異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件

メル

文字の大きさ
上 下
82 / 160
死闘続発★ホモら共存編

俺の人権どこ行った

しおりを挟む
 
 
 
「…コージくんの方の事情は分かったし、君が何を望んでいるのかも理解した。…だが従魔契約を結んだ古龍達はともかく、ガレ・プリストファーとその部下らをここに置くわけにはいかない」

ルークさんの言葉に、俺は肩を落とした。
いやまぁ? そんなアッサリOK貰えるとは思ってなかったぜ? ただ、やっぱ説得しなきゃいけないとなると面倒だなって…。

「だ、ダメな理由は…」

「…彼らが君を狙うライバルであり、犯罪者だからだ。通報もせずに留まる事を容認すれば、私達も共犯と捉えられかねない」

あっ……。
そうだ、そう言えばガレ達は悪い盗賊だった…。うーん確かに、ギルドメンバーが疑われるなんて、ギルドマスターにとっちゃ嫌だよな…。…でも、ガレは俺といたいって言うし、俺はクエスト受けてお金稼がなきゃいけないし…。………難しい…。
俺がうんうん唸っていると、ガレが近付いて来て俺の耳に口を寄せてボソッと呟く。

「惚れた弱味って言葉、知ってるか?」

はぅっ…! 息で耳がムズムズする…!
…でも、ガレの言いたい事は分かったぜ…。『説得したきゃコージ自身を人質に脅せ』って事だろ? ワーナーさんを庇う時も同じ手法だったから、多分通じると思うけど…、ぐぬぅ、お仕置きが恐い。…それに、本当にルークさん達が聖騎士団とかに狙われちゃったら、申し訳無さ過ぎて胃に穴が開きそう…。…ぐぬぉぉぉ…!!


「はぁ……、しゃーねェな」

俺の頭に手をぽんっと置いて、ガレが一歩前に出てルークさん、リイサスさんと向き合う。一方の2人はガレを睨み、『お前が交渉するのか』って言いたげに舌打ちした。

「もしもお前らが俺らを攻撃しようもんなら、俺はこのままコージを連れ去る」

「!!!?」

「貴様……!!」

身動きが取れないぐらいの敵意、殺気がドゥンッ!! て部屋を満たし、殺る気まんまんの2人と、ガレとセキ以外の人はまったく動けない。勿論、俺も。

「おい赤古龍。お前はだ」

「ふははは!! 俺はどちらにも付かん! 俺が直接干渉するのはコージの身に危険が迫った時のみだ!」

「だとよ。この意味が分かるよな、ルーク・アラウザにリイサス・ラック」

俺は意味が分からなかったけど、ルークさんとリイサスさんは一層険しい表情になった。フルネームを言い当てられて、驚いてるみたいでもある。
…ガレは『鑑定』スキルがあるんだから知ってて当然なんだけど、それを知らない2人は…。
ガレとの出会いを説明した時だって、プライバシーの侵害だと思って、濁したんだ。だって、許可を取ってたならともかく、俺が勝手にガレのスキルをバラす訳にはいかないだろ?

「つまりはだな…、赤古龍が中立を決めた今、この場で最も強いのは俺だ」

ルークさんリイサスさんに続き、ガレも殺気を放ち始めた。狐さんとミゲルさんを殺した時と同じ、体中がブルブル震えて止まらない。殺気を肉眼で捉える事は出来ないけど、ルークさんとリイサスさんが圧されたのが分かった。

「だがここでお前らを皆殺しにしてもコージが悲しむだけだし、コージの核心が揺らぐと俺が古龍共に消されかねない。だからお前らが血を見る事はねェから、まぁ安心しろ」

「は…安心出来る訳がないだろう…!」

「だろーな。お前らを殺さずにコージだけ連れ去る方法なんて、いくらでもあるしな」

ニッコリと笑ったガレ。冷や汗を流しながら何かを模索してるリイサスさん。徐々に気力を取り戻し、負けじとガレを睨むルークさん。疲れ果てたお顔のジャックさん。俺の半歩後ろで恐怖に引き攣っているワーナーさん。俺とドアの間で様子見のロイ。終始面白そうに傍観を決め込むセキ。いつでもガレの助太刀が出来るよう、投げナイフを握り締めるミゲルさん。殺気の重圧にやられて鉄棒で失敗した時みたいに、ソファの背もたれにぐてんとぶら下がる狐さ………狐さぁぁん!!

一瞬、狐さんの仇としてごっつん★させようかとも思ったけど、ガレは俺の代わりに交渉脅迫してくれているんだから、邪魔しちゃいけないよな。……あぁごめんなさい狐さんっ! 後でいっぱいもふもふしましょうねっ!!

「…あー、ま、なんだ。何も容認しろとは言ってねェ。通報だってして貰っても構わん」

「!? え…」

衝撃の爆弾発言…ってほどでもないけど、全員の目を見開かせるには充分な内容だ。
だって、通報したら…、聖騎士とかいっぱい来ちゃうかも知れねーのに。

「駆け付けた騎士の奴らは土に還ってもらうが…、俺達に攻撃さえしなきゃ、俺もコージは攫わねェ。俺の部下らもお前らを攻撃しねェ。あ、ギルドには入り浸るぜ?」

「…………」

「俺はコージの側にいたいだけだ。が…欲を言えば抱きたい。更に言えば結婚したい」

「おい…」

「お前らも同じだろ」

「…………まぁ……」

あ、おふざけモード入った。しかもリイサスさんもおふざけ空気に呑まれた。
……これは、ガレの勝ちだな…。

「コージを攫われたくなきゃ、攻撃するな。この条件をお前らが呑めば、俺達もお前らを攻撃しねェし、コージ案件以外で迷惑は極力掛けない。…呑めなきゃコージは貰って行く。至極簡単だろ?」

なるほど、おバカと言われる俺でも理解出来た! 俺も攫われたくはねーなぁ…。…あれ? 俺の人権は?

「…しかし……」

眉間にしわを寄せて俺をチラリと見るルークさん。多分、ライバルが増える事を良しとしてない。

「おいおい、俺は最大限妥協してんだぞ。お前ら抹殺してコージとラブラブ新婚生活送りてェ所を、コージの希望に沿って新婚生活は先送りにしたんだ。お前らもコージが好きなら、コイツの意見に耳を傾けろや」

「あくまで先送りなんだな…」

「……………………」

「……………………」

俺のツッコミも空しく、ルークさんとリイサスさんは顔を見合わせて考えている。
ところで俺の人権どこ行った?

「…こちらからも、条件がある」

「ほぉ、言ってみな」

「……コージくんを独占するな」

おおぅ、そうきたか。確かにヤンデレを前に独占ってのは、自殺行為だな…。これはガレに呑んでもらうしかないか…。

「……はぁ、ここに来た時点で覚悟の上だ。独占しねェよ」

……これはもしかして…、交渉成立?

「…分かった。条件を、呑もう」

ルークさんのその言葉に、部屋に充満していた殺気がふっと消えた。と、同時に俺は力無くソファに座り込んで、安心の意味でため息を吐く。

…解決、した。


「ふぃーー…、一件落ちゃ…、あっ狐さーん!!」

まだぐてーん中の狐さんをひょいって抱き上げ、元気になるように、もふもふ。するとちょっと目を開いて『きゅ…』と鳴いた後に、気絶しちゃった。うー殺気まみれで怖かったですよねぇ~よしよし。狐さんは俺が守る!

「…こ、コージ? ソイツ、一応21の男だからな?」

気絶した狐さんを撫でる俺に、ガレが言うが…、へへん! 関係無いもんね! 可愛いもんは可愛い! もふもふはもふもふ!!

「コージくん、私も…!」

「あ、俺、ルークさんに頼みたい事があったんですけど」

「何かね?」

俺に頼られてからなのか、嬉しそうに食い付くルークさん。くまみみがぴくぴく動いてる。可愛い。

「人化、解いてくれませんか?」

──…そう、これが俺の最近の目的。というか楽しみ。
名付けて、『人化を解いて熊になったもふもふルークさんにぎゅってされたい大作戦』!!

え? 作戦名が長い? そんな事はどーでも良い! 大切なものはもふれるか! ただそれだけだ!!

「勿論良いとも! ちょっと待ってくれたまえ。今、解く…」

「うぉぉぉちょっと待てルーク! ここで解くな! 全員が君と壁に押し潰される!」

人化を解こうとしゃがみこんだルークさんを、慌てた様子でリイサスさんが止める。
……ん? 壁とルークさんに押し潰される…? この部屋、それなりに広いし、物置小屋じゃないんだから大丈夫だろ。

「コージくん…。言っておくが、ルークはかなりデカいぞ…! ただでさえデカい熊の獣人だが、ルークの血族はその中でも特にデカい。人化を解いたルークの大きさなら、腹の上でコージくんがお昼寝出来るくらいだ…」

「マジで!!?」

リアルト○ロ!! あれはメイちゃんが幼女だったから出来た事だけど、俺は今15歳…。そんな俺がお昼寝出来るくらいだと!?

「人化を解くなら大広間でやれ。コージくんが帰って来たってあいつらに伝えられるし、コージくんはお昼ご飯がまだだろう? おらクソドワーフ、さっさと作ってこい」

……ワーナーさんに対してだけ口悪いの、変わってないなリイサスさん…。
でもご飯は食べたいっ!! 仮昇天はともかく、またあの美味しいご飯を食べたい!!

「お前に言われなくても作る! コージは何食べたい? 今日はコージが帰って来てくれたから、豪勢にいくぞ!」

「ワーナーさんの作る料理なら何でも食べたいです!!」

「はははっ! 嬉しい事言ってくれるなコージ! よぉし、腕によりをかけて作るからな!!」

「わぁい!!」

はしゃぐ俺に、俺の頭をなでなでするワーナーさん。兄貴って感じで、最高に癒されます!

「で、ロイは? ロイも食うんだろ?」

俺をなでなで…いや、もはや、わしゃわしゃしながら、ワーナーさんがロイに話し掛ける。
ワーナーさんの傷跡だらけのごつごつの手で撫で回されて、俺はもうとろとろ。
あっエロい意味じゃないからな!?

「あー…、旅費で金あんまり無いから、パンと肉だけで良い。………緊張で食欲無いし」

「分かった。……で、あんたらは…」

今度はガレとミゲルさんに向かって、ワーナーさんがちょっと緊張してる風に聞いた。その問い掛けに、ガレは意外そうにニヤリと笑う。

「へぇ、作ってくれるんだなァ」

「…こっちも商売だから、金は取るぞ」

「おうよ。コージが美味い美味い言うもんだから、気になってたんだよな。部下らの分は俺が払う。食えりゃ何でも良い。6人分頼むぜ」

そう言って、ガレが懐から取り出した金貨を10枚机の上に置いた。ガレと、狐さんミゲルさん、その他3人の部下の人の分だな! 意外と太っ腹だなぁガレの奴…。

「……好みは、無いのか?」

「俺はねェな。部下らは知らん。おいミゲル、お前は?」

「俺も特に…。食えれば生きていけましたから…」

「だよなァ」

『好み? 何それ美味しいの?』みたいな表情で顔を見合わせるガレとミゲルさん。
いや…好みは美味しいだろ。一体どんな環境に身を置いてきて……アッ(察し)

「……ふ、はははは…」

…あれれ、ワーナーさん壊れちゃった?

「良いだろう…。んな事、2度と言えねぇよう、お前らの好み、全部探り出してやる…」

両手をわきわきさせてメラメラ炎を瞳に宿すワーナーさん。そんな変態染みた動作に、ガレとミゲルさんが半歩下がった。
………比較的まともな筈のワーナーさんが、エロゲの悪役みたいになってるぅぅぅ…!!






しおりを挟む
感想 957

あなたにおすすめの小説

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

処理中です...