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死闘続発★ホモら共存編

天使と悪魔が舌の上でポールダンス

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「コージ、飯が出来たぞ~ってうわっ!? ギルマス!?」

「あっ、ワーナーさぁん!」

両手のおぼんに美味しそ~~~~~うなキラッキラの料理を乗せて、ワーナーさんが厨房から出てきた。どうやら、いつの間にか時間が経っていたらしい。
もふもふは世界を救うけど、同時に時間の感覚もおかしくしちゃうな…。

ご飯食べるから、もふもふはまた後で!

リイサスさんに降りるのを手伝って貰って、トトr…間違えた、ルークさんとバイバイ。
俺が席に着くと、ワーナーさんがテーブルに料理を置いてくれた。そのメニューは……

「…とっととっととととととんかつ…!!!?」

まごうことなき、トンカツ。きつね色のころもが輝かしい、トンカツ。I LOVE TONKATU.

「コージ、知ってるのか? なら話が早いな! 最近、料理人の間で『揚げ物』っていう新しい料理が広まっててな! だからコージのいない時に練習してたんだ!」

「はわわわワーナーしゃぁぁん!!!」

この世界でトンカツが食べられるとは!! トンカツが食べられるとは!!!!
最高だぜワーナー兄貴!! 一生着いて行きます!!

「…『揚げ物』? どういったものなんだ?」

ロイが首を傾げてワーナーさんに尋ねる。
…んん? 揚げ物って、あんまり知られてないのかな? …でもでも、じゃがたんの薄揚げ…、ポテチはあったのに。

「じゃがたんの薄揚げの調理法を、肉や小魚に施すんだ。ただ…難易度が結構高くて、客に出してる店はまだ無いらしい…」

「へぇ…、ワーナーはどうするんだ?」

「成功率もまだ80%未満だからな…。注文が殺到したら困るし、100%作れるようになるまで、提供はしない。あ、コージは別な?」

抱いて!! いっそ抱いて兄貴!!!

「……肉を揚げただけで、こんな…きつね色のザラザラになるものなのか?」

「ただ揚げるだけじゃない。色々と肉にまぶしたりするんだが…、俺独自の調理法も使ってるし、そこは秘密だ」

……俺、日本人なのに作り方知らないや…。パン粉が必要だってのは分かるけど…。

「…待て。出してる店が無いなら、コージ…、どこでこれを知ったんだ?」

ガレのツッコミに、みんなが『あ』って顔をして、俺に注目する。
一刻も早くあつあつとんかつをさくさくはふはふしたい所だけど、仕方がない。答えてやりますか!

「生前、俺のいた国にあったんだよ! ご飯と掛け合わせたら至上なんだぜ!!」

「……異世界に? ご飯…?」

「あ、お米の事な!」

「…?」

「ライス!!」

「らい、す?」

ワーナーさんのきょとんとしたお顔に、俺は密かに絶望した。
トツカツの前だから、あくまで密かに。トツカツに悟られる訳にはいかない。今から美味しく頂くんだから、そんな失礼な態度を取れる訳がない。

…違う、そーじゃなくて、お米の話だ。


異世界に米が無いのは、王道中の王道だ。
何故なら、異世界転生、あるいは転移する系の作品の舞台となるのは、大抵が中世ヨーロッパをモチーフにした世界なのだからである。
実際の中世ヨーロッパに米があったのか俺は知らないけど、『米と言えばアジア。主に日本』のイメージがすっかり人々に定着しているので、異世界に米は無い事が普通なのだ。
これを、『異世界唯一欠点の法則』と言う。当然、今俺が作った。
そしてその法則は、俺がいる世界にも適応されるようで…。

どうする、俺。考えろ。俺が今まで読んできたラノベを思い出せ。

──そうだ。こういう時は、米が雑草と認識されている事が多々あった。そして主人公は、偶然にもそれを発見して、米の美味さを周囲に広めていく。
…けど、それだと俺が自力で見付けなきゃいけない。米は欲しいし、いざとなれば探すけど…、当分はしたくないな。
ええっと、他には…。日本に似た国が異世界にもあって、米はその国でしか主食として食べられておらず、他国への流通はほぼ無いとか…。そういうのもあったな。タイをナメるなって言いたい。

でも、日本に似た国なら、この世界にもあるかも。
何故なら、王都で創造祭を楽しんでいる時に、チャイナドレスを着た女性を目撃したから。女性はお店を出していて、赤と黄色が施された中国っぽい看板の下で、小籠包を売っていた。
これにより、中国っぽい国があるだろうと推測し、『中国っぽい国があるんなら日本っぽい国もあるんじゃね?』と俺は思ったのだ。

……まぁ、周囲の人達に聞くのが一番手っ取り早いんですけどね。

「えーっと、俺みたいな顔の人達がいる、東の国ってありません?」

「……可愛い子揃いの国って事かな? そんな天国みたいな国があったら知らない筈が無いけど…」

ぬぅん…。そういう意味で言ったんじゃない…。しかもリイサスさん、さらっと俺の顔を可愛いって言いやがった…。こりゃモテますわ…。

「可愛い…。まぁ…『美人』というよりは『可愛い』ですけど…。顔が薄いと言うか、平たいというか…。多分黒髪がほとんどで…」

「華国か?」

「かこく?」

ガレが呟いた単語をおうむ返しすると、ガレは頷いて説明をしてくれた。

「正式に存在が確認されている、東の国だ。世界屈指の巨大な領土を誇っていて、独特の文化を持っている。が、国民の気性が荒く、いつも戦争ばかりだぜ」

中国やん。

「いや、もっと小さな国とか…」

「……そう言えば、華国の東側にもう1つ、小さな国があった気がする。最近内戦が起こり、2つに分裂したとか…」

朝鮮やん。

「も、もっと東に!」

「「………」」

俺の言葉に、ガレやルークさん、リイサスさんだけでなく、多くの冒険者さん達まで首を傾げて黙ってしまった。


「……もしかして…、日の国、か…?」


沈黙を破ったのは、1人の冒険者さんだった。

「なるほど、日の国か…」

ルークさんもガレもリイサスさんも、冒険者さんの言葉に頷く。
地球の日本に『日出ひいづる国』なんて別名があるくらいだから、多分その日の国とやらが日本の立ち位置っぽいけど…。なんだか、普通の国ではなさそうな雰囲気。
そんな俺の考えを読み取ったのか、リイサスさんが少し言いにくそうに口を開いた。

「日の国っていうのは、存在が確認されていない、幻の国なんだ。現在で分かっている事は、極東の海原に浮かぶ島国って事。それと妙な形をした、とんでもない性能の剣が10年に1度、3本だけ輸出されている事だけさ。行って戻ってきた奴がほとんどいないから、事実かは分からないけど」

…ふむむ。ちょっと特殊な立ち位置にある事は理解出来た。『妙な形をした、とんでもない性能の剣』って部分から、日本刀の存在が窺えるな!
……でも、幻の国かぁ…。韓国から一直線に向かえば、結構早く着くと思うんだけど…。

「当然、何人もの船乗りや、領土拡大を目指す国々が日の国に向かった。が、必ずと言って良いほど、途中で嵐に見舞われるんだ。いくつもの船が沈み、人は海に投げ出され…。『確かに存在している筈なのに、決して手の届かない』、そんな太陽のような意味を込めて、いつしか『日の国』って呼ばれるようになったんだ」

あらカッコいい。
…にしても、嵐かぁ…。蒙古襲来かな?
だけど、日の国とやらに米がある可能性、結構高めだな。船は嵐でお陀仏確定だし、水中系のスキルや魔法をゲットしたら、いつか行ってみよう。

「全ての食物に感謝と祝福を!」

別名『いただきます』。
待ちに待ったトンカツ、サクサクっと食べちゃいます!!
……でも何故か、俺が感謝の言葉を口に出すと、多くの人達が我先にと押し掛けてきた。俺が座るテーブルはあっという間に肉壁に囲まれて…。

超見られてる! トンカツじゃなくて俺の顔超見られてる!! なんだよお前ら!! 暇人かよ!!


居心地の悪さを感じながらフォークをトンカツに刺すと、さくっと気持ち良い音。
今にも溢れ出そうなヨダレを飲み込み、あーんと一口……。

さく…さく……もきゅもきゅ………



──…ほっぺだけではなく、顎まで落ちるかと思った。

「ごふっ!」

「コージ!?」

あまりの美味さに脳が拒絶して吐き出させようとするけど、体はトンカツを手放したくなくて、俺は全力で口を押えた。

……待て。待て待て待て! 俺が今まで食べてきたものは何だったんだ! 日本の方々!! トンカツを知って数日のワーナーさんに負けてるぞ!!
…いや、ワーナーさんが天才なだけか。地球でも探せば…。…そもそも、コレなんの肉だ。

「まっ、不味かったか!?」

「ちがっ…!! 逆です!! 美味し過ぎて…」

俺の見開かれた目から嘘ではないと悟ったのか、おろおろしていたワーナーさんに満面の笑みが戻った。

「そうかっ!! 良かった、食べ慣れたコージが言うんなら、間違いないんだろうな!!」

「俺の知ってるトンカツはもっとB級グルメ感がすごかった筈なのに…」

もちんもちんのパンと水で口の中をリセットして、再びサクッ。
2度目だから、もう大丈夫。
口いっぱいに広がる、柔らかな衣と肉。
良い感じに脂っこいけど、胸がムカムカする程度ではない。キャベツと一緒に食べれば、揚げ物の前で青褪めていた父さんも、美味しく頂けるんじゃないかな。
トンカツによくある、衣と肉の間のねちょっとした部分。そこまで美味しい。
衣が柔らかいから、口内炎の時でも余裕で食べられる。いやむしろ食べたい。




結局、ご飯が無かったので少し物足りなくて、ワーナーさんのおかわり提案に乗ってしまった。
マズい。太る。





********************




「(国王様。報告がございます)」

『…今か』

「(なるべく、早い方が)」

『…分かった。述べよ』

「(序列入り3体と従魔契約を結んだ阿山康治郎ですが、どうやら聖騎士の兵舎から連れ去られた者、オーディアンギルドが探していた者と同一人物のようです)」

『やはりか。それで、古龍たちは』

「(91位の赤古龍は確認出来ましたが、92位と93位は未確認です)」

『…ふむ。阿山康治郎は死神の吐息に拐われた筈だが…、死神の吐息の団員は?』

「(頭であるガレ・プリストファーと、コナー・トランズ、それに、聖騎士の諜報部隊に所属するミゲル・ガレーナと、その他3人が側に)」

『盗賊に寝返った聖騎士か…。ギルドの者達と争いにはならなかったのか』

「(……ガレ・プリストファーとギルドマスターのルーク・アラウザが一時交戦しましたが、阿山康治郎が…『重力操作』を使い、止めました)」

『………………何をバカな。第2の壁での鑑定結果では、慰安属性、結界属性だったと報告が上がっている。自然属性の…、しかも最上級魔法など、使える訳がない』

「(…交戦していた2人の体が、同時に地に打ち付けられた所を目撃しました。最も可能性が高いのは赤古龍ですが、魔法が発動された際に高濃度の魔力を感知出来たのは阿山康治郎でした)」

『…つまり、阿山康治郎は『偽装』をしていた…。ならば『鑑定』スキルを持っているのか』

「(恐らくは。)…!!? なっ、赤古龍…!?」

「ほほう! 魔石を使った『思念伝達』か! それを使い、ずっとコージを監視していたのだな! ガレやルークが気付かないところを見ると、ヒトという区切りの中では、それなりに強いようだ! が、俺の目は誤魔化せぬぞ!」

『…!!!』

「くっ! いつの間に…!」

「おっと、逃がさぬぞ? 大体察しは付くが、お前がどこの誰で、どういった目的でコージを監視していたのか、吐いてもらう! というわけで、伝達先の者よ! こやつは借りていくぞ!」

『………ある程度は喋って構わん。生きて帰れ』

「(…! 御意!)」



********************


はぁい(* ̄∇ ̄)ノ
メルです!


お気に入り3200、ありがとうございます!
新年度、仕事が忙しくてちょっと遅れるかもです!ごめんなさい!


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