。
みんな大げさなんだよなぁ~もぉ~。

「コージ、おい、大丈夫か? これ、何本に見える?」

そう言って、ガレが自分の片手を俺の前に突き出した。

「もー、何言ってんだよガレぇ~。そんなの、6本に決まってるだろ~」

「……重症だな…」

むむっ! しつれーな!
俺は重曹なんかじゃないぞ! れっきとした生物なんだからな!

「…これ、今迫ればヤれそうな気がする」

「下品だぞジャック。…だが、まぁ…。多分イケるだろうな…」

ごくりと唾を飲み込む音が聞こえたけど、俺は無視してガレに絡む。具体的には、ガレの後ろに結んだ尻尾みたいな髪を引っ張ったりして。

「…コージくん、私と交尾を…」

「ルーク!! 抜け駆けは許さないぞ!!」

交尾? セッセのこと?
…セッセかぁ……。…………………。

「ジャックさんと、ロイなら、いーよ?」

「「「!!!!?」」」

「はっ…、はぁぁぁぁ!!? おいコージ!? なんでソイツらが良くて俺は駄目なんだよ!? セックス最多は俺だろ!?」

「私も異議を申し立てたい!! 私には、ただの人間には無い熊の耳と尻尾が付いているぞ!! 地位も金もかなりある!!! それが、何故彼らだけ…!!!」

「だって、ルークのちんこじゃ、俺のおなか、パンクしちゃうし…。ガレとセッセしたら俺…、赤ちゃん出来ちゃうもん…。それに、2人とのセッセ、気持ち良過ぎて頭おかしくなっちゃう…」

「ぐはぁっ!!」

「ごふっ!!」

ルークさんとガレが、喜んでいるのか悲しんでいるのか、分からない表情で倒れた。酔っ払ったのかな。
自分の口が軽くなっているとも分からず、俺は次々と色んな人に色んな事を言っていく。

「ジャックさんはちんこ大きかったけど、常識以内の大きさだったし、普通に気持ち良かったから、セッセもオーケーした!」

「やめてくれそれ以上聞いちまったら俺は嬉死する!!」

「ロイは若いせいか、絶倫だけど、ちょうど良いちんこの大きさだから、セッセもちょうど良い!」

「ぐっ…殉愛…」

「ろっ、ロイィーーーーッ!!!」

「リイサスさんとワーナーさんとセキに関しては、セッセしてないので分かりましぇーん! アナゴさんっアナゴさんっ、唇フライアウェ~イ♪」

元気良く、とんでも発言を連発してしまった俺。そしてお約束として当然のように、俺はこの事を翌日にはすっかり忘れている。



********************




はぁい(* ̄∇ ̄)ノ
メルです。



お気に入り3300、ありがとうございます!
えぇっと、その、遅れがちでごめんなさい!

『王子様は、いつコージを知ったのか』という質問を頂きましたが…、『フラグ1級建築士、爆誕!』の最後にレオナルドと呼ばれる謎の人物が、小肥り貴族に絡まれたコージを見付けて、欲しがっていました。私の更新頻度が遅いせいで、忘れている方も多いかも知れません…。本当にすみません!




しおりを挟む
感想 953

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...